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米国株の円での損益は、ドル建ての騰落率とドル円の変化率の掛け算「(1+株価の変化) × (1+為替の変化) − 1」で決まります。株価が20%上がっても、1ドル150円が130円になれば円での利益は4%です。反対のことも起きます。S&P500を2009年末から2025年末まで持っていた場合、ドル建ては6.14倍でした。ところが円安(81.67円→156.80円)が重なり、円建てでは10.34倍になっています。計算式と早見表、為替差益の税金、16年分の実際の数字、為替の影響への備え方を順にまとめました。
- 円建てリターンは (1+ドル建て騰落率) × (1+ドル円の変化率) − 1 で出せます。株価が+20%でも150円→130円(−13%)なら円では+4%、株価が変わらなくても150円→170円なら+13%です。
- 2010〜2025年の16年で、株価と為替が同じ向きに動いた年は7年しかありません。2022年はS&P500が−19.4%でも円安で円建ては−7.8%、2010年は+12.8%でも円高で−1.0%でした。
- 税金は円で計算します。ドルで見て損益ゼロでも、円安なら円での売却益に20.315%がかかります。ドルのまま置いていた預り金を円に戻したときの為替差益は、原則として雑所得です。
計算式(円建てリターンは掛け算で決まる)
米国株は、円をドルに替えて(円貨決済なら自動で替えて)ドル建ての株を買います。円に戻したときの金額は「株価×株数×売るときのドル円」です。そのため、円建ての騰落率は次の式になります。
| 項目 | 式 |
|---|---|
| 円建ての評価額 | ドル建ての株価×株数×ドル円 |
| 円建ての騰落率 | (1+ドル建て騰落率) × (1+ドル円の変化率) − 1 |
| おおよその目安 | ドル建て騰落率+ドル円の変化率(変化が小さいとき) |
たとえば100ドルの株を、1ドル150円のときに1株買ったとします(15,000円)。1年後に株価が110ドル(+10%)、ドル円が160円(+6.7%)なら、円では17,600円で+17.3%です。足し算の目安(+16.7%)より少し大きいのは、値上がりしたドルの部分にも円安の分が上乗せされる「掛け算の効果」があるからです。
逆向きも同じ理屈です。株価の上昇を打ち消すのに要る円高は、思ったより小さいもので、株価の+15.4%は150円→130円の円高(−13.3%)で帳消しになります。米国株を持つことは、米国企業の株と米ドルを両方持つことだと考えると腑に落ちやすいです。円安・円高そのものについては円安・円高の記事を参照してください。
早見表(株価と為替の組み合わせで損益はこう変わる)
100ドルの株を1ドル150円で買った(15,000円)場合の、円での評価額と騰落率です。
| 株価\ドル円 | 130円(円高) | 150円(変わらず) | 170円(円安) |
|---|---|---|---|
| 80ドル(−20%) | 10,400円(−30.7%) | 12,000円(−20.0%) | 13,600円(−9.3%) |
| 100ドル(±0%) | 13,000円(−13.3%) | 15,000円(±0%) | 17,000円(+13.3%) |
| 120ドル(+20%) | 15,600円(+4.0%) | 18,000円(+20.0%) | 20,400円(+36.0%) |
表の四隅を見比べてみてください。株価の動きが同じ±20%でも、為替しだいで円での結果は−30.7%から+36.0%まで開きます。右上(株安・円安)では為替がクッションになり、左下(株高・円高)では利益のほとんどが為替で消えます。
損益は、証券会社の画面でドル建てと円建ての両方を見て確かめます。たいていの証券会社は円建ての評価損益に為替の影響を含めて出しています。ただ、外貨決済で買った株について取得時の為替レートをどう記録しているかは、会社ごとに違います。自分でも記録しておくなら、買った日の株価・株数・為替レートの3つを残しておくと、あとで税金の計算にも使えます。
S&P500の16年をドル建てと円建てで比べる
S&P500の年末値(CboeのSPX終値、配当を含まない価格指数)と、ドル円の年末値(FREDのDEXJPUS、ニューヨーク正午レート)を使い、各年の騰落率をドル建てと円建てで計算しました。
| 年 | 年末ドル円 | S&P500(ドル建て) | ドル円の変化 | 円建て |
|---|---|---|---|---|
| 2010 | 81.67 | +12.8% | −12.3% | −1.0% |
| 2011 | 76.98 | −0.0% | −5.7% | −5.7% |
| 2012 | 86.64 | +13.4% | +12.5% | +27.6% |
| 2013 | 105.25 | +29.6% | +21.5% | +57.4% |
| 2014 | 119.85 | +11.4% | +13.9% | +26.8% |
| 2015 | 120.27 | −0.7% | +0.4% | −0.4% |
| 2016 | 116.78 | +9.5% | −2.9% | +6.4% |
| 2017 | 112.69 | +19.4% | −3.5% | +15.2% |
| 2018 | 109.70 | −6.2% | −2.7% | −8.7% |
| 2019 | 108.67 | +28.9% | −0.9% | +27.7% |
| 2020 | 103.19 | +16.3% | −5.0% | +10.4% |
