買い方とは信用取引で買い建てている人、売り方とは売り建てている人(空売り)のことです。同じ銘柄で正反対の方向に賭けています。

この2つを区別する意味は、負担するコストがまったく違うことにあります。買い方は金利を払い、売り方は貸株料と逆日歩を払います。とくに売り方の逆日歩は金額が事前に分かりません。

さらに売り方には損失の上限がありません。株価がどこまでも上がりうるためです。買い方と売り方は対称ではないという点が、実務上いちばん重要です。

この記事でわかること

・買い方と売り方が負担するコストの対照表
・逆日歩と貸株料の違い(どちらが読めないコストか)
・配当落調整金はどちらが払うのか
・返済期限と追証の考え方
・買い方と売り方は損失リスクが対称でない理由
・信用残から需給を読む方法と踏み上げの仕組み

買い方・売り方とは?まず結論から

買い方(読み方:かいかた)/売り方(読み方:うりかた)

信用取引では、証券会社から資金や株式を借りて売買します。どちらを借りるかで立場が分かれます。

買い方
資金を借りて買う
株価が上がれば利益
損失の上限は投資額まで
売り方(空売り)
株を借りて売る
株価が下がれば利益
損失に上限がない

買い方は最悪でも株価0円まで。売り方は株価が何倍になっても買い戻す義務がある

この非対称性を最初に理解してください。買い方の損失は「買った金額」で止まりますが、売り方の損失は理論上無限です。株価が3倍になれば、売り建てた金額の2倍の損失になります。

なお現物取引で株を買っている人は買い方には含まれません。信用取引で建玉を持っている人だけを指す言葉です。

コストの対照表

ここが本題です。負担するコストは立場によって完全に分かれています。

コスト 買い方 売り方 事前に分かる
金利(買方金利) 支払う 分かる
貸株料 支払う 分かる
逆日歩(品貸料) 受け取る 支払う 分からない
配当落調整金 受け取る 支払う おおむね分かる
事務管理費 支払う 支払う 分かる
名義書換料 支払う 分かる

※ 費用の名称・有無・料率は証券会社によって異なります。実際の条件は各社の手数料ページで確認してください。

読み取るべきは3行目です。逆日歩だけが「事前に分からないコスト」で、しかも売り方が一方的に負担します。買い方はこれを受け取る側です。

逆日歩は制度信用取引で株不足が起きたときに発生します。一般信用取引では発生しませんが、その代わり貸株料の率が高めに設定されているのが一般的です。

コストの性質の違い

制度信用の売建:貸株料は安いが、逆日歩の金額が読めない
一般信用の売建:貸株料は高いが、コストを事前に確定できる
確実性を買うか、安さを取るかの選択です。

配当落調整金はどちらが払うのか

権利確定日をまたいで建玉を持っていると、配当に相当する金額のやりとりが発生します。

立場 配当落調整金 理由
買い方 受け取る 権利落ちで株価が下がる分の補填
売り方 支払う 権利落ちで含み益が出る分の返還

考え方はシンプルです。権利落ち日には配当金の分だけ株価が下がります。売り方はそれだけで利益が出てしまうため、配当相当額を払って調整します。買い方は逆に損をするので受け取ります。

ただし完全に相殺されるわけではありません。現物の配当には課税されますが、配当落調整金の扱いは異なります。優待クロスの損益計算では、この差が生じます。

また、売り方は配当落調整金に加えて逆日歩も負担します。権利付最終売買日は逆日歩の最高料率が4倍になるため、この日をまたぐ空売りのコストは跳ね上がります。

コストを実額で比べてみる

率で見ても実感が湧かないので、金額で比べます。建玉100万円を30日間保有したケースです。

立場 かかるコスト 30日分の概算
買い方 買方金利 年2.8%と仮定 約2,300円
売り方(制度信用) 貸株料 年1.15%と仮定 約950円
同上+逆日歩が出た場合 貸株料+逆日歩(1株5円×1,000株×3日) 約15,950円

