カップウィズハンドルとは、株価チャートが「取っ手のついたカップ」の形を描いたあとに上昇していくとされる、上昇継続型のチャートパターンです。

米国の投資家ウィリアム・オニールが提唱したもので、成長株の押し目を見つける形として知られています。カップ(丸い調整)とハンドル(小さな押し目)の2段階でできています。

ただし、このパターンには使う対象が決まっています。オニールの条件をそのまま日経平均株価に当てはめて機械的に探したところ、1990年からの36年間で成立したのは0回でした。カップウィズハンドルは指数のパターンではなく、個別の成長株のパターンです。

この記事でわかること

・カップウィズハンドルの形と、買いのタイミング(図で解説)
オニールの5つの条件を、それぞれ図で確認
実測:日経平均で機械的に探すと、どの条件で落ちるのか
・だましが起きたときの損切りライン
・出来高で確認すべきポイントと、使う対象の選び方

カップウィズハンドルとは

項目 内容
読み方 かっぷういずはんどる(Cup with Handle)
分類 上昇継続型のチャートパターン
提唱者 ウィリアム・オニール(米国の投資家)
対象 上昇トレンドにある個別の成長株
形成期間の目安 7〜65週間(多くは3〜6か月)
別の呼び方 カップ・アンド・ハンドル、カップ型

まず形を確認します。

カップウィズハンドルの基本形。上昇のあとに丸いカップを形成し、小さな取っ手を作ってから上抜ける図

黒い線が事前の上昇、赤い線がカップ、青い線が取っ手(ハンドル)です。流れは次のようになります。

段階 値動き 起きていること
① 事前の上昇 株価が大きく上がる 買いが集まっている状態
② カップ 下落 → 横ばい → 反発 利益確定の売りが出尽くす
③ 取っ手 高値付近で小さく押す 最後の売りが出る
④ ブレイク 高値を上抜ける 売る人がいなくなり、上昇が加速する

②と③に共通しているのは、売りたい人が売り終わる過程だという点です。カップウィズハンドルは形そのものではなく、その裏にある需給の変化を見るパターンです。

買いのタイミングと損切りライン

買う場所は、上値のラインを上抜けたところとされています。

取っ手の高値ラインとカップ形成前の高値ラインを上抜けたポイントが買いのタイミングであることを示す図

ラインは2本あります。青い線が取っ手部分の高値、赤い線がカップ形成前の高値です。青い線を抜けた時点で入る方法と、赤い線を抜けるまで待つ方法があります。

入る場所 利点 欠点
取っ手の高値を抜けたところ 安く入れる だましに当たりやすい
カップ前の高値を抜けたところ 確度が上がる 入る価格が高くなる

そして、上抜けに失敗する場合があります。

上抜けに失敗して取っ手の安値ラインを割り込むだましのパターンと損切りラインを示す図

損切りの目安とされるのは「取っ手部分の安値ライン」です。ここを割り込んだ時点で、想定していた形が崩れたことになります。

買う前に損切りラインが決まっているという点は、このパターンの利点です。実行の方法は逆指値注文の記事で解説しています。

オニールの5つの条件

形が似ていても、条件を満たしていなければ信頼度は下がります。よく挙げられる条件は5つです。

条件 基準 理由
① 事前の上昇 30%以上 上昇トレンドの途中であることを確認する
② カップの深さ 高値から12〜33% 浅すぎると売りが残り、深すぎるとトレンドが崩れている
③ カップの形 V字よりU字 底で時間をかけたほうが売りが出尽くしている
④ 取っ手の位置 カップの上半分、かつ10週移動平均線の上 下半分に現れる場合は上昇に失敗しやすい
⑤ 取っ手の深さ 8〜12%以内 この範囲なら強気の状態とされる

