トランプ大統領の株取引1051件|6月に買った銘柄と売った銘柄を公開

トランプ大統領が2026年6月の1か月間に1,051件の証券取引を行っていたことが、2026年8月22日に公表された開示書類で明らかになりました。

取引の総額は7,810万〜2億6,310万ドル。1ドル155円で換算すると、およそ121億〜408億円にあたります。

この記事では、開示された銘柄と金額をすべて表に整理したうえで、なぜ「保有額ランキング」を正確に作ることができないのかという制度の話まで解説します。

この記事でわかること

・6月に売買した銘柄と金額の一覧
・保有資産でいちばん大きいもの
・8億5,800万ドルの口座の中身
・保有額ランキングを作れない理由
・個人投資家が真似できない5つの理由

6月だけで1,051件の取引

まず、開示された数字を整理します。

項目 内容
対象期間 2026年6月
公表日 2026年8月22日
取引件数 1,051件
取引総額 7,810万〜2億6,310万ドル
買付 4,900万ドル超
売却 2,850万ドル超
書類 定期取引報告書(OGE Form 278-T)

出典:米国政府倫理局(OGE)へ提出された開示書類。Bloomberg・Fortune・CNBC(いずれも2026年8月22日)の報道による。

1か月20営業日として計算すると、1営業日あたり平均で約52件のペースです。

これは個人の売買としては極めて多い件数ですが、この規模の資産を複数の金融機関が運用している場合、リバランスや債券の入れ替えで件数が膨らむこと自体は珍しくありません。

取引額はレンジでしか公表されない

先に前提を1つ押さえてください。ここを知らないと、この後の表を誤解します。

米国の資産開示のルール
金額は正確な数字ではなく「レンジ」で報告する

例:1,001〜15,000ドル / 15,001〜50,000ドル /
  50万〜100万ドル / 100万〜500万ドル / 500万〜2,500万ドル

つまり「100万〜500万ドルの買い」と書かれていても、実際が101万ドルなのか499万ドルなのかはわかりません。

総額が「7,810万〜2億6,310万ドル」と3倍以上の幅で示されるのは、この仕組みのためです。

6月に売買した主な銘柄

開示レンジが大きい順に並べたものが次の表です。

銘柄(ティッカー) 売買 開示レンジ 日付
バンガード米国増配株式ETF(VIG) 売り 500万〜2,500万ドル 6/22
フィデリティ・ナショナル・インフォメーション・サービシズ(FIS) 買い 100万〜500万ドル 6/22
ホーム・デポ(HD) 買い 100万〜500万ドル 6/22
バークシャー・ハサウェイ(BRK.B) 買い 100万〜500万ドル 6/18
シンタス(CTAS) 買い 100万〜500万ドル 6/18
ビザ(V) 買い 100万〜500万ドル 6/18
マスターカード(MA) 買い 100万〜500万ドル 6/18
メタ・プラットフォームズ(META) 売り 100万〜500万ドル 6/18
モトローラ・ソリューションズ(MSI) 売り 100万〜500万ドル 6/18
パランティア・テクノロジーズ(PLTR) 売り 50万〜100万ドル 6/18
RTX 買い 10万100〜25万ドル 6/12

出典:2026年8月22日公表の定期取引報告書に関する報道(Bloomberg/Fortune/CNBC)。上位が同じレンジで並ぶのは、開示がレンジ方式であるため。

2位以下に「100万〜500万ドル」が7銘柄も並んでいることに注目してください。これは7銘柄が同額だったという意味ではなく、開示の刻みが粗いので順位を付けられない、という意味です。

最大の取引は個別株ではなくETFだった

1位のVIGは、米国の増配銘柄をまとめて保有するETFです。連続して配当を増やしている企業に分散投資するもので、利回りの高さではなく増配の継続を基準にしている点が特徴です。

これを6月22日に500万〜2,500万ドル分売却しています。単独の取引としては、この月で最大でした。

個別株の売買は100万〜500万ドルが上限だったのに対し、
ETF1本の売却が500万〜2,500万ドル
= 資産の中核はETFと債券にあることをうかがわせる

ETFの入れ替えに何が起きたか

6月はETFの売買がまとまって行われています。買われたものと売られたものを並べると、方向性が見えます。

売買 ETF(ティッカー) 中身
買い GOVT 米国国債
買い XLK テクノロジーセクター
買い COMT コモディティ(商品)
売り VIG 米国の増配銘柄
売り BSV 短期債券
売り XLY 一般消費財セクター
売り VGK 欧州株

