
CFPSとは、1株あたりのキャッシュフローを表す指標です。Cash Flow Per Share の略で、1株につきどれだけの現金を生み出したかを示します。
利益は会計処理で動きますが、現金の出入りはごまかしが効きません。
そのためEPS(1株当たり利益)だけでは見抜けない会社の実力を、CFPSは映し出します。
この記事でわかること
・簡易キャッシュフローと営業キャッシュフローの2つの計算方法
・なぜ減価償却費を足し戻すのか
・🔴 EPSとCFPSの差が大きく開く業種
・PCFR(株価キャッシュフロー倍率)との関係
・PERとPCFRを並べて読む4象限
・のれん償却や減損がある会社の読み方
・CFPSが使えない場面と、その限界
CFPSとは
CFPS(読み方:しーえふぴーえす)は、会社が1年間に生み出した現金を、発行済株式数で割った数字です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | Cash Flow Per Share(1株当たりキャッシュフロー) |
| 計算式 | キャッシュフロー ÷ 発行済株式数 |
| 単位 | 円 |
| 似た指標 | EPS(1株当たり利益)、BPS(1株当たり純資産) |
| 組み合わせる指標 | PCFR(株価キャッシュフロー倍率) |
| 性質 | 会計処理の影響を受けにくい |
EPSが「会計上の利益」を1株あたりにしたものだとすれば、CFPSは「実際の現金」を1株あたりにしたものです。
単独で使うことはあまりなく、株価と組み合わせてPCFRという倍率にして使うのが一般的です。
なぜEPSだけでは足りないのか
利益という数字は、思っているより柔らかいものです。
| 会計上の判断 | 利益への影響 | 現金への影響 |
|---|---|---|
| 減価償却の方法を変える | 変わる | 変わらない |
| 耐用年数を長くする | 増える | 変わらない |
| のれんの償却期間を変える | 変わる | 変わらない |
| 減損損失を計上する | 大きく減る | 変わらない |
| 在庫の評価を変える | 変わる | 変わらない |
どれも会社が現金を1円も動かしていないのに、利益だけが動きます。
もちろん恣意的に操作できるわけではなく、会計基準と監査の枠内での話です。ただし同じ実力の会社でも、会計方針が違えばEPSは違う数字になります。
そこで「現金の出入りに近い数字で比べよう」というのがCFPSの発想です。
CFPSの計算方法は2つある
実務では2種類の計算方法が使われます。どちらで計算されているかを確認しないと、他社と比べられません。
| 方法 | 計算式 | 特徴 |
|---|---|---|
| 簡易法 | (当期純利益+減価償却費)÷ 発行済株式数 | 手計算できる。四季報などで使われる |
| 営業CF法 | 営業活動によるキャッシュ・フロー ÷ 発行済株式数 | より正確。運転資本の増減も反映される |
簡易法は、損益計算書の当期純利益に、現金の支出を伴わない費用である減価償却費を足し戻すという考え方です。
より正確なのは営業CF法です。キャッシュフロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使うと、売掛金や在庫の増減といった運転資本の動きまで反映されます。
簡易法は在庫が膨らんでいても数字に出ません。売れていない商品を作り続けている会社でも、簡易法のCFPSは高く出てしまいます。
なぜ減価償却費を足し戻すのか
ここがCFPSの核心です。
| 年 | 実際に払った現金 | 費用として引かれる額 |
|---|---|---|
| 1年目(購入時) | 10億円 | 1億円 |
| 2年目 | 0円 | 1億円 |
| 3〜10年目 | 0円 | 毎年1億円 |
2年目以降、この会社は機械のために現金を1円も払っていません。
それでも損益計算書には毎年1億円の費用が並びます。つまり利益は1億円ぶん低く表示されているのに、現金はその分だけ手元に残っています。
だから利益に減価償却費を足し戻すと、実際に手元に残った現金に近い数字になるわけです。
EPSとCFPSの差が意味すること
2つの数字の差は、その会社の性質を表します。
ソフトウェア、人材、コンサル、小売など。
PERで判断してよい
鉄道、電力、通信、鉄鋼、半導体、不動産。
PERだけだと割高に見える
減価償却が重い業種ほど差が開く
具体的にイメージするために、単純化した例で比べます。
| 項目 | A社(設備が軽い) | B社(設備が重い) |
|---|---|---|
| 当期純利益 | 100億円 | 50億円 |
| 減価償却費 | 10億円 | 100億円 |
| EPS | 100円 | 50円 |
| CFPS | 110円 | 150円 |
| PER | 10倍 | 20倍(割高に見える) |
| PCFR | 9.1倍 | 6.7倍(実は割安) |
PERだけを見るとB社は割高です。ところがPCFRで見ると、B社のほうが割安になります。
