長期投資のメリット|10年勝率が3%〜100%に割れる理由

長期投資とは、数年から数十年の単位で資産を保有し続ける投資のことです。短期の値動きを追わず、時間を味方にする考え方を指します。

ただし「長く持てば必ず報われる」という説明は、日本株の実測とは合いません。日経平均で1985年以降のすべての起点から保有した場合の勝率を集計すると、次のようになります。

保有期間 プラスで終わった割合 平均リターン
1年 58.0% +6.2%
5年 52.7% +19.9%
10年 51.0% +31.7%
20年 46.5% +40.2%

保有期間を延ばしても、勝率は上がっていません。20年ではむしろ下がっています。

それでも長期投資には意味があります。ただし理由は「長く持つこと」ではなく、別のところにあります。この記事では、その中身を実測で確認していきます。

この記事でわかること

保有期間を延ばすと勝率は上がるのか(独自集計)
10年勝率が3%〜100%に割れる理由(独自集計)
一括投資と積立投資の20年比較(独自集計)
・長期投資の本当のメリット
・見落とされやすいデメリット
・何に投資するか(個別株・投資信託・ETF)
・新NISAをどう使うか
・向いている人・向いていない人

※ この記事は投資手法とデータの解説であり、特定の商品や売買を推奨するものではありません。

長期投資とは

項目 短期投資 長期投資
保有期間 1日〜数週間 数年〜数十年
利益の源泉 値動きの幅 企業の成長と配当の積み上げ
判断材料 チャート・板 業績・財務
売買回数 多い 少ない(コストが積み上がらない)
必要な時間 日中の相場時間 月に一度の確認で足りる
税制優遇 使いにくい 新NISAと相性が良い

【独自集計】保有期間を延ばすと勝率は上がるのか

冒頭の数字を、もう少し細かく見ます。1985年以降のすべての営業日を起点として、その日から一定期間保有した結果を集計したものです。

保有期間 起点の数 勝率 最大 最小
1年 9,990 58.0% +86% −57%
5年 9,030 52.7% +221% −55%
10年 7,830 51.0% +337% −63%
15年 6,630 50.2% +756% −73%
20年 5,430 46.5% +343% −79%

出典:日経平均株価の日足終値(1985年1月2日〜2026年8月27日)をもとに独自集計。

勝率は延ばすほど下がっています。一方で、伸びるときの幅は大きくなっています(15年で最大+756%)。

つまり長期投資は「確実性が上がる」のではなく「結果の幅が広がる」手法です。この点は、よくある説明とかなり違います。

【独自集計】勝率が3%〜100%に割れる理由

なぜ全体の勝率が5割前後になるのか。起点の時期で分けると、答えがはっきり出ます。

始めた時期 1年 5年 10年 20年
バブル期(1985〜89年) 85% 44% 44% 2%
1990年代 37% 12% 3% 31%
2000年代 48% 45% 69% 100%
2010年代 66% 98% 100%

※ 20年の列は、起点が新しいほどまだ20年を経過していないため対象が減ります。

この表が1番重要です

同じ10年間の保有でも、

・1990年代に始めた人の勝率 … 3%
・2010年代に始めた人の勝率 … 100%

🔴 長期投資の結果を決めているのは、保有期間ではなく「いつ始めたか」です。

そして始める時期は、始める本人には選べません。

この「選べない要素で結果が決まる」という問題を薄めるための手段が、時間分散です。

【独自集計】一括投資と積立投資の20年

起点を選べないなら、起点を分散させればよいという発想が積立投資です。実際に比較しました。

同じ金額を「最初に一括で投じた場合」と「20営業日ごとに分けて投じた場合」の20年後です。

開始時期 一括投資 積立投資 どちらが有利か
1990年1月
(バブル崩壊直後)
−74.3% −33.6% 積立が大きく有利
2000年1月
(ITバブル崩壊前)
+14.2% +69.7% 積立が有利
2005年1月
(リーマン前)
+216.4% +136.8% 一括が有利

出典:日経平均株価の日足終値をもとに独自集計。積立は20営業日ごとに同額を投じたものとして計算。

積立は常に有利なのではなく、「下げてから上がる」形のときに強くなります。

積立が有利になる形
最初に下げて、後から上がる

→ 安い時期に多くの口数を買える
1990年・2000年起点がこの形

一括が有利になる形
最初から上がり続ける

→ 早く全額を投じたほうが伸びる
2005年起点がこの形

積立の価値は「平均的に儲かること」ではなく、最悪のケースを浅くすることにあります。1990年起点で見ると、一括の−74.3%に対して積立は−33.6%でした。どちらも損ですが、回復可能性がまったく違います。

