公募割れとは、上場後の株価が公募価格を下回ることをいいます。とくに上場日の初値が公募価格を下回った場合に使われます。

IPOは勝率の高い投資として知られていますが、2025年は65社中10社、およそ6社に1社が公募割れになりました。

この記事では、申し込む前に危険な案件を見抜く方法と、割れてしまったときの考え方を解説します。

この記事でわかること

・公募割れは実際どれくらいの頻度で起きるのか
・吸収金額という最重要のチェック指標
・VC保有比率とロックアップの読み方
・当選後にキャンセルできるのか
・公募割れした銘柄のその後をどう考えるか

公募割れとは

公募割れ(読み方:こうぼわれ)とは、株価が公募価格を下回った状態のことです。

2つの使われ方
① 初値公募割れ 上場日の初値が公募価格を下回った
② その後の公募割れ 上場後しばらくして公募価格を下回った
→ 一般に「公募割れ」といえば①を指します

公募価格で買った投資家は、その時点で含み損を抱えた状態でのスタートになります。

公募割れはどれくらい起きるのか

2025年のIPOの実績を見てみます。

項目 2025年
IPO社数 65社
初値が公募価格を上回った 53社
公募割れ 10社(約15.4%)
同値 2社

※ 2025年の集計値です(直接上場・REITを除く)。集計対象の取り方によって社数は前後します。

読み方は2つあります。8割以上は初値が公募価格を上回る。しかし6社に1社は割れる。

なお2025年は東証一般市場のIPOによるファイナンス総額が公募・売出し・オーバーアロットメントを含めて約1兆3,000億円となり、前年の約9,700億円から約3割増加しました。市場に供給される株式が増えれば、需給は当然きつくなります。

公募割れが起きる5つの原因

原因 中身
① 吸収金額が大きい 供給される株式が多すぎて買いが足りない
② 公募価格が強気すぎた 類似企業と比べて割高な水準に設定された
③ 相場環境が悪い 上場日に地合いが崩れると、内容に関係なく売られる
④ 事業の魅力が伝わらない 成長性が見えにくい、成熟した業種である
⑤ 上場が集中している 同じ日に何社も上場すると資金が分散する

このうち①と⑤は、上場前に公開されている情報だけで判定できます。ここを見るかどうかで結果は変わります。

最重要のチェック指標「吸収金額」

吸収金額とは、そのIPOで市場から吸い上げる資金の総額です。

吸収金額 = 公募株数 + 売出株数 + オーバーアロットメント × 公募価格
この金額が大きいほど、それを買い支えるだけの需要が必要になります。
吸収金額の目安 傾向
10億円未満 需給が締まりやすく、初値が跳ねやすい
10〜50億円 中規模。内容次第で分かれる
100億円超 大型案件。公募割れの確率が上がる

理由は単純です。吸収金額が5億円なら数億円の買いで株価は跳ねますが、500億円なら同じ買いはほとんど影響しません。

吸収金額は目論見書や証券会社のIPO情報ページで確認できます。オーバーアロットメントの分を足し忘れないようにしてください。

VC保有比率とロックアップ

もうひとつの重要な確認項目がベンチャーキャピタル(VC)の保有状況です。

VCは上場後に売る前提で投資している

VCの目的は上場して株式を売却し、投資資金を回収することです。
VCの保有比率が高い=将来の売り圧力が大きいということになります。
→ 目論見書の「大株主の状況」で保有比率を確認してください

これを抑える仕組みがロックアップです。上場後の一定期間、大株主が株式を売却できないよう契約で縛ります。

ロックアップの型 内容 評価
期間のみ(90日・180日) その期間は売れない 良い
価格解除条項つき 公募価格の1.5倍などを超えると期間内でも売れる 要注意
ロックアップなし 上場初日から売却できる 危険

価格解除条項がある場合、株価が条件の水準に達したところで大量の売りが出るため、上値が抑えられやすくなります。

上場日の集中と相場環境

危険なタイミング

・同じ日に3社以上が上場する
・12月や3月の上場ラッシュ期
・日経平均が急落している局面
・大型案件と同日に上場する

有利なタイミング

・その日の上場が1社だけ
・上場が少ない時期
・相場全体が落ち着いている
・直近のIPOが好調に推移している

IPOに向かう個人投資家の資金には限りがあります。同じ日に何社も上場すれば、その資金は分散します。

公募割れを支える仕組みがある

実は、公募割れしたときに買い支えを行う仕組みが制度として用意されています。

オーバーアロットメントで投資家に売った株式を調達するため、
主幹事証券が上場後の一定期間、市場で買い付けを行うことがあります。
→ 株価が公募価格を下回っている局面で、買い支えとして機能することがあります

ただしこれは株価を維持する目的の制度ではありません。期間も数量も限られており、実施するかどうかは主幹事の判断です。買い支えを期待して申し込むのは危険です。

反対に、株価が公募価格を上回っている場合はグリーンシューオプションを行使して調達します。

公募割れしそうなとき、キャンセルできるか

段階 キャンセル 補足
ブックビルディング期間中 できることが多い 証券会社によって扱いが異なる
当選後・購入申込前 辞退できる ペナルティが設定されている証券会社がある
購入申込を済ませた後 原則できない 上場まで保有するしかない

