
株式の移管とは、いま持っている株を売らずに、別の証券会社の口座へ移すことです。売却しないので税金も発生しません。
国内株ならネット証券どうしの移管は手数料無料が主流で、日数は1〜2週間ほど。ただしNISA口座で買った商品は移管できません。
この記事では、手数料と日数に加えて、取得価額を引き継ぎ損ねると税金が跳ね上がるという落とし穴まで説明します。
この記事でわかること
・移管にかかる手数料と日数
・売却して買い直す場合との比較
・NISA口座の商品が移管できない理由
・信用建玉・単元未満株の扱い
・取得価額を引き継げないと何が起きるか
・手続きの具体的な流れ
・移管中に売買できない期間のリスク
※ 本記事は2026年8月時点の制度内容にもとづきます。手数料や取扱いは証券会社ごとに異なるため、実際の手続き前に各社の最新情報をご確認ください。
目次
結論:移管すべきか、売って買い直すか
| 比較 | 移管する | 売って買い直す |
|---|---|---|
| 税金 | かからない | 利益が出ていれば20.315% |
| 手数料 | ネット証券間の国内株は無料が主流 | 売買手数料(現在は0円の会社も) |
| 日数 | 1〜2週間 | 即日 |
| その間の値動き | 売買できない期間がある | 買い直すまでの価格差を負う |
| 取得価額 | 引き継がれる(手続きが正しければ) | 買い直した価格が新しい取得価額 |
含み益が大きいなら移管一択です。売れば利益に20.315%の税金がかかり、その分だけ再投資できる金額が減ります。
逆に含み損の銘柄なら、あえて売って損失を確定させるという選択もあります。同じ年の利益と損益通算できるためです。
移管・入庫・出庫の意味
株は紙の証券ではなく、証券会社が電子的に管理しています。移管とはその管理の場所を移す手続きのことです。
手数料がかかるとしたらこちら側です。
ほぼ無料です。顧客を増やしたい側なので当然といえます。
「振替(ふりかえ)」という言い方をする会社もありますが、意味は同じです。手続きの申込先は出庫する側(いまの証券会社)になります。
移管にかかる手数料
| 対象 | 出庫(出す側) | 入庫(受ける側) |
|---|---|---|
| 国内株(主要ネット証券間) | 無料が主流 | 無料 |
| 国内株(有料の会社の場合) | 1銘柄あたり1,100円程度 | 無料 |
| 投資信託 | 1銘柄あたり3,300円程度 | 無料 |
| 米国株など外国株 | 会社により異なる(有料が多い) | 無料 |
※ 2026年8月時点の一般的な水準です。金額は各社の手数料表でご確認ください。
受け入れ側の証券会社が、移管元でかかった出庫手数料を負担するプログラムを用意していることがあります。SBI証券の「投信お引越しプログラム」が代表例です。
投資信託を複数本移すと出庫手数料だけで数万円になるため、こうした制度の有無は事前に確認する価値があります。
移管にかかる日数
おおむね1週間から2週間です。証券会社どうしのやり取りに加えて、証券保管振替機構(ほふり)を経由するため、即日というわけにはいきません。
いまの証券会社に「口座振替依頼書」などを提出します。特定口座から特定口座へ移す場合は、専用の依頼書が必要です(後述)。
1〜2週間ほどかかります。この期間は原則としてその銘柄を売買できません。
株数だけでなく、取得単価が正しく反映されているかを必ず確認してください。ここが最重要です。
移管中は売買できません。決算発表や権利確定日をまたぐと、動きたくても動けない状態になります。
相場が急変しても手を出せない期間があることを、日程を決める前に織り込んでください。
🔴 取得価額が引き継がれないと税金が増える
ここが移管でいちばん重い論点です。
取得費=買ったときの金額。これが分からないと、経費として引ける額がなくなります。
取得費が分からない場合、売却価額の5%を取得費とみなす方法(概算取得費)が使われます。
100万円で売った株の取得費が5万円扱いになり、95万円が利益とみなされます。
実際は90万円で買っていたとしても、です。
| ケース | 取得費 | 課税対象 | 税額 |
|---|---|---|---|
| 正しく引き継がれた | 90万円 | 10万円 | 約20,315円 |
| 取得費が不明になった | 5万円 | 95万円 | 約192,992円 |
※ 100万円で売却した場合の例。譲渡費用は0円として計算。税率は20.315%。
手続きひとつで税額が9倍以上変わります。だからこそ、移管後の残高照会で取得単価まで確認する必要があります。
特定口座の中で取得価額を引き継ぐには、「特定口座内保管上場株式等移管依頼書」という専用の書類を使います。
通常の出庫依頼書で手続きすると、一般口座へ払い出されてしまうことがあります。窓口やコールセンターで「特定口座から特定口座へ、取得価額を引き継いで移したい」と明確に伝えてください。