※ 料率は証券会社によって異なります。実際の数値は取引画面で確認してください。上記は仕組みを示すための概算です。

基本コストだけなら売り方のほうが安いのに、逆日歩が乗ると一気に逆転します。3行目の例では、たった3日分の逆日歩が30日分の貸株料の15倍を超えています。

これが逆日歩の本質です。期間の長さではなく、料率の跳ね方でコストが決まります。短期のつなぎ売りであっても、権利付最終売買日をまたげば大きな負担になりえます。

買い方の金利は日数に比例して素直に増えるため、長期保有では買い方のコストが重くなり、権利日をまたぐ短期では売り方のコストが跳ねるという非対称があります。

返済期限と追証の違い

項目 制度信用取引 一般信用取引
返済期限 原則6か月 証券会社が定める(無期限もある)
対象銘柄 取引所が選定(貸借銘柄など) 証券会社が選定
逆日歩 発生する 発生しない
売建の在庫 貸借銘柄なら建てられる 在庫がなければ建てられない

買い方と売り方で共通するのが委託保証金追証です。建玉に対して一定割合の担保が必要で、株価が不利な方向に動いて維持率を下回ると追加の差し入れを求められます。

追証が発生する方向

買い方:株価が下がったとき
売り方:株価が上がったとき
どちらも期限までに入金しなければ、強制的に決済されます。

また、増担保規制がかかると新規建ての委託保証金率が引き上げられます。ただしこれは規制後の新規建てだけが対象で、すでに持っている建玉には遡及しません。

委託保証金と追証を数字で見る

買い方も売り方も、建玉に対して担保を差し入れます。これが委託保証金です。

項目 内容
委託保証金率 約定代金の30%以上(法令上の下限)
最低委託保証金額 30万円
維持率 証券会社が定める(20%程度が一般的)
増担保規制 50%以上(うち現金20%以上)から段階的に引き上げ

実際に計算します。保証金30万円で100万円の建玉を持った場合です。

状況 保証金の残り 維持率
建てた直後 30万円 30%
5万円の含み損 25万円 25%
10万円の含み損 20万円 20%(追証の水準)

※ 維持率の基準や計算方法は証券会社によって異なります。

100万円の建玉なら、株価が10%動くだけで追証の水準に届きます。3倍のレバレッジがかかっているためです。

期限までに入金しなければ、証券会社が強制的に決済します。自分のタイミングで損切りする機会を失うという点が、追証の実質的な怖さです。買い方は下落、売り方は上昇で追い込まれます。

信用残から需給を読む

買い方と売り方の残高は公表されています。これが需給を読む材料になります。

状態 意味 将来の圧力
買い長(信用買残が多い) 買い方が積み上がっている 将来の売り圧力(返済売り)
売り長(信用売残が多い) 売り方が積み上がっている 将来の買い圧力(買い戻し)

ここが信用取引の需給の本質です。信用取引の建玉は、いずれ必ず反対売買で解消されます。制度信用なら6か月という期限もあります。

つまりいま積み上がっている建玉は、将来の逆向きの注文です。買残が多い銘柄は上値が重く、売残が多い銘柄は下値が支えられやすくなります。

この比率を見る指標が貸借倍率です。1倍を下回れば売り長、上回れば買い長です。貸借銘柄の一覧や証券会社の銘柄情報で確認できます。

現物取引との違い

信用取引の買い方は「現物で買うのと同じ」ではありません。得られる権利が違います。

項目 現物買い 信用買い(買い方)
株主名簿への記載 される されない
株主優待 もらえる もらえない
議決権 ある ない
配当 配当金として受け取る 配当落調整金として受け取る
保有期限 なし 制度信用は原則6か月
維持コスト なし 金利が毎日かかる

2行目が実務でよく誤解されます。信用買いでは株主優待は受け取れません。優待が目的なら現物で買う必要があります。

だからこそ優待クロスは「現物買い+信用売り」という組み合わせになります。優待は現物側で受け取り、株価変動は信用売り側で打ち消すという設計です。信用買いを組み合わせても優待は得られません。

もう1つの違いが最後の行です。現物なら含み損のまま何年でも持てますが、信用取引には金利と期限があります。時間が経つほど不利になるという性質は、現物にはないものです。

踏み上げと投げ

信用残の偏りが極端になると、値動きが一方向に走ることがあります。

踏み上げ(売り方が追い込まれる)

売り長の銘柄が上昇 → 売り方に含み損 → 追証を避けるため買い戻す → さらに上昇 → 他の売り方も買い戻す。連鎖的に急騰します。

投げ(買い方が追い込まれる)

