新市場区分とは、東京証券取引所が2022年4月4日に実施した市場再編で生まれた「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」の3つの区分のことです。

それ以前の「東証一部」「東証二部」「JASDAQ」「マザーズ」という4区分は、この日をもって廃止されました。すでに移行から4年以上が経過しており、「新市場区分」という呼び方自体が過渡期の言葉になりつつあります。

ただし、制度は移行して終わりではありませんでした。2025年3月には上場維持基準の経過措置が終わり、2026年10月からはTOPIXの銘柄が絞り込まれます。さらに2030年からはグロース市場の基準が引き上げられます。この記事では、現在どうなっているかを整理します。

この記事でわかること

・3市場それぞれのコンセプトと、旧区分からどう移ったか
3市場の上場維持基準の一覧(2026年8月時点)
2025年3月に終わった経過措置とは何だったのか
・投資家から見た3市場の違い(値動き・情報量・機関投資家の参加度)
2026年10月のTOPIX見直しと2030年のグロース基準変更

新市場区分とは

項目 内容
読み方 しんしじょうくぶん
実施日 2022年4月4日
新しい区分 プライム市場/スタンダード市場/グロース市場
廃止された区分 東証一部/東証二部/JASDAQ(スタンダード・グロース)/マザーズ
実施したところ 東京証券取引所(日本取引所グループ)

4行目の旧区分は、今も古い記事やニュースの過去記事に登場します。現在これらの市場は存在しません。「東証一部上場」という表現を見かけたら、2022年3月以前の情報だと判断できます。

なぜ再編したのか

旧区分には、東証自身が認めていた課題が3つありました。

課題 内容
コンセプトが重なっていた 東証二部とJASDAQ(スタンダード)、マザーズとJASDAQ(グロース)が似た性格だった
上場後の動機づけが弱かった 新規上場基準より上場廃止基準が緩く、上場後に水準を維持する必要がなかった
抜け道があった 東証一部へ直接上場するより、他市場から移るほうが基準が緩かった

3つ目は具体的でした。東証一部への新規上場には時価総額250億円以上が必要でしたが、東証二部やマザーズから移る場合は40億円以上で足りていました。先に基準の緩い市場へ上場し、そこから移るという経路が成立していたのです。

新区分では、市場を移る場合も移った先の新規上場基準による審査を受けます。緩和された基準は設けられていません。

3市場のコンセプト

市場 対象とする企業 主にどこから移ったか
プライム 多くの機関投資家の投資対象となる規模と流動性を持ち、より高いガバナンス水準を備えた企業 東証一部
スタンダード 公開された市場における投資対象として十分な流動性とガバナンス水準を備えた企業 東証一部の一部・東証二部・JASDAQ(スタンダード)
グロース 高い成長可能性を持つ一方、事業実績の観点から相対的にリスクが高い企業 マザーズ・JASDAQ(グロース)

グロース市場の説明にある「相対的にリスクが高い」という表現は、東証自身が使っているものです。成長可能性が高いことと、実績が乏しいことは同じ状態の裏表にあたります。

3市場の上場維持基準(2026年8月時点)

投資家が見るべき数字は、新規上場基準ではなく上場維持基準です。基準を割ると、改善期間を経て上場廃止に進む可能性があるためです。

項目 プライム スタンダード グロース
株主数 800人以上 400人以上 150人以上
流通株式数 2万単位以上 2,000単位以上 1,000単位以上
流通株式時価総額 100億円以上 10億円以上 5億円以上
流通株式比率 35%以上 25%以上 25%以上
売買代金/売買高 1日平均売買代金
0.2億円以上
月平均売買高
10単位以上
月平均売買高
10単位以上
時価総額 上場10年経過後
40億円以上
純資産 3市場とも正であること(債務超過でないこと)

※ 出典:日本取引所グループ「上場維持基準」(2026年8月時点)

「流通株式」という言葉に注意してください。発行済株式のうち、大株主や役員、自己株式などを除いた、市場で実際に売買されうる株式のことです。この定義は再編にあわせて見直され、政策保有株なども除かれるようになりました。

