消費者物価指数(CPI)とは、私たちが買う商品やサービスの価格が全体としてどれだけ変動したかを示す、総務省の統計です。
ニュースでは「物価が○%上昇」と一言で語られますが、実はCPIには総合・コア・コアコアという3つの数字があり、場面によって使い分けられています。
さらに2026年7月分から基準が2020年から2025年へ改定されました。この記事では、その変更点も含めて整理します。
この記事でわかること
・2025年基準への改定で何が変わったか
・CPIが実感とズレる4つの理由
・日銀が2%目標で見ているのはどの指数か
・CPIが上がると株価はどう動くか
消費者物価指数とは
消費者物価指数は、全国の世帯が購入する商品・サービスの価格を継続して調べ、基準となる年を100として指数化したものです。総務省統計局が毎月公表しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作成元 | 総務省統計局 |
| 公表頻度 | 毎月(全国は翌月中旬・東京都区部は当月末に先行公表) |
| 対象 | 食料・住居・光熱・交通・通信・教育など500を超える品目 |
| 現在の基準 | 2025年=100(2026年7月分から) |
| 主な用途 | 日銀の金融政策、年金額の改定、賃金交渉の基礎 |
※ 出典:総務省統計局「2025年基準 消費者物価指数」(2026年8月時点)
CPIは単なる統計ではありません。年金額の改定にも、日銀の利上げ判断にも直結する、生活と資産の両方に効く数字です。
総合・コア・コアコアの3つがある
CPIで最初につまずくのが、この3つの区別です。違いは「何を除いているか」だけです。
| 呼び方 | 正式名称 | 除くもの | 主に使う場面 |
|---|---|---|---|
| 総合 | 総合指数 | なし(すべて含む) | 生活実感に最も近い。年金改定など |
| コア | 生鮮食品を除く総合 | 生鮮食品 | 日銀の物価目標。報道の中心 |
| コアコア | 生鮮食品及びエネルギーを除く総合 | 生鮮食品+エネルギー | 物価の基調(本当の実力)を見る |
なぜわざわざ除くのでしょうか。理由は「一時的な要因で大きくぶれるから」です。
天候不順でレタスが2倍になっても、それは経済の実力とは関係ありません。数か月で元に戻る値動きに金融政策を左右されないためです。
原油価格や為替で大きく振れるうえ、日本ではほぼ輸入に頼っているため国内の需要の強さを表しません。これを除いたコアコアが、物価の「地力」を最もよく表します。
2026年7月分から2025年基準に改定された
CPIは5年ごとに基準年を改定します。2026年7月分(2026年8月21日公表)から、それまでの2020年基準に代わって2025年基準(2025年=100)が適用されました。17回目の基準改定にあたります。
| 指数 | 2026年7月分の指数 | 前年同月比 |
|---|---|---|
| 総合 | 102.0 | +1.9% |
| コア(生鮮食品を除く) | 102.1 | +1.8% |
| コアコア(生鮮食品・エネルギーを除く) | 102.1 | +1.9% |
※ 出典:総務省統計局「2025年基準 消費者物価指数 全国 2026年(令和8年)7月分」(2026年8月21日公表)
基準改定で気をつけること
・ウエイト(品目ごとの重み)が最新の家計消費に更新される
・追加された品目・廃止された品目がある
・改定前後の前年比を単純比較すると数値がズレることがある
なぜ5年ごとに直すのか。理由は単純で、人々が買うものが変わるからです。10年前の消費構成で計算した物価は、いまの生活を表しません。
どうやって計算しているのか
CPIは「全品目の値上がり率の平均」ではありません。支出の多い品目ほど強く反映される仕組みになっています。これをウエイト(重み)と呼びます。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| ウエイト | 品目ごとの重み。家計の支出割合で決まる |
| 寄与度 | 全体の上昇率のうち、その品目が押し上げた分 |
| ラスパイレス式 | 基準年のウエイトを固定して計算する方式 |
| 帰属家賃 | 持ち家を借りていると仮定した場合の家賃。実際には支払っていない |
寄与度は「犯人探し」に使える数字です。物価が1.9%上がったとき、そのうち食料が何ポイント押し上げたのかが分かります。ニュースで「食料が物価を押し上げた」と言うときの根拠がこれです。
CPIが実感とズレる4つの理由
「発表は2%なのに、体感はもっと高い」——多くの人が抱く違和感です。これには明確な理由があります。
持ち家の人が実際には払っていない家賃を、計算上は支出として扱います。この帰属家賃は動きが小さいため、全体の上昇率を押し下げる働きをします。
毎日買う食料品が値上がりすると強烈に印象に残りますが、数年に一度しか買わない家電の値下がりは体感されません。CPIは両方を同じルールで平等に扱います。
