ドテンとは、保有しているポジションを決済すると同時に、反対方向のポジションを新規に建てることです。

漢字では「途転」と書きます。買いを持っている状態で売り、そのまま売り建てに切り替えるのが「ドテン売り」、その逆が「ドテン買い」です。

方向が変わったと判断したときに素早く乗り換えられる手法として紹介されますが、機械的に繰り返すとどうなるかを実測しました。日経平均を25日移動平均線のクロスでドテンし続けると、20年間で552回のクロスが発生し、そのうち72%は10営業日以内に逆方向へ反転していました。

この記事でわかること

・ドテンの仕組みと、通常の売買との違い
・レンジ相場・トレンド相場・ブレイクアウトでの使い方(図で解説)
実測:移動平均線で機械的にドテンすると往復ビンタが何回起きるか
実測が示す「シグナルの数を減らすほうが先」という結論
・ドテンに必要な口座と、現物取引ではできない理由

ドテンとは

項目 内容
読み方 どてん(途転)
意味 決済と同時に、反対方向のポジションを新規に建てること
ドテン売り 買い建てを決済し、売り建てに切り替える
ドテン買い 売り建てを決済し、買い建てに切り替える
必要な取引 信用取引・先物・CFDなど、売りから入れる取引
似た表現 途転売り、途転買い、切り返し

重要なのは5行目です。現物取引だけではドテンはできません。現物には「売りから入る」という選択肢がないため、売った後は現金を持つ状態になります。ドテンには信用取引などが必要です。

通常の売買と何が違うのか

比較軸 通常の決済 ドテン
決済後の状態 ポジションなし(現金) 反対方向のポジションを保有
1回の取引数 1回(決済) 2回(決済+新規)
判断の誤りが出たとき 機会を逃すだけ 逆方向でも損失が出る
コスト 1回分 2回分+建て直しの金利・貸株料

3行目がこの手法の核心です。通常の決済なら「休む」という選択肢が残りますが、ドテンでは常にどちらかの方向に賭けている状態になります。判断が外れたとき、失うのは機会ではなく資金です。

レンジ相場・トレンド相場での使い方

ドテンが使われる代表的な場面は、値動きが一定の範囲で往復しているときです。

レンジ相場の上限でドテン売り、下限でドテン買いを繰り返す図

上限に近づいたら売りに切り替え、下限に近づいたら買いに切り替えます。理屈のうえでは、同じ値幅を上下どちらの局面でも取れることになります。

上昇トレンドの中でも、同じ考え方が使われます。

上昇トレンドのチャネル内で上限と下限を使ってドテンする図

株価は一直線には上がらず、上昇と下落を繰り返しながら進みます。チャネルの上限で売り、下限で買い戻すという形です。

ただし、この2つの図には共通の前提があります。レンジやチャネルが続くという前提です。この前提が崩れた瞬間に何が起きるかは、後半の実測で確認します。

ブレイクアウトでの使い方

もう1つの使い方が、抵抗線や支持線を抜けたときの切り替えです。

抵抗線を上抜けたところでドテン買いに切り替える図

売り建てを持っている状態で上抜けが起きた場合、そのまま持ち続けると損失が拡大します。ここでドテン買いに切り替えれば、損失を止めると同時に上昇に乗ることができます。

この使い方は、レンジ相場での往復とは目的が違います。

使い方 目的 前提
レンジ内での往復 値幅を繰り返し取る レンジが続くこと
ブレイクでの切り替え 損失を止め、新しい方向に乗る ブレイクが本物であること

後者は損切りと新規建てを1回で行う操作にあたります。目的が損失の限定にあるという点で、こちらのほうが理にかなった使い方です。

【実測】機械的にドテンすると何が起きるか

ここからがこの記事の中心です。「シグナルが出るたびにドテンする」という行動を、日経平均株価で計算しました。

検証の条件

・終値が移動平均線を上抜けたら買い、下抜けたら売りに切り替える
・シグナルが出るたびに必ずドテンする(休まない)
・手数料・金利・貸株料は含めていない(実際にはさらに不利になる)
・対象:日経平均株価の日足終値(2006年1月〜2026年8月28日)
項目 25日移動平均 75日移動平均
クロス回数 552回(年26.8回) 301回(年14.6回)
保有日数の中央値 4営業日 4営業日
1回あたりの勝率 22.3% 18.7%
10営業日以内に逆方向へ反転 395回(72%) 208回(69%)
20営業日以内に反転 474回(86%) 228回(76%)
損益の合計 −39% +10%
[参考]同期間ずっと買い持ち +306%