それぞれを図で確認します。

① カップ形成の前に株価が30%以上上昇しているか

カップ形成前の上昇幅が30%以上あるかを確認する箇所を示した図

このパターンは上昇トレンドの中の調整として現れます。下降トレンドの途中で似た形が出ても、意味が変わります。

② 高値からカップの底までの調整幅は12〜33%

高値からカップの底までの調整幅が12%から33%の範囲にあるかを示した図

浅すぎる調整では、利益確定の売りが残ったままです。深すぎる場合は、調整ではなくトレンドの転換が起きている可能性があります。

③ カップの底は鋭いV字より丸いU字

カップの底が鋭いV字型より丸いU字型のほうが良いことを示した図

U字になるということは、底の付近で小さな上下を繰り返したということです。その過程で売りたい人が売り終わります。V字は下げてすぐ戻った形なので、売り圧力が残っている可能性があります。

④ 取っ手はカップの上半分で、10週移動平均線の上に現れる

取っ手がカップの上半分かつ10週移動平均線の上に現れる位置を示した図

10週移動平均線は、日足でいえばおおむね50営業日の移動平均にあたります。単純移動平均線の記事で仕組みを解説しています。

⑤ 取っ手の下落幅は8〜12%以内

取っ手の下落幅が8%から12%以内に収まっているかを示した図

取っ手が深くなりすぎる場合、それは小さな押し目ではなく2つ目の下落局面です。この条件は、上昇の勢いが残っているかを測るものです。

【実測】日経平均で機械的に探すとどうなるか

この5つの条件を数値化して、日経平均株価から機械的に探しました。

検証の条件

・120営業日の高値をカップ左側の高値とする
・そこから−12〜−33%の調整を経て、高値の−5%以内まで回復
・その後−3〜−15%の押し目(取っ手)を作り、50日移動平均線の上にある
・取っ手の高値を上抜けたらブレイク成立
・対象:日経平均株価の日足終値(1990年1月〜2026年8月28日)
段階 通過した回数
120営業日の高値 563回
→ 12〜33%の調整(カップ) 20回
→ 高値の−5%以内まで回復 16回
→ 取っ手ができた 9回
→ 取っ手が50日移動平均線の上 1回
→ ブレイクまで到達 0回

唯一残った1回は2026年2月からの局面で、この形はブレイクに至っていません。36年間で、日経平均にはこのパターンが1度も完成していないことになります。

落ちた場所を見ると、理由が分かります。

落ちた段階 読み取れること
563回 → 20回 高値をつけても、12〜33%というちょうどよい調整になることが少ない
9回 → 1回 取っ手が浅く収まらず、50日線を割ってしまう

2行目が本質です。指数は多数の銘柄の平均なので、値動きが個別株より小さくなります。「30%以上上がってから12〜33%調整し、そこから小さく押す」という一連の動きは、個別の成長株では起きても、指数では起きにくい形です。

この検証から言えること
日経平均やそれに連動するETFで、このパターンを待つのは現実的ではない。
カップウィズハンドルを使うなら、対象は個別の成長株になる。

※ 条件の数値化は機械的な解釈によるものです。パラメータを緩めれば検出数は増えます。

なぜこの形が意味を持つのか|しこりの解消

カップウィズハンドルが注目される理由は、形の美しさではありません。高値で買った人が、どの価格帯にどれだけ残っているかが変化するためです。

段階 高値で買った人の状態 上値の重さ
カップの下落中 含み損が拡大する
カップの底 耐えられない人が手放す 減っていく
カップの右側 残った人は買値に近づく やや増える
取っ手 建値に戻った人が最後に売る ここで解消される
ブレイク 売りたい人がいなくなる 軽くなる

この「高値で買ったまま残っている売り圧力」を、しこり玉と呼びます。取っ手の役割は、建値まで戻ってきた人に最後の売りを出させることです。

だからこそ取っ手は浅くなければいけません。深い押し目になると、そこで新たな含み損を抱える人が生まれ、上値の重さが作り直されます。実際にどの価格帯に売買が集中しているかは価格帯別出来高で確認できます。

