信用取引とは、証券会社にお金や株を借りて売買する取引です。担保として預けた保証金のおよそ3.3倍まで取引できます。

現物取引にはない機能が2つあります。手持ち以上の金額で買えることと、持っていない株を売れること(空売り)です。

一方で、現物にはないリスクも2つあります。追証(おいしょう)逆日歩(ぎゃくひぶ)です。この記事ではそこを重点的に説明します。

この記事でわかること

・信用取引の仕組みとレバレッジ
・委託保証金率30%・最低30万円というルール
・制度信用取引と一般信用取引の違い
・かかるコスト(金利・貸株料・逆日歩など)
・空売りで下落局面でも利益を狙える理由
・追証(おいしょう)が発生する条件
・逆日歩が青天井になりうる理由
・増担保規制がかかると何が起きるか
・信用取引に向いていない人

※ 本記事は2026年8月時点の一般的なルールにもとづきます。保証金率・維持率・金利は証券会社ごとに異なるため、実際の取引前に各社の規定をご確認ください。

結論:現物取引との違い

比較 現物取引 信用取引
使える金額 手持ち資金まで 保証金の約3.3倍
下落局面 利益を出せない 空売りで狙える
保有コスト なし 金利・貸株料が日々かかる
期限 なし 制度信用は6ヶ月
最大損失 投資額まで(0円になるだけ) 投資額を超えることがある
株主優待 もらえる もらえない(買い建てでも)
同じ資金の回転 1日1回まで 何度でも可能
🔴 最も重要な違い

現物取引は、最悪でも投資した金額がゼロになるだけです。

信用取引は預けた保証金を超える損失が出て、借金が残ることがあります。
この1点だけは、始める前に必ず理解してください。

レバレッジの仕組み

信用取引を始めるには、委託保証金を証券会社に預けます。法令上、必要な保証金率は約定代金の30%以上です。

100万円の株を買う場合
必要な保証金 = 100万円 × 30% = 30万円

現物なら100万円が必要ですが、信用取引なら30万円で同じ取引ができます。
これが「約3.3倍のレバレッジ」の中身です。

ルール 内容
委託保証金率 30%以上(法令。証券会社が上乗せすることもある)
最低委託保証金 30万円
維持率(追証ライン) 20%程度(証券会社により異なる)
保証金の代用 保有株を担保にできる(代用有価証券
🔴 利益も損失も3.3倍になる

100万円の株が10%上がれば10万円の利益。30万円の元手に対して33%の利益です。

しかし10%下がれば10万円の損失=元手の33%が消えます。
レバレッジは「増える力」ではなく「振れ幅を大きくする装置」です。

制度信用取引と一般信用取引の違い

信用取引には2種類あります。どちらを選ぶかで、期限もコストもリスクも変わります。

比較 制度信用取引 一般信用取引
ルールを決める人 証券取引所 証券会社
返済期限 最長6ヶ月 無期限のものが多い(売りは短期も)
対象銘柄 取引所が選定した銘柄 証券会社が決める(買いは全銘柄のことも)
逆日歩 発生する 発生しない
金利・貸株料 相対的に低い 相対的に高い
向く使い方 短期の売買 長めに持つ/優待のクロス取引
選び方の原則

コストの安さを取るなら制度信用、逆日歩の不確実性を避けるなら一般信用です。

とくに株主優待を狙ったクロス取引では、一般信用を使うのが基本になります。制度信用だと逆日歩がいくらになるか、事前に分からないためです。

信用取引にかかるコスト

現物取引と決定的に違うのが、持っているだけで日々コストが発生する点です。

コスト かかる側 内容
売買手数料 買い・売り 0円の証券会社も増えている
金利 買い建て 資金を借りる対価。日割りで毎日かかる
貸株料 売り建て 株を借りる対価。日割りで毎日かかる
逆日歩 売り建て 制度信用のみ。金額が事前に読めない
事務管理費 買い・売り 建玉を1ヶ月超え持ち越すとかかる
名義書換料 買い建て 権利確定日をまたぐとかかる
配当落調整金 買いは受取/売りは支払 配当相当額の調整
🔴 長く持つほど不利になる