基準に触れた後の流れ、監理銘柄・整理銘柄の違いは上場廃止の記事で詳しく解説しています。

2025年3月に終わった経過措置

2022年の移行時、基準を満たさない企業には経過措置が設けられていました。ここを理解しないと、当時の報道と現在の状況を取り違えます。

時期 状態
2022年4月4日 新市場区分へ移行。改善計画を出せば、基準未達でも上場を維持できた
2025年3月1日以後 この日以後に到来する判定基準日から、経過措置が終了
現在(2026年8月) 本来の上場維持基準がそのまま適用されている

※ 出典:日本取引所グループ「上場維持基準に関する経過措置の終了」

つまり、移行当初に指摘された「プライムなのに基準を満たしていない企業が多い」という状態は、すでに解消に向かう段階に入っています。

基準に適合していない企業には開示義務があるため、企業のIRページを見れば適合状況が確認できます。投資判断のうえでは、この開示があるかどうかが1つの確認ポイントになります。

投資家から見た3市場の違い

制度の話とは別に、投資する側から見た性質の違いを整理します。

観点 プライム スタンダード グロース
流動性 高い 中程度 低い銘柄が多い
値動きの幅 相対的に小さい 中程度 大きい
機関投資家の参加 多い 限定的 少ない
英文開示 義務づけられている 任意 任意
アナリストの分析 得やすい 少ない ほとんどない銘柄も
上場廃止のリスク 相対的に低い 中程度 2030年から基準が上がる

実務で効くのは1行目と5行目です。流動性が低い銘柄では、売りたいときに希望の価格で売れないことがあります。また、アナリストの分析が出ていない銘柄では、自分で決算資料を読む必要が出てきます。

4行目のプライム市場の英文開示義務は、海外投資家の参加を前提にした条件です。グロース投資の対象を探す場合、市場区分によって得られる情報量が違う点は押さえておく価値があります。

2026年10月からのTOPIX見直し

市場区分と関係が深いのが、TOPIX(東証株価指数)の構成銘柄の見直しです。

時期 内容
2022年〜2025年1月 第1段階。流通株式時価総額が基準に満たない銘柄のウエートを段階的に下げた
2026年10月〜 第2段階。構成銘柄が約1,700から約1,050へ絞り込まれる見込み

ここで押さえておきたいのは、TOPIXの構成銘柄と市場区分は一致していないという点です。再編後もTOPIXは旧東証一部の構成をおおむね引き継いでおり、プライム市場の銘柄と完全には重なりません。

絞り込みの基準やスケジュールの詳細はTOPIXの記事にまとめています。インデックスファンドを保有している場合、この見直しは中身の変化として影響します。

2030年からグロース市場の基準が変わる

もう1つ、先の日程が決まっている変更があります。

項目 現行 見直し後
時価総額 40億円以上 100億円以上
判定のタイミング 上場から10年経過後 上場から5年経過後
適用開始 2030年3月1日以後に最初に到来する事業年度末から

金額が2.5倍になり、猶予期間が半分になります。グロース市場の銘柄を長期で保有する場合、この日程は判断材料になります。

時価総額の考え方は時価総額、上場廃止までの具体的な流れは上場廃止の記事で解説しています。

注意点・誤解しやすい点

誤解 実際には
「プライム=旧東証一部と同じ」 旧東証一部からスタンダードを選んだ企業もあり、完全な対応ではない
「TOPIX=プライム市場の指数」 構成銘柄と市場区分は一致していない
「プライムなら安全」 維持基準は規模と流動性の基準であり、業績を保証するものではない
「基準を割ったらすぐ上場廃止」 改善期間があり、その後の手続きを経る
「グロース=成長株」 市場区分は企業の規模と実績による分類。成長性を保証するものではない

3つ目は特に重要です。上場維持基準は、株主数・流通株式・売買代金といった市場での取引に関する条件が中心です。利益が出ているかどうかは、純資産が正であること以外は問われていません。プライム市場でも業績が悪化する企業はあります。

5つ目も混同されやすい点です。グロース市場という名称は「高い成長可能性を持つ企業向けの市場」というコンセプトから来ていますが、東証自身が「事業実績の観点から相対的にリスクが高い」とも説明しています。市場区分は投資判断の代わりにはなりません。