形のうえでは「欧州株と一般消費財を減らし、米国債・テクノロジー・コモディティを増やした」という入れ替えです。あわせて地方債も買い増されています。

ただし、ここから相場観を読み取るのは危険です。後述のとおり、これらの口座は本人ではなく金融機関が運用していると説明されており、単なる定期的なリバランスの可能性もあります。

売って買い戻す動きもあった

同じ銘柄を月内に何度も売買している例もあります。

銘柄 動き
パランティア(PLTR) 6/3 買い(1,001〜15,000ドル)→ 6/16 売り(15,001〜50,000ドル)→ 6/18 売り(50万〜100万ドル)→ 6/23・24 買い
コインベース(COIN) 6/12〜23 売り → 6/24 買い戻し

売った直後に買い戻すという動きは、個人が意図的に売買しているというより、複数の口座がそれぞれ別の運用方針で動いていることを示唆します。

実際、後述のとおり口座は8つに分かれており、複数の金融機関が関与していることがCNBCの分析で示されています。

いちばん大きい保有はトランプ・メディア株

ここからは「何を持っているか」の話です。金額が明確にわかっている最大の資産は、上場株1銘柄への集中投資です。

トランプ・メディア&テクノロジー・グループ(DJT)
保有株数 1億1,475万株
発行済株式に占める割合 約41.5〜42%
評価額 約10億7,000万ドル(2026年7月中旬時点)
保有形態 ドナルド・J・トランプ・リボーカブル・トラスト経由
受託者  ドナルド・トランプ・ジュニア氏

1ドル155円で換算するとおよそ1,658億円です。6月に売買した個別株の最大額(100万〜500万ドル)の、200倍以上の規模になります。

発行済株式の4割超を1人が持つという状態で、時価総額の変動がそのまま資産額に直結します。

この1銘柄だけで、後述する運用口座の合計額を上回っています。つまり資産全体で見れば、極端に分散されていないポートフォリオです。

1銘柄への集中がなぜリスクなのかはポートフォリオで解説しています。

8つの口座に8億5,800万ドル

2025年分の年次資産開示(927ページ。大統領の提出書類として過去最長)にもとづくCNBCの分析によると、投資口座の状況は次のとおりです。

項目 内容
口座数 8口座
合計額 少なくとも8億5,800万ドル
前年 少なくとも2億3,700万ドル
口座6 少なくとも1億6,300万ドル
口座7 約3億200万ドル。2025年に約10,500件の取引
関与が示された金融機関 JPモルガン・チェース/チャールズ・シュワブ/UBS/スティーブンス

出典:CNBCによる2025年分年次資産開示の分析(2026年7月29日)。口座3・5・6・8が上記4社と結びつくとされる。4社はいずれもコメントを拒否している。

1年で口座の合計額が3.6倍になっています。ただし開示はレンジ方式なので、この倍率も幅を持って読む必要があります。

また、開示書類は各金融機関が運用者なのか、証券会社なのか、単なる保管先なのかを必ずしも区別していません。

2025年の収入は暗号資産が中心だった

同じ年次開示では、収入の内訳も明らかになっています。

項目 金額
2025年の収入合計 約22億ドル
うち暗号資産関連 10億ドル超
ミームコインのライセンス料 6億3,500万ドル超
WLFIトークンの売却 2億3,600万ドル
法的和解 8,000万ドル
金塊 50万〜100万ドル(保有)

株式売買の規模より、暗号資産関連の収入のほうがはるかに大きいという構図です。株の取引件数が話題になりやすい一方で、金額の中心はそこではありません。

なぜ保有額ランキングを正確に作れないのか

「保有銘柄を金額順に並べてほしい」という要望は自然ですが、米国の開示制度では、それを正確に作ることが原理的にできません。

作れない3つの理由
① 金額がレンジでしか出ない
「100万〜500万ドル」の銘柄が10個あっても、順位は付けられない
② 取引報告書には保有残高が載らない
月次で出るのは「売買した記録」だけ。いま何株持っているかは書かれていない
③ 年次開示は年1回・時点が古い
2026年7月に出たのは2025年分。半年以上前の状態

