歩み値(あゆみね)とは、実際に売買が成立した価格・株数・時刻を、成立した順に並べた記録のことです。

板が「これから約定するかもしれない注文」を映すのに対し、歩み値は「すでに成立した事実」だけを映します。この違いを押さえると、両者の使い分けが一気にはっきりします。

この記事では、色の意味から大口注文の見つけ方、そして歩み値では絶対にわからないことまでを解説します。

この記事でわかること

・板と歩み値の決定的な違い
・色分けの意味と、証券会社ごとに違う点
・大口の注文をどう見つけるか
・立会外取引や大引けの見え方
・歩み値ではわからない3つのこと

歩み値とは

歩み値は、約定するたびに1行ずつ追加されていく記録です。証券会社のツールでは「歩み値」「ティック」「約定履歴」などの名前で表示されます。

歩み値の表示イメージ
時刻約定値出来高
13:42:151,2052,000
13:42:111,204100
13:42:081,203500
13:42:021,20318,000

※ 新しい約定が上に積み上がっていく形式が一般的です

1行が1回の約定です。上の例なら、13:42:02に1,203円で18,000株がまとまって成立したことがわかります。チャートでは1本のローソク足に埋もれてしまう情報が、歩み値では1件ずつ見えます。

たとえば5分足のローソク足が1本できるあいだに、実際には何十回もの約定が起きています。ローソク足はそれを「始値・高値・安値・終値」の4つの数字に圧縮したものです。圧縮する前の生データが歩み値だと考えるとわかりやすくなります。

そのため、同じ5分間でも「1回の大口取引で動いたのか」「小口の売買が何百回も積み重なって動いたのか」という違いは、チャートを見ていても絶対にわかりません。その違いを知るための唯一の手段が歩み値です。

板・気配との違い

この2つを混同している人はとても多いのですが、見ているものがまったく違います。

板・気配
これから
まだ約定していない
注文の並び
取り消される可能性がある
歩み値
すでに
成立が確定した
売買の記録
取り消されない事実

板は「予定」、歩み値は「実績」

項目 板(気配 歩み値
見えるもの 未約定の注文 約定した取引
信頼性 取消・変更がありうる 確定した事実
時間軸 現在の断面 時系列で積み上がる
わかること どこに注文が厚いか 実際に誰かが動いたか

板に大量の買い注文が並んでいても、約定しなければ何も起きていません。いわゆる「見せ板」は板には映りますが、歩み値には現れません。両方を並べて見る意味はここにあります。

表示される4つの項目

項目 内容 読み取れること
時刻 約定した時間(秒単位) 間隔が詰まっていれば活発、空いていれば閑散
約定値 成立した価格 同じ価格が続けば拮抗、飛べば注文が薄い
出来高 成立した株数 単発で大きければ大口が動いた可能性
直前の約定と比べた値動きの向き 買いと売り、どちらが押しているか

色の意味と注意点

歩み値の約定値には色がついています。基準は「直前の約定と比べて上がったか下がったか」です。

アップティック

直前の約定より高い価格で成立した約定。買い注文が売り気配にぶつけて約定した形で、買いの勢いが強いことを示します。

ダウンティック

直前の約定より低い価格で成立した約定。売り注文が買い気配にぶつけた形で、売りの勢いが強いことを示します。

色の割り当ては証券会社ごとに違う
A社:上昇=赤 / 下落=緑
B社:上昇=赤 / 下落=青
→ ツールを乗り換えると逆に見えることがある

「赤は上昇」と暗記せず、必ず自分のツールの凡例を確認してください。色の設定を変更できるツールも多くあります。

歩み値でわかること

慣れてくると、数字の並びから状況が読めるようになります。

歩み値の様子 推測できる状況
同じ価格の約定が延々と続く その価格に大きな指値があり、買いと売りが拮抗している
価格が数円ずつ飛んで約定する 板が薄い。少ない注文で株価が動きやすい状態
アップティックが連続する 買い手が売り気配を次々に食っている。上昇の勢いが強い
約定の間隔が急に空く 参加者が引いた。値動きが止まりやすい
小口の約定が高速で続く アルゴリズム注文が分割して執行している可能性

大口注文の見つけ方

歩み値を見る目的として最も多いのが、これです。

① 単発で桁違いの株数

普段100株〜1,000株が並ぶなかで、突然50,000株の約定が1行だけ出る。明確に大口が動いた合図です。

② 同じ株数が規則的に繰り返される

「3,000株」が数十秒おきに何度も出る。分割執行のアルゴリズムが働いている可能性が高い形です。裏に大きな注文が控えていると考えられます。

③ 板が減らないのに約定が続く

買い注文を食っているはずなのに板の厚みが回復し続ける場合、その価格で買い支えている参加者がいる可能性があります。

ただし、これらはすべて状況証拠にすぎません。次章で述べるとおり、歩み値から売買した主体を特定することはできません。

立会外取引はどう表示されるか

取引時間中の通常の売買以外にも、約定は発生します。

種類 内容 歩み値での見え方
寄り付き 9:00の板寄せ 大量の株数が1行にまとまる
立会外取引
ToSTNeT
取引時間外に相対で成立する大口取引。自社株買いやTOBで使われる 通常の歩み値とは別枠で表示されることが多い
大引け 15:30のクロージング・オークション 1日で最大級の株数が1行に

2024年11月5日から、東京証券取引所では15:25〜15:30が注文を受け付けるだけで約定しない時間になりました。その間に積み上がった注文が15:30にまとめて成立するため、大引けの1行だけ突出して株数が大きくなります。異常ではなく、制度上そうなる仕組みです。

