配当落調整金とは、信用取引で権利確定日をまたいだときに、配当金の代わりに授受される金銭のことです。
ここで最初に押さえるべき点があります。名前に「配当」とありますが、税務上は配当ではありません。
この違いを知らないと、つなぎ売りで思わぬ税負担が発生します。この記事ではそこまで整理します。
この記事でわかること
・制度信用と一般信用で金額が違う理由
・税務上は配当所得にならないという事実
・つなぎ売りで生じる税金の落とし穴
・貸株の配当金相当額との違い
目次
配当落調整金とは
信用取引では、株式の名義は投資家のものになりません。そのため配当金そのものは受け取れず、代わりに調整のための金銭が授受されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発生する条件 | 信用建玉を持ったまま権利確定日をまたぐ |
| 買い建て | 受け取る |
| 売り建て | 支払う |
| 税務上の区分 | 配当所得ではない(譲渡損益として処理) |
配当落ちで株価が下がる分を、金銭で埋め合わせる仕組みだと考えると理解しやすくなります。
なぜ発生するのか
配当落ち日には、配当の権利がなくなった分だけ株価が下がります。この下落は企業の価値が減ったからではなく、権利が抜けたことによる機械的なものです。
株価だけ下がる
→ 一方的に損
何もせず利益が出る
→ 一方的に得
この不均衡をならすため、売り建てた人が支払い、買い建てた人が受け取るという調整が行われます。
制度信用は84.685%
ここは金額に直結する重要な点です。制度信用取引では、配当金の全額ではなく84.685%相当が授受されるのが一般的です。
| 1株配当 | 100株分の配当 | 制度信用の調整金(目安) |
|---|---|---|
| 30円 | 3,000円 | 約2,540円 |
| 100円 | 10,000円 | 約8,468円 |
※ 端数処理や計算方法は証券会社によって異なります。実際の金額は必ずご利用の証券会社でご確認ください
一般信用は100%が一般的
| 制度信用 | 一般信用 | |
|---|---|---|
| 調整金の割合 | 配当金の84.685%相当 | 配当金の100%相当が一般的 |
| 買い建て | 受け取る額が少なめ | 受け取る額が多め |
| 売り建て | 支払う額が少なめ | 支払う額が多め |
つなぎ売りでは売り建てる側になります。一般信用なら配当の100%相当を支払うことになるため、制度信用より負担が大きくなります。ただし一般信用には逆日歩がないという利点があり、どちらが有利かは状況によります。
買い建てで受け取っても得にはならない
「買い建てなら配当分がもらえてお得」と考えるのは誤りです。同時に株価が配当分だけ下がっているためです。
| 項目 | 100株・配当30円の場合 |
|---|---|
| 配当落ちによる評価額の減少 | 理論上 約3,000円のマイナス |
| 受け取る調整金(制度信用) | 約2,540円のプラス |
| 差引 | 理論上はわずかにマイナス |
制度信用では84.685%しか受け取れないため、理論上はむしろ不利になります。加えて買い建てには金利がかかります。配当取りを目的に信用買いをするのは合理的ではありません。
税務上は「配当」ではない
ここがこの記事で最も重要な部分です。配当落調整金は、配当所得として扱われません。
| 現物株の配当金 | 配当落調整金 | |
|---|---|---|
| 所得の区分 | 配当所得 | 株式の譲渡損益に含める |
| 買い建てで受け取った場合 | — | 譲渡益に加算される |
| 売り建てで支払った場合 | — | 譲渡益から差し引かれる |
| 配当控除 | 使える(総合課税を選んだ場合) | 使えない |
譲渡損益として処理されるため、株式の売買損益と自動的に通算されます。特定口座(源泉徴収あり)であれば、証券会社が計算してくれます。
つなぎ売りで起きる税金の落とし穴
優待や配当の権利を取りながら値下がりを避けるつなぎ売り。ここで見落とされやすい問題があります。
| 金額 | 税務上の扱い | |
|---|---|---|
| 現物で受け取る配当金 | 配当金 -20.315% | 配当所得(源泉徴収) |
| 売り建てで支払う調整金 | 配当金の84.685%または100% | 譲渡損 |
配当は配当所得、調整金の支払いは譲渡損です。区分が違うため、放っておくと通算されません。その結果、配当に課された税金だけが残り、手取りが目減りします。
通算するための条件は2つあります。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| ① | 配当金の受取方法を株式数比例配分方式にする |
| ② | 特定口座(源泉徴収あり)で配当金の受入設定を有効にする |
この設定をしていれば、配当と譲渡損が口座内で自動的に通算されます。つなぎ売りをする前に、必ず口座の設定を確認してください。税務の詳細は税務署や税理士にご確認ください。
貸株の配当金相当額との違い
名前が似ていますが、まったく別の扱いになります。
| 配当落調整金 | 貸株の配当金相当額 | |
|---|---|---|
| 発生する場面 | 信用建玉で権利日をまたぐ | 貸株中に権利日をまたぐ |
| 所得の区分 | 譲渡損益 | 雑所得(総合課税) |
| 損益通算 | 株式の売買損益と通算できる | できない |
| 特定口座での処理 | 対象 | 対象外 |
貸株の配当金相当額のほうが、税制上は不利になりやすいという点は覚えておいてください。
いつ受け取る・支払うのか
| 段階 | 時期 |
|---|---|
| 権利付最終売買日 | 権利確定日の2営業日前(2019年7月16日のT+2化以降) |
| 権利落ち日 | 翌営業日。この日をまたぐと調整金が発生する |
| 金額の確定 | 企業の配当金額が正式に決まってから |
| 実際の授受 | 権利確定日から数か月後になることが多い |
すぐには反映されません。建玉を決済した後に請求されることもあるため、忘れたころに口座から引かれて驚くケースがあります。
配当落調整金の注意点
配当利回りの高い銘柄を権利日にまたいで売り建てると、配当分の支払いが確実に発生します。値下がりを予想していても、その分を上回らなければ利益になりません。
権利付最終売買日は逆日歩の最高料率が通常の4倍に引き上げられます。調整金と逆日歩の両方が発生すると、負担は一気に膨らみます。
調整金は実際に確定した配当額で計算されます。増配されれば支払いも増えます。予想配当で計算した見込みと差が出ることがあります。
一般信用の調整金の割合や端数処理は証券会社ごとに定められています。取引の前に、利用している会社の規定を確認してください。
※ 本記事は用語と仕組みの解説であり、特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。税務の取扱いは個別事情により異なります。投資判断はご自身の責任でお願いします。
配当落調整金に関するよくある質問
まとめ
配当落調整金は「配当の代わり」に見えますが、税務上はまったく別のものとして扱われます。つなぎ売りをするなら、口座の受入設定まで確認しておいてください。
この記事のまとめ
・制度信用は配当金の84.685%相当が一般的
・一般信用は100%相当とする証券会社が多い
・税務上は配当所得ではなく譲渡損益として処理される
・配当控除は使えない
・つなぎ売りでは特定口座の配当金受入設定が必須
・実際の授受は権利確定日から数か月後になることが多い











