ToSTNeT取引とは?1・2・3の違いと価格の決まり方

ToSTNeT取引とは、東京証券取引所が運営する立会外取引の仕組みです。通常の取引時間の外で、大口の売買をまとめて成立させるために使われます。

読み方は「とすとねっと」。Tokyo Stock Exchange Trading NeTwork System の略です。

種類は3つあり、価格の決まり方・最低数量・配分方法がそれぞれ違います。開示で「ToSTNeT-3により取得」と書かれていたとき、その意味が読み取れるように整理しました。

この記事でわかること

・ToSTNeT-1・2・3それぞれの仕様(価格制限・最低数量・配分)
・単一銘柄取引とバスケット取引の違い
・終値取引がどの価格で成立するか
・自己株式の取得に ToSTNeT-3 が使われる理由
・実例:ToSTNeT-3で予定の株数まで買えたのは何件か
・2024年の取引時間延長で何が変わったか
・個人投資家がこの仕組みとどう関わるか

ToSTNeT取引とは?まず結論から

ToSTNeT取引(読み方:とすとねっととりひき)

ToSTNeT取引とは、東京証券取引所が提供する立会外取引のシステムです。通常の板を使った売買(立会取引)とは別の仕組みで、あらかじめ相手方や数量を決めた取引を成立させます。

なぜ別の仕組みが必要なのか。理由は大口の注文を板に出すと、株価が大きく動いてしまうためです。

立会取引で大口を出すと
株価が動く
板を食い上げる/崩す
不利な価格で約定してしまう
ToSTNeTなら
価格を決めて成立
相手方・数量を指定
市場への影響を抑えられる

大口取引を板の外で成立させるための仕組み

ToSTNeT市場には、国内株式のほか外国株式、ETF、REIT、転換社債型新株予約権付社債(CB)も上場しています。

立会外取引との関係

用語が紛らわしいので整理します。

用語 意味
立会外取引 立会時間の外で行う取引の総称
ToSTNeT取引 東証が提供する立会外取引のシステム名
立会外分売 立会外で個人投資家に株を分けて売る制度

この記事ではToSTNeTの仕様(価格・数量・時間・配分)を扱います。開示をどう読むか、株価にどう影響するかは立会外取引の記事でまとめています。

立会取引との違いを並べると、性格の違いがはっきりします。

項目 立会取引 ToSTNeT取引
価格の決まり方 板で需給が突き合わされる あらかじめ決めた価格
相手方 不特定 指定できる種類がある
株価への影響 その場で動く 直接は動かない
主な利用者 個人・機関投資家 機関投資家・発行会社
気配・板 気配を見て判断できる 板を経由しない

ToSTNeT-1(単一銘柄取引)

1つの銘柄について、相手方・数量・価格を指定して行う取引です。

単一銘柄取引の仕様

・価格の範囲:立会市場の直近値から上下7%以内
・最低数量:売買単位から可能(大口でなくてもよい)
・相手方:あらかじめ指定する(相対取引)
・成立の方法:売り手と買い手の条件が一致したときに成立

価格に上下7%の枠が設けられているのは、市場価格からかけ離れた価格での取引を防ぐためです。相対で自由に決められるとはいえ、無制限ではありません。

使われる場面は、企業間の株式の持ち合い解消、大株主から特定の相手への譲渡、系列会社間の株式移動などです。

ToSTNeT-1(バスケット取引)

複数の銘柄をひとまとめにして、1つの商品のように売買する取引です。

バスケット取引の仕様

・対象:15銘柄以上かつ売買代金1億円以上
・価格の範囲:立会市場の直近値で算出した基準代金の上下5%以内
・相手方:指定する
・特徴:個別銘柄ごとではなく、合計金額で条件を決める

機関投資家がポートフォリオをまとめて入れ替えるときに使われます。数十銘柄を一度に売買しても、それぞれの板に影響を与えずに済むのが利点です。

単一銘柄取引より価格の枠が狭い(上下5%)のは、合計金額で判定するため個別銘柄のブレが大きくなりすぎないようにするためです。

ToSTNeT-2(終値取引)

立会市場で成立した終値などを使って売買する取引です。

終値取引の仕様

・価格:直近の終値(またはVWAP)
・最低数量:売買単位から可能
・成立の方法:時間優先(早く注文を出したほうから成立)
・相手方:指定しない(不特定の相手と成立する)

ToSTNeT-1との決定的な違いは相手方を指定しないことと、時間優先で成立することです。価格が決まっているため、あとは注文の早い順に処理されます。

時間帯は、取引開始前・昼休み・立会終了後の3つに分かれ、それぞれ前日終値・前場終値・当日終値が使われます。

ToSTNeT-3(自己株式立会外買付取引)

企業が自社の株を買い戻すためだけに用意された取引です。

自己株式立会外買付取引の仕様

・用途:自社株買い専用
・価格:前日の終値
・買付の主体:発行会社のみ
・配分方法:時間優先ではなく、取引所が定める方法で按分して配分

ここが最大の特徴です。ToSTNeT-2は時間優先ですが、ToSTNeT-3は按分配分になります。売却の申込みが買付数量を上回った場合、早い者勝ちではなく、申込数量に応じて割り振られます。

会社が使う理由は3つあります。

理由 内容
価格が確定している 前日終値で買うため、取得コストが読める
短期間で大量に取得できる 市場で少しずつ買うより早い
株価を押し上げずに済む 板を買い上がらないため市場価格に影響しにくい

