運・鈍・根とは、相場で成功するために必要な3つの要素として「運(めぐりあわせ)」「鈍(動じない鈍感さ)」「根(続ける根気)」を挙げた相場格言です。

読み方は「うん・どん・こん」です。もとは事業や人生訓として使われてきた言葉で、相場の世界にも引き継がれました。

3つのうち「運」を最初に置いている点が、この格言の特徴です。実際に運がどれだけ効くのかを、日経平均株価で計算しました。10年間持ち続けた場合、2006年以降を起点にすると勝率は98.5%でしたが、1985年以降のすべての起点で見ると49.3%でした。同じ「10年持つ」でも、いつ始めたかで結果がまったく違います。

この記事でわかること

・運・鈍・根それぞれの意味と、相場での読み替え方
実測:保有期間を延ばすと勝率はどう変わるか(1985年以降・2006年以降)
実測が示す「根だけでは足りない」という結論
・運に左右される幅を小さくする3つの方法
・「鈍」を誤解すると何が起きるか

運・鈍・根とは

項目 内容
読み方 うん・どん・こん
意味 成功に必要な3要素を「運・鈍・根」の順に並べたもの
由来 事業や人生訓として使われてきた言葉。相場でも引用される
別の呼び方 運鈍根(うんどんこん)、運・鈍・根の三要素
近い格言 休むも相場相場は相場に聞け眠られぬ株は持つな

3つの要素を相場に置き換えると、次のようになります。

運|めぐりあわせ
いつ始めたか、どの局面に当たったか。自分では選べない部分。
鈍|動じないこと
日々の値動きや情報に反応しすぎない。売買の回数を増やさない。
根|続けること
相場から降りずに続ける。時間を味方にする。

注目したいのは順番です。努力でどうにかなる「鈍」と「根」より先に、どうにもならない「運」が置かれています。これが誇張なのか、それとも実態に合っているのかを数字で確認します。

【実測】保有期間を延ばすと勝率はどう変わるか

ここからがこの記事の中心です。「根」=長く持ち続けることの効果を、日経平均株価で計算しました。

検証の条件

すべての営業日を起点として、そこからN営業日後の騰落を調べる
・「勝率」は、N営業日後に買ったときより上がっていた起点の割合
・配当は含めていない(含めればどの期間も結果は改善する)
・対象:日経平均株価の日足終値(1985年1月〜2026年8月28日・10,231営業日)

まず、1985年以降のすべての起点で計算した結果です。

保有期間 勝率 平均 最悪 最良
1日 51.9% 0.0% −14.9% +14.2%
1か月 55.9% +0.5% −39.8% +28.0%
1年 58.1% +6.5% −57.4% +88.9%
3年 58.8% +16.3% −62.9% +151.6%
5年 52.6% +19.9% −56.4% +221.1%
10年 49.3% +32.7% −60.5% +347.9%
20年 51.4% +45.9% −75.8% +365.3%

10年持っても勝率は49.3%、20年でも51.4%でした。期間を延ばすほど勝率が上がるという結果には、まったくなっていません。

この期間にはバブル期のピークが含まれています。1989年末に買った人は、10年後も20年後も損失を抱えたままでした。「長く持てば報われる」という言葉が、日本株では成立しない時期があったことを示しています。

起点を変えると結果が逆転する

同じ計算を、2006年以降の起点に限って行うと、まったく違う数字が出ます。

保有期間 1985年以降
の勝率
2006年以降
の勝率
1か月 55.9% 58.1% +2.2
1年 58.1% 63.3% +5.2
3年 58.8% 79.6% +20.8
5年 52.6% 85.0% +32.4
10年 49.3% 98.5% +49.2

10年保有の勝率は、49.3%から98.5%へ変わりました。保有期間も、手法も、銘柄もまったく同じです。違うのは「いつ始めたか」だけです。

この差が「運」の正体
2006年以降を起点にした場合の10年保有は、平均で+130.0%、最悪でも−14.3%だった。
1985年以降のすべての起点では、平均+32.7%、最悪−60.5%。

同じ「10年続けた」という行動が、始めた時期によって別の結果になる。
これは努力や判断で埋められる差ではない。

格言が「運」を最初に置いているのは、精神論ではなく実態に合っていたことになります。

それでも「根」に意味がある理由

ここで注意したいのは、この数字が「長期投資には意味がない」ことを示しているわけではないという点です。

読み取れること 内容
勝率は上がらないが、平均は上がる 1985年以降でも、1日の平均0.0%に対し10年は+32.7%、20年は+45.9%
短期はほぼコイン投げ 1日保有の勝率は51.9%。手数料を引けば期待値はマイナスに近づく
上振れは長期でしか出ない 最良の結果は1日で+14.2%、10年で+347.9%

