キャッシュフローとは、一定期間に会社へ実際に入ってきた現金と、出ていった現金の流れのことです。
利益とは別物です。利益が出ているのに現金が足りず倒産する「黒字倒産」が起こるのは、この2つがずれるからです。
この記事では、3つの区分の意味に加えて、符号の組み合わせだけで会社の状態を判定する方法を解説します。
この記事でわかること
・営業・投資・財務それぞれが示すもの
・プラスマイナスの組み合わせでわかる8つのパターン
・営業CFと純利益を比べてわかる「利益の質」
・投資家がどの順番で見ればいいか
キャッシュフローとは
キャッシュフロー(読み方:きゃっしゅふろー)とは、現金の出入りそのものを指します。Cash Flow を直訳すると「現金の流れ」です。
キャッシュフロー 銀行口座の残高がいくら増えたか。ごまかしにくい
→ 利益は意見、キャッシュは事実、と言われる理由
会計上の利益は、売上をいつ計上するか、費用をどう配分するかといった判断の積み重ねで作られます。一方、現金が増えたか減ったかに解釈の余地はありません。
なぜ利益と現金がずれるのか
ずれる原因は主に4つです。
| 原因 | 何が起きているか |
|---|---|
| 売掛金 | 売上は計上されたが、代金はまだ入っていない |
| 棚卸資産(在庫) | 現金を払って仕入れたが、売れるまで費用にならない |
| 減価償却費 | 費用にはなるが、現金は出ていかない |
| 設備投資・借入返済 | 現金は出ていくが、その年の費用にはならない |
1億円の商品を売った(売上1億円、利益2,000万円)
↓ 代金の入金は3か月後
仕入代金8,000万円の支払いは今月末
↓
帳簿は黒字。しかし手元に8,000万円がなければ支払えず倒産する
これが利益だけを見ていては危険な理由です。損益計算書が立派でも、現金が回っていない会社は存在します。
キャッシュフロー計算書とは
キャッシュフロー計算書(C/F)は、1年間の現金の出入りを3つに分類してまとめた書類です。
※ キャッシュフロー計算書の作成が義務づけられているのは上場企業などです。中小企業では作っていないこともあります。
3表の関係は財務諸表とはで整理しています。
営業キャッシュフロー
本業でどれだけ現金を稼いだかを示す区分です。3つのうち、もっとも重要です。
・商品やサービスの販売による収入
・仕入代金、人件費、経費の支払い
・法人税等の支払い
→ 会社が「稼ぐ力」をそのまま現金で表したもの
ここがマイナスの会社は、本業でお金を生み出せていません。一時的なら問題ありませんが、何年も続くなら要注意です。
減価償却費が足し戻されるため、設備の多い業種では利益より営業CFのほうが大きくなるのが普通です。
投資キャッシュフロー
将来のために何にお金を使ったかを示します。
| 符号 | 中身 | 読み方 |
|---|---|---|
| マイナス | 設備投資、企業買収、有価証券の取得 | 通常はこちらが健全 |
| プラス | 資産の売却、有価証券の売却 | 理由の確認が必要 |
ここはマイナスのほうが良い、という珍しい区分です。投資をしていない会社は成長も止まるためです。
ただしプラスが悪いとは限りません。不採算事業を売却した場合もプラスになります。金額だけでなく、注記や決算資料で中身を確認してください。
財務キャッシュフロー
資金をどう調達し、どう返したかを示します。
成熟した優良企業は、稼いだ現金で借金を返し、株主に還元するため財務CFはマイナスになります。マイナスだから悪い、ではありません。
符号の組み合わせでわかる8パターン
ここがキャッシュフロー計算書のいちばん実用的な使い方です。3つの符号を並べるだけで、会社がどんな局面にいるかがわかります。
| 営業 | 投資 | 財務 | 会社の状態 |
|---|---|---|---|
| + | − | − | 優良型 稼いだ現金で投資し、借金も返している |
| + | − | + | 積極投資型 借入も使って大きく投資している成長局面 |
| + | + | − | 改善型 資産を売って借金を減らしている。再建の途中 |
| + | + | + | 蓄積型 現金を貯めている。大型投資やM&Aの準備 |
