減資とは、資本金の額を減らすことです。ほとんどの場合、会社の現金は1円も減りません。

ここが最も誤解されるところです。減資と聞くと会社が縮小するように見えますが、実際は帳簿上の科目を振り替えているだけのケースが大半です。

それでも減資が話題になるのは、資本金を1億円以下にすると税制上の扱いが変わるためです。ただしこの手法には、2025年4月以後に始まる事業年度から制限が入りました。

この記事でわかること

・無償減資と有償減資の違い(貸借対照表で確認)
・無償減資で会社の現金が減らない理由
・資本金1億円以下にすると何が変わるのか
・2025年度から適用された外形標準課税の見直し
・100%減資で株主の価値がどうなるか
・減資と自己株式の消却はどう違うか

減資とは?まず結論から

減資(読み方:げんし)

減資とは、貸借対照表の「資本金」の金額を減らす手続きです。減らした分は、繰越欠損金の補填に充てるか、その他資本剰余金へ振り替えるか、株主へ払い戻します。

減資は2種類に分かれ、会社の財産が減るかどうかで区別されます。

無償減資
現金は動かない
名義上の減資
大半はこちら
有償減資
現金が出ていく
実質上の減資
株主へ払い戻す

ニュースで見る減資は、ほとんどが無償減資

資本金を増やす増資とは逆の手続きですが、増資と違って発行済株式数は変わりません。株数が変わらないので、持株比率も1株あたりの価値も原則として動きません。

無償減資と有償減資の違い

貸借対照表がどう変わるかを見ると、違いがはっきりします。

【無償減資】資本金400・繰越欠損金△100 → 資本金300

減資前
現金
500
負債
200
資本金 400
欠損金 △100
減資後
現金
500
負債
200
資本金
300

現金500は変わらない。資本金と欠損金を相殺しただけ

【有償減資】資本金300のうち100を株主へ払い戻す

減資前
現金
500
負債
200
資本金
300
減資後
現金
400
負債
200
資本金
200

現金が100減って株主に渡る。会社の財産が実際に減る

項目 無償減資 有償減資
会社の現金 変わらない 減る
株主への支払い なし あり
主な目的 欠損の補填・税制上の区分変更 余剰資金の返還・事業規模の縮小
実施件数 多い 少ない
発行済株式数 変わらない 変わらない

無償減資で現金が減らない理由

資本金は「会社が過去に集めたお金の記録」であって、金庫に入っている現金そのものではありません。

集めた資金はすでに設備や在庫、人件費に使われています。資本金の数字を減らしても、使い終わった記録の表示が変わるだけです。

だから無償減資は、株主から見て次のような性質を持ちます。

無償減資で変わること・変わらないこと

変わらないもの
・会社の現金と総資産
・発行済株式数
・持株比率
・1株あたり純資産(BPS)
・純資産の合計額

変わるもの
・資本金の額(登記事項)
・繰越欠損金の表示
・税制上の会社区分

純資産の合計が変わらないため、PBRにも影響しません。無償減資そのものは、企業価値に対して中立だと理解しておいてください。

なぜ資本金を1億円以下にするのか

減資が実際に行われる最大の理由がこれです。法人税法では資本金1億円以下の会社が中小企業として扱われ、複数の優遇を受けられます。

項目 資本金1億円超 資本金1億円以下
外形標準課税 対象(赤字でも課税) 原則として対象外
法人税の軽減税率 適用なし 所得800万円以下の部分に適用
交際費 損金算入に制限 年800万円まで損金算入できる
欠損金の繰越控除 所得の50%まで 全額を控除できる

とくに大きいのが外形標準課税です。これは所得ではなく、事業規模(付加価値額や資本金等)に応じて課税される地方税で、赤字でも納税が発生します。

業績が悪化した企業が減資に踏み切るのは、この負担を外すためです。実際、2020年から2021年にかけて、大手企業が資本金を1億円まで減らす事例が相次ぎました。

2025年度から抜け道が塞がれた

資本金だけを1億円以下にして外形標準課税を回避する動きが広がったため、制度が見直されました。

令和6年度税制改正による見直し

2025年4月1日以後に開始する事業年度から

資本金1億円以下であっても、
前事業年度に外形標準課税の対象だった法人で、
資本金と資本剰余金の合計が10億円を超える場合は、
引き続き外形標準課税の対象となる

つまり資本金を資本剰余金に振り替えただけの減資では、課税を逃れられなくなりました。資本金と資本剰余金の合計で判定されるためです。

この改正により、税負担だけを目的とした減資のメリットは大きく減りました。今後「減資を実施」という開示を見たときは、税務目的なのか、欠損の補填なのか、目的を確認する必要があります。

※ 具体的な適用関係は個別の事情によって異なります。税務上の判断は税理士等の専門家にご確認ください。

減資の手続きと日程

減資は債権者にも影響するため、会社が自由に決められる手続きではありません。

① 株主総会の特別決議
出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要(欠損補填のための減資など、一部は普通決議で足りる場合がある)。
② 債権者保護手続き
官報に公告し、債権者に個別に通知する。異議を述べる期間として1か月以上を設ける必要がある。
③ 効力発生
決議で定めた日に効力が生じる。異議を述べた債権者には弁済や担保提供が必要になる。
④ 変更登記
資本金の額は登記事項なので、効力発生後に登記を変更する。