公募価格が仮条件の下限で決定された案件は、この段階で見送るという判断が有効です。プロが積極的に評価しなかったというサインだからです。

※ 辞退時の取扱いは証券会社ごとに異なります。詳細はご利用の証券会社の規定をご確認ください。

公募割れした銘柄のその後

公募割れした銘柄が、その後どうなるかに決まったパターンはありません。大きく2つに分かれます。

パターン 背景
回復する 需給が原因だった場合。売りが出尽くし、業績が評価されて戻る
下げ続ける 事業の評価が原因だった場合。ロックアップ解除でさらに売りが出る

判断の分かれ目は「需給の問題か、事業の問題か」です。吸収金額が大きすぎただけなら時間が解決しますが、成長性が疑われているなら戻る理由がありません。

とくに注意すべきはロックアップの解除日です。90日・180日という期間が明けたタイミングで、VCの売りが出て二段下げになることがあります。

セカンダリー投資という選択肢

公募割れは、買う側から見れば安く買える機会でもあります。上場後に市場で買うことをセカンダリー投資といいます。

ただし前提条件があります
ロックアップの解除日を過ぎているか、解除後の売りを織り込んでいる
② 事業内容と業績を自分で確認している
③ 上場直後の値動きの荒さに耐えられる資金量である
「公募価格より安いから割安」という判断だけで買ってはいけません

上場直後の企業は四半期ごとの実績がまだ少なく、判断材料が限られています。公募価格はあくまで上場前の評価であり、割安さの基準にはなりません。

公募増資(PO)の公募割れ

すでに上場している企業が実施する公募増資でも公募割れは起こります。

項目 IPOの公募割れ POの公募割れ
比較の対象 初値と公募価格 受渡後の株価と公募価格
主な原因 吸収金額と需給 希薄化による株価下落
判断材料 上場前の情報のみ 過去の業績と株価がある

POでは公募価格が決定日の終値から3〜5%程度割り引かれますが、発表から受渡までの間に株価がそれ以上下がれば公募割れになります。

※ 本記事は制度の解説であり、特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

公募割れに関するよくある質問

公募割れはどれくらいの確率で起きますか?
2025年は65社中10社、約15.4%が公募割れとなりました。おおむね6社に1社という水準です。ただし年によって変動し、相場環境が悪化した年や大型案件が集中した時期には比率が上がります。
公募割れしそうなIPOを事前に見抜けますか?
完全には無理ですが、確率を下げることはできます。吸収金額が大きい、VCの保有比率が高い、ロックアップに価格解除条項がある、同日に複数社が上場する、公募価格が仮条件の下限で決まった、という5点はすべて上場前に確認できます。複数に該当する案件は慎重に判断してください。
吸収金額はどこで確認できますか?
目論見書や証券会社のIPO情報ページに掲載されています。公募株数と売出株数に公募価格を掛け、オーバーアロットメントの分を加えて計算します。オーバーアロットメントを足し忘れると実際より小さく見積もることになるため注意してください。
当選した後にキャンセルできますか?
購入申込を済ませた後は原則としてできません。当選後、購入申込をする前であれば辞退できますが、証券会社によっては今後の配分で不利になるペナルティが設定されています。ブックビルディング期間中であれば、期間内に取り消せる証券会社が多くあります。
公募割れした株はいつ売るべきですか?
一律の正解はありませんが、判断すべきは「需給が原因か、事業の評価が原因か」です。需給要因なら時間の経過で戻ることがあります。事業の成長性そのものが疑問視されている場合や、ロックアップの解除日が近い場合は、戻りを待つほど不利になることもあります。
シンジケートカバー取引があれば株価は支えられますか?
一定の買い支え効果が生じることはありますが、期待すべきではありません。実施の有無、期間、数量はいずれも主幹事証券の判断によります。株価を維持するための制度ではなく、オーバーアロットメントで売った株式を調達するための仕組みです。
公募価格より安いなら買いですか?
そうとは限りません。公募価格は上場前の評価であって、その企業の適正価値を保証するものではありません。市場が「公募価格は高すぎた」と判断した結果が公募割れです。公募価格を基準に割安と考えるのではなく、業績と成長性から自分で判断してください。
ロックアップの解除日はどこで確認できますか?
目論見書に記載されています。上場日から90日後、180日後といった期間や、公募価格の1.5倍という価格解除の条件が書かれています。価格解除条項がある場合は、その水準に近づいたときに売りが出やすくなる点を意識してください。

まとめ

公募割れは、「その値段では高いと市場が判断した」というだけの現象です。避けたいなら、申し込む前に需給を確認するのがもっとも確実です。

この記事のまとめ

・公募割れ=株価が公募価格を下回ること。通常は初値で判定する
・2025年は65社中10社(約15.4%)が公募割れ
・最重要の指標は吸収金額。100億円超は警戒
・VC保有比率が高いほど将来の売り圧力が大きい
・ロックアップの価格解除条項があると上値が抑えられやすい
・同日に複数社が上場すると資金が分散する
・公募価格が仮条件の下限で決まったら見送りも選択肢
・購入申込後のキャンセルは原則できない

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