リーマンショックとは、2008年9月15日に米国の投資銀行リーマン・ブラザーズが経営破綻したことをきっかけに、世界中の金融市場と実体経済が同時に落ち込んだ出来事です。

読み方は「りーまんしょっく」です。英語圏では「Lehman Shock」とはあまり呼ばれず、「Global Financial Crisis(世界金融危機)」と表現されるのが一般的です。

日本株への影響は、指数で見ると次のとおりでした。日経平均株価は2007年7月9日の18,261円から、2009年3月10日の7,054円まで61.4%下落しています。高値を取り戻したのは2015年2月19日で、7年7か月かかりました。

この記事でわかること

・リーマンショックで何が起きたのか(時系列で整理)
・原因となったサブプライムローンと証券化の仕組み(図で解説)
実測:日経平均はどこまで下げ、いつ戻ったのか
バブル崩壊・ITバブル・コロナ・2024年8月との比較表
・この出来事から個人投資家が使える4つの教訓

リーマンショックとは

まず基本的な事実を整理します。

項目 内容
発生日 2008年9月15日(米国時間)
破綻した企業 リーマン・ブラザーズ(米国の投資銀行)
負債総額 約6,000億ドル。米国史上最大の企業倒産
直接の原因 サブプライムローン関連の証券化商品で巨額の損失
英語圏での呼び方 Global Financial Crisis(世界金融危機)
日経平均の下落率 −61.4%(2007年7月の高値から2009年3月の安値まで)

「リーマンショック」という呼び方は日本で広まった表現です。海外の資料を読むときは、Global Financial Crisis や単に「the 2008 crisis」と書かれている点に注意してください。

何が起きたのか(時系列)

リーマン・ブラザーズの破綻は突然起きたわけではありません。1年以上前から予兆が積み上がっていました。

時期 出来事
2006年頃 米国の住宅価格が頭打ちになり、下落に転じる
2007年6月 米証券大手傘下のヘッジファンドが損失で行き詰まる
2007年8月 パリバ・ショック。仏大手銀行が傘下ファンドの解約を凍結し、信用不安が表面化
2008年3月 米投資銀行ベアー・スターンズが救済買収される
2008年9月7日 米政府系住宅金融2社が公的管理下に入る
2008年9月15日 リーマン・ブラザーズが連邦破産法11条を申請
2008年9月16日 米保険大手AIGが実質的な公的管理下に入る
2008年10月 世界同時株安。日経平均は10月28日にこの局面の安値をつける
2009年3月10日 日経平均が7,054円の底をつける

注目したいのは、2007年8月のパリバ・ショックの時点で、日経平均はすでに高値から下落を始めていたことです。破綻の日にすべてが始まったわけではありません。

原因となったサブプライムローン

サブプライムローンとは、信用力が相対的に低い層に向けた米国の住宅ローンです。「サブプライム」は「プライム(優良)の下」という意味になります。

項目 プライムローン サブプライムローン
対象 信用力が高い層 信用力が低い層
金利 低い 高い
返済の設計 当初から一定 最初の数年だけ低く、その後に上がる型が多い
成立の前提 借り手の返済能力 住宅価格が上がり続けること

最後の行が問題の核心です。住宅価格が上がっていれば、返済が苦しくなっても家を売るか、担保価値の増加分を使って借り換えればしのげます。この前提が成り立つ限り、貸し手も借り手も困りません。

ところが2006年頃から住宅価格が下落に転じ、前提が崩れました。売っても残債が消えず、借り換えもできない。返済が滞る件数が急増しました。

なぜ住宅ローンの焦げ付きが世界に広がったのか

米国の一部の住宅ローンが焦げ付いただけで、なぜ世界中の金融機関が損失を出したのか。ここが理解の分かれ目になります。鍵は「証券化」です。

① 束ねる
多数の住宅ローンを1つにまとめる。個々の焦げ付きは全体に薄まると考えられた。
② 切り分ける
損失を先に被る部分と、後から被る部分に階層化する。上の階層は安全とされた。
③ 格付けを得る
上の階層に高い格付けが付き、国債に近い安全資産として扱われた
④ 世界中が買う
欧州・アジアの金融機関や年金基金が保有。リスクが世界に分散された

③と④が組み合わさった結果、「安全だと信じて買った商品」が世界中の金融機関のバランスシートに載りました。前提が崩れたとき、損失も同じ範囲に広がります。

さらに事態を深刻にしたのが、誰がどれだけ持っているのか分からなくなったことです。相手の健全性が判断できないため、金融機関どうしがお互いに資金を貸さなくなりました。これを信用収縮と呼びます。

リーマンショックの本質
住宅ローンの損失そのものより、「相手が生き残るか分からないので取引できない」という状態のほうが打撃が大きかった。金融は信用で回っているため、信用が止まると健全な企業まで資金が調達できなくなる。

