JPX信用取引残高の日次公表開始|変更点・公式確認方法・証券会社対応・活用のポイントを徹底解説

東京証券取引所は2026年9月28日(月)から、全銘柄の信用取引残高(信用残)を毎営業日公表するようになりました。これまでは毎週金曜時点の残高を翌週火曜に出す週1回の公表でしたが、いまは前営業日の残高が、毎営業日16時ごろにJPXのウェブサイトに載ります。株数に加えて、金額も新しく公表されるようになりました。

何が変わったのかに加えて、公式サイトでの確認方法とPDFの見方、証券会社ごとの対応状況をまとめました。公表が始まったばかりの日次の数字も実際に並べてみたので、週1回の数字では見えていなかった動きも紹介します。

まず押さえておきたいこと

・2026年9月28日から、全銘柄の信用残が毎営業日16時ごろに公表(前営業日分)
・株数に加えて金額と上場比(上場株式数に対する割合)が新しく載った
・最初の日次データは9月25日申込分。9月28日分は9月29日に公表
・証券会社の画面への反映は会社ごとに時刻が違う(16時〜21時30分ごろ)
・実際に数字を並べると、9月24日・25日・28日の3営業日の買い残の増減のうち、35%は週でまとめると相殺されて見えなくなる

何が変わったのか|週1回の公表が毎営業日になった

今回の見直しは、東証が信用取引残高を集計するシステムを入れ替えたことに合わせて行われました。変更は2025年12月に予告され、2026年7月6日に変更日が9月28日(月)と決まり、9月27日に「予定どおり実施する」と発表されています。

項目 変更前 変更後(9月28日〜)
資料の
名前
銘柄別信用取引週末残高 銘柄別信用取引残高
公表の
頻度
週1回 毎営業日
何時点の
残高か
毎週金曜(最終営業日)の申込分 前営業日の申込分
公表の
時刻
翌週の第2営業日(通常は火曜)16時30分 毎営業日16時ごろ
載っている
数字
株数のみ・前週比 株数と金額・前日比・上場比

ほかの資料の扱いは次のとおりです。市場全体の合計である「信用取引現在高」は週1回のままです。一般信用・制度信用別の表と1つにまとめられ、毎週火曜(第2営業日)16時の公表になりました。

資料 公表 中身
銘柄別信用
取引残高
毎営業日
16時ごろ
全銘柄の売り残・買い残(株数と金額)
日々公表銘柄等
信用取引残高
毎営業日
16時ごろ
日々公表銘柄や規制銘柄など、注意が必要な銘柄の残高。以前の「個別銘柄信用取引残高表」
信用取引
現在高
週1回
(火曜16時)
市場全体の合計。一般信用と制度信用の内訳

公表のタイミング|「申込日」と「公表日」は1営業日ずれる

日次の信用残で1番まちがえやすいのが日付です。JPXの資料に書かれている日付は「申込日」で、公表されるのはその翌営業日の16時ごろです。つまり、16時に見える数字は「今日」ではなく「前の営業日」の残高です。

取引の翌営業日16時ごろに前営業日の信用取引残高が公表される流れ

公表日(16時ごろ) 載っている残高
9月28日(月) 9月25日(金)申込分(新しい形式の初回)
9月29日(火) 9月28日(月)申込分
9月30日(水) 9月29日(火)申込分
10月1日(木) 9月30日(水)申込分
10月2日(金) 10月1日(木)申込分
10月5日(月) 10月2日(金)申込分(週末をはさむ)

月曜の16時に出るのは前週金曜の分で、祝日のあとも同じようにずれます。旧形式で最後に出たのは9月18日申込分(9月25日公表)で、9月25日申込分からが新しい形式です。

JPX公式サイトでの確認方法|3ステップ

日次の信用残は、JPX(日本取引所グループ)のウェブサイトで無料で見られます。

手順 やること
① ページを開く JPXのサイトで「マーケット情報」→「統計情報(株式関連)」→「信用取引残高等」を開く
② タブを選ぶ 「銘柄別信用取引残高」のタブを選ぶ。1番上が最新の申込分
③ PDFで
銘柄を探す
PDFを開き、検索(Ctrl+F)で銘柄名か5桁のコードを入れる。トヨタ自動車なら「72030」

注意点が2つあります。1つは、公開されているのはPDFだけだということです。9月25日申込分のPDFは109ページあり、スマホで全体を眺めるのは現実的ではありません。検索で銘柄に飛ぶのが早道です。