似た形との見分け方

チャート上には、カップウィズハンドルと紛らわしい形がいくつかあります。

違い 判断のポイント
取っ手のないカップ 高値まで戻ってそのまま上抜けようとする 最後の売りが出ていないため、上値で失速しやすい
ダブルボトム 底が2回に分かれる。カップは1つの丸い底 底の数を見る
V字回復 下げてすぐ戻る 底で時間をかけていないため売りが残っている
下降トレンド中の戻り 事前の上昇がない 条件①を満たさない。別の形

4行目は最も間違えやすい形です。下降トレンドの途中でも、部分的に見れば「カップ」に似た形は現れます。条件①の事前の上昇を確認するのは、この取り違えを避けるためです。

トレンドの方向を先に確認する考え方はトレンドに逆らうなの記事にもまとめています。

実際に探すときの手順

チャートを1つずつ眺めて探すのは現実的ではありません。実務では絞り込みから入ります。

探す手順

業績で絞る(売上高成長率、営業利益率などスクリーニング機能を使う)
年初来高値の近くにある銘柄に限定する(下降トレンドを除ける)
③ 週足チャートでカップの形を確認する(日足では形が見えにくい)
④ 取っ手ができているか、10週移動平均線の上にあるかを見る
⑤ 出来高がカップの底と取っ手で減っているかを確認する
買う価格と損切りラインを先に決めてから注文を出す

③の週足という点は実務的に重要です。カップの形成期間は3〜6か月が多いため、日足で見ると全体像が画面に収まりません。週足で形を確認し、入るタイミングを日足で見るという使い分けになります。

②の年初来高値については年初来高値、業績での絞り込みはスクリーニングの記事で条件の決め方を解説しています。

出来高で確認すること

形だけでは判断材料が足りません。オニールの手法では出来高を重視します。

場面 望ましい出来高 意味
カップの底 減っている 売りたい人が減っている
取っ手 さらに減っている 最後の売りが細っている
ブレイクの日 急増する 新しい買いが入っている

出来高が増えずに上抜けた場合、だましになりやすいとされます。買い手が少ないまま値段だけが上がった状態なので、続かないためです。

出来高の読み方は出来高、価格帯ごとの売買の偏りは価格帯別出来高の記事で解説しています。

デメリットと注意点

注意点 内容
後から見れば必ず見つかる 形が完成してから振り返ると分かるが、途中では判断できない
だましがある 上抜けたあと押し戻されることがある。損切りラインが必須
指数では成立しにくい 実測のとおり、日経平均では36年間で完成が0回
条件は目安にすぎない 数値の範囲は経験則であり、すべてを満たす例は多くない
形だけでは根拠が弱い オニールの手法は業績の条件と組み合わせて使うもの

5つ目は前提として重要です。オニールの手法は、売上や利益の伸びといった業績の条件と、チャートの形を組み合わせて使うものです。形だけを取り出すと、根拠の半分が抜けた状態になります。

業績側の条件についてはグロース投資、銘柄の絞り込みはスクリーニングの記事にまとめています。10倍株の道のりを実測したテンバガーの記事も参考になります。

1つ目も自覚しておく価値があります。チャートパターンは、完成した後の図では明快に見えます。実際に取っ手を形成している最中は、それが取っ手なのか、下落の途中なのかは分かりません。