性能が2倍になったパソコンが同じ価格なら、統計上は実質的な値下がりとして扱われます。財布から出る金額は変わらないのに、指数は下がります。
CPIは全国平均のウエイトで計算されます。子育て世帯と単身高齢者では、直面している物価上昇率がまったく違います。
ズレは統計の欠陥ではなく、「平均を測る道具」である以上どうしても生じるものです。実感と違うからといって数値が間違っているわけではありません。
日銀が見ているのはどの指数か
日本銀行が掲げる「物価安定の目標2%」——この2%が指すのは、消費者物価指数(生鮮食品を除く総合=コア)の前年比です。
| CPIの状態 | 日銀が取りやすい行動 | 金利 |
|---|---|---|
| 2%を大きく上回り続ける | 利上げ(金融引き締め) | 上がる |
| 2%前後で安定 | 現状維持 | 横ばい |
| 2%を下回り続ける | 緩和的な政策の継続 | 下がる/据え置き |
ただし日銀は単月の数字では動きません。一時的な要因を除いた「基調的な物価」が2%に定着するかどうかを見ています。だからこそコアコアや、賃金の動きも合わせて判断されます。
なお日本の政策金利は、2026年6月の金融政策決定会合で0.75%から1.0%程度へ引き上げられています(日本銀行)。
CPIが上がると株価はどうなるか
ここが投資家にとって最も重要な部分です。CPIの上昇は株式市場にプラスにもマイナスにも働きます。経路が2つあるからです。
| 経路 | 流れ | 株価 |
|---|---|---|
| 企業業績の経路 | 値上げできる → 売上・利益が増える | プラス |
| 金利の経路 | 利上げ観測 → 金利上昇 → 割引率上昇 | マイナス |
どちらが勝つかは物価上昇のスピードで決まります。
売上が伸びない
賃金も上がる
消費が冷える
「インフレは株にプラス」という単純な話ではないということです。市場が嫌うのは物価上昇そのものではなく、それに伴う急な利上げです。
CPIで動きやすい業種・動きにくい業種
物価上昇の影響は業種によって正反対に出ます。
| 立場 | 業種の例 | 物価上昇局面での傾向 |
|---|---|---|
| 価格転嫁しやすい | ブランド力のある消費財、鉄道・電力などインフラ | 利益を守りやすい |
| 金利上昇が追い風 | 銀行・保険 | 利ざやが改善する |
| コスト増を被りやすい | 外食・食品・小売 | 原材料高が利益を圧迫 |
| 金利上昇が逆風 | 不動産、成長期待の高い新興企業 | 借入コストと割引率の両方で不利 |
物価上昇局面ではディフェンシブ銘柄が選好されやすい一方、値上げが通らない業種は業績が悪化します。「インフレ=全業種にプラス」ではありません。
米国のCPIはなぜ日本株も動かすのか
日本株を取引していても、米国CPIの発表日は必ず意識すべきです。
| 日本のCPI | 米国のCPI | |
|---|---|---|
| 相場への影響 | 限定的 | 非常に大きい |
| 理由 | 日銀の政策変更ペースが緩やか | FRBの政策 → 世界の金利と為替を動かす |
| 日本株への波及 | 金融・不動産中心 | 翌朝の寄り付き全体に影響 |
米CPIは日本時間の夜に発表され、結果によっては米国株と為替が大きく動きます。その影響を受けた状態で翌朝の日本市場が始まります。詳しくは経済指標の記事も参考にしてください。
消費者物価指数を見るときの注意点
2026年7月分から2025年基準に切り替わりました。指数の水準もウエイトも変わっているため、古い記事の数値とそのまま比べることはできません。
1年前に大きく値上がりしていれば、今年の上昇率は小さく出ます(ベース効果)。上昇率が鈍化=物価が下がった、ではありません。
電気・ガス料金の補助や高校無償化などの政策は、CPIを機械的に押し下げます。政策が終われば反動で上がります。数字の裏にある要因まで確認してください。
東京都区部は全国より約2週間早く公表されます。速報性は高いものの全国の結果とは一致しません。ニュースを見るときはどちらの数字か確認しましょう。
※ 本記事は用語と仕組みの解説であり、特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
消費者物価指数に関するよくある質問
まとめ
消費者物価指数は、日銀の政策・年金・そして株価まで動かす統計です。3つの指数の違いと、基準改定という区切りを知っておくだけで、ニュースの解像度が変わります。
この記事のまとめ
・総合/コア(生鮮食品を除く)/コアコア(エネルギーも除く)の3種類
・日銀の2%目標が指すのはコア
・2026年7月分から2025年基準へ改定(総合102.0・前年比+1.9%)
・実感とズレるのは帰属家賃・購入頻度・品質調整・平均ウエイトが理由
・株価は物価上昇そのものより「急な利上げ」を嫌う
・米国CPIは日本株の翌朝の寄り付きに直結する
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