グランビルの法則とは、移動平均線と株価の位置関係から売買のタイミングを8つに分類したものです。買い4つ、売り4つで構成されます。

グランビルの法則の8つの売買点を株価推移と移動平均線で示した全体図

米国のジョセフ・グランビルが提唱したもので、移動平均線を使うテクニカル分析の基礎になっています。ただ、8つ全部を覚えても実際には使いこなせません。成立条件が重なるものや、判定が主観に寄るものが含まれているためです。

そこでこの記事では、8つを図で整理したうえで、日経平均株価で買いパターン①が実際に何回出て、その後どうなったかを実測しました。結果は、教科書に書かれている条件とは少し違うものになりました。

この記事でわかること

・8つの売買点それぞれの形と条件(図で解説)
実測:25日線の上抜けは102回。その後の勝率はどうだったか
25日線と75日線で結果が逆転するという事実
・移動平均線の期間と時間足の選び方
・8つのうち実務で使いやすいものと、使いにくいもの
・だましを減らすための条件

グランビルの法則とは?8つの売買点

この法則の前提は「株価は移動平均線から離れすぎると、いずれ戻ってくる」という性質です。移動平均線を基準線として、株価がそこからどう離れ、どう戻るかで場面を分類します。

番号 移動平均線の向き 株価の動き 狙い
買い① 下降から横ばい・上昇へ 線を下から上へ抜ける トレンド転換
買い② 上昇中 線を割るがすぐ戻る 押し目買い
買い③ 上昇中 線に近づくが割らずに反発 押し目買い
買い④ 下降中 線から大きく下に離れる 自律反発
売り① 上昇から横ばい・下降へ 線を上から下へ抜ける トレンド転換
売り② 下降中 線を超えるがすぐ戻る 戻り売り
売り③ 下降中 線に近づくが超えずに反落 戻り売り
売り④ 上昇中 線から大きく上に離れる 自律反落

注目してほしいのは買い④と売り④です。この2つだけ、移動平均線の向きと反対方向を狙う逆張りになっています。他の6つが順張り寄りなのに対し、④だけ性質が違います。ここが混乱の原因になりやすい部分です。

実際のチャートに8つを重ねると、次のようになります。

実際のチャート上にグランビルの法則の売買点を示した例

買いパターン①〜④

4つの違いは「株価が線に対してどこにいるか」だけです。終値で判定できる形に言い換えると次のようになります。

番号 終値での判定 判定の明確さ
買い① 前日は線の下、当日は線の上 一意に決まる
買い② 線を割った後、数日以内に線の上へ戻る ほぼ決まる
買い③ 線に近づいたが割らずに反発 「近づいた」の基準が必要
買い④ 線から下へ大きく離れた 「大きく」の基準が必要

買い①:移動平均線を下から上へ抜ける(トレンド転換)

下降していた移動平均線が横ばいから上向きに変わり、株価がその線を下から上へ抜ける形です。8つのなかで最も有名で、最も使われます。

移動平均線が横ばいに変わり株価が下から上へ抜ける買いパターン1の模式図

実際のチャートで移動平均線を上抜けた買いパターン1の場面

この形はゴールデンクロスと重なることが多く、実務ではセットで語られます。重要なのは線が下向きのままではないことです。

買い②:線を割るがすぐ戻る(押し目買い)

移動平均線が上昇しているときに、株価が一時的に線を下回り、すぐに戻る形です。上昇トレンドの途中の押し目を拾います。

上昇中の移動平均線を株価が一時的に割り込み再び戻る買いパターン2の模式図

実際のチャートで移動平均線を割ってから戻した押し目買いの場面

買い③:線に触れずに反発(押し目買い)

株価が移動平均線の上にあり、線に近づくものの割り込まずに再び上昇する形です。買い②より上昇の勢いが強い状態を表します。

移動平均線に接近するが割らずに反発する買いパターン3の模式図

実際のチャートで移動平均線を割らずに反発を繰り返した場面

買い②と買い③は「線を割ったか、割らなかったか」だけの違いです。実際のチャートでは終値で割ったかどうかで判定します。

買い④:線から大きく下に離れる(自律反発)

移動平均線が下降しているときに、株価が線から大きく下へ離れた場面を狙う逆張りです。

下降する移動平均線から株価が大きく下に離れた買いパターン4の模式図

実際のチャートで移動平均線から大きく下方に乖離した場面

この形だけは下降トレンドの中での買いになるため、8つのなかで最も難易度が高くなります。どこまで離れたら「大きく」なのかの基準もありません。判定には移動平均乖離率を併用するのが実務的です。

売りパターン①〜④

売りは買いの鏡像です。ただし使う目的が2つに分かれます。保有株を手放すために使うのか、空売りで利益を狙うために使うのかで、必要な準備が変わります。

番号 終値での判定 保有株の手仕舞いに使えるか
売り① 前日は線の上、当日は線の下 使いやすい
売り② 線を超えた後、数日以内に線の下へ戻る すでに売った後の局面
売り③ 線に届かずに反落 同上
売り④ 線から上へ大きく離れた 一部の利益確定に使える