債権者保護手続きに1か月以上かかるため、決議から効力発生まで最短でも1か月半程度を要します。決算期をまたいで実施されることが多いのはこのためです。

100%減資と株主の価値

減資のなかで株主に致命的な影響を与えるのが100%減資です。

これは既存の株式をすべて無価値にして消滅させる手続きで、会社更生法や民事再生法の適用を受けた企業の再建過程で行われます。

段階 何が起きるか
① 経営破綻 会社更生法などの適用を申請する
② 上場廃止 整理銘柄を経て市場での売買ができなくなる
③ 100%減資 既存株式が消滅し、株主の権利はゼロになる
④ 新株発行 スポンサー企業が新たに出資して再建する

この場合、株主には何も残りません。会社の財産はまず債権者への弁済に充てられ、株主は最後尾に置かれるためです。株式が債券より高いリスクを負うのは、この順序によります。債券との違いはここにあります。

破綻の予兆は、疑義注記(継続企業の前提に関する注記)で確認できます。

減資と自己株式の消却の違い

どちらも「資本を減らす」ように見えますが、対象も効果もまったく違います。

項目 減資 自己株式の消却
減らすもの 資本金の額 発行済株式数
発行済株式数 変わらない 減る
資本金 減る 変わらない
EPSへの影響 なし 取得時点で反映済み
主な受け止め方 中立(目的による) 株主還元として好感されやすい

混同されやすいのは、どちらも純資産の内訳が変わるだけで、会社の現金は動かない点が共通しているためです。株数が減るかどうかで区別してください。

減資が株価に与える影響と注意点

減資の発表で株価が動くのは、減資そのものではなく、その背景にある事情が読み取れるためです。

減資の開示で確認すること

目的は何か:欠損の補填/税務上の区分変更/株主への払い戻し
減資後の資本金はいくらか:1億円ちょうどなら税務目的の可能性が高い
繰越欠損金はどれだけあるか:補填が必要なほど累積赤字が大きいということ
有償か無償か:有償なら現金が実際に出ていく
同時に増資を行っていないか:減資と増資をセットで行う再建策がある

最後の点は重要です。減資と第三者割当増資を同時に行う場合、既存株主の持分は大きく薄まります。減資は中立でも、セットの増資で希薄化が起きるためです。開示は必ず全文を確認してください。

※ 本記事は制度と開示の読み方を解説したもので、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。税制の適用関係は個別の事情や改正により変わります。実際の判断にあたっては各社の開示資料を確認し、税務については税理士等の専門家にご相談ください。

減資に関してよくある質問

減資が発表されたら株を売るべきですか?
目的によります。無償減資であれば会社の財産も株数も変わらないため、それ自体は中立です。ただし欠損の補填が目的なら累積赤字が大きいということであり、業績の実態を確認する必要があります。減資と同時に増資が発表されている場合は、希薄化の影響を計算してから判断してください。
減資をすると株数は減りますか?
減りません。減るのは資本金の額だけで、発行済株式数はそのままです。株数を減らしたい場合は株式併合、市場から買い戻して減らしたい場合は自己株式の取得と消却という別の手続きになります。
資本金が減ると会社の信用は落ちますか?
取引先の与信判断で資本金が参照されることはありますが、財務の実態は純資産や自己資本比率で見るのが一般的です。資本金1億円は税制上の区分であり、事業規模を示すものではありません。実際に売上高が数千億円ある企業でも資本金1億円という例があります。
有償減資と配当はどう違いますか?
どちらも株主に現金が渡りますが、原資が違います。配当は利益剰余金から支払われるのに対し、有償減資は資本金を原資とします。税務上の取扱いも異なり、資本の払戻しに該当する部分は配当所得とみなされる部分と譲渡所得として扱われる部分に分かれます。取扱いは複雑なので税理士にご確認ください。
100%減資になったら株はどうなりますか?
株式は消滅し、価値はゼロになります。会社更生手続きなどでは、まず債権者への弁済が優先され、株主には何も残らないのが通常です。上場廃止の前に整理銘柄期間があるため、その間に市場で売却すればわずかでも回収できる可能性はありますが、株価は極端に低い水準になります。
なぜ2025年度から制度が変わったのですか?
資本金を1億円以下に減らして外形標準課税を回避する動きが広がり、課税の公平性が問題になったためです。令和6年度税制改正により、2025年4月1日以後に開始する事業年度からは、資本金と資本剰余金の合計が10億円を超える場合、前年度に対象だった法人は引き続き課税対象となります。資本金だけを見た判定ではなくなりました。
減資の情報はどこで確認できますか?
上場企業であれば適時開示(TDnet)で「資本金の額の減少に関するお知らせ」として公表されます。決議の内容、減資の額、効力発生日、目的が記載されています。官報にも債権者保護のための公告が掲載されます。減資後の資本金額と目的を必ず確認してください。
減資で株主が手続きをする必要はありますか?
無償減資では株主が行う手続きはありません。株数も持株比率も変わらないためです。有償減資で払い戻しを受ける場合は、通常の配当と同様に指定した口座へ入金されます。ただし税務上の取扱いが配当と異なることがあるため、確定申告が必要かどうかは証券会社の交付する書類で確認してください。

まとめ

この記事のまとめ

・減資とは資本金の額を減らす手続き。発行済株式数は変わらない
無償減資では会社の現金は1円も減らない(帳簿上の振替)
・有償減資は株主に払い戻すため、実際に会社の財産が減る
・資本金1億円以下にすると外形標準課税などの負担が軽くなる
2025年4月以後開始の事業年度からは、資本金+資本剰余金が10億円超なら対象のまま
・100%減資では既存株式が消滅し、株主の価値はゼロになる

減資の開示を見たら、まず「無償か有償か」と「減資後の資本金がいくらか」を確認してください。1億円ちょうどなら税務目的、欠損補填なら業績の確認が必要、という判断ができます。

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