出資とは、会社に資金を提供して、その見返りに株式を受け取ることです。返済義務はありません。

融資との違いはここにあります。融資は返さなければならない借金、出資は返さなくてよい代わりに会社の一部を渡すものです。

株式投資では「A社がB社に出資」というニュースが頻繁に出ます。株価が動くかどうかは誰が・何%を・何のために出資したかで決まります。この3点を押さえれば、開示の意味が読めます。

この記事でわかること

・出資と融資の違い(返済・議決権・貸借対照表での扱い)
・出資の3つの形と、株主にとっての意味
・20%・50%で会計上の扱いが変わる仕組み
・「出資を受けた」ニュースで株価が上がる条件
・資本業務提携の開示で確認すべき点
・出資する側・される側それぞれのメリットとデメリット

出資とは?まず結論から

出資(読み方:しゅっし)

出資とは、会社に資金を提供し、その対価として株式(持分)を取得することです。提供した側は株主となり、会社の所有者の一人になります。

資金を渡す点は融資と同じですが、性質はまったく違います。

項目 出資 融資
返済義務 ない ある(元本+利息)
貸借対照表 純資産(資本)に入る 負債に入る
経営への関与 議決権を持つ 原則として関与しない
資金の出し手の見返り 配当と株価の値上がり 利息
会社が倒産したら 最後に残った財産だけ 株主より先に弁済を受ける

最後の行が、株式と債券のリスクの違いを決めています。出資は返済順位が最も低い代わりに、会社が成長したときの取り分に上限がありません。

出資の3つの形

上場企業に関わる出資は、次の3つの形で行われます。

お金の行き先 既存株主への影響
第三者割当増資 会社に入る(新株を発行) 持株比率が下がる(希薄化)
既存株式の取得 売った株主に入る 株数は増えないので希薄化しない
自己株式の処分 会社に入る(金庫株を渡す) 発行済株式数は増えないがEPSは下がる

同じ「出資を受けた」というニュースでも、新株を発行したのか、既存株主から買ったのかで意味が正反対になります。

新株発行なら会社に資金が入る代わりに株数が増え、既存株主の持分は薄まります。既存株式の取得なら会社に資金は入りませんが、株数も増えません。3つ目の仕組みは自己株式の処分で詳しく扱っています。

出資比率で会計上の扱いが変わる

出資する側の業績に、相手の会社の成績がどう反映されるか。これは出資比率で決まります。

出資比率 会計上の扱い 業績への反映
20%未満 通常の投資(有価証券) 配当を受け取ったときだけ
20%以上 持分法適用会社(関連会社) 相手の利益を持株比率分だけ取り込む
50%超 連結子会社 売上・費用・資産をすべて合算する
100% 完全子会社 同上(少数株主持分がない)

この違いは決算数値に大きく効きます。50%を超えて連結子会社になると、相手の売上高がまるごと自社の売上高に加算されます。20%の持分法なら、加算されるのは利益の一部だけです。

だから「出資比率を50%超に引き上げる」という開示は、売上規模が一気に変わることを意味します。逆に赤字会社を連結すれば、その赤字も取り込むことになります。

※ 実際の判定は議決権の割合だけでなく、役員の派遣や取引関係などの実質的な支配関係も考慮されます(実質支配力基準)。

法律上の権利がどう変わるかは持株比率で整理しています。

「出資を受けた」ニュースで株価が動く条件

出資の開示が出たとき、株価が上がるか下がるかを分ける要素は3つです。

① 誰が出資したか
同業の大手や有力な事業会社なら、協業への期待で買われやすい。相手が投資ファンドの場合は、将来の売却圧力も意識される。
② 何%を取得したか
20%なら関連会社、50%超なら子会社化。比率が大きいほど関係は深いが、希薄化も大きくなる。
③ 何のための資金か
設備投資や研究開発なら成長への期待。運転資金や借入返済なら、財務が厳しい可能性が意識される。

とくに③は見落とされがちです。同じ金額の出資でも、資金使途によって市場の評価は正反対になります。開示の「調達資金の使途」を必ず読んでください。

新株発行を伴う場合は、希薄化の大きさも計算しておく必要があります。発行済株式数の何%にあたる新株が出るのかで、1株あたりの価値の低下幅が決まります。

資本業務提携の読み方

出資と同時によく発表されるのが資本業務提携です。資本(出資)と業務(協業)をセットにした取り組みを指します。

資本業務提携の開示で確認すること

取得する株式数と比率:20%か50%超かで関係の深さが変わる
取得の方法:新株発行なら希薄化、市場外での取得なら希薄化なし
取得価格:直近株価に対して割高か割安か(有利発行になっていないか)
業務提携の中身:具体的な商品・販路・技術が書かれているか
継続保有の確約:一定期間売却しない旨の合意があるか

最後の項目は需給に直結します。継続保有の確約がなければ、出資者はいつでも売却できます。逆に確約があれば、その期間は市場に株が出てきません。

業務提携の中身が抽象的な表現にとどまっている場合は、実質は資金調達が目的である可能性もあります。具体性のない提携は株価が続かないのが一般的です。

出資が解消されるとき(政策保有株の売却)