| − | − | + | 先行投資型 赤字でも資金を集めて投資。新興企業に多い |
| − | + | − | リストラ型 資産を売って借金返済。本業が回復しなければ危険 |
| − | + | + | 資金繰り難型 売れるものを売り、借りられるだけ借りている |
| − | − | − | 取り崩し型 過去の蓄えを食いつぶしている |
1年だけで判断せず、3〜5期分を並べてパターンの変化を見てください。「積極投資型が3年続いた後に優良型へ移った」なら、投資が実を結んだということです。
フリーキャッシュフロー
会社が自由に使える現金のことです。もっとも簡便な計算式は次のとおりです。
FCF = 営業キャッシュフロー + 投資キャッシュフロー
(投資CFは通常マイナスなので、実質的には差し引きになります)
営業CF 100億円、投資CF −60億円 → FCF 40億円
この40億円を、配当・自社株買い・借金返済・次の投資に回せる
FCFがプラスであれば、外部からお金を借りなくても会社を回していける状態です。株主還元の原資もここから出ます。
逆にFCFが継続してマイナスなら、投資を続けるために借入か増資が必要になります。
営業CFと純利益を比べる(利益の質)
プロがよく使う見方です。営業キャッシュフローと当期純利益を並べてください。
| 関係 | 読み取れること |
|---|---|
| 営業CF > 純利益 | 正常。減価償却費が足し戻されるため、通常はこうなる |
| 営業CF < 純利益 | 要注意。売掛金や在庫が膨らんでいる可能性 |
| 純利益は黒字だが営業CFは赤字 | 危険信号。利益の中身を疑う |
この状態が2期以上続いている会社は、必ず理由を確認してください。売上は立っているのに代金を回収できていない、あるいは在庫が売れずに積み上がっている可能性があります。
過去には、粉飾決算が発覚した企業で「利益は伸びているのに営業CFが伴わない」という兆候が事前に出ていた例があります。
現金及び現金同等物の期末残高
計算書のいちばん下にある数字です。その会社が期末に持っている現金の総額を示します。
① 前期末と比べて増えているか、減っているか
② 月商の何か月分あるか(一般に1〜3か月分あれば当面の資金繰りは安心とされる)
③ 有利子負債と比べてどうか(現金のほうが多ければ実質無借金)
②の考え方は業種によって変わります。在庫を多く持つ業種や、入金までの期間が長い業種ほど、厚めの現金が必要になります。
キャッシュフローから作る指標
| 指標 | 計算 | 使い方 |
|---|---|---|
| CFPS | 営業CF ÷ 発行済株式数 | 1株あたりいくら現金を稼いだか |
| PCFR | 株価 ÷ CFPS | PERの代わりになる。減価償却の影響を受けにくい |
| 営業CFマージン | 営業CF ÷ 売上高 | 売上のうち何%が現金として残るか |
PCFRが役に立つのは、設備投資の大きい業種どうしを比べるときです。減価償却の方法が違うと利益は比較しにくくなりますが、キャッシュフローならその影響を受けにくくなります。
投資家がチェックする順番
マイナスなら、その理由を必ず確認する
下回っていれば売掛金・在庫をチェック
8パターンのどこにいるかで局面がわかる
株主還元の余力があるかどうか
単年では判断できない。パターンの移り変わりを追う
※ 本記事は財務分析の解説であり、特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
キャッシュフローに関するよくある質問
まとめ
キャッシュフローは「利益という意見」に対する「現金という事実」です。3つの符号を並べるだけで、会社がどの局面にいるかが読み取れます。
この記事のまとめ
・売掛金・在庫・減価償却が、利益と現金をずらす主因
・営業CFは本業の稼ぐ力。ここがマイナスなら要確認
・投資CFはマイナスのほうが健全
・財務CFがマイナスなのは返済と株主還元をしている証拠
・3つの符号の組み合わせで8パターンに分類できる
・営業CFが純利益を下回ったら売掛金と在庫を疑う
・FCF=営業CF+投資CF。株主還元の原資になる
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