口座の種類については証券口座の種類にまとめています。
NISA口座の商品は移管できない
これは制度上のルールで、例外はありません。
NISA口座で買った株や投資信託は、他の証券会社のNISA口座へ移すことができません。
どうしても移したい場合は、いったん課税口座へ払い出すことになります。その時点で非課税の扱いは終わります。
| やりたいこと | できるか |
|---|---|
| A社のNISA → B社のNISAへ移管 | できない |
| A社のNISA → A社の課税口座へ払い出し | できる(非課税は終了) |
| 来年からB社でNISAを使う | できる(金融機関変更の手続き) |
| A社のNISA残高をそのまま持ち続ける | できる(非課税のまま) |
金融機関を変更しても、以前の会社で買った分は非課税のまま持ち続けられます。つまり「移管できない=損」ではありません。口座が2社に分かれるだけです。
NISA口座は1人1口座で、変更は年単位でしかできません。また、その年にすでにNISAで買付をしていると、その年の変更はできません。
翌年から変更したい場合の受付期間も決まっているため、早めに確認してください。
移管できないもの
| 対象 | 扱い |
|---|---|
| NISA口座の残高 | 移管不可 |
| 信用取引の建玉 | 移管不可。決済してから移す |
| 単元未満株 | 移管できない会社が多い |
| 移管先が扱っていない投資信託 | 受け入れ不可 |
| 名義が違う口座への移管 | 不可(贈与・相続は別手続き) |
同じファンドでも、すべての証券会社が取り扱っているわけではありません。
移管先が扱っていない銘柄は受け入れてもらえないため、出庫手数料を払ったあとで断られるという事態が起こり得ます。必ず先に確認してください。
手続きに必要なもの
証券会社によって細部は違いますが、共通して求められるのは次のとおりです。
| 必要なもの | 注意点 |
|---|---|
| 移管先の口座番号 | 部店コードや加入者口座コードまで求められることがある |
| 移管する銘柄名と株数 | 銘柄コードで指定する。全部か一部かを明記する |
| 依頼書 | 特定口座間なら専用書式。取り違えると一般口座へ払い出される |
| 本人確認書類 | 両社の登録住所・氏名が一致している必要がある |
引っ越しや結婚のあと、片方の証券会社にだけ変更届を出していないケースが典型的な失敗です。
名義が一致しないと移管は成立しません。手続きの前に、両社の登録内容をそろえておいてください。
証券会社が統合・終了したときはどうなるか
自分から移管するのではなく、会社側の都合で移されるケースもあります。
SBIネオモバイル証券は2024年1月9日にSBI証券へ統合されました。この種の統合では、口座と残高が引き継がれる案内が事前に届きます。
サービス終了では、期限までに移管または売却を求められます。放置すると手続きが煩雑になるため、案内が届いたら早めに動いてください。
案内はメールで来ます。使っていない口座ほど、案内に気づかないまま期限を過ぎます。放置口座がある人は、登録アドレスが今も届く状態か確認してください。
どんなときに移管するのか
かつては最も多い理由でしたが、国内株の手数料は主要ネット証券で0円化が進んだため、動機としては弱くなりました。
複数社に散らばっていると、資産全体がいくらなのか把握できません。確定申告のときも手間が増えます。
実際に近年でも、SBIネオモバイル証券が2024年1月にSBI証券へ統合されるなどの例があります。この場合は会社側から案内が来ます。
証券口座は維持費が無料です。使わない口座を残しておいてもコストはかかりません。
「新しい会社では新規の買付だけを行い、古い口座はそのまま置いておく」という選択のほうが、手数料も日数もかからず現実的なことがあります。
株式の移管に関するよくある質問
まとめ
移管は売らずに移せる=税金がかからないのが最大の利点です。ただし手続きの正確さが、あとの税額を左右します。
この記事のまとめ
・申込先は出庫する側(いまの証券会社)
・国内株はネット証券間なら無料が主流。投資信託は1銘柄3,300円程度
・受け入れ側が出庫手数料を負担する制度がある
・日数は1〜2週間。その間は売買できない
・取得費が不明だと売却価額の5%しか引けず、税額が跳ね上がる
・特定口座間は専用の移管依頼書を使う
・NISA口座の残高は他社へ移せない(課税口座への払い出しは可)
・信用建玉は決済してから。単元未満株は移管できない会社が多い
・維持費は無料なので、移管せず併用するほうが早い場合もある
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