2行目と3行目が「鈍」と「根」の裏づけになります。短期の売買を繰り返しても、1回ごとの勝率は五分に近く、そこにコストが乗ります。一方、大きな上昇を取れるのは長く持った場合だけです。

なお、この検証には配当が含まれていません。配当を再投資していれば、どの期間も結果は表より良くなります。「根」の効果は、実際にはこの表よりやや大きいことになります。

運に左右される幅を小さくする3つの方法

「運」は選べませんが、運の影響を受ける幅は設計できます。

方法 内容
入る時期を分ける 一度に全額を入れず、時間をかけて買う。起点が1点に集中しなくなる
対象を分ける 1つの市場に集中しない。日本株だけなら、日本株の局面がそのまま結果になる
使う時期を分ける 全額を同じ時期に取り崩さない。出口の運も分散できる

1つ目の考え方はドルコスト平均法、2つ目はポートフォリオの記事で解説しています。

3つ目は見落とされやすい点です。買う時期を分散しても、売る時期が1点に集中していれば、出口の局面がそのまま結果になります。取り崩しの計画も、入口と同じくらい結果を左右します。

「鈍」を誤解すると何が起きるか

3要素のうち、最も誤解されやすいのが「鈍」です。

正しい「鈍」
日々の値動きに反応して売買しない
決めたルールの外では動かない。
情報を追う頻度を意図的に下げる。
誤解された「鈍」
業績が悪化しても何も確認しない
含み損を見ないようにする。
決めたルールも実行しない。

「鈍」は情報を遮断することではなく、反応の回数を減らすことです。企業の業績が変わったのに何もしないのは、鈍感さではなく確認の放棄にあたります。

含み損を見ないようにする行動については意地商いは破滅の因、決めたルールを実行する話は見切り千両の記事にまとめています。

なぜ「鈍」が効くのか|回数とコストの関係

実測では、1日保有の勝率が51.9%、平均が0.0%でした。ここに売買のコストが乗ります。

1回あたりのコストが小さく見えても、回数が増えると積み上がります。

1回あたりのコスト 年12回売買 年50回売買 年200回売買
0.05% 0.6% 2.5% 10.0%
0.1% 1.2% 5.0% 20.0%
0.2% 2.4% 10.0% 40.0%

※ 1回あたりのコストは、手数料に加えて売買時の価格差(スプレッド)も含めた概算です。国内株式の売買手数料は証券会社によって無料の場合もあります。

勝率が五分に近い行動を、コストを払って繰り返すと、回数そのものが損失になります。これが「鈍」=反応の回数を減らすことに意味がある理由です。

加えて、利益が出た取引には税金がかかります。売買を繰り返すと、その都度課税されて再投資に回せる金額が減ります。この点はリバランスの記事でも解説しています。

3つの要素を自分の投資に当てはめる

運・鈍・根は精神論として語られがちですが、確認できる形に落とせます。

3要素のチェックリスト

|買う時期は1点に集中していないか/対象は1つの市場だけになっていないか/取り崩す時期を分けられるか

|年に何回売買しているか数えたことがあるか/株価を見る回数を決めているか/決めたルールの外で売買していないか

|この資金は10年間手を付けなくても困らないか/続けられない金額になっていないか

「鈍」の1つ目は、実際に数えてみると印象と違うことがあります。年に何回売買したかは、証券会社の取引履歴で確認できます。回数が多いと感じたなら、精度を上げるより先に回数を減らすほうが効きます。

「根」の項目は、意志ではなく金額の問題です。実測で確認したとおり、10年保有の最悪値は−60.5%でした。その状態でも生活に影響しない金額かどうかが、続けられるかどうかを決めます。

デメリットと注意点

注意点 内容
指数と個別銘柄は違う この検証は日経平均。個別銘柄には上場廃止があり、戻らない結末がある
配当を含んでいない 配当込みなら数字は改善する。指数の水準だけでは実態を過小評価する
過去の期間に依存する 起点を変えれば結果が変わることは、この検証自体が示している
「運」は言い訳にもなる 検証や見直しを避ける理由に使えてしまう
長期保有には資金の条件がある 途中で取り崩す必要がある資金では、最悪の時期に売ることになる

4つ目は自覚しておく価値があります。結果が悪かったときにすべてを「運」で説明すると、改善できる部分まで見えなくなります。運が効くのは起点と局面であって、資金配分や売買回数は自分で決められる部分です。