この結果で注目したいのは3点です。

読み取れること 内容
大半が往復ビンタになる 25日線では72%が10営業日以内に逆方向へ反転。入った直後に戻される
勝率は2割前後 残りは少数の大きな値幅で稼ぐ形になり、耐えられる人が限られる
買い持ちに遠く及ばない 25日線は−39%。同期間の買い持ちは+306%

1回の判断が難しいのではなく、判断の回数が多すぎることが問題になっています。年に26.8回ドテンするということは、2週間に1回以上、方向についての賭けをやり直しているということです。

この検証の限界
・終値と移動平均の単純なクロスという、最も素朴な条件で計算している
・手数料・金利・貸株料を含めていない。実際の成績はこれより悪くなる
・指数での検証であり、個別銘柄では結果が変わる
・条件にフィルターを加えれば数字は変わる(後述)

示しているのは「この手法が使えない」ということではなく、「シグナルが出るたびに反転すると、大半が往復ビンタになる」という構造。

往復ビンタが起きる仕組み

レンジ相場でドテンを繰り返していると、次のような形で失敗します。

レンジ相場でドテンを繰り返した後、最後にレンジを抜けて往復ビンタになる図

レンジの上限で売り、下限で買うという操作は、レンジが続いている間はうまくいきます。しかし、レンジを抜けた瞬間に、直前のドテンがすべて逆方向になります。

① 上限で売る
これまで何度も反落してきたので、今回も下がると判断する。
② 上抜けてしまう
売り建てが含み損になる。ここでドテン買いに切り替える。
③ すぐに戻る
だましだった場合、買い建ても損失になる。2回続けて損をする。

これが「往復ビンタ」です。通常の損切りであれば①の損失だけで済みますが、ドテンでは②の新規建てでも損失が発生します。1回の判断ミスが2回分の損失になる構造です。

移動平均線でだましが起きる理由は単純移動平均線ゴールデンクロスの記事でも解説しています。

パラボリックを使ったドテン

ドテンを前提に設計されたテクニカル指標もあります。代表的なのがパラボリックです。

ローソク足の上下に表示されたパラボリックのSARが上昇局面と下降局面で切り替わる様子

ローソク足の上下に並ぶ点が「SAR(ストップ・アンド・リバース)」です。名前のとおり、「止めて、反転する」ことを前提にした指標で、価格がSARに触れると点の位置が上下逆に切り替わります。

SARの位置 相場の判断 ポジション
ローソク足の 上昇局面 買い
ローソク足の 下降局面 売り

ただし、パラボリックには明確な弱点があります。横ばいの相場では反転が頻発し、実測で見たとおりの往復ビンタが起きます。指標の設計思想と、上の検証結果は同じ問題を指しています。詳しい仕組みと弱点はパラボリックの記事で解説しています。

回数を減らすための3つの工夫

実測が示したのは「判断の回数が多すぎる」という問題でした。対処はシグナルを減らす方向になります。

工夫 内容
幅を持たせる 線に触れただけでは動かず、一定率を超えて抜けたときだけ反転する
期間を確認する 終値で数日続けて抜けているかを条件に加える
長い時間軸と合わせる 長期の移動平均線が示す方向と一致するときだけドテンする

3つ目は実測でも示唆されています。75日線は25日線よりクロス回数が約半分で、損益もマイナスからプラスに転じていました。期間を長くするだけで回数は減ります。

もう1つ、根本的な選択肢があります。ドテンせず、いったん現金に戻すという方法です。方向が分からない場面で必ずどちらかに賭ける必要はありません。休むも相場という格言は、この選択肢を指しています。

デメリットと注意点

注意点 内容
1回の判断ミスが2倍になる 決済の損失と、新規建ての損失が続けて発生する
コストが積み上がる 売買のたびに手数料。売り建てには貸株料や逆日歩がかかることがある
常にリスクを取り続ける 休む期間がないため、想定外の急変に必ず巻き込まれる
信用取引が前提になる 追証のリスクがある。相場が戻っても追証は消えない
売り建てには期日がある 制度信用では原則6か月。期日までに決済が必要

4つ目は特に重要です。ドテンは信用取引を使うため、レバレッジがかかった状態で常にポジションを持つことになります。急落局面では追証が発生し、判断の余地がなくなることがあります。