もう1つは、コードの末尾に「0」が付いた5桁で載っていることです。「7203」で検索しても別の数字の並びに当たることがあるので、「72030」のように0を足して探します。

多くの銘柄を毎日追いたい場合は、JPX総研のデータサービス「J-Quants」のAPIでも、9月28日から日次のデータの配信が始まっています。

PDFの見方|1銘柄につき「株数」と「金額」の2行

新しいPDFでは、1つの銘柄が2行で載っています。上の行が株数、下の行が金額(円)です。列の意味は次のとおりです。

列 意味
売残高 信用で売っていて、まだ買い戻していない残高(売り残)
買残高 信用で買っていて、まだ売っていない残高(買い残)
前日比 前営業日からの増減。「▲」は減少
上場比 残高が上場株式数の何%にあたるか(今回から新しく載った)
一般信用/
制度信用
売り残・買い残の内訳。制度信用は返済期限6か月、一般信用は証券会社ごとに条件を決める
市場・種別 プライム/スタンダード/グロース、「貸」は貸借銘柄、「制」は制度信用銘柄

例として、トヨタ自動車の9月25日申込分を読むと次のようになります。

項目 株数 金額
買い残 17,051,600株 519億円
売り残 2,004,700株 59億円
買い残の前日比 ▲2,058,200株 ▲61億円
上場比(買い) 0.1% —

信用倍率(買い残÷売り残)は、株数で8.51倍、金額で8.82倍です。金額が載ったことで、株数と金額の2通りで倍率を出せるようになりました。信用倍率そのものの読み方は信用倍率の記事で解説しています。

新しく載った「金額」は時価ではない|1株あたりに直すと見えるもの

金額の列を見るときに注意したいのは、これが「残高の株数×その日の株価」ではないことです。JPXの資料には金額の定義の説明がありませんが、1株あたりに直すと買いと売りで値が違います。トヨタ自動車なら、買い残は1株あたり3,042.8円、売り残は2,935.8円です。同じ日の株価を掛けた数字なら、この2つは同じになるはずです。

つまり金額は、信用で建てたときの代金を足し上げた数字と読めます。そうだとすると、買い残の金額を株数で割れば、信用で買っている人が平均いくらで買ったかの目安になります。9月25日の終値と並べると次のとおりです。

銘柄 買い残の1株あたり 9月25日の終値との差
三菱UFJフィナンシャル・グループ
8306・買い残1,107億円
3,297円 +12.7%
終値3,714円
アドバンテスト
6857・買い残774億円
32,041円 +6.1%
終値34,000円
トヨタ自動車
7203・買い残519億円
3,043円 −1.7%
終値2,990円
任天堂
7974・買い残741億円
8,274円 −2.1%
終値8,100円
レーザーテック
6920・買い残584億円
42,055円 −2.7%
終値40,910円
村田製作所
6981・買い残624億円
8,948円 −10.3%
終値8,022円
JX金属
5016・買い残985億円
4,102円 −13.3%
終値3,555円
ディスコ
6146・買い残582億円
63,869円 −15.1%
終値54,220円
太陽誘電
6976・買い残544億円
11,585円 −20.9%
終値9,160円

差がマイナスの銘柄は、信用で買った人の多くが含み損を抱えている可能性があります。株価が1株あたりの金額まで戻ると「やれやれ売り」が出やすい、という見方ができます。逆にプラスが大きい銘柄は、利益を確定する売りが出やすい水準にあると考えられます。

信用買い残の金額が1番大きいのはキオクシアホールディングスで、9月25日申込分で8,530億円ありました。東証全体の信用買い残(6兆4,608億円)の13.2%を1銘柄で占めています。1株あたりは61,238円で、9月25日の終値(分割前の株価に直して約55,780円)より−8.9%低い水準でした。

1株あたりの金額を使うときの注意

・JPXは金額の定義を説明していない。ここでの読み方は、買いと売りの1株あたりが違うことからの推定
・一般信用と制度信用が合わさっている。建てた時期もばらばらで、平均値にすぎない
・株式分割があると株数だけが増え、1株あたりの金額は比べられなくなる(キオクシアは10月1日付で1対3の分割)
・誰がいくらで建てたかまでは分からない

信用買い残の金額が大きい10銘柄|9月28日申込分

金額で並べると、株価の高い銘柄や、話題になって個人の買いが集まった銘柄が上に来ます。株数で並べると1位はランドで、株数の上位10銘柄のうち金額でも上位10に入るのは三菱UFJフィナンシャル・グループとソフトバンクグループの2銘柄だけです。どれだけのお金が信用買いに入っているかが分かるのが、金額が載った意味です。