この仕組みはドルコスト平均法の記事で詳しく扱っています。

長期投資の本当のメリット

ここまでの実測をふまえると、メリットの中身は次のように整理できます。

メリット 中身
① 売買コストが積み上がらない 回数が少ないため、スプレッドや滑りの影響を受けにくい
② 配当を受け取り続けられる 値動きと無関係に積み上がる。再投資すれば複利が効く
③ 時間を使わない 日中に相場を見る必要がない。仕事と両立できる
④ 判断の回数が少ない 判断するたびに間違える可能性がある。回数自体を減らせる
⑤ 税制優遇を使える 新NISAは非課税期間が無期限。長く持つほど効果が出る
⑥ 伸びるときの幅が大きい 15年保有では最大+756%。短期では届かない水準

①③④は「勝率が上がる」話ではなく「負ける要因を減らす」話です。長期投資の実質的な価値は、こちらの側にあります。

見落とされやすいデメリット

デメリット 内容
① 始めた時期で結果が決まる 10年勝率が3%〜100%に割れる。しかも時期は選べない
② 資金が長く動かせない 必要になったときが安値だと、損失を確定して引き出すことになる
③ 回復に時間がかかる 日経平均は1989年の高値を回復するまで約34年かかった
④ 個別株は戻らないことがある 指数は入れ替わるが、個別企業は衰退したまま終わることがある
⑤ 塩漬けとの区別がつかなくなる 損切りできなかった銘柄を「長期投資」と呼び替えてしまう

⑤は最も多い失敗です。短期のつもりで買った銘柄が下がったとき、売らない理由として長期投資という言葉が使われます。

見分け方は簡単で、買う前から長期で持つつもりだったかどうかです。買った後に方針が変わったなら、それは長期投資ではありません。この切り分けは損切りができない理由と逆指値の設定手順で扱っています。

何に投資するか

対象 向いている点 注意点
投資信託
(インデックス型)
1本で分散できる。少額から積立できる 信託報酬が毎年かかる
ETF 信託報酬が低め。市場でいつでも売買できる 自動積立に対応していない場合がある
個別株 配当と株主優待を受け取れる。伸びれば大きい 1社に集中する。戻らないリスクがある

指数と個別株の決定的な違いは、入れ替えがあるかどうかです。

指数は構成銘柄が定期的に入れ替わるため、衰退した企業は外れて成長する企業が入ります。一方個別株にはこの自動的な新陳代謝がありません。持ち続ける判断は自分で下し続ける必要があります。

指数の仕組みは日経平均株価TOPIXの記事で解説しています。

新NISAをどう使うか

項目 内容
つみたて投資枠 年間120万円
成長投資枠 年間240万円
年間の合計 360万円
生涯投資枠 1,800万円(成長投資枠は1,200万円まで)
非課税期間 無期限
売却したとき 翌年に、買ったときの金額分の枠が復活する

非課税期間が無期限であることが、長期投資と相性が良い理由です。期限を気にせず持ち続けられるため、回復を待つ余地が生まれます。

ただしNISA口座での損失は、他の口座の利益と損益通算できません。損失が出たときに税制上の救済がない点は、あらかじめ理解しておく必要があります。制度の詳細は新NISA新NISAのデメリットの記事で扱っています。

向いている人・向いていない人

向いている 向いていない
日中に相場を見られない 数年以内に使う予定の資金しかない
当面使う予定のない資金がある 含み損を見続けるのが耐えられない
値動きを毎日見なくても平気 短期間で資産を増やしたい
積立を自動化できる 下げるたびに売ってしまう

始める前に決めておくこと

1. 生活防衛資金を先に確保する(生活費の6か月分が目安)
2. その資金には手を付けず、余剰資金だけで始める
3. 毎月いくら積み立てるかを決め、自動化する
4. 確認する頻度を決める(月1回で十分)
5. 下げたときに何をするかを、下げる前に決めておく