ネット上には「トランプの保有銘柄ランキング」を断定的に載せているページがありますが、その多くは取引額の集計をもとにした推計です。実際の保有額とは別物なので、数字をそのまま信じないでください。

この記事で表にしたのも「6月に売買した金額のレンジ順」であって、保有額の順位ではありません。

米国の資産開示制度のしくみ

書類 内容 頻度
定期取引報告書
(OGE Form 278-T)
個々の売買。銘柄・売買の別・日付・金額レンジ 取引から45日以内
年次資産開示
(OGE Form 278e)
保有資産・収入・負債 年1回

提出先は米国政府倫理局(OGE)で、誰でも閲覧できます。根拠となっているのは2012年に成立したSTOCK Actです。

重要なのは「45日以内」という点です。6月の取引が公表されたのは8月22日でした。個人が開示を見た時点で、すでに2か月近く前の情報です。

なお、期限を過ぎた提出には罰金があります。トランプ大統領も、マイクロソフトとアマゾンの一部の取引で45日期限を逃し、200ドルの罰金を支払ったと報じられています。

日本に同じ制度はあるか

日本の読者にとって意外なのはここかもしれません。

項目 米国 日本
保有資産の公開 あり(年1回) あり(国会議員資産公開法など)
個々の売買の公開 あり(45日以内) 義務づけられていない
銘柄名の公開 あり 株式は銘柄と株数を記載

日本には「いつ・何を・いくらで売買したか」を随時公表させる制度がありません。だから「日本版のこのニュース」は原理的に出てこない、ということになります。

米国の開示がここまで細かいからこそ、こうした報道が成立しています。

何が議論になっているのか

この件は米国内で継続的に議論の対象になっています。両方の立場を並べます。

論点 内容
ホワイトハウス側の説明 投資は独立した第三者機関が運用しており、利益相反はない
口座の実際の形 ブラインドトラストではなく、第三者金融機関が管理する完全裁量口座
指摘されている点 エリック・トランプ氏は「ブラインドトラストで広範な指数に投資」と説明したが、開示には数千件の個別株取引が並ぶ
法律上の立場 大統領は連邦の利益相反規定の適用対象外
議会の動き 下院は議員と家族の個別株購入を禁じる法案を232対198で可決。ただし大統領は適用除外

つまり、現行法のもとでこれらの取引は違法ではありません。争点になっているのは「合法かどうか」ではなく「制度としてこれでよいのか」という点です。

参考までに、日本の個人投資家に適用されるルールはインサイダー取引で解説しています。米国の大統領に適用される枠組みとは別物です。

個人が真似できない5つの理由

この手のニュースが出ると「同じ銘柄を買えばよいのでは」という反応が必ず出ます。構造的に成立しません。

① 情報が2か月遅れ
6月の取引が出たのは8月22日。株価はすでに動いている
② 金額がわからない
「100万〜500万ドル」では、力を入れた取引なのか誤差なのか判断できない
③ 保有残高がわからない
売りが「利益確定」なのか「全部売った」のかが読めない
④ 本人の相場観とは限らない
複数の金融機関が別々に運用していると説明されている。定期的なリバランスの可能性がある
⑤ 資産規模がまったく違う
8億5,800万ドルの中の100万ドルは、比率にすれば0.1%程度。同じ比率で真似できる個人はいない

とくに⑤は見落とされがちです。同じ銘柄を同じ金額買っても、資産に占める比率が違えば、それはもう別の投資です。

ニュースをきっかけに飛びつく売買はイベントドリブンと呼ばれますが、すでに材料が出尽くしている場面で買うとイナゴになります。今回の開示は、その典型的な条件がそろっています。

それでも参考にできること

銘柄の真似はできませんが、ポートフォリオの組み方としては学べる点があります。

開示から読めること 個人が使える考え方
個別株よりETF1本の金額が大きい 中核はETFや投資信託などの指数連動、個別株は脇という組み方
地方債・国債を継続的に買っている 株式だけに寄せない。債券で値動きを抑える
セクターETFを入れ替えている ディフェンシブシクリカルの比率を調整する発想
1銘柄に資産の大半が集中している これは真似してはいけない例