銘柄 買い残(金額) 上場比・前日比
① キオクシアホールディングス
285A・プライム
9,003億円 2.7%
+473億円
② ソフトバンクグループ
9984・プライム
1,916億円 0.5%
▲39億円
③ 東京エレクトロン
8035・プライム
1,381億円 0.5%
▲5億円
④ フジクラ
5803・プライム
1,251億円 1.3%
▲10億円
⑤ 三菱UFJフィナンシャル・グループ
8306・プライム
1,016億円 0.3%
▲91億円
⑥ JX金属
5016・プライム
969億円 2.5%
▲16億円
⑦ 古河電気工業
5801・プライム
785億円 2.6%
+13億円
⑧ アドバンテスト
6857・プライム
775億円 0.3%
+1億円
⑨ 任天堂
7974・プライム
737億円 0.7%
▲4億円
⑩ 三井住友フィナンシャルグループ
8316・プライム
715億円 0.3%
▲83億円

週1回の数字では見えなかった動き|9月24日・25日・28日の3営業日を並べてみた

日次になって何が変わるのかを実際の数字で確かめました。旧形式で最後に出た9月18日申込分と新形式の9月25日申込分・9月28日申込分を使い、東証の信用取引の対象になっている3,632銘柄の1日ごとの増減を並べています。

9月18日(金)から25日(金)までの営業日は、祝日と休日をはさんで9月24日と25日の2日だけでした。25日の「前日比」から、24日の増減も逆算できます。

見たもの 買い残 売り残
増減の向きが途中で入れ替わった銘柄 2,325銘柄(64.3%) 1,222銘柄(53.4%)
期間の増減を足すと相殺されて消える割合 34.7% 9.1%

買い残が1日ごとに増えたり減ったりした銘柄が64%あり、1日ごとの増減を全部足すと、動いた量の35%は差し引きで消えていました。ただし9月28日は権利付最終売買日で、優待のクロス取引による一時的な増減も入っています(次の章)。週1回の数字は、その週の「最後にどれだけ残ったか」しか教えてくれません。途中で大きく買われてまた売られたという動きは、日次でなければ見えなかったということです。

9月28日は権利付最終日|一般信用の売り残が1日で増えた

日次になった効果が分かりやすく出たのが、9月28日申込分です。9月28日は、9月末に権利が確定する株主優待や配当の権利付最終売買日でした。優待を狙う人が、現物の買いと一般信用の売りを同時に入れる「クロス取引」をするため、この日は一般信用の売り残が増えます。

銘柄 一般信用の売り残
9月28日の増加
ヤマダホールディングス
9831・プライム
+5,967,700株
名古屋鉄道
9048・プライム
+1,846,000株
ケーズホールディングス
8282・プライム
+1,737,200株
TOKAIホールディングス
3167・プライム
+1,452,400株
オリエンタルランド
4661・プライム
+1,300,800株
京王電鉄
9008・プライム
+1,245,600株
シンプレクス・ホールディングス
4373・プライム
+1,158,400株
ユー・エス・エス
4732・プライム
+1,130,500株

一般信用の売り残は、この1日で743銘柄で増え、合計で4,405万株増えました。増えた量の上位20銘柄はすべて9月に株主優待の権利がある銘柄で、増えた株数の96.5%が9月優待の銘柄に集中していました。

クロス取引の売りは、権利が確定すると返済されて減るのがふつうです。減ったあとの金曜の残高だけを見る週1回の公表では、この増減は差し引きで見えにくくなります。優待のクロス取引の仕組みはクロス取引の記事で解説しています。

証券会社の対応状況|反映の時刻は会社ごとに違う

JPXの公表は16時ごろですが、証券会社の画面やアプリに反映される時刻は会社ごとに違います。2026年9月29日時点で、各社の公式サイトで確認できた内容をまとめます。