【実測】日経平均はどこまで下げ、いつ戻ったか

日経平均株価の日足終値で、この局面を数字にしました。

項目 実測値
下落の起点(高値) 2007年7月9日 18,261.98円
底(安値) 2009年3月10日 7,054.98円
下落率 −61.4%
下落にかかった期間 408営業日(約1年8か月)
高値を回復した日 2015年2月19日
回復までの期間 1,862営業日(約7.6年

この数字で確認しておきたいのは、下落に1年8か月かかり、回復に7年6か月かかったという時間の非対称性です。下げは速く、戻りは遅くなります。

また、破綻の日である2008年9月15日は「下落の途中」でしかありません。日経平均の底は、その約半年後の2009年3月でした。ニュースの見出しになる日と、相場の底は一致しません。

他の暴落との比較

リーマンショックの位置づけを知るために、同じ手順で他の局面も計算しました。

局面 下落率 下落にかかった期間 高値回復まで
バブル崩壊
(1989年12月〜)
−63.2% 648営業日 約34.2年(2024年2月)
ITバブル崩壊
(2000年4月〜)
−63.5% 749営業日 約15.2年(2015年6月)
リーマンショック
(2007年7月〜)
−61.4% 408営業日 約7.6年(2015年2月)
コロナショック
(2020年1月〜)
−31.3% 41営業日 約0.8年(2020年11月)
2024年8月の急落
(2024年7月〜)
−25.5% 16営業日 約1.1年(2025年8月)

この表から3つのことが読み取れます。

読み取れること 説明
下落率と回復期間は比例しない バブル崩壊とリーマンは下落率がほぼ同じ(−63%と−61%)だが、回復期間は34年と7.6年で4倍以上違う
速い暴落ほど戻りも速い コロナと2024年8月は41営業日・16営業日で底をつけ、1年前後で戻した
時間をかけて下げる相場が最も重い 構造的な問題が背景にある場合、下落も回復も長期化する

2つ目は覚えておく価値があります。急落の最中は「リーマン級だ」と語られがちですが、実際には短期間で終わる急落と、年単位で続く下落は別のものです。

日本経済への影響

日本の金融機関はサブプライム関連商品の保有が相対的に少なく、金融システム自体の傷は欧米より浅いとされました。それでも日経平均は世界でも大きく下げています。理由は次の3つです。

経路 起きたこと
輸出の急減 欧米の消費が止まり、自動車・電機・機械の輸出が大きく落ち込んだ
急速な円高 リスク回避で円が買われ、輸出企業の採算がさらに悪化した
外国人投資家の売り 損失を埋めるため、換金しやすい日本株が売られた

2つ目についてはリスクオン・リスクオフで、円が買われる仕組みを解説しています。円高が日本株に与える影響もあわせて確認できます。

3つ目は見落とされやすい点です。日本株が売られた理由は「日本が悪かったから」だけではありません。損失を出した投資家が、売りやすいものから売った結果でもあります。

個人投資家に起きたこと

この局面で最も深刻な被害が出たのは、レバレッジをかけていた投資家でした。

起きたこと なぜ深刻だったか
追証の連鎖 保証金維持率を割ると期限までの入金が必要になり、間に合わなければ強制決済される
売りたい価格で売れない ストップ安や板の薄さで、逆指値を置いていても想定より下で約定した
分散が効かなかった 危機時にはほとんどの資産が同時に下がり、業種分散の効果が薄れた

1つ目については追証で詳しく解説しています。相場が後で戻っても、追証は消えないという性質が重要です。

3つ目は分散を考えるうえで欠かせない視点です。ポートフォリオの記事で解説しているとおり、分散の効果は銘柄数ではなく値動きの相関で決まります。危機時には相関が一斉に高まります。

この出来事から使える4つの教訓

過去の暴落は繰り返しませんが、構造は残ります。実務に落とせる形で4つ挙げます。

リーマンショックから引き出せること

下げは速く、戻りは遅い。回復に7.6年かかる可能性を前提に資金を配置する
底はニュースの日ではない。破綻から底まで半年あった
レバレッジは時間を奪う。戻るまで待てるかどうかが結果を分ける
危機時には分散が効きにくい。現金という枠を持っておく

③がとくに重要です。現物であれば7.6年待つことができますが、信用取引には期日と追証があります。相場が戻るかどうかより、戻るまで自分が残っていられるかが先に問われます。

④の現金比率については備えあれば迷いなしで、具体的な決め方を解説しています。

「次のリーマンショック」を予測できるか

ここは注意が必要な論点です。結論から言えば、時期を当てることを前提にした準備は現実的ではありません。

よくある考え方 実際にはどうか
「10年ごとに危機が来る」 経験則であり、間隔にばらつきがある。周期を前提にした売買は根拠が薄い
「指標が警告してくれる」 逆イールドなどは注目されるが、発生から下落までの期間が一定しない
「同じことが繰り返される」 サブプライム関連の規制は強化された。次の火種は別の場所から出やすい

市場の緊張度を測る指標としてはVIX(恐怖指数)がよく使われますが、これは「今どれだけ不安か」を示すもので、将来の暴落を予告するものではありません。

現実的な準備は、予測することではなく、起きても続けられる状態にしておくことです。具体的には、現金比率、レバレッジの有無、そして下落が何年続いても取り崩さずに済む資金かどうかの3点になります。