| 2021 | 115.17 | +26.9% | +11.6% | +41.6% |
| 2022 | 131.81 | −19.4% | +14.4% | −7.8% |
| 2023 | 140.92 | +24.2% | +6.9% | +32.8% |
| 2024 | 157.37 | +23.3% | +11.7% | +37.7% |
| 2025 | 156.80 | +16.4% | −0.4% | +16.0% |
| 2026(9月下旬まで) | 157.18 | +12.2% | +0.2% | +12.5% |
この表から分かることが3つあります。まず、16年のうち株価と為替が同じ向きに動いた年は7年だけで、どちらかが逆に動いた年のほうが多いことです。次に、S&P500がドル建てで下がった4年(2011・2015・2018・2022)のうち、同時に円高になったのは2011年と2018年の2回だけでした。「株安のときは必ず円高になる」とは言えません。2022年は利上げで円安が進み、円建ての損失はドル建ての半分以下に縮みました。最後に、2009年末から2025年末までの累計はドル建て6.14倍(年率12.0%)、円建て10.34倍(年率15.7%)でした。この差のほとんどは、2012〜2015年と2021〜2024年の円安によるものです。もちろん、次の16年も同じになるとは限りません。
数字は2010〜2025年の各年の最終営業日の値で、2026年はS&P500が9月28日、ドル円が9月25日までです。S&P500は配当を含まない価格指数なので、配当込みの実際のリターンは毎年1〜2%ほど高くなります。ドル円は仲値ではなくニューヨーク市場の正午レートで、証券会社が使う手数料込みのレートとは少しずれます。
為替差益の税金(円で計算するのが原則)
日本の税金は、すべて円に直して計算します。米国株を売ったときの利益は「売ったときの円換算額−買ったときの円換算額」です。為替による増減も株の売却益(譲渡所得)に含まれ、まとめて20.315%がかかります。特定口座(源泉徴収あり)なら、証券会社が円で計算して源泉徴収します。
| ケース | ドル建て | 円建て | 税金 |
|---|---|---|---|
| 100ドルで買い100ドルで売る、150円→160円 | 損益0 | +1,000円 | 約203円かかる |
| 100ドルで買い110ドルで売る、150円→135円 | +10% | −150円 | かからない(損失) |
| 売却代金をドルのまま持ち、後で円に戻す | — | 為替差益 | 原則として雑所得(総合課税) |
気をつけたいのは3行目です。ドルの預り金を円に戻したときの為替差益は、株の売却益とは別の雑所得として扱うのが原則で、特定口座でも自動では計算されません。会社員で給与以外の所得が年20万円以下なら所得税の確定申告はいりませんが、住民税の申告は別に要ることがあります。細かな扱いは取引の形で変わるので、金額が大きいときは国税庁のタックスアンサーか税務署で確かめてください。全体像は米国株の税金と米国株の確定申告にまとめています。
為替の影響への備え方
為替の動きは当てられません。影響を小さくするやり方を組み合わせるのが現実的です。
| 方法 | 効果 | 注意点 |
|---|---|---|
| 時間を分けて買う | 取得時の為替レートが平均化される | 円高・円安のどちらにも「最高値」では買えない |
| 為替ヘッジ付きの投資信託・ETF | 為替の変動をほぼ消せる | 日米の短期金利差がヘッジコストになり、米国の金利が高い時期は年数%に達する |
| ドルのまま持ち、ドルで再投資する | 円に戻すタイミングを選べる | 円に戻したときの為替差益は雑所得 |
| 円資産とのバランス | 資産全体の為替の影響を調整 | 生活費が円なので、全額をドル資産にしない |
時間を分けて買うやり方はドルコスト平均法、ヘッジの仕組みとコストは為替ヘッジあり・なしの記事に書いています。私の考えでは、長く持つなら為替は「上にも下にも振れるもの」と割り切り、両替のコストを下げるほうが確実です。円をドルに替える手数料は証券会社によって0〜25銭と差があり、円貨決済と外貨決済の選び方でも変わります。
為替のコストで口座を選ぶなら
米国株の売買手数料は主なネット証券でほぼ同じ(約定代金の0.495%、上限22ドル)で、差がつくのは円とドルを替えるときの為替コストです。1ドル150円のとき、1ドルあたり25銭の会社で100万円分を買うと、片道で約1,700円かかります。0銭の会社ならこれがかかりません。
10社の手数料・為替・NISA・時間外取引を並べた証券会社の比較もあります。内容は2026-09-24時点の各社公式ページによります。口座開設でアフィリエイト報酬を得る場合があります。
為替と米国株の損益に関するよくある質問
円安のときに米国株を買うのは損ですか?
株価が上がったのに円建てで損をすることはありますか?
為替差益だけでも税金はかかりますか?
為替ヘッジありとなしはどちらがよいですか?
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執筆:佐々木優也(Pacific Stock編集長・専業投資家歴20年)
数字は2026年9月時点のもので、税金の扱いは国税庁の資料による一般的な説明です。この記事は情報提供を目的としたもので、特定の銘柄や証券会社の売買・口座開設を勧めるものではありません。当サイトは証券会社の口座開設などでアフィリエイト報酬を得る場合がありますが、比較の順位や数値には影響しません。最終更新2026-10-07。
