デイトレは97%が負ける|研究データが示す勝てない理由

デイトレードを300日以上続けた人のうち、97%が損失を出していた。これはブラジルの先物市場で19,646人を追跡した研究の結論です。

台湾で約45万人を14年間分析した研究でも、手数料を引いたあとで継続的に利益を上げられたのは1%未満でした。

この記事では、その数字の中身と、なぜそうなるのかという構造を解説します。精神論ではなく、コストと確率の話です。

この記事でわかること

・ブラジルと台湾の研究が示した数字
・生き残った3%も「勝った」とは言えない理由
・続けても上達しなかったという発見
・なぜ負けるのかを構造から5つ
・「絶対に勝てない」とは言えない理由

300日以上続けた人の97%が負けた

まず、ブラジルの研究から見ていきます。

項目 内容
対象市場 ブラジルのミニ・イボベスパ先物(世界3位の取引量)
対象期間 2013〜2015年に始めた人を2017年まで追跡
対象人数 19,646人
300日以上続けた人 1,551人(全体の約8%)
そのうち損失を出した人 97%(手数料控除後)

出典:Chague, De-Losso, Giovannetti「Day Trading for a Living?」(2020年・SSRN ワーキングペーパー)

注目すべきは「300日以上続けた人」に絞っている点です。すぐにやめた人ではありません。1年以上、本気で取り組んだ人たちの結果です。

生き残った3%も「勝った」とは言えない

では、損失を出さなかった3%は成功したのでしょうか。研究はここも数字にしています。

基準 達成した人 割合
ブラジルの最低賃金(日額16米ドル)を超えた 17人 1.1%
銀行員の初任給(日額54米ドル)を超えた 8人 0.5%

1,551人のうち、最低賃金を上回る収入を得られたのは17人だけです。

つまり「デイトレードで生活する」という目標に到達したのは、1年以上続けた人の1%程度にすぎません。

最も稼いだ1人の平均日次利益は310米ドル
ただしその標準偏差は2,560米ドル
= 平均で勝っていても、日々の振れ幅は利益の8倍以上あった

この標準偏差の大きさは重要です。勝っている人ですら、精神的に耐えられる状態ではなかったことを意味します。標準偏差ボラティリティは、値動きのばらつきを表す数値です。

最も重要な発見は「上達しなかった」こと

この研究でいちばん重い結論はここです。

学習効果は確認されなかった
取引日数を重ねるほど成績が良くなる、という関係は
統計的に確認されなかった。
むしろ日数の係数はマイナス(−0.019)で有意だった。

「経験を積めばうまくなる」という前提が、データでは支持されなかったということです。

300日続けても上達しないのなら、600日続ければ勝てるようになる根拠もありません。これが「続ければいつか」という考え方を否定する部分です。

台湾では45万人を14年間分析した

もう1つの研究は、規模がさらに大きくなります。

項目 内容
対象市場 台湾証券取引所
対象期間 1992〜2006年(14年間)
対象人数 約45万人
継続的に利益を出せた人 1%未満(手数料控除後)

出典:Barber, Lee, Liu, Odean「The Cross-Section of Speculator Skill: Evidence from Day Trading」Journal of Financial Markets 第18巻(2014年)

論文の表現は「手数料控除後の超過収益を、継続的かつ安定的に上げられるのはデイトレーダー全体の1%未満」というものです。

約45万人のうち、およそ4,000人。ブラジルの研究とは市場も時代も違うのに、ほぼ同じ結論が出ています。

上位と下位でどれだけ差があるか

グループ 手数料控除前 手数料控除後
上位500人 +61.3bp/日 +37.9bp/日
下位のグループ −11.5bp/日 −28.9bp/日

bp(ベーシスポイント)は0.01%のこと。37.9bpは0.379%にあたる。

ここで見てほしいのは手数料の重みです。

上位500人 … 手数料で 61.3 → 37.9利益の38%が消える
下位   … 手数料で −11.5 → −28.9損失が2.5倍になる

下位のグループは、売買判断そのものよりコストで負けています。これは後で詳しく説明します。

8割が2年以内にやめる

同じ研究チームは、デイトレーダーの8割が2年以内に撤退することも報告しています。

この数字は、次の2つを意味します。

① 大半の人は結論が出る前にいなくなる
ブラジルの研究で300日以上続けた人が8%しかいなかったのと同じ構図
② やめた人は発信しない
いま見えているデイトレーダーは、残った2割の一部でしかない