証券会社 対応の内容
松井証券 9月28日から日次で提供。投資情報ツール「マーケットラボ」などで、東証・名証の全銘柄の前営業日の信用残(信用買残・信用売残・信用倍率)を毎営業日19時10分ごろに更新。マーケットラボでは当日の増減の推計値(17時10分ごろ)も見られる
楽天証券 9月28日から日次。ログイン後のウェブ、iSPEED、マーケットスピードで毎営業日21時30分ごろに前営業日分を更新。RSSの項目は「前週比」から「前日比」へ。10月2日以降、ログイン前のページの信用残は配信を終了
野村證券 9月28日から日次。銘柄スクリーニングや個別銘柄の画面で毎営業日16時ごろに前日分を更新。国内株の注文画面からは信用売残・信用買残・信用倍率の表示を外した
三菱UFJ
eスマート証券
10月3日にシステムを改修する予定。kabuステーションなどで営業日の16時30分ごろに日次更新へ。反映の完了は10月5日(月)朝8時ごろの予定で、9月29日は更新なし
SBI証券 9月29日時点で、よくある質問の回答は「毎週、第2営業日の17時ごろに更新」のまま。日次化についての案内は確認できなかった
マネックス
証券
9月29日時点で、9月のお知らせの一覧に日次化についての案内は確認できなかった

ここから分かるのは、同じ日の信用残でも、見る場所によって最大で5時間以上ずれることです。いち早く見たいならJPXの公式サイト(16時ごろ)が確実で、夜にまとめて見るなら証券会社のツールでも足ります。SBI証券とマネックス証券は、今後お知らせが出る可能性があります。使っている証券会社の最新の案内を確認してください。

需給判断への活用ポイント|日次の信用残をどう使うか

信用残が毎日わかるようになると、需給の変化を1週間待たずに追えます。使い方の例を5つ挙げます。

見るところ 読み方
① 買い残が
何日続けて
増えているか
制度信用の買いは6か月以内に売るか現引きする必要がある。買い残が連日積み上がる銘柄は、将来の売り圧力がたまっている
② 株価と
売り残の
組み合わせ
株価が上がっているのに売り残が増え続ける銘柄は、売り方の買い戻し(踏み上げ)が起きやすい
③ 1株あたりの
金額と株価の差
株価が買い残の1株あたりの金額を下回っていれば、戻ったところで「やれやれ売り」が出やすい
④ 上場比 買い残が上場株式数の何%か。上場比が高い銘柄ほど、信用の買いの返済売りが株価に与える影響が大きくなりやすい
⑤ 日証金の
残高との
使い分け
日本証券金融の貸借取引残高は当日の夜に速報が出るのでさらに速い。ただし一般信用は入らない。全体像は信用残、速さは日証金

①の考え方は、買い残が減りきった状態を指す売り枯れとも関係します。⑤の日証金の数字は貸借倍率の記事、信用で買っている人の含み損益の目安は信用評価損益率の記事で解説しています。

日次の信用残を見るときの注意点

注意点 中身
いつも
1営業日遅れ
16時に見えるのは前営業日の残高。その日の取引は、翌営業日の16時まで反映されない
1日の増減は
振れやすい
権利付最終日のクロス取引や現引き・現渡し、信用期日の返済で1日だけ大きく動くことがある。数日の流れで見る
載っている
銘柄の範囲
9月25日申込分は4,261銘柄(ETFなどの投信等を含む)。貸借銘柄2,670・制度信用銘柄1,563・その他28の区分で並んでいる。プライム・スタンダード・グロースの株式は3,640銘柄
金額は
時価ではない
建てたときの代金の合計と読める。株価が動いても金額は変わらない
株式分割で
株数が変わる
分割があると残高の株数も増えるため、前日比が大きく出ても実際の売買とは限らない

とくに日々の増減は、ニュースやSNSで「信用買い残が急増」と取り上げられやすくなります。1日の数字だけで判断せず、数日分を並べ、株価の動きと合わせて見ることが大切です。なお、日々公表銘柄の指定がなくなったわけではなく、規制の段階を知らせる仕組みとして続いています。指定の意味は日々公表銘柄の記事で解説しています。

まとめ

論点 整理
何が変わった 全銘柄の信用残が週1回→毎営業日。株数に加えて金額と上場比も載った
いつ見られる 前営業日の申込分を毎営業日16時ごろ。初回は9月25日申込分(9月28日公表)
どこで見る JPX「信用取引残高等」→「銘柄別信用取引残高」のPDF。コードは末尾に0を付けた5桁で検索
証券会社 松井19時10分ごろ・楽天21時30分ごろ・野村16時ごろ・三菱UFJ eスマートは10月5日から。SBIとマネックスは9月29日時点で案内なし
日次で見えたこと 9月24日・25日・28日の3営業日の買い残の増減の35%は、週でまとめると相殺されて見えなかった
使い方 1日の数字で判断せず、数日の流れと株価、1株あたりの金額との差を合わせて見る

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