よくある質問

カップウィズハンドルは日経平均でも使えますか?
実測では、オニールの条件を数値化して日経平均から機械的に探した結果、1990年からの36年間でブレイクまで到達した例は0回でした。指数は多数の銘柄の平均のため値動きが小さく、「30%以上の上昇のあとに12〜33%調整し、そこから小さく押す」という一連の形が現れにくいためです。このパターンを使うなら、対象は個別の成長株になります。
どこで買うのが正解ですか?
上値のラインを上抜けたところとされますが、ラインは2本あります。取っ手部分の高値と、カップ形成前の高値です。取っ手の高値で入れば安く買えますが、だましに当たりやすくなります。カップ前の高値を抜けるまで待てば確度は上がりますが、入る価格は高くなります。どちらを選ぶかは、損切りラインまでの距離を許容できるかで決めてください。
損切りはどこに置けばよいですか?
一般的な目安は取っ手部分の安値ラインです。ここを割り込んだ時点で、想定していた形が崩れたことになります。ただし逆指値注文を置いても、指定した価格で約定するとは限りません。前日終値より大きく下で寄り付いた場合はその価格で約定します。また、キリのよい数字や直近安値ちょうどには注文が集まりやすいため、少し外して置く方法もあります。
なぜカップの底はU字のほうが良いのですか?
U字は、底の付近で小さな上下を繰り返したことを意味します。その過程で、売りたい人が売り終わっていきます。一方V字は、下げてすぐ戻った形なので、売りたかった人がまだ残っている可能性があります。上抜けようとしたときに、その売りが上値を抑える要因になります。カップの形は、需給が整理されたかどうかの手がかりになります。
5つの条件をすべて満たす銘柄が見つかりません。
すべてを満たす例は多くありません。実測でも、日経平均では条件を満たす局面がほとんど出ませんでした。条件は経験則にもとづく目安であり、絶対的な基準ではありません。実務では、どの条件を外したかを自覚したうえで判断することになります。とくに事前の上昇と取っ手の位置は、パターンの前提に関わるため優先度が高い条件です。
出来高はどう見ればよいですか?
カップの底と取っ手では出来高が減り、ブレイクの日には急増するのが望ましい形とされます。底で出来高が減るのは売りたい人が減っている状態を、ブレイクで増えるのは新しい買いが入っている状態を示します。出来高が増えずに上抜けた場合は、買い手が少ないまま値段だけが上がっているため、続きにくくなります。
10週移動平均線とは何ですか?
週足チャートで10週分の終値を平均した線です。日足でいえば、おおむね50営業日の移動平均に相当します。取っ手がこの線の上に現れるかどうかは、中期的な上昇の勢いが保たれているかを見る条件です。取っ手が線の下に沈む場合、押し目ではなく下落局面に入っている可能性があります。
チャートの形だけで買ってもよいですか?
オニールの手法は、売上や利益の伸びといった業績の条件と、チャートの形を組み合わせて使うものです。形だけを取り出すと、根拠の半分が抜けた状態になります。また、完成したチャートの図では明快に見えても、取っ手を形成している最中には、それが取っ手なのか下落の途中なのかは判断できません。だからこそ損切りラインを先に決めておく必要があります。

まとめ

カップウィズハンドル|3行まとめ

・形の裏にあるのは売りたい人が売り終わる過程。カップと取っ手の2段階で進む
実測:日経平均では36年間で完成が0回。指数ではなく個別の成長株のパターン
・損切りは取っ手の安値。ブレイクでは出来高の急増を確認する

このパターンの価値は、当たる確率の高さではありません。買う場所と、損切りする場所が、買う前に両方決まるという点にあります。

取っ手の高値で入り、取っ手の安値で切る。この2つが決まっていれば、1回あたりに失う金額を先に計算できます。形が崩れたときにどうするかが決まっていない状態で入ると、パターンを使っている意味がなくなります。

探す対象を選ぶときは、実測の結果を思い出してください。指数や指数連動のETFでは、この形はほとんど現れません。使うなら、値動きの大きい個別の成長株が対象になります。

※ 本記事の検証は日経平均株価の日足終値をもとに2026年8月28日時点で行ったものです。条件の数値化は機械的な解釈によるもので、パラメータを変えれば検出数は変わります。指数での検証であり、個別銘柄では結果が異なります。チャートパターンは将来の値動きを保証するものではなく、特定の銘柄や投資手法を推奨するものでもありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

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