投資家として知っておくべきなのは3つ目の裏返しです。ToSTNeT-3による自社株買いは、市場の需給を直接押し上げる効果が小さいということです。

市場で買い付ける自社株買いなら、実際の買い注文が板に入るため株価を支えます。ToSTNeT-3では板の外で完結するため、その効果は限定的です。同じ「自社株買い」でも、取得方法によって需給への効き方が違います。

【実例】ToSTNeT-3で予定どおり買えたのは10件中3件

上の章では、売りの申込みが買付数量を上回ったときに按分されると書きました。実際にはその逆、売りの申込みが足りずに予定の株数まで買えないことも珍しくありません。日本取引所グループが公表している直近2週間分のToSTNeT-3を並べます。

実施日・銘柄 買付の予定 → 約定(株) 約定した割合
9月28日
ヤギ(7460)
350,000
→ 322,000
92.0%
9月25日
清水建設(1803)
4,254,400
→ 4,254,400
100%
9月25日
クロスプラス(3320)
234,300
→ 234,300
100%
9月18日
リケンテクノス(4220)
500,000
→ 403,400
80.7%
9月18日
日本精機(7287)
3,610,000
→ 3,610,000
100%
9月17日
Abalance(3856)
2,000,000
→ 1,611,500
80.6%
9月16日
日本フエルト(3512)
450,000
→ 362,900
80.6%
9月16日
大日精化工業(4116)
3,000,000
→ 2,807,500
93.6%
9月15日
モロゾフ(2217)
74,000
→ 70,000
94.6%
9月14日
タカラスタンダード(7981)
142,000
→ 128,600
90.6%

※ 約定した割合は「約定数量 ÷ 買付数量」。

予定どおりの株数を買えたのは3件だけで、残り7件は予定の80.6〜94.6%にとどまりました。前日の終値という決まった値段で売ってもよいという株主が、予定の株数ほど集まらなかったということです。

「ToSTNeT-3で◯株を買い付ける」という発表を見たら、その数字は上限だと考えてください。実際に買えた株数は、上のJPXのページか、会社が開示する取得結果で確かめられます。

3種類の比較表

ここまでの仕様をまとめます。

項目 ToSTNeT-1
単一銘柄
ToSTNeT-1
バスケット
ToSTNeT-2
終値
ToSTNeT-3
自己株式
価格 直近値の上下7%以内 基準代金の上下5%以内 終値・VWAP 前日終値
最低数量 売買単位から 15銘柄・1億円以上 売買単位から 売買単位から
相手方 指定する 指定する 指定しない 発行会社が買う
成立の方法 条件の一致 条件の一致 時間優先 按分配分
主な用途 持ち合い解消・株式譲渡 ポートフォリオの入替 大口の売買 自社株買い

※ 制度の詳細は日本取引所グループ(JPX)の業務規程等で定められています。数値や取扱いは改正されることがあるため、実務でご利用の際は必ずJPXの公表資料で最新の内容をご確認ください。

2024年の取引時間延長で変わったこと

2024年11月5日、東京証券取引所は立会取引の時間を延長しました。後場の終了時刻が繰り下げられ、終値を決めるクロージング・オークションが導入されています。

この変更により、立会終了後に行われるToSTNeT取引の時間帯も見直されました。

時刻を調べるときの注意

・2024年11月より前に書かれた解説には、変更前の時刻が載っている
・「15時〜16時」と書かれていれば、それは延長前の情報
・正確な時間帯はJPXの公式サイトか、利用する証券会社の取扱時間で確認する

取引の構造(前日終値・前場終値・当日終値の3区分)自体は変わっていませんが、具体的な時刻は必ず一次情報で確認してください。

個人投資家との関わり

ToSTNeT取引そのものは、機関投資家や企業が使う仕組みです。個人が直接参加する機会はほとんどありません。

ただし間接的な関わりは3つあります。

① 自社株買いの開示を読むとき
「ToSTNeT-3により取得」とあれば、板の外で完結するため需給への直接効果は小さいと判断できる。
② 大株主の異動を追うとき
持ち合い解消や親会社の売却は ToSTNeT-1 で行われることが多い。市場での急落は避けられるが、保有構造は変わっている。
③ 立会外分売に申し込むとき
個人が参加できる立会外の制度はこちら。市場価格より割引された価格で買える。

③については立会外分売で申込みの手順をまとめています。個人がToSTNeTの世界に触れる唯一の実践的な接点がここです。

※ 本記事は制度の解説であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。制度の内容・数値・時間帯は改正されることがあります。実際のお取引にあたっては、日本取引所グループの公表資料と各証券会社の取扱いをご確認ください。

ToSTNeT取引に関してよくある質問

ToSTNeT-3の自社株買いは好材料ではないのですか?
自社株買いであること自体は株主還元として評価されます。ただし市場で買い付ける場合と違い、板に買い注文が入らないため株価を直接支える効果は小さくなります。開示を読むときは、取得方法が市場買付なのかToSTNeT-3なのかを確認すると、需給への影響を切り分けられます。

まとめ

この記事のまとめ

・ToSTNeTは東証が提供する立会外取引のシステム
・ToSTNeT-1(単一銘柄)は直近値の上下7%以内、相手方を指定する
・ToSTNeT-1(バスケット)は15銘柄以上かつ1億円以上、上下5%以内
・ToSTNeT-2(終値)は時間優先、ToSTNeT-3(自己株式)は按分配分
・ToSTNeT-3の自社株買いは板を通らないため需給への直接効果は小さい
・2024年11月の取引時間延長で時間帯が変わっているため、時刻は一次情報で確認する

開示で「ToSTNeT-◯」という表記を見たら、この記事の比較表に戻ってきてください。番号ひとつで、価格の決まり方も配分方法も変わります。

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