単純移動平均線とは、一定期間の終値の平均値を計算し、それを線で結んだものです。SMA(Simple Moving Average)とも呼ばれます。

この線が示しているのは「その期間に買った人の、平均的な買値」です。だから株価との位置関係に意味が生まれます。

ただし移動平均線には構造的に避けられない弱点があります。そこまで理解して初めて使える指標です。

この記事でわかること

・移動平均線が本当は何を示しているのか
・期間の選び方
・線の向きと株価の位置で読む方法
・だましが起きる理由
・この指標の構造的な弱点

単純移動平均線とは

単純移動平均線(読み方:たんじゅんいどうへいきんせん)とは、決められた期間の終値を合計して、その日数で割った値を毎日つないだ線です。

上昇トレンドで短期・中期・長期の移動平均線が順に並んだチャート
上昇が続くと、短期・中期・長期の順に上から並ぶ

日々の細かい上下を平らにならすことで、値動きの方向が見えるようになります。

計算方法

5日移動平均線を例にします。直近5日間の終値を合計して5で割るだけです。

終値 5日平均
1日目 100円
2日目 102円
3日目 101円
4日目 105円
5日目 107円 103円
6日目 110円 105円

6日目の計算では、1日目のデータが外れて6日目が入ります。この「入れ替わり」が移動平均線の性質を決めています。

重要な性質
新しい株価が動かなくても、外れる古いデータが安ければ線は上を向きます。移動平均線の向きは、直近の値動きだけで決まっているわけではありません。

この線が示しているもの

25日移動平均線が1,000円だとします。これは「直近25日間に買った人の平均的な買値が1,000円」という意味になります。

株価が線より上
その期間に買った人は
平均して含み益
→ 慌てて売る理由がない
株価が線より下
その期間に買った人は
平均して含み損
→ 戻ったら売りたい人が多い

移動平均線が支持線や抵抗線として機能するのはこのためです。単なる計算結果ではなく、参加者の損益分岐点を表しています。

期間の選び方

期間 呼び方 意味するもの
5日 短期 約1週間分の平均
25日 中期 約1か月分。最もよく使われる
75日 中長期 約3か月分(四半期)
200日 長期 約1年分。海外勢が重視する

期間が短いほど株価に敏感に反応し、長いほどゆっくり動きます。どれが正解ということはなく、自分の保有期間に合わせて選びます。

数日で手仕舞うなら5日と25日、数か月持つなら25日と75日、といった組み合わせが基本です。スイングトレードなら中期、デイトレードなら分足の移動平均線を使います。

線の向きと株価の位置で読む

移動平均線は「線の向き」と「株価との位置関係」を組み合わせると読みやすくなります。

線の向き 株価の位置 状態
上向き 線より上 上昇が続いている
上向き 線より下 上昇の途中の押し目、または転換の初期
下向き 線より上 下落からの戻り、または転換の初期
下向き 線より下 下落が続いている

株価が線を上抜けただけでは判断材料として弱く、線そのものが上を向いているかを必ず確認してください。

3本の線を並べたときの位置関係については多重移動平均線、株価と線の位置を体系化したものはグランビルの法則で解説しています。

ゴールデンクロス

短期の線が長期の線を下から上に抜けることをゴールデンクロスといいます。

短期の移動平均線が長期線を下から上に抜けたゴールデンクロスの場面
短期線が長期線を下から上に抜けた場面

短期の買い手の平均買値が、長期の買い手の平均買値を上回ったということです。直近で買った人のほうが強気だったことを意味します。

詳しくはゴールデンクロスで解説しています。

デッドクロス

逆に短期の線が長期の線を上から下に抜けることをデッドクロスといいます。

短期の移動平均線が長期線を上から下に抜けたデッドクロスの場面
短期線が長期線を上から下に抜けた場面

下落局面への転換を示すとされます。詳しくはデッドクロスをご覧ください。

なぜ「だまし」が起きるのか

クロスしたのに反対方向へ動いてしまうことをだましといいます。これは偶然ではなく、移動平均線の計算方法そのものから生じます。

だましが生まれる仕組み
① 移動平均線は過去のデータの平均
② クロスが確認できるのは動いた後
③ その時点で株価はすでに上昇(下落)している
気づいた人が買った直後に、利益確定売りが出る
だましが起きやすい場面 理由
横ばい相場 線が絡み合い、何度もクロスする
出来高が少ない わずかな売買で株価が動いてしまう
短い期間の設定 反応が速すぎて、ノイズを拾う
急騰・急落の直後 平均が急に動き、実態とずれる

対策としてはクロスと同時に出来高を確認することが基本です。出来高を伴わないクロスは信頼度が下がります。

移動平均線の構造的な弱点

だましのほかにも、この指標には避けられない性質があります。

弱点 内容
① 必ず遅れる 過去の平均なので、株価が動いた後にしか動かない
② 横ばいに弱い 方向が無い相場では、線もほぼ意味を持たない
③ 全ての日を等しく扱う 1か月前の終値と昨日の終値の重みが同じ
④ 古いデータで動く 株価が変わらなくても、外れる値によって線が動く
⑤ 材料は読めない 決算や不祥事は、線とは無関係に株価を動かす