金利も貸株料も日割りで毎日発生します。「下がったから戻るまで待とう」という判断が、現物より高くつきます。
信用取引は、期間を区切って使う道具だと考えてください。

空売り:下落局面でも利益を狙える

信用取引でいちばん現物と違うのが、持っていない株を売れることです。

1

証券会社から株を借りて売る

1,000円の株を100株、借りて売却。手元に10万円が入ります。

2

値下がりしたら買い戻す

800円まで下がったところで100株買い戻す。8万円で買えます。

3

差額が利益になる

10万円 − 8万円 = 2万円の利益(コストを除く)。

🔴 空売りの損失に上限はない

買いなら、株価はゼロより下には行きません。損失は投資額が上限です。

しかし空売りは株価がどこまでも上がりうるため、理論上の損失に上限がありません。
急騰時に空売りの買い戻しが重なると、さらに上がります(踏み上げ)。

🔴 追証(おいしょう)とは

信用取引でいちばん怖いのがこれです。

追証が発生する条件

含み損が出ると、預けた保証金が目減りします。

保証金の維持率が20%程度を下回ったとき

証券会社から「不足額を期限までに入金してください」という連絡が来ます。これが追証です。

状況 保証金 建玉 維持率
取引開始時 30万円 100万円 30%
5%下落 25万円 100万円 25%
11%下落 19万円 100万円 19% → 追証

※ 維持率20%の場合の簡略化した例です。実際の計算方法・維持率は証券会社により異なります。

🔴 たった11%の下落で追証

株価が11%下がっただけで追証になります。個別株なら1日で起こりうる下落幅です。

期限までに入金できなければ、証券会社が強制的に決済します。底値で投げさせられる形になり、損失が確定します。

しかも強制決済しても足りなければ、不足分は借金として残ります。

相場全体が急落した日は、追証を求められた人の投げ売りがさらに下落を呼びます。下落が下落を呼ぶ構造の一因がここにあります。

🔴 逆日歩:金額が事前に分からない費用

逆日歩は、空売りが増えすぎて貸す株が足りなくなったときに発生する費用です。制度信用取引でのみ起こります。

🔴 なぜ危険なのか

逆日歩は入札で決まるため、事前に金額が分かりません。

しかも権利付最終売買日をまたぐと最高料率が4倍になるなど、特定の日には跳ね上がる仕組みがあります。
注意喚起と重なれば8倍、極めて異常な状態では10倍という段階も定められています。

状況 最高料率の倍率
権利落日の6〜2営業日前 2倍
権利付最終売買日 4倍
注意喚起と重複したとき 8倍
極めて異常な貸株超過 10倍

出典:日本証券金融「品貸入札、逆日歩、最高料率、応札ランク」

優待狙いのクロス取引で制度信用を使い、優待の価値を大きく超える逆日歩を払うという失敗は毎年起きています。クロス取引では一般信用を使うのが原則です。

増担保規制がかかると何が起きるか

増担保規制は、過熱した銘柄に対して取引所や証券金融会社が保証金率を引き上げる措置です。

段階 保証金率
通常 30%以上
第一次規制 50%以上(うち現金20%以上)
段階的に強化 さらに引上げ
第四次規制 新規建て禁止
🔴 規制が入ると需給が悪化する

必要な保証金が増えるため、新しく買う人が減り、既存の建玉を手仕舞う動きが出ます。
急騰していた銘柄が規制をきっかけに崩れるのは、この需給の変化が理由です。

信用取引に向いていない人

やめたほうがいい
損切りができない人
・日中に相場を見られない人
・生活費まで投資に回している人
・「下がったら買い増す」が癖の人
・追証の意味を説明できない人
使う価値がある
・損切りの基準を決めている人
・保有株のリスクを抑えたい人
・優待のクロス取引をしたい人
・資金効率を上げたい短期の人
レバレッジは下げて使える

信用取引だからといって、3.3倍まで使う必要はありません。
100万円の保証金で100万円分だけ建てれば、レバレッジは1倍です。空売りだけを使い、倍率は上げないという使い方は十分に現実的です。

なお信用取引の口座を開くには、証券会社の審査があります。投資経験や資産状況の申告が必要で、誰でも即日で開けるわけではありません。

返済の3つの方法

信用取引は「建てて終わり」ではありません。必ず返済(決済)が必要です。方法は3つあります。

方法 対象 内容
反対売買 買い・売り 買い建てなら売る、売り建てなら買い戻す。最も一般的
現引き(げんびき) 買い建て 代金を全額支払い、現物として引き取る
現渡し(げんわたし) 売り建て 同じ銘柄の現物を渡して決済する
現引き・現渡しの使いどころ