出資は永続するものではありません。むしろ近年は、取引関係を維持する目的で保有してきた株式(政策保有株)を売却する動きが広がっています。

コーポレートガバナンス・コードで、政策保有の合理性を毎年検証し、意義が乏しいものは縮減することが求められているためです。

売却の方法 株価への影響
売出し まとまった株が市場に出るため需給が悪化しやすい
立会外取引 市場価格への直接の影響は小さい
発行会社による買取り 自社株買いとして受け止められ、好感されやすい

投資家が注意すべきなのは1つ目です。安定株主が売却に転じると、それまで市場に出てこなかった株が放出されます。需給が緩むうえ、買収されにくい構造も崩れます。

保有状況は有価証券報告書の「株式の保有状況」で確認できます。政策保有株が多い会社は、将来の売り圧力を抱えていると同時に、売却益や自社株買いの原資を持っているとも読めます。

出資する側のメリットとデメリット

メリット デメリット
相手の成長を取り込める(配当・株価) 元本が保証されない
議決権を得て経営に関与できる 相手が赤字なら自社の損益にも響く
買収より少ない資金で関係を築ける 未上場株はすぐに換金できない
事業シナジーを狙える 価値が下がれば減損損失を計上する

最後の減損は上場企業の決算でしばしば問題になります。出資先の業績が悪化すると、保有する株式の価値を切り下げて損失を計上することになるためです。出資は資産である一方、将来の損失要因にもなります。

出資を受ける側のメリットとデメリット

メリット デメリット
返済義務がないので資金繰りが安定する 経営の自由度が下がる
自己資本が増えて財務が改善する 創業者や既存株主の持株比率が下がる
出資者の販路や技術を使える 配当や成長を継続的に求められる
信用力が上がり取引がしやすくなる 比率次第では経営権を失う

未上場のスタートアップが出資を受ける場合は、ベンチャーキャピタルが相手になることが多くなります。VCには資金を返す期限があるため、上場や売却を求められる点が銀行融資とは違います。

※ 本記事は制度と開示の読み方を解説したもので、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。会計上の判定は議決権割合だけでなく実質的な支配関係も考慮されます。実際の判断にあたっては各社の開示資料をご確認ください。

出資に関してよくある質問

出資と投資はどう違いますか?
投資は利益を目的に資金を投じること全般を指し、出資はその中でも会社の株式や持分を取得する形を指します。株式を買うことは出資の一種ですが、上場株を市場で買う場合は会社に資金が入らず、売った株主に渡ります。会社に直接資金が入るのは新株を引き受けたときです。
出資を受けると株価は上がりますか?
条件次第です。有力企業からの出資で具体的な協業がある場合は買われやすくなります。一方、新株発行を伴い希薄化が大きい場合や、資金使途が運転資金・借入返済の場合は売られることもあります。誰が・何%を・何のためにという3点を開示で確認してください。
20%と50%はなぜ節目になるのですか?
会計上の扱いが変わるためです。20%以上で持分法適用会社となり相手の利益を持分に応じて取り込み、50%超で連結子会社となり売上や資産をすべて合算します。決算数値の見え方が大きく変わるため、投資家が注目する水準になっています。
出資したお金は返ってきますか?
返ってきません。出資は返済義務のない資金提供で、回収する方法は保有する株式を売却するか、配当を受け取るかのいずれかです。会社が倒産した場合は、債権者への弁済が優先されるため、株主に財産が残らないことが一般的です。
既存株式の取得と新株発行では何が違いますか?
資金の行き先が違います。新株発行では会社に資金が入りますが株数が増えるため既存株主の持分は薄まります。既存株式の取得では売却した株主に資金が渡り、会社には入りません。その代わり株数は増えないので希薄化も起きません。開示でどちらの方式かを必ず確認してください。
出資比率が高いほど良い提携ですか?
一概には言えません。比率が高いほど関係は深くなりますが、新株発行によるものなら希薄化も大きくなります。また経営の主導権が相手に移ることもあります。既存株主にとっては、比率の大きさよりも業務提携の中身に具体性があるかどうかのほうが重要です。
出資したことは開示されますか?
上場企業が出資を受ける場合は適時開示で公表されます。また出資者側も、上場企業の株式を5%超取得した場合は大量保有報告書の提出が必要です。取得目的や資金の出どころも記載されるため、EDINETで確認できます。
個人でも会社に出資できますか?
できます。上場企業の株式を市場で買うのも広い意味では出資ですし、未上場企業への出資は株式投資型クラウドファンディングなどを通じて可能です。ただし未上場株は上場するまで売却できず、企業が失敗すれば全額を失う可能性があります。流動性がない点は十分に理解しておく必要があります。

まとめ

この記事のまとめ

・出資は返済義務のない資金提供で、対価として株式を受け取る
・融資は負債になるが、出資は純資産になり議決権が伴う
20%以上で持分法適用会社、50%超で連結子会社になり決算の見え方が変わる
株価が動くかは「誰が・何%を・何のために」で決まる
・新株発行なら会社に資金が入るが希薄化する。既存株式の取得なら希薄化しない
・資本業務提携は、提携内容の具体性と継続保有の確約を確認する

出資の開示を見たら、まず新株発行かどうかを確認してください。会社に資金が入るかどうか、そして自分の持分が薄まるかどうかが、そこで決まります。

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