最後の行が重要です。資産の過半が1銘柄という状態は、一般的な分散の考え方からは大きく外れています。創業者や大株主に固有の事情であり、個人投資家が参考にする対象ではありません。

日本から米国株を買う場合

記事に出てきた銘柄の多くは、日本の証券会社でも取引できます。実務面を整理しておきます。

項目 内容
NISA 米国株・米国ETFは成長投資枠で買えるものがある(対象は要確認)
為替 株価が変わらなくても円安・円高で損益が動く
配当の税金 米国で源泉徴収されるため、NISAでも米国分は非課税にならない
課税口座の場合 特定口座に対応しているかを確認する

配当にかかる税金の考え方は配当金とは、売却益の扱いはキャピタルゲインで解説しています。

※ 本記事は公開されている法定開示書類とその報道にもとづく解説であり、特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。記載の金額は開示上のレンジおよび報道時点の数値です。投資判断はご自身の責任でお願いします。

トランプ大統領の株取引に関するよくある質問

6月の取引で最も大きかったものは何ですか?
6月22日のバンガード米国増配株式ETF(VIG)の売却で、開示レンジは500万〜2,500万ドルでした。個別株の売買はいずれも100万〜500万ドルが上限だったため、単独の取引としてはこれが最大です。
なぜ金額が「100万〜500万ドル」のような幅で書かれているのですか?
米国の公職者資産開示制度が、正確な金額ではなくあらかじめ決められたレンジで報告する仕組みになっているためです。総額が7,810万〜2億6,310万ドルと3倍以上の幅で示されるのも同じ理由です。
保有銘柄を金額の大きい順に知ることはできますか?
正確には作れません。月次で公表される定期取引報告書には売買の記録しか載らず、保有残高は書かれていません。年次の資産開示には保有資産が載りますが、金額はレンジであり、公表も年1回で時点が古くなります。ランキングを断定的に示しているページは、取引額からの推計であることが多いので注意してください。
同じ銘柄を買えば同じ結果になりますか?
なりません。開示は取引から45日以内という規定のため、公表時点で2か月近く前の情報です。加えて金額も保有残高もわからず、そもそも資産規模が違うため、同じ金額を買っても資産に占める比率がまったく異なります。
これは違法ではないのですか?
現行法のもとでは違法ではありません。大統領は連邦の利益相反規定の適用対象外とされています。下院は議員と家族の個別株購入を禁じる法案を可決しましたが、大統領は適用除外です。議論されているのは合法性ではなく、制度としての妥当性です。
誰が売買を判断しているのですか?
ホワイトハウス側は、投資は独立した第三者機関が運用しており利益相反はないと説明しています。トランプ・オーガニゼーションも、第三者金融機関が管理する完全裁量口座であり本人は決定に関与しないとしています。一方で、資産はブラインドトラストには置かれておらず、この点が指摘の対象になっています。
日本の政治家の売買も見られますか?
見られません。日本には保有資産を公開する制度はありますが、個々の売買を随時公表させる仕組みはありません。米国のように「いつ・何を・いくらで売買したか」が45日以内に公表されるのは、制度の違いによるものです。
開示書類はどこで見られますか?
米国政府倫理局(OGE)のサイトで公開されており、誰でも閲覧できます。定期取引報告書はOGE Form 278-T、年次の資産開示はOGE Form 278eという書式です。報道は原則としてこれらの原本にもとづいています。

まとめ

この開示から読み取るべきなのは「どの銘柄を買ったか」ではなく「米国ではここまで公開される」という制度そのものです。そして、公開されていてもなお真似できないという事実です。

この記事のまとめ

・2026年6月の取引は1,051件、総額7,810万〜2億6,310万ドル
・最大はVIG(ETF)の売却で500万〜2,500万ドル
・6月18日にメタを売り、バークシャーを初めて買った
・金額はレンジでしか公表されないので順位を付けられない
・最大の保有はトランプ・メディア株 約10億7,000万ドル
・投資口座8つで少なくとも8億5,800万ドル
・開示は45日以内なので情報は2か月遅れ
・現行法では違法ではない。争点は制度の妥当性

あわせて読みたい:ETFとはポートフォリオとは債券とはインサイダー取引とはキオクシアの株価急落の全貌NISAとは

スポンサーリンク
おすすめの記事