現引きは「期限が近いが、まだ持っていたい」ときに使います。現物に変えれば期限もコストもなくなります。

現渡しクロス取引で必ず使う手順です。株価がどう動いても損益がゼロになるため、優待だけを取ることができます。

🔴 期限を過ぎると強制決済

制度信用の6ヶ月を過ぎると、証券会社が自動的に反対売買を行います。価格を選べません。
「あと少しで戻りそう」でも、期限は待ってくれません。建てた時点で返済期限を確認しておいてください。

信用残高で需給を読む

信用取引の情報は、自分が使わなくても役に立ちます。他の投資家がどれだけ買っているか・売っているかが数字で見えるからです。

信用残高の読み方

信用買い残が多い=将来の売り圧力(いずれ返済で売られる)
信用売り残が多い=将来の買い圧力(いずれ買い戻される)

両者の比率が貸借倍率です。売り残が減り続けて売り物が枯れた状態売り枯れと呼びます。

現物しか使わない人でも、貸借銘柄の残高を見る習慣があると、値動きの背景が読めるようになります。

信用取引に関するよくある質問

信用取引を始めるにはいくら必要ですか?
最低委託保証金として30万円が必要です。加えて委託保証金率は約定代金の30%以上と定められているため、100万円の取引には30万円の保証金が要ります。証券会社が独自に高い率を設定していることもあります。
借金を背負うことはありますか?
あります。強制決済しても保証金で損失をまかなえない場合、不足分は証券会社への債務として残ります。現物取引では投資額を超える損失は出ませんが、信用取引では起こりえます。
追証はどのくらいの下落で発生しますか?
維持率20%・保証金率30%で建てた場合、株価が11%程度下がると追証になります。個別株なら1日で起こりうる下落幅です。期限までに入金できなければ証券会社が強制的に決済します。
制度信用と一般信用はどちらを選ぶべきですか?
短期の売買でコストを抑えたいなら制度信用、期限を気にせず持ちたい場合や優待のクロス取引をするなら一般信用です。とくにクロス取引では、逆日歩が発生しない一般信用を使うのが原則です。
逆日歩はいくらかかりますか?
事前には分かりません。品貸入札で決まるためです。権利付最終売買日をまたぐと最高料率が4倍になるなど跳ね上がる仕組みがあり、優待の価値を超える逆日歩を払うケースも起きています。
信用取引で株主優待はもらえますか?
もらえません。買い建てでも株主名簿に載らないためです。配当については配当落調整金という形で調整されますが、優待は対象外です。優待を取りたい場合は現物で保有するか、クロス取引を使います。
レバレッジをかけずに使うことはできますか?
できます。保証金と同額までしか建てなければレバレッジは1倍です。空売りだけを使いたい場合など、倍率を上げずに信用取引の機能だけを使うことは十分に現実的です。
信用取引の口座はすぐ開けますか?
通常の証券口座とは別に、信用取引口座の審査があります。投資経験や資産状況の申告が必要で、基準を満たさないと開設できません。総合口座と同時に即日で使えるわけではありません。

まとめ

信用取引は機能が増える代わりに、損失の上限が外れる取引です。使うなら、追証の条件を自分で説明できる状態にしてからにしてください。

この記事のまとめ

・保証金の約3.3倍まで取引できる(委託保証金率30%以上・最低30万円)
・下落局面でも空売りで利益を狙える
・空売りの損失に理論上の上限はない
・制度信用は期限6ヶ月・逆日歩あり。一般信用は無期限・逆日歩なし
・金利と貸株料が毎日かかるため、長期保有には向かない
・維持率20%を割ると追証。11%の下落で起こりうる
・強制決済しても足りなければ借金が残る
・逆日歩は事前に金額が分からず、権利付最終売買日は最高料率が4倍
・増担保規制の第一次で保証金率50%、第四次で新規建て禁止
・レバレッジを1倍に抑えて使うこともできる

あわせて読みたい:逆日歩とは増担保規制とは貸借倍率とは貸借銘柄とは代用有価証券とは貸株金利とはクロス取引とは売り枯れとはハイパー空売りとは損切りとは権利確定日とは松井証券の一日信用取引

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