注意点・この記事の数字の限界

注意点 内容
指数と個別銘柄は違う 日経平均は戻ったが、この期間に上場廃止や無配になった企業もある
終値ベースの集計 ザラ場の高値・安値を使うと数値は変わる
配当を含んでいない 配当込みで計算すれば、回復までの期間は表より短くなる
日経平均の構成は変わる 銘柄入替があるため、同じ企業群を追った数字ではない

3つ目は前向きな注記です。配当を再投資していれば、実際の回復はこの表より早くなっていました。指数の水準だけを見ると、回復の実態を過小に評価することになります。

よくある質問

リーマン・ブラザーズはなぜ救済されなかったのですか?
同時期にベアー・スターンズや政府系住宅金融2社が公的支援を受けた一方で、リーマンには支援が行われませんでした。背景としては、経営難の金融機関を救い続けると「危険な取引をしても助けてもらえる」という前例になる点への懸念や、買い手が見つからなかったことなどが指摘されています。結果として、この判断が市場の混乱を一段と大きくしたという評価もあります。
日経平均が61%下げたのに、なぜ日本の金融機関は欧米ほど傷まなかったのですか?
サブプライム関連の証券化商品の保有が相対的に少なかったためです。1990年代の不良債権処理を経て、リスクの高い商品への投資に慎重だった面もあります。ただし、株価が大きく下げたのは事実です。理由は保有商品の損失ではなく、輸出の急減、急速な円高、そして換金売りの対象になったことでした。
証券化そのものが悪かったのですか?
証券化は、リスクを分散して資金の流れを増やす仕組みであり、それ自体が問題というわけではありません。問題になったのは、束ねて階層化することで元の資産の質が見えなくなったこと、そして高い格付けが付いたことで安全資産として扱われた点です。中身が確認できない商品が広く保有されたことが、損失の所在を分からなくしました。
コロナショックとリーマンショックの違いは何ですか?
下落の速さと回復の速さが大きく違います。コロナショックは41営業日で−31.3%まで下げましたが、約0.8年で高値を回復しました。リーマンショックは408営業日かけて−61.4%まで下げ、回復に約7.6年かかっています。金融システムそのものに問題があったかどうかが、この差につながったと考えられます。
暴落のときに買えば儲かるのではないですか?
結果として安く買えた局面もありますが、前提として2つの条件が必要です。1つは、底がどこか分からないまま買い続けられる資金があること。もう1つは、7年以上戻らなくても取り崩さずに済む資金であることです。リーマンショックでは高値から底まで1年8か月かかっており、その間ずっと下げ続けたわけではなく、何度も戻しては下げています。
パリバ・ショックとは何ですか?
2007年8月、フランスの大手銀行BNPパリバが、傘下のファンドについて解約の受付を一時停止した出来事です。サブプライム関連の資産の価値が算定できなくなったことが理由でした。市場が「値段が付けられない資産がある」と認識した最初期の局面であり、リーマン破綻の約1年前にあたります。日経平均もこの時期から下落を始めています。
同じことがまた起きますか?
サブプライムローンと証券化商品に関しては、自己資本規制や格付けの利用、証券化商品の情報開示について規制が強化されています。同じ形での再発は起きにくくなったと考えられます。ただし、危機は「規制されていない場所」から出るという性質があり、次に何が火種になるかを事前に特定するのは困難です。予測より、起きても続けられる状態を保つほうが現実的な備えになります。
リーマンショックのとき、株を持ち続けた人は報われたのですか?
日経平均で見れば、2015年2月に高値を回復しているため、7年7か月待てた場合は元に戻っています。ただしこれは指数の話です。個別銘柄では、この期間に上場廃止になった企業や、株価が戻らなかった企業もあります。指数が戻ったことと、保有していた銘柄が戻ることは別の問題です。

まとめ

リーマンショック|3行まとめ

・住宅ローンの焦げ付きが証券化を通じて世界に広がった金融危機
・日経平均は−61.4%。下落に1年8か月、回復に7年6か月かかった
・破綻の日は底ではない。底はその半年後の2009年3月だった

この出来事から取り出せる最も実用的な事実は、下落率そのものではなく「回復に7年半かかった」という時間の長さです。

投資の判断をするとき、どこまで下がるかは誰にも分かりません。しかし「何年戻らなくても大丈夫な資金か」は、今この瞬間に自分で確認できます。保有している資産のうち、7年間まったく手を付けなくても生活に影響しない部分がどれだけあるか。まずはそこを数えてみてください。

※ 本記事の株価に関する集計は日経平均株価の日足終値をもとに2026年8月28日時点で行ったものです。配当は含めていません。指数での検証であり、個別銘柄には上場廃止など指数にはないリスクがあります。将来の値動きを保証するものではなく、特定の銘柄や投資手法を推奨するものでもありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

スポンサーリンク

Xでフォローしよう

おすすめの記事