2つの研究に共通していること

項目 ブラジル 台湾
市場 株価指数先物 現物株
時代 2013〜2017年 1992〜2006年
人数 19,646人 約45万人
結論 97%が損失 1%未満しか継続的に勝てない

市場も国も時代も違うのに、同じ方向の結論が出ています。これは「その市場が特殊だった」という説明では片づきません。

ここから先は、なぜこうなるのかという構造の話です。理由がわかれば、日本の市場でも同じことが起きる理屈が見えます。

理由① デイトレはマイナスサムゲーム

最も根本的な理由がこれです。デイトレードと長期投資は、利益の出どころがまったく違います。

長期投資(プラスサム)
企業が利益を生み、それが配当と株価の上昇として分配される。
参加者全員が同時にプラスになりうる。
デイトレード(マイナスサム)
1日では企業の価値はほとんど変わらない。
誰かの利益は、そのまま誰かの損失。
そこから手数料・スプレッド・税金が抜けていく。
参加者全体の合計は、必ずマイナスになる。

これは意見ではなく算数です。全員の損益を合計すると、コストの分だけマイナスになります。

つまりデイトレードで勝つには、「平均以上」では足りません。コスト分を上回るだけ、他の参加者から取る必要があります。

一方、インデックス投資のように市場全体を長く持つ方法は、企業の利益成長そのものを取りにいく形になります。ここが決定的な違いです。

理由② コストが取引回数に比例する

「手数料0円だからコストはかからない」は誤解です。手数料がゼロでも、スプレッドは必ず払っています。

買うときは売り注文の値段(少し高い)、売るときは買い注文の値段(少し安い)で約定します。この差が実質的なコストです。を見るとその構造がわかります。

1日の往復回数 年間の往復回数 年間コスト(資金比)
1往復 250回 25%
3往復 750回 75%
5往復 1,250回 125%
10往復 2,500回 250%

1往復あたりのコストを0.1%(株価1,000円・呼値1円の銘柄を想定)、年間250営業日、毎回資金の全額を使うと仮定した単純計算。実際のコストは銘柄と注文方法で変わります。

1日5往復する人は、年間で資金の125%にあたる利益を出して、ようやくトントンです。

売買判断がどれだけ正確でも、この数字を超えられなければ資金は減り続けます。台湾の研究で下位グループの損失が手数料込みで2.5倍になっていたのは、これが原因です。

取引回数が多いほどコストが積み上がる構造は、スキャルピングでさらに極端になります。

理由③ 反対側にいるのが誰か

デイトレードで利益を出すには、誰かから取る必要があります。では、その相手は誰でしょうか。

相手 性質
高速取引業者 ミリ秒単位で発注。回線も設備も比較にならない
機関投資家 VWAPなどに沿って自動で分割発注する
自己売買部門 専業で、資金も情報も厚い
他の個人 同じ条件。ここから取るしかない

