スクリーニングとは、条件を指定して、その条件に合う銘柄だけを絞り込むことです。日本の上場企業は約4,000社あり、全部を見ることは現実的に不可能です。

ただし条件の付け方を間違えると、「数字は良いのに買ってはいけない銘柄」ばかりが並びます。

この記事では、条件の決め方と目的別の設定例、そして抽出結果を鵜呑みにしてはいけない理由を解説します。

この記事でわかること

・どの条件から設定すればいいのか
・割安株・成長株・高配当株それぞれの設定例
・低PERで抽出すると危ない銘柄が並ぶ理由
・0件になったときにどこを緩めるか
・抽出した後に必ず確認すべき3つのこと

スクリーニングとは

スクリーニング(読み方:すくりーにんぐ)とは、条件指定検索・絞り込み検索のことです。英語の screen には「ふるいにかける」という意味があります。

スクリーニングの位置づけ
約4,000社 → 条件で絞る → 20〜50社 → 1社ずつ調べる → 数社
スクリーニングは「調べる対象を減らす作業」であって、銘柄を選ぶ作業ではありません。

ここを取り違えると失敗します。抽出結果の上位から順に買っていく、という使い方をしてはいけません。

スクリーニングでできること・できないこと

できること

・数字で表せる条件での絞り込み
・複数条件の組み合わせ
・自分の投資対象を機械的に限定する
・「そもそも知らなかった企業」との出会い

できないこと

・ビジネスモデルの良し悪しの判断
・経営者や企業風土の評価
・数字が良い「理由」の解明
・将来の株価予想

右側はすべて自分の目で確かめるしかない領域です。スクリーニングはそこへ行き着くまでの時間を短縮する道具にすぎません。

どこでスクリーニングできるか

場所 特徴 費用
証券会社のツール 条件が細かい。テクニカル指標も併用できるものが多い 口座があれば無料
金融情報サイト 口座がなくても使える。条件の数は限られることが多い 無料〜
企業分析専用ツール 過去10年分の業績推移などで絞り込める 無料〜有料

どれを使うかより条件をどう設計するかのほうが結果に効きます。同じ条件を入れれば、どのツールでもほぼ同じ銘柄が出てくるためです。

条件を決める前に決めること

いきなり数値を入力する前に、自分が何を探しているのかを言葉にしてください。

先に決める3つ
保有期間 数日か、数年か。これで見る指標がまったく変わる
狙う利益 値上がり益か、配当・優待か
許容できるリスク 小型株の激しい値動きに耐えられるか

たとえば配当が目的ならPERの低さは主目的ではありませんし、短期売買ならROEを見ても意味がありません。目的と指標がずれていると、抽出結果は使えません。

まず入れるべき5つの条件

目的が何であれ、最初に設定しておくと事故が減る条件があります。

条件 設定の目安 なぜ必要か
時価総額 100億円以上など 小さすぎる会社は情報が少なく値動きも荒い
売買代金 1日平均1億円以上など 売りたいときに売れないと意味がない
最低投資金額 自分の予算の上限 買えない銘柄を眺めても時間の無駄になる
市場区分 プライム/スタンダード/グロース 求める安定性に応じて選ぶ
営業利益 黒字であること 赤字企業は指標が意味をなさなくなる

とくに2番目が重要です。1日の売買代金が1,000万円しかない銘柄を100万円分買うと、売るときに自分の注文で株価を下げてしまいます。

目的別の設定例① 割安株を探す

条件 設定例 意図
PER 12倍以下 利益に対して株価が安い
PBR 1倍以下 純資産を下回る評価になっている
ROE 8%以上 「安いだけの会社」を除外するための条件
自己資本比率 40%以上 財務の安全性を確保する

3番目を入れるかどうかで結果がまったく変わります。PERとPBRだけで絞ると、業績が落ち続けている会社が大量に並びます。ROE8%はいわゆる伊藤レポート(2014年)で示された最低ラインとして知られています。

目的別の設定例② 成長株を探す

条件 設定例 意図
売上高成長率 直近3期で年15%以上 単年ではなく継続していることが条件
営業利益成長率 年15%以上 売上だけでなく利益も伸びているか
営業利益率 10%以上 薄利多売ではない稼ぐ力があるか
PEGレシオ 1倍前後以下 成長率に対して株価が高すぎないか

成長株ではPERの低さを条件に入れてはいけません。伸びている会社のPERは高くて当たり前だからです。代わりに成長率とのバランスを見るPEGレシオを使います。

目的別の設定例③ 高配当株を探す

条件 設定例 意図
配当利回り 3.5%以上 市場平均を上回る水準
配当性向 30〜60% 上限を切るのが肝。100%超は無理をしている
連続増配・非減配 5年以上 たまたま今年だけ高い銘柄を除外する
自己資本比率 40%以上 借金をして配当を出していないか

利回りだけで並べると「株価が暴落したせいで利回りが高く見えているだけ」の銘柄が上位に来ます。これを高配当株の罠と呼びます。詳しくは高配当株の選び方で解説しています。

目的別の設定例④ 優待株を探す

条件 設定例 意図
優待の有無 あり 実施企業に限定する
最低投資金額 10万円以下など 分散して複数の優待を狙いやすくする
優待利回り 2%以上 配当と合わせた総合利回りで判断する
権利確定月 分散させる 3月・9月に集中させない