売り①:線を上から下へ抜ける(トレンド転換)

上昇していた移動平均線が横ばいから下向きに変わり、株価が線を上から下へ抜ける形です。買い①の反対で、デッドクロスと重なることが多くなります。

移動平均線が下向きに変わり株価が上から下へ抜ける売りパターン1の模式図

実際のチャートで移動平均線を下抜けてから下降トレンドに入った場面

売り②:線を超えるがすぐ戻る(戻り売り)

移動平均線が下降しているときに、株価が一時的に線を上回るものの、再び下落する形です。

下降中の移動平均線を株価が一時的に超えるが再び下落する売りパターン2の模式図

実際のチャートで移動平均線を一時的に超えた後に下落した場面

売り③:線に届かずに反落(戻り売り)

株価が移動平均線の下にあり、線に近づくものの超えられずに再び下落する形です。売り②より下落の勢いが強い状態です。

移動平均線に届かずに反落する売りパターン3の模式図

実際のチャートで移動平均線に届かず反落を繰り返した場面

売り④:線から大きく上に離れる(自律反落)

移動平均線が上昇しているときに、株価が線から大きく上へ離れた場面を狙う逆張りです。

上昇する移動平均線から株価が大きく上に離れた売りパターン4の模式図

実際のチャートで移動平均線から大きく上方に乖離した場面

買い④と同じく、この形も上昇トレンドに逆らう取引になります。上昇が続けば損失は青天井になるため、撤退価格を決めずに使ってはいけない形です。

【実測】買い①は本当に機能するのか

ここからがこの記事の中心です。最も使われる買い①について、日経平均株価で実際に検証しました。

条件は単純です。前日の終値が25日移動平均線の下、当日の終値が上になった日を買い①の発生とみなし、その後の株価を追いました。

項目 実測値
対象期間 2019年1月〜2026年8月(1,866営業日)
25日線の上抜け 102回(約18営業日に1回)
5営業日後に株価が上 62.4%(63/101)
20営業日後に上 57.1%(56/98)
60営業日後に上 57.1%(56/98)

5営業日後で62.4%、20営業日後で57.1%です。五分よりは良いものの、「これを見れば勝てる」という水準ではありません。

次に、教科書が重視する条件を加えてみます。買い①の定義には「移動平均線が下降から横ばい・上昇に転じていること」という条件があります。線の向きで分けた結果がこれです。

上抜けたときの25日線の向き 回数 20営業日後に上
上向き(教科書が推奨) 49回 55.1%
下向き 49回 59.2%

線が下向きのときのほうが、わずかに成績が良いという結果になりました。教科書の条件と逆です。

ただし各49回というサンプル数では、この4ポイントの差に意味があるとは言えません。正しい読み方は「線の向きで有意な差は出なかった」です。条件を足せば精度が上がる、という思い込みは実測で確かめる価値があります。

期間を変えると結果が逆転する

同じ検証を75日移動平均線で行うと、様子が変わります。

移動平均線 上抜け回数 5営業日後 20営業日後 60営業日後
25日線 102回 62.4% 57.1% 57.1%
75日線 65回 45.3% 46.8% 59.7%

25日線は短期(5営業日)で成績が良く、時間が経つほど落ちます。75日線は逆で、短期では五分以下なのに、60営業日後には59.7%まで上がります

この2つの表から読み取れること

・グランビルの法則は「どの期間の線を使うか」で性質が変わる
・短い線は早く反応するが持続しない/長い線は遅いが持続する
・つまり線の期間と、自分が持つ期間を合わせることが前提になる

25日線のサインで買って3か月持つ、75日線のサインで買って1週間で売る、という組み合わせは、この数字の上では分が悪くなります。

移動平均線の期間と時間足の選び方

実測を踏まえると、選び方の指針は単純になります。

保有する期間 使う時間足 移動平均線の期間
数日〜2週間 日足 5日・25日
数週間〜数か月 日足 25日・75日
半年〜数年 週足 13週・26週
1日で完結 5分足・1時間足 その時間足の20本・50本

期間の意味そのものは単純移動平均線の記事で解説しています。途中で期間を変えないことが、この法則を使ううえでの最低条件になります。

8つのうち実務で使いやすいのはどれか

8つは対等ではありません。判定の明確さと難易度で分けると、実際に使う順番が見えてきます。

判定しやすい(使いやすい)
買い①・売り①(線を抜けたかどうかで一意に決まる)
買い②・売り②(割った・超えたで判定できる)
判定が主観に寄る(難しい)
買い③・売り③(どこまで近づけば「接近」か基準がない)
買い④・売り④(どこまで離れれば「大きく」か基準がない)

③と④を使う場合は、自分で数値の基準を決める必要があります。たとえば③なら「線から2%以内に近づいた」、④なら「乖離率が10%を超えた」のように、あらかじめ数字で定義しておきます。