5つ目は最も実務的な条件です。1985年以降の検証では、10年保有の最悪値が−60.5%でした。その期間に取り崩す必要が出れば、そこで確定するのはその損失です。「根」を発揮できるかどうかは、意志ではなく資金の性質で決まります。

よくある質問

なぜ「運」が最初に置かれているのですか?
実測でも、始めた時期による差が最も大きく出ています。日経平均を10年保有した場合の勝率は、1985年以降のすべての起点では49.3%、2006年以降の起点では98.5%でした。保有期間も手法も同じで、違うのは始めた時期だけです。この差は努力や判断で埋められる幅を超えています。格言が「運」を最初に置いているのは、実態に合った並び方だといえます。
10年持っても勝率が49.3%なら、長期投資は無意味ですか?
勝率は上がりませんでしたが、平均のリターンは上がっています。1985年以降でも、1日保有の平均0.0%に対し、10年保有は+32.7%、20年保有は+45.9%でした。また最良の結果は1日で+14.2%、10年で+347.9%と大きく違います。長く持つことの効果は勝率ではなく、上振れの幅と平均に表れます。加えてこの検証には配当が含まれていないため、配当込みなら結果はさらに改善します。
「鈍」とは何も考えないことですか?
違います。「鈍」は日々の値動きや情報に反応して売買しないという意味で、確認しないという意味ではありません。企業の業績が変わったのに何もしないのは、鈍感さではなく確認の放棄です。反応の回数を減らすことと、状況を把握しないことは別の行動です。決めたルールの範囲では動き、それ以外では動かないというのが実務的な形になります。
運の影響を減らすことはできますか?
起点を1点に集中させないことで、影響の幅は小さくできます。具体的には、一度に全額を入れずに時間をかけて買う、1つの市場に集中しない、そして取り崩す時期も分散する、という3つです。3つ目は見落とされやすい点で、買う時期を分けても売る時期が1点に集中していれば、出口の局面がそのまま結果になります。
この検証は個別銘柄にも当てはまりますか?
当てはまりません。この検証は日経平均という指数で行ったものです。指数は構成銘柄が入れ替わるため、業績が悪化した企業は外れていきます。一方、個別銘柄には上場廃止や無配転落という結末があり、戻らない可能性があります。指数で成立した「長く持てば平均は上がる」という結果を、そのまま1銘柄に当てはめることはできません。
短期売買は不利ということですか?
実測では、1日保有の勝率は51.9%、平均は0.0%でした。ここに売買手数料が加わるため、繰り返すほど期待値は下がります。ただしこれは指数を機械的に保有した場合の数字であり、特定の手法を否定するものではありません。読み取れるのは、方向を当てること自体には統計的な優位がほとんどないという点です。
バブル期に買った人はどうなったのですか?
日経平均は1989年12月29日に38,915円をつけ、その水準を回復したのは2024年2月でした。約34年かかっています。10年保有の最悪値が−60.5%、20年保有の最悪値が−75.8%という数字は、この期間を含んだ結果です。長期保有が常に報われるとは限らないことを示す実例になっています。
「根」を発揮するために必要なことは何ですか?
意志よりも資金の性質です。実測では10年保有の最悪値が−60.5%でした。その期間に生活費や教育費として取り崩す必要があれば、最も安い時期に売ることになります。何年間まったく手を付けなくても困らない資金かどうかを、始める前に確認しておくことが前提になります。続けられる金額に抑えることが、続けるための条件です。

まとめ

運・鈍・根|3行まとめ

・実測では10年保有の勝率が起点しだいで49.3%にも98.5%にもなった
・「根」で上がるのは勝率ではなく平均リターンと上振れの幅
・「鈍」は情報を遮断することではなく反応の回数を減らすこと

この格言が「運」を最初に置いているのは、諦めを勧めているからではありません。自分で決められる部分と、決められない部分を分けておくためです。

実測が示したのは、始めた時期という決められない部分が結果に大きく効くという事実でした。だからこそ、決められる部分の設計が意味を持ちます。入る時期を分ける、対象を分ける、出る時期を分ける。どれも運を良くする方法ではなく、運に左右される幅を狭める方法です。

そのうえで、最後に確認しておきたいことがあります。いま持っている資産は、10年間まったく手を付けなくても困らない資金でしょうか。「根」を発揮できるかどうかは、そこで決まります。

※ 本記事の検証は日経平均株価の日足終値をもとに2026年8月28日時点で行ったものです。配当は含めていません。指数での検証であり、個別銘柄には上場廃止など指数にはないリスクがあります。過去の期間の集計であり、将来の値動きを保証するものではありません。特定の銘柄や投資手法を推奨するものでもありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

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