※ 出典:日本取引所グループ(2024年11月5日 取引時間延伸およびクロージング・オークション導入)

歩み値ではわからない3つのこと

ここを正確に理解しておかないと、読み違えます。

① 誰が売買したのか

機関投資家なのか個人なのか、証券会社名も口座も一切表示されません。「大口が買った」と見えても、実際には複数の注文がたまたま同時に約定しただけかもしれません。

② 買い手と売り手のどちらが仕掛けたか

アップティックなら買いが仕掛けた可能性が高い、という推測は成り立ちますが、確定情報ではありません。歩み値に「買い」「売り」という区分は存在しません。

③ 市場の外で何が起きているか

PTSでの取引は取引所の歩み値には現れません。ダークプールのように約定情報が見えにくい場も存在します。見えている歩み値がすべてではありません。

板・VWAPと組み合わせる

歩み値は単独では判断材料になりません。次の組み合わせが基本形です。

組み合わせ 見えるようになること
歩み値 + 板の注文が本当に食われているのか、見せているだけなのかを判別できる
歩み値 + VWAP 大口の約定がVWAPより上か下かで、その日の平均コストとの関係がわかる
歩み値 + 出来高 1日の出来高のうち、どの時間帯にどれだけ集中したかを確認できる

特に板と歩み値の同時表示は、デイトレードでは必須といっていい組み合わせです。主要ネット証券のツールでは、板と歩み値を横並びで表示できます。

歩み値を実際に使う3つの場面

「見方はわかったが、いつ見るのか」という疑問に答えます。歩み値が本当に役立つのは、次の3つの場面です。

場面 何を確認するか 判断につながること
注文を出す直前 直近の約定間隔と株数 約定がまばらなら成行は使わない。指値で待つ
急騰・急落の最中 同じ方向のティックが続いているか 連続が途切れて反対方向が混じり始めたら、勢いが弱まったサイン
節目の価格に近づいたとき その価格で約定が積み上がるか、素通りするか 大量に約定して抜けたなら本物、少量で止まったなら跳ね返される可能性

逆にいえば、ずっと眺め続ける必要はありません。判断する直前の数十秒だけ確認する、という使い方で十分に機能します。1日中歩み値を見つめていると、細かい値動きに振り回されて判断が雑になります。

よくある読み違え

「大口の買いが入ったから上がる」と考えて飛び乗る——これが最も多い失敗です。その大口が買っているのか、実は売り抜けているのかは歩み値からは判別できません。大株数の約定は「何かが動いた」という事実を示すだけで、方向を保証するものではありません。

歩み値の調べ方

証券会社の取引ツール

個別銘柄の画面から「歩み値」タブを開くだけです。リアルタイムで更新され、追加費用はかかりません。口座を持っていれば誰でも見られます。

過去の歩み値

その日のうちは遡って見られますが、翌日以降は基本的に残りません。記録しておきたい場合は、その日のうちに保存する必要があります。

※ 本記事は用語と仕組みの解説であり、特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

歩み値に関するよくある質問

歩み値とティックは同じものですか?
ほぼ同じ意味で使われます。ティックは「1回の約定」または「値動きの最小単位」を指す言葉で、その連なりが歩み値です。証券会社のツールでは「ティックチャート」「約定履歴」といった名称で表示されていることもあります。
歩み値から買いと売りのどちらか判別できますか?
確実には判別できません。直前より高い価格で約定していれば買いが仕掛けた可能性が高い、という推測はできますが、歩み値のデータそのものに売買の区分は含まれていません。あくまで推測の材料です。
色が他のサイトの説明と逆なのですが
証券会社やツールによって色の割り当てが異なるためです。上昇を赤、下落を緑とするツールもあれば、下落を青とするツールもあります。自分が使うツールの凡例を確認し、設定で変更できる場合は見やすい色に揃えてください。
大引けだけ株数が異常に多いのはなぜですか?
2024年11月5日から15:25〜15:30が約定しない注文受付時間となり、その間に積み上がった注文が15:30のクロージング・オークションでまとめて成立するようになったためです。制度による正常な動きです。
歩み値は翌日も見られますか?
多くのツールでは当日分のみです。翌営業日になるとリセットされ、遡って確認することはできません。分析に使いたい場合は、その日のうちに記録しておく必要があります。
PTSの約定も歩み値に出ますか?
取引所の歩み値には出ません。PTSは取引所外の取引として別に扱われるため、証券会社のツールでも通常は分けて表示されます。市場全体の売買がすべて見えているわけではない点に注意してください。
歩み値を見れば株価の先行きがわかりますか?
わかりません。歩み値は過去に成立した取引の記録であり、将来を示すものではありません。勢いの変化を早く察知できる可能性はありますが、それは予測ではなく現状把握です。
初心者も歩み値を見たほうがいいですか?
中長期投資が中心なら必須ではありません。日中の細かい値動きを追う必要がないためです。一方、短期売買をするなら板とセットで必ず見るべき情報になります。目的に応じて判断してください。

まとめ

歩み値は、板が見せる「予定」に対して「実際に何が起きたか」を示す記録です。板だけを見ていると見せ板に騙されますが、歩み値には嘘が映りません。

この記事のまとめ

・歩み値=約定した価格・株数・時刻を成立順に並べた記録
・板は「予定」、歩み値は「実績」
・色は直前の約定との比較。割り当ては証券会社ごとに違う
・単発の大株数や規則的な繰り返しは大口の可能性
・大引けの1行が突出するのは2024年11月からの制度によるもの
・誰が売買したかは特定できない
・板・VWAPと組み合わせて初めて判断材料になる

あわせて読みたい:板とは気配とはVWAPとはデイトレードとは

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