③を改善しようとしたのが指数平滑移動平均線(EMA)です。直近のデータに大きな重みを置くため、単純移動平均線より速く反応します。

  単純移動平均線(SMA) 指数平滑移動平均線(EMA)
重みづけ すべて同じ 直近ほど重い
反応 遅い 速い
だまし 少なめ 増えやすい
向いている場面 中長期の方向を見る 短期売買

速いほうが優れているわけではありません。反応を速くすればだましも増えます。これはトレードオフです。

移動平均線からの「離れ具合」を見る

株価が移動平均線からどれだけ離れているかを数値にしたものを移動平均乖離率といいます。

(株価 − 移動平均) ÷ 移動平均 × 100 = 乖離率(%)
例:株価1,200円 / 25日移動平均1,000円 → +20%

この数値が役立つのは、移動平均線には株価が引き寄せられる性質があるからです。離れすぎた状態は長続きしにくくなります。

状態 意味 起きやすいこと
プラスに大きい 買われすぎ 利益確定売りが出やすい
0%付近 平均並み 方向感が出にくい
マイナスに大きい 売られすぎ 買い戻しが入りやすい

ただし「何%で反転する」という固定の基準はありません。値動きの荒い銘柄なら±20%でも通常の範囲ですし、値動きの小さい銘柄なら±5%でも大きな乖離です。

その銘柄の過去の乖離率と比べるのが現実的な使い方になります。ボラティリティが違えば、同じ数値でも意味が変わります。

実際の使い方

① まず線の向きを見る 上向きか下向きか、それだけで方向がわかる
② 株価との位置を見る 含み益の人が多いのか、含み損の人が多いのか
③ 出来高を重ねる 出来高を伴わない動きは信用しない
④ 他の指標と併用する 移動平均線だけで完結させない
⑤ 損切りを決めておく だましは必ず起きるという前提で使う

⑤が最も重要です。だましを完全に避ける設定は存在しません。外れたときにどうするかを先に決めておくことが、この指標を使う条件になります。

※ 本記事は指標の解説であり、特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

単純移動平均線に関するよくある質問

期間は何日に設定するのがいいですか?
自分が株を持つ期間に合わせます。数日で手仕舞うなら5日と25日、数か月持つなら25日と75日といった組み合わせが基本です。多くのチャートで初期設定になっている5日・25日・75日から始めて構いません。
移動平均線だけで売買してもいいですか?
おすすめしません。過去の平均を計算した指標なので必ず動きが遅れ、横ばい相場では機能しません。出来高や他の指標と組み合わせ、判断材料のひとつとして使ってください。
終値ではなく高値や安値でも計算できますか?
計算自体は可能ですが、一般的には終値が使われます。終値はその日の最終的な合意価格であり、参加者の判断が最も反映されている値段と考えられているためです。
なぜ株価が動いていないのに線が動くのですか?
計算対象から外れる古いデータの影響です。平均を取る期間から抜ける日の終値が安ければ、新しい株価が横ばいでも平均値は上がります。この性質は移動平均線を読むうえで見落とされがちです。
SMAとEMAはどちらを使うべきですか?
売買の時間軸によります。EMAは直近の値動きを重視するため反応が速い一方、だましも増えます。中長期の方向を見たいならSMA、短期売買ならEMAが選ばれる傾向があります。
ゴールデンクロスが出たら買っていいですか?
それだけでは根拠として不十分です。クロスが確認できる時点で株価はすでに動いた後であり、そこから利益確定売りが出ることもあります。出来高や線の向き、相場全体の状況と併せて判断してください。
なぜ25日や75日が使われるのですか?
営業日数に由来します。1か月の営業日が約20〜25日、3か月が約75日にあたるためです。200日は約1年分にあたり、海外の投資家が長期のトレンド判断に使うことが多い期間です。
移動平均線が支持線になるのはなぜですか?
その水準が、直近に買った人たちの平均的な買値だからです。株価が近づくと「損益がゼロに戻る前に買い増したい」「ここで買えば平均より安い」と考える人が現れ、買い注文が集まりやすくなります。

まとめ

単純移動平均線は「その期間に買った人の平均買値を可視化した線」です。だから支持線にも抵抗線にもなります。

この記事のまとめ

・一定期間の終値の平均を結んだ線
・示しているのは、その期間に買った人の平均買値
・5日・25日・75日・200日がよく使われる
・線の向きと株価の位置を組み合わせて読む
・株価が動かなくても、外れる古いデータで線は動く
・過去の平均なので必ず遅れる
・横ばい相場ではだましが増える
・EMAは反応が速いが、そのぶんだましも増える

あわせて読みたい:ゴールデンクロスとはデッドクロスとは指数平滑移動平均線とはグランビルの法則とはボリンジャーバンドとはテクニカル分析とは

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