よくある質問

東証一部やマザーズは今もありますか?
ありません。2022年4月4日の市場再編で、東証一部・東証二部・JASDAQ(スタンダード及びグロース)・マザーズの4区分は廃止され、プライム市場・スタンダード市場・グロース市場の3区分になりました。現在も「東証一部上場」という表現を見かけることがありますが、2022年3月以前の情報です。
プライム市場は旧東証一部と同じですか?
同じではありません。旧東証一部の企業のうち、プライム市場の基準を満たさない、あるいは自社の方針としてスタンダード市場を選んだ企業があります。移行は企業が選択する形で行われたため、旧東証一部とプライム市場は完全には対応していません。
経過措置とは何だったのですか?
2022年の移行時、上場維持基準を満たさない企業でも、改善計画を提出すれば当面の間は上場を維持できるという措置です。この措置は2025年3月1日以後に到来する上場維持基準の判定基準日から終了し、現在は本来の基準がそのまま適用されています。決算期を迎えた会社から順に、経過措置の適用がなくなっていきました。
流通株式とは何ですか?
発行済株式のうち、市場で実際に売買されうる株式のことです。大株主が保有する株式、役員が保有する株式、自己株式などは除かれます。市場再編にあわせて定義が見直され、政策保有株なども流通株式から除かれるようになりました。上場維持基準では、この流通株式の数・時価総額・比率が使われています。
基準を満たしていない企業はどうやって調べられますか?
上場維持基準に適合していない場合、企業には開示義務があります。企業のIRページで「上場維持基準の適合状況に関するお知らせ」といった表題の開示を確認できます。また、監理銘柄や整理銘柄に指定されている銘柄は、日本取引所グループのサイトで一覧が公表されています。
グロース市場の銘柄は買わないほうがよいですか?
市場区分だけで判断するものではありません。グロース市場は高い成長可能性を持つ企業を対象とする一方、東証自身が「事業実績の観点から相対的にリスクが高い」と説明しています。流動性が低い銘柄が多く、アナリストの分析も少ないため、自分で決算資料を読む前提になります。加えて2030年3月1日以後に最初に到来する事業年度末から、上場5年経過で時価総額100億円以上という基準が適用されます。
TOPIXの構成銘柄はプライム市場の全銘柄ですか?
一致していません。市場再編後もTOPIXは旧東証一部の構成をおおむね引き継いでおり、プライム市場の銘柄と完全には重なりません。さらに2026年10月からは第2段階の見直しが始まり、構成銘柄が約1,700から約1,050へ絞り込まれる見込みです。インデックスファンドを保有している場合、この見直しは中身の変化として影響します。
市場区分が変わると株価に影響しますか?
影響することがあります。プライム市場からスタンダード市場へ移る場合、TOPIXなどの指数から外れることで、その指数に連動するファンドの売りが出ることがあります。逆に指数に採用されれば買いが入ります。ただしこれは需給による一時的な動きであり、企業の業績とは別の話です。市場区分の変更が発表されたときは、まずその企業の業績と財務を確認してください。

まとめ

新市場区分|3行まとめ

・2022年4月4日にプライム・スタンダード・グロースの3区分へ移行。旧4区分は存在しない
2025年3月に経過措置が終わり、本来の上場維持基準が適用されている
2026年10月にTOPIX絞り込み、2030年からグロース基準が100億円へ

市場区分の再編は「名前が変わっただけ」と受け取られがちですが、実際に変わったのは上場を続けるための条件が、上場するときの条件と同じ水準になったことです。

投資家として使うなら、確認する場所は決まっています。保有している銘柄、または買おうとしている銘柄について、企業のIRページで「上場維持基準の適合状況」を探してみてください。適合していない場合は必ず開示されています。

とくにグロース市場の銘柄では、2030年からの基準変更が判断に関わってきます。

※ 本記事は2026年8月28日時点の情報をもとにしています。上場維持基準および経過措置の内容は日本取引所グループの公表資料によります。制度は変更されることがあるため、最新の内容は日本取引所グループの公式サイトでご確認ください。特定の銘柄や投資手法を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

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