基準を決めずに③④を使うと、あとから「あれは買い④だった」と説明できるだけで、事前には判断できません。

だましを減らす3つの条件

実測のとおり、単独の勝率は6割前後です。条件を絞ることで、見送るべき場面を減らせます。

条件 見るところ
終値で判定する ザラ場で一時的に抜けただけの動きを除外できる
出来高が増えている 新しい買い手が実際に入っているかを確認する
長い線と方向が一致している 25日線のサインなら75日線の向きも見る

3つ目は、実測で25日線と75日線の性質が違ったことの裏返しです。短い線のサインが長い線の方向と逆を向いているときは、トレンドに逆らう取引になります。

そして条件をいくつ足しても、外れる場面は必ず残ります。撤退価格を決めることが、条件を増やすことより優先されます。

グランビルの法則に関するよくある質問

8つ全部を覚える必要がありますか?
実務では①と②から始めるのが現実的です。①(線を抜ける)と②(割ってすぐ戻る)は終値で一意に判定できますが、③(線に接近するが割らない)と④(線から大きく離れる)は「どこまで近づけば」「どこまで離れれば」の基準がありません。③④を使うなら、乖離率などで自分の数値基準を先に決めておく必要があります。
移動平均線は何日に設定すればよいですか?
自分が保有する期間に合わせます。実測では、25日線の上抜けは5営業日後の勝率が62.4%と高い一方、60営業日後は57.1%に下がりました。75日線は逆で、5営業日後が45.3%なのに60営業日後は59.7%です。短い線は早く反応するが持続せず、長い線は遅いが持続するという性質があるため、線の期間と持つ期間を合わせることが前提になります。
買い①はどのくらい当たりますか?
日経平均で2019年1月から2026年8月までを検証したところ、25日線の終値での上抜けは102回発生し、5営業日後に株価が上だったのは62.4%、20営業日後は57.1%でした。五分よりは良い水準ですが、これだけで利益が出る数字ではありません。1回あたりの利益と損失の大きさをどう管理するかのほうが結果を左右します。
「移動平均線が上向きに転じてから」という条件は必要ですか?
検証では明確な差が出ませんでした。25日線を上抜けた102回を線の向きで分けると、上向きのとき49回で20営業日後の勝率55.1%、下向きのとき49回で59.2%でした。むしろ下向きのほうがわずかに良い結果です。ただし各49回では差に意味があるとは言えないため、正しくは「線の向きによる有意な差は確認できなかった」となります。条件を足せば精度が上がるとは限りません。
買い④(自律反発狙い)は使えますか?
8つのなかで最も難易度が高い形です。下降トレンドの中で買うため、下げが続けば損失が拡大し続けます。使う場合は「乖離率が何%を超えたら」という数値基準と、「どこまで下がったら撤退するか」の価格を必ず先に決めてください。基準がないまま使うと、下げるほど買い増して資金が尽きる展開になりやすくなります。
ゴールデンクロスとの違いは何ですか?
ゴールデンクロスは2本の移動平均線が交差することを指し、グランビルの買い①は株価と1本の移動平均線の関係を見ます。実際には同じ場面で両方が成立することが多いのですが、判定の対象が違います。株価は移動平均線より先に動くため、グランビルの買い①のほうが早くサインが出る、という関係になります。
個別株でも同じ結果になりますか?
今回の検証は日経平均という指数を対象にしたものです。指数は多数の銘柄の平均なので値動きが滑らかになり、移動平均線が機能しやすくなります。個別株は決算や材料で急に動くため、線を何度も抜けたり戻ったりする「だまし」が指数より多くなります。この62.4%という数字を個別株にそのまま当てはめないでください。
グランビルの法則が機能しにくい相場はありますか?
方向感がなく、株価が移動平均線をまたいで上下するもみ合い相場です。この局面では買い①と売り①が交互に何度も出て、そのたびに損失が積み上がります。移動平均線がほぼ水平になっているときは、この法則が向いていない相場だと判断する材料になります。線の傾きを先に確認する習慣をつけてください。

まとめ

グランビルの法則の3行まとめ

・移動平均線と株価の関係を8つに分類したもの。④だけが逆張り
・実測では25日線の上抜けは102回、5営業日後の勝率62.4%
25日線と75日線で性質が逆。線の期間と持つ期間を合わせるのが前提

グランビルの法則は、移動平均線の使い方を体系化した点に価値があります。ただし8つを暗記しても、判定基準が主観に寄るものが半分含まれているため、そのままでは使えません。

実測して分かったのは、勝率が6割前後だということと、線の期間を変えると性質が逆転するということでした。条件を足して精度を上げるより、期間の選び方を自分の投資期間に合わせるほうが効きます。

次にチャートを開いたら、サインを探す前に移動平均線が何日で設定されているかを確認してみてください。そこが合っていないと、8つのどれを覚えても噛み合いません。

※ 本記事の検証は日経平均株価の日足終値をもとに2026年8月28日時点で行ったものです。将来の値動きを保証するものではありません。テクニカル分析の解説を目的としており、特定の銘柄の売買や投資手法を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

スポンサーリンク

Xでフォローしよう

おすすめの記事