B社は毎年100億円の減価償却費を計上していますが、その現金は出ていきません。手元に残っている現金は、実はA社より多いのです。
この現象はシクリカル銘柄のように設備が重い業種で顕著に出ます。PERだけで割高と判断すると、こうした会社を取りこぼします。
PCFRの使い方
CFPSを株価と組み合わせたものがPCFR(株価キャッシュフロー倍率)です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 計算式 | 株価 ÷ CFPS |
| 意味 | 今の株価が、1年ぶんの現金創出力の何倍か |
| 低いほど | 割安と判断される |
| 目安 | 絶対的な基準はない。同業他社と比べる |
| 対応する指標 | PERのキャッシュフロー版 |
絶対的な目安の数字はありません。設備の重さが業種によってまったく違うため、PCFRを異業種間で比べても意味がないからです。
使い方は必ず同業他社との比較か、その会社自身の過去との比較にしてください。詳しくはPCFRとはで扱っています。
PERとPCFRを並べて読む
2つの倍率を組み合わせると、会社の見え方が立体的になります。
| PER | PCFR | 読み取れること |
|---|---|---|
| 低い | 低い | 素直に割安。ただし理由があるはず |
| 高い | 低い | 減価償却が重い会社。PERだけだと見落とす |
| 低い | 高い | 利益に一時的なかさ上げがある可能性 |
| 高い | 高い | 成長期待が織り込まれている |
3行目に注意してください。PERが低いのにPCFRが高い会社は、資産の売却益など、現金を伴わない、あるいは一度きりの利益で数字が良く見えているおそれがあります。
この場合は特別利益の中身を確認してください。決算短信の損益計算書を見れば、どこで利益が出たかが分かります。
のれん償却がある会社の読み方
買収を繰り返している会社では、のれんの扱いがEPSを大きく左右します。
| 会計基準 | のれんの扱い | EPSへの影響 |
|---|---|---|
| 日本基準 | 最長20年で毎年償却 | 毎年下がる |
| IFRS | 償却しない(毎年減損テスト) | 通常は影響なし |
同じ買収をしても、採用している基準が違うだけでEPSが変わります。
のれん償却は現金の支出を伴わないため、CFPSでは足し戻されます。日本基準で買収を重ねている会社は、PERで見ると割高に見えやすいので、PCFRを併用する価値が高くなります。
減損損失が計上された年も同じです。巨額の赤字に見えても、現金は出ていっていません。特別損失とはでも解説しています。
CFPSの限界
万能ではありません。むしろ限界を知らずに使うと、危険な判断につながります。
| 限界 | 内容 |
|---|---|
| ① 設備投資を考慮しない | 最大の弱点。稼いだ現金の大半を設備に使う会社でも高く出る |
| ② 借入の返済を考慮しない | 有利子負債が重い会社は、現金が返済に消える |
| ③ 簡易法では在庫が見えない | 売れない在庫が膨らんでいても数字に出ない |
| ④ 異業種比較ができない | 設備の重さが違いすぎて、水準の意味が変わる |
| ⑤ 成長性を表さない | あくまで過去1年の実績。将来は保証しない |
①が最も重要です。鉄道会社が年間1,000億円の現金を稼いでも、線路と車両の更新に900億円使うなら、株主に残るのは100億円です。
この差を見るには、営業キャッシュフローから設備投資を引いたフリーキャッシュフローを見る必要があります。キャッシュフローとはで3つのキャッシュフローの読み方を扱っています。
CFPSで会社を比較する手順
実際に使うときの順番
⑧を省くと、たまたま良かった1年を実力と勘違いします。資産の売却があった年や、大型の受注が入った年は、翌年に反動が出ます。
銘柄の絞り込み方は株のスクリーニングとは、指標の全体像はファンダメンタルズ分析とはを参照してください。
CFPSに関するよくある質問
まとめ
CFPSは「利益では見えない現金の実力」を測るための指標です。
この記事のまとめ
・簡易法は(当期純利益+減価償却費)÷ 発行済株式数
・より正確なのは営業活動によるキャッシュ・フローを使う方法
・🔴 利益は会計処理で動くが、現金の出入りは動かない
・減価償却費を足し戻すのは、現金が出ていない費用だから
・🔴 設備が重い業種ほどEPSとCFPSの差が開く
・鉄道・電力・通信・鉄鋼・半導体・不動産はPERだけだと割高に見える
・PCFR=株価 ÷ CFPS。絶対的な目安はなく同業他社と比べる
・🔴 PERが低くPCFRが高い会社は、一時的な利益のかさ上げに注意
・日本基準ののれん償却は現金支出を伴わないため、CFPSで足し戻される
・🔵 最大の弱点は設備投資を考慮しないこと。フリーCFで補う
※ 本記事は2026年8月時点の情報にもとづく解説であり、特定の銘柄や投資判断を推奨するものではありません。記載した計算例は仕組みを説明するための仮定値です。
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