個人が取れる相手は、実質的に他の個人だけです。そしてその他の個人も、同じ数字を見て同じツールを使っています。

大口の売買の痕跡は歩み値である程度たどれますが、それが見えたときにはすでに約定が済んでいます。

板に出ている大きな注文が本物とは限らないという問題もあります(参照)。約定していない注文はいつでも取り消せます。

理由④ 税金が毎年確定してしまう

見落とされやすいのがここです。デイトレードは利益を毎年確定させるため、税金を毎年払います。

一方、長期で保有し続ければ、含み益には課税されません。払わずに済んだ税金の分も、翌年の元手として働き続けます。この差については利確でも解説しています。

パターン 20年後の手取り
毎年利益を確定して課税される 約463万円
20年持ち続けて最後に一括で課税される 約556万円
約93万円

元本100万円、年利10%、税率20.315%、手数料は考慮しない前提の単純計算。運用成果を保証するものではありません。

同じ年利でも、税金を先に払うかどうかだけで元本と同じくらいの差が出ます。デイトレードはこの差を、毎年自分から捨てていることになります。

税金の基本はキャピタルゲイン、口座の選び方は特定口座で解説しています。

理由⑤ 見えているのは勝った人だけ

数字と実感がずれる最大の原因が、これです。

生存バイアス
8割が2年以内にやめる → やめた人は発信しない
 ↓
SNSや動画に残るのは勝っている人だけ
 ↓
「みんな勝っている」ように見える

ブラジルの研究で最低賃金を超えたのは1,551人中17人でした。その17人だけがSNSで発信していたら、外からは「デイトレは勝てる」と見えます。

負けた1,534人は、そもそも発信しません。これは嘘をついている人がいるという話ではなく、見える範囲が最初から偏っているという話です。

短期間で急騰した銘柄に飛びつくイナゴの構図も、同じバイアスから生まれます。

「絶対に勝てない」とは言えない理由

ここは正確に書きます。研究が示しているのは「絶対に勝てない」ではありません。

よくある言い方 研究が実際に示したこと
デイトレは絶対に勝てない 300日以上続けた人の97%が負けた
誰も勝っていない 1%未満は継続的に勝てている
運だけで決まる 上位と下位に再現性のある差がある

台湾の研究は「1%未満は継続的・安定的に勝てる」と結論づけています。技能の差は実在します。

ただし、これは「だから自分にもできる」という話にはなりません。

1%未満に入れる前提で始めるのが合理的かどうか、という問題です。
しかも300日続けても上達しなかったのだから、
「やってみて向いていたら続ける」という判断すら難しい。

「絶対に勝てない」と言うと、勝っている人を1人挙げられただけで話が終わります。そうではなく、97%という確率と、上達が確認されなかったという事実で判断してください。

日本に同じ研究はあるのか

正直に書きます。日本には、これらと同規模の学術研究が公表されていません。

よく聞く言い方 実際
日本では9割が負けている 大規模な調査に基づく数字ではない
日本は特殊だから当てはまらない コスト構造とマイナスサムの性質は同じ

「9割が負ける」という言い方は広く使われていますが、出典をたどれる日本の調査は見当たりません。この記事でその数字を使わなかったのはそのためです。

一方で、マイナスサムであること、コストが回数に比例すること、税金が毎年確定することは、日本の市場でもそのまま当てはまります。

長期投資と何が違うのか

項目 デイトレード 長期投資
利益の出どころ 他の参加者の損失 企業の利益成長
全体の合計 マイナスサム プラスサム
コスト 取引回数に比例 ほぼ発生しない
税金 毎年確定する 売るまで繰り延べられる
必要な時間 市場が開いている間ずっと 年に数回
NISAとの相性 悪い(枠を消費し、損益通算もできない) 良い

NISAとの相性の悪さは見落とされがちです。NISA口座で売買を繰り返すと年間の枠を消費していきますし、NISA口座で出た損失は他の口座の利益と損益通算できません。

それでもやるなら決めておくこと

禁止する立場ではありません。ただし、確率を知ったうえで条件を決めてから始めてください。

① 生活資金と完全に分ける なくなっても生活が変わらない金額だけ
② 1回の損失を資金の1%以内に抑える 逆指値注文を入れてから入る
③ 期限を先に決める 「半年やって資金が減っていたらやめる」と紙に書く
④ 全取引を記録する 研究では上達が確認されなかった。使ったテクニカル指標と結果を残さなければ検証すらできない
⑤ 回数を減らす コストは回数に比例する。ここだけは自分で制御できる

③がとくに重要です。8割が2年以内にやめるという事実は、裏を返せば「やめどきを自分で決めていない人が多い」ということでもあります。

なお現物取引には、同じ資金・同じ銘柄で1日1往復までという制約があります(差金決済の禁止)。詳しくはデイトレードとはで解説しています。

※ 本記事は公表された学術研究と制度の解説であり、特定の手法や売買を推奨・否定するものではありません。試算は仮定を置いた単純計算であり、運用成果を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

デイトレードの勝率に関するよくある質問

97%が負けたというのは、すぐにやめた人も含む数字ですか?
含みません。ブラジルの研究で97%という数字が出たのは、300日以上デイトレードを続けた1,551人に絞った集計です。すぐにやめた人を除いても、つまり1年以上本気で取り組んだ人だけを見ても、97%が手数料控除後で損失