売り建てを持っている間に株価が急騰した場合、損失に上限はありません。買いの場合は最悪でも投資額がゼロになるだけですが、売りは理論上の上限がない点が違います。

よくある質問

現物取引でもドテンはできますか?
できません。ドテンには「売りから入る」という操作が必要ですが、現物取引には売り建てという選択肢がないためです。現物で保有株を売った場合、その後の状態は現金であってポジションではありません。ドテンを行うには信用取引や先物など、売りから入れる取引が必要になります。
実測で勝率22.3%でした。この手法は使えないということですか?
この検証が示しているのは、終値と移動平均線の単純なクロスという最も素朴な条件で、シグナルが出るたびに必ず反転した場合の結果です。手数料や金利も含めていません。示しているのは手法の否定ではなく、判断の回数が多すぎると往復ビンタが大半を占めるという構造です。条件に幅や期間のフィルターを加えれば回数は減り、結果も変わります。
往復ビンタとは何ですか?
買った直後に下がって損切りし、売りに切り替えた直後に上がってまた損切りする、というように、両方向で連続して損失を出すことです。ドテンでは決済と新規建てが同時に行われるため、1回の判断ミスが2回分の損失につながります。実測では、25日移動平均でのドテンのうち72%が10営業日以内に逆方向へ反転していました。
ドテンと損切りはどう違いますか?
損切りはポジションを閉じるところまでで、その後は現金の状態になります。ドテンは閉じると同時に反対方向のポジションを建てます。損失を止めるという点では同じですが、ドテンでは新しいリスクを同時に取ることになります。判断が「この方向は違う」までなら損切り、「逆方向に動く」まで確信があるならドテン、という使い分けになります。
ドテンのタイミングはどう判断すればよいですか?
実測が示したのは、シグナルの精度より回数のほうが問題だという点です。移動平均線を使う場合は、線に触れただけで動かず、一定率を超えて抜けたときに限る、数日続けて抜けているかを確認する、長期の移動平均線が示す方向と一致するときだけにする、といった条件を加えると回数が減ります。25日線より75日線のほうがクロス回数は約半分でした。
パラボリックを使えばドテンはうまくいきますか?
パラボリックはドテンを前提に設計された指標で、価格がSARに触れると自動的に反転のサインが出ます。ただし横ばいの相場では反転が頻発するという弱点があり、実測で見た往復ビンタと同じ問題が起きます。トレンドが明確に出ている局面では機能しやすい一方、方向感のない相場では回数が増えます。使う局面を選ぶ必要があります。
ドテンをせずに現金で待つのは弱気ですか?
むしろ選択肢が1つ多い状態です。ドテンでは常にどちらかの方向に賭けているため、方向が分からない場面でも必ずリスクを取ることになります。現金で待てば、方向がはっきりするまで判断を先送りできます。実測でも、シグナルが出るたびに反転した場合の成績は、同期間ずっと買い持ちした場合を大きく下回りました。
売り建てのリスクは買いと同じですか?
違います。買いの場合、最悪でも投資額がゼロになるところまでです。売り建ての場合、株価に上限がないため、理論上の損失にも上限がありません。加えて、貸株料や逆日歩といったコストが発生し、制度信用では原則6か月の期日もあります。株不足になると逆日歩が急増することもあるため、買いより管理が難しくなります。

まとめ

ドテン|3行まとめ

・決済と新規建てを同時に行うため、1回の判断ミスが2回分の損失になる
・実測では25日線のドテンで年26.8回のクロス・72%が10営業日以内に反転
・問題はシグナルの精度ではなく回数。減らすか、現金で待つかが先

ドテンは、方向が変わったと分かったときに素早く乗り換えられる手法です。問題は「方向が変わった」と判断する回数が、思っているより多くなることにあります。

実測では、25日移動平均線を使うと2週間に1回以上のペースで方向を賭け直すことになっていました。その大半は、入った直後に戻される取引です。

ドテンを検討しているなら、まず「自分のルールでは年に何回シグナルが出るか」を数えてみてください。回数が多すぎるなら、精度を上げるより先に、条件を厳しくするほうが効きます。

※ 本記事の検証は日経平均株価の日足終値をもとに2026年8月28日時点で行ったものです。手数料・金利・貸株料は含めておらず、実際の成績はこれより不利になります。判定の条件を変えれば数値も変わります。指数での検証であり、個別銘柄では結果が異なります。将来の値動きを保証するものではなく、特定の銘柄や投資手法を推奨するものでもありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

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