※ 優待は企業の判断で変更・廃止されます。抽出時点の情報が最新とは限らないため、必ず企業のIR情報で確認してください。

スクリーニングの落とし穴

ここがこの記事の1番重要な部分です。抽出結果には、条件に合っているのに買ってはいけない銘柄が必ず混ざります。

① 低PERは「安い」ではなく「将来が悪いと見られている」

市場は将来の減益を織り込んで株価を下げています。とくにシクリカル銘柄は、PERが最低のときが景気の天井です。

② 一時的な利益でPERが低く見えている

不動産の売却益などの特別利益が乗った年は、PERが実力より低く表示されます。翌年には元に戻ります。

③ 予想値か実績値かが混在している

PERには「実績」と「会社予想」があり、ツールによって使う数字が違います。同じ銘柄でも表示が変わります。

④ 数字の更新が遅れている

決算発表の直後は、ツールの数値が古いままのことがあります。必ず決算短信で裏を取ってください。

⑤ 業種を無視すると比較にならない

PBRやPERの水準は業種によって大きく違います。銀行と情報通信を同じ基準で並べても意味がありません。

⑥ 誰でも同じ条件を使える

有名な条件の組み合わせは、すでに多くの人が見ています。スクリーニングだけで優位性は生まれません。

⑥はとくに本質的な指摘です。差がつくのは条件ではなく、抽出後に何を調べるかです。

0件になったときの緩め方

条件を厳しくしすぎて何も出てこないのはよくあることです。緩める順番があります。

緩める条件 理由
1 PER・PBRの数値 相場全体の水準で変わるため、絶対値にこだわる意味は薄い
2 時価総額の下限 中小型株に広げると候補は一気に増える
3 成長率・利回りの下限 0.5ポイント下げるだけで候補が数倍になることがある
× 売買代金・黒字条件 ここは緩めない。安全性に直結する

抽出した後にやること

候補が出たら、必ず次の3つを自分で確認してください。ここをやらないなら、スクリーニングをする意味がありません。

① その数字になっている理由を探す
決算短信と決算説明資料を読む。なぜ利益が伸びたのか、一過性ではないか
② 何で稼いでいるのかを言葉にする
「誰に何を売って、なぜ選ばれているのか」を一文で説明できるか
③ 業績の推移を数期分ならべる
1年だけの数字は偶然かもしれない。3〜5年の流れで見る

指標そのものの読み方はファンダメンタルズ分析とはで解説しています。

※ 本記事は分析手法の解説であり、特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。設定例は考え方を示すためのもので、成果を保証するものではありません。

スクリーニングに関するよくある質問

スクリーニングは無料でできますか?
できます。証券会社に口座があればツールを無料で使えますし、口座がなくても使える金融情報サイトもあります。条件の数や過去データの深さで差はありますが、基本的な絞り込みは無料の範囲で十分に可能です。
条件はいくつくらい設定すればいいですか?
3〜5個が目安です。増やすほど候補は減りますが、条件を足すほど「たまたまその条件を満たしただけ」の銘柄に偏るリスクもあります。まず3個で試し、候補が多すぎる場合に1つずつ足していく進め方をおすすめします。
PERが低い銘柄を買えば儲かりますか?
そうとは限りません。PERが低いのは、市場が将来の利益減少を織り込んでいるためであることが多いためです。とくに景気敏感株はPERが最も低い局面が業績のピークにあたります。低PERは「調べるきっかけ」であって、買う理由にはなりません。
スクリーニングの結果は毎日変わりますか?
株価に連動する指標(PER・PBR・配当利回りなど)は毎日変わります。一方、業績に関する数値は決算発表のタイミングでしか変わりません。決算シーズンの直後は結果が大きく入れ替わるため、定期的にやり直すことをおすすめします。
出来高や売買代金の条件は本当に必要ですか?
必要です。売買が少ない銘柄は、買うときに割高な価格で成立し、売るときは自分の注文で株価を押し下げます。数字がどれだけ良くても、換金できなければ利益になりません。最初に設定すべき条件のひとつです。
同じ条件なのにツールによって結果が違うのはなぜですか?
使っている数値の定義が違うためです。PERひとつとっても実績値か会社予想かで変わりますし、データの更新タイミングにも差があります。複数のツールで見比べると、どちらが実態に近いかを確認できます。
テクニカル指標でもスクリーニングできますか?
できます。移動平均線のゴールデンクロス、出来高の急増、年初来高値の更新などを条件にできるツールがあります。ただし短期の売買タイミングを探す用途になるため、財務指標とは目的が異なります。混ぜて使うときは狙いを明確にしてください。
抽出された銘柄をそのまま買ってもいいですか?
おすすめしません。スクリーニングは「調べる対象を絞る」作業であり、選ぶ作業ではありません。抽出後に決算資料を読み、その数字になっている理由を確認してから判断してください。この手間を省くと、条件に合っているだけの危険な銘柄をつかむことになります。

まとめ

スクリーニングは「4,000社を30社にする作業」であって、「買う銘柄を決める作業」ではありません。ここを勘違いしなければ、非常に強力な道具になります。

この記事のまとめ

・条件を決める前に「保有期間・狙う利益・許容リスク」を決める
・時価総額・売買代金・最低投資金額・市場・黒字の5条件をまず入れる
・売買代金の条件だけは絶対に緩めない
・割安株ではROEを併用しないと「安いだけの会社」が並ぶ
・成長株にPERの低さを条件として入れてはいけない
・高配当は配当性向に上限を切る
・低PERは「安い」ではなく「将来が悪いと見られている」
・抽出後に決算資料を読むまでがスクリーニング

あわせて読みたい:ファンダメンタルズ分析とはPERとはPBRとはROEとは高配当株の選び方

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