🔵 5が1番重要です。1990年代に始めた人の10年勝率は3%でした。そういう時期が来る前提で設計しておくことが、続けられるかどうかを分けます。

よくある質問

長期投資なら必ず利益が出ますか?
日経平均の実測では、そうなっていません。1985年以降のすべての営業日を起点に集計すると、10年保有の勝率は51.0%、20年保有では46.5%でした。保有期間を延ばしても勝率は上がっていません。長期投資の価値は勝率を上げることではなく、売買コストを抑え、判断の回数を減らし、伸びるときの幅を大きくすることにあります。
なぜ20年持つと勝率が下がるのですか?
バブル期を起点とするケースが含まれるためです。1985〜89年に始めた場合の20年勝率は2%でした。日経平均は1989年12月の高値を回復するまで約34年かかっており、この期間を含む起点はほぼすべてマイナスになります。逆に2000年代に始めた場合の20年勝率は100%です。つまり期間の長さではなく、起点の時期が結果を決めています。
一括投資と積立投資はどちらが有利ですか?
相場の形によって変わります。集計では1990年1月起点の20年で一括−74.3%に対し積立−33.6%と積立が大きく有利でしたが、2005年1月起点では一括+216.4%に対し積立+136.8%で一括が有利でした。積立が強いのは「最初に下げて後から上がる」形です。積立の価値は平均的な有利さではなく、最悪のケースを浅くする点にあります。
長期投資と塩漬けはどう違いますか?
買う前に長期で持つと決めていたかどうかです。短期のつもりで買った銘柄が下がり、売れなくなった状態を「長期投資」と呼び替えるのが塩漬けです。判断の順番が逆になっています。買う時点で保有期間と、どうなったら見直すかを決めていれば長期投資であり、決めていなければ塩漬けになります。
個別株とインデックス投資はどちらがいいですか?
長期で持つ前提なら、入れ替えの有無が大きな違いになります。指数は構成銘柄が定期的に入れ替わるため、衰退した企業が外れて成長する企業が入ります。個別株にはこの仕組みがないため、持ち続ける判断を自分で下し続ける必要があります。配当や株主優待を目的にするなら個別株、手間をかけずに分散したいならインデックス型の投資信託が扱いやすい形です。
いくらから始められますか?
投資信託なら月100円から積み立てられる証券会社もあります。ただし金額より先に決めておきたいのが生活防衛資金です。生活費の6か月分程度を現金で確保したうえで、余った資金だけで始めるのが基本になります。必要な資金まで投資に回すと、下げた局面で取り崩すことになり、損失を確定させてしまいます。
下がったときはどうすればいいですか?
下がる前に決めておくのが答えです。積立を続ける設計なら、下げている局面は同じ金額でより多くの口数を買える期間にあたります。1990年起点の20年で積立が一括を大きく上回ったのは、この効果によるものです。逆に下げるたびに止めてしまうと、安く買える期間だけを外すことになります。何をするかを下げる前に決めておくことが、続けられるかどうかを分けます。
新NISAは長期投資に向いていますか?
非課税期間が無期限であるため、長期保有と相性が良い制度です。生涯投資枠は1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)で、売却すると翌年に買付金額分の枠が復活します。ただしNISA口座での損失は他の口座の利益と損益通算できません。損失が出たときに税制上の救済がない点は、課税口座との違いとして理解しておく必要があります。

まとめ|期間ではなく設計が結果を決める

この記事の要点
保有期間を延ばしても勝率は上がらない(10年51.0%・20年46.5%)
結果を決めるのはいつ始めたか。10年勝率は3%〜100%に割れる
始める時期は選べない。だから時間分散(積立)で薄める
積立の価値は平均ではなく最悪を浅くすること(−74.3%→−33.6%)
メリットの中心はコスト・時間・判断回数を減らすこと
最大の失敗は塩漬けを長期投資と呼び替えること

長期投資は「時間が解決してくれる手法」ではありません。時間は解決もすれば、34年かかることもあります。

実際に効いているのは、コストを減らし、判断の回数を減らし、起点を分散させるという設計の部分です。これらは自分で決められます。始める時期だけは選べないので、選べる部分をきちんと設計しておく、というのが実測から出てくる結論になります。

※ 本記事の集計は日経平均株価の日足終値(1985年1月2日〜2026年8月27日)に基づく独自集計です。日本株の指数に限った結果であり、他の資産や他国の市場では異なります。制度の内容は変わることがあるため、最新の情報は金融庁や各証券会社の公式サイトでご確認ください。投資の判断はご自身の責任でお願いします。

スポンサーリンク
おすすめの記事