買い長の銘柄が下落 → 買い方に含み損 → 追証を避けるため売る → さらに下落 → 他の買い方も売る。連鎖的に急落します。

どちらもコストと追証というプレッシャーが引き金です。売り方には貸株料と逆日歩が毎日積み上がり、時間が経つほど不利になります。買い方には金利が積み上がります。

とくに売り方は逆日歩が跳ねると、株価が動かなくても損失が膨らみます。ハイパー空売り売り禁の状況とあわせて見ると、踏み上げの可能性を測りやすくなります。

買い方・売り方の注意点

① 売り方の損失に上限はない

株価は理論上どこまでも上がります。買い方の「最悪でも0円」とは性質が違います。空売りをするなら損切りの水準を先に決めてください。

② 逆日歩は注文時点で分からない

制度信用の売建では、コストが後から確定します。株主優待のクロス取引で想定外の負担が出るのはこれが原因です。

③ 建玉に議決権も優待もない

信用取引は株主名簿に載りません。買い方でも株主優待や議決権は得られません。配当相当額は配当落調整金として受け取れます。

④ 期限があるとコストが時間で効く

制度信用は原則6か月です。含み損のまま期限が来れば、損失を確定させるしかありません。持ち続けるという選択が取れません。

⑤ 規制で条件が変わることがある

増担保規制や売り禁がかかると、新規建てのハードルが上がります。建玉を持っている途中で条件が変わることを想定しておいてください。

買い方・売り方に関するよくある質問

買い方と売り方はどちらが有利ですか?
リスクの形が違うため単純に比べられません。買い方の損失は投資額までですが、売り方は株価が何倍にもなりうるため損失に上限がありません。加えて売り方は逆日歩という読めないコストを負います。
買い方が受け取れるものは何ですか?
逆日歩と配当落調整金です。ただし逆日歩は株不足が起きたときだけ発生するもので、受け取れる保証はありません。金利は支払う側になります。
配当落調整金は誰が払うのですか?
売り方が支払い、買い方が受け取ります。権利落ち日に配当の分だけ株価が下がるため、その差を調整する仕組みです。現物の配当とは税務上の扱いが異なります。
信用取引でも株主優待はもらえますか?
もらえません。信用取引の建玉は株主名簿に記載されないため、議決権も優待も得られません。優待が目的なら現物で保有する必要があります。
制度信用と一般信用はどちらを使うべきですか?
目的次第です。制度信用は貸株料が安い一方、逆日歩の金額が読めません。一般信用は逆日歩が発生しないためコストを確定できますが、貸株料は高めで在庫が必要です。優待クロスなら一般信用が向いています。
売り長・買い長はどこで確認できますか?
信用取引残高は週1回、日々公表銘柄なら毎日公表されます。証券会社の銘柄情報や株式情報サイトで確認でき、貸借倍率という指標にまとめられていることも多くあります。
踏み上げとは何ですか?
売り方の買い戻しが連鎖して株価が急騰する現象です。売り長の銘柄が上昇すると売り方に含み損が出て、追証を避けるため買い戻します。その買いがさらに株価を押し上げ、他の売り方も買い戻すという連鎖が起きます。
建玉を持ったまま増担保規制がかかったらどうなりますか?
既存の建玉に遡って適用されることはありません。引き上げられた委託保証金率は規制開始後の新規建てだけが対象です。ただし株価が動けば追証のリスクはあります。

まとめ

買い方と売り方は、コストもリスクも対称ではありません。売り方だけが「損失無限」と「金額不明の逆日歩」という2つの非対称を抱えます。

この記事のまとめ

・買い方は金利、売り方は貸株料と逆日歩を負担する
・逆日歩だけが事前に分からないコスト(買い方は受け取る側)
・配当落調整金は売り方が払い、買い方が受け取る
・売り方の損失には上限がない
・信用取引では議決権も株主優待も得られない
・積み上がった建玉は将来の逆向きの注文になる

あわせて読みたい:逆日歩とは貸借銘柄とは貸借倍率とは増担保規制とは売り禁とはハイパー空売りとは売り枯れとは

スポンサーリンク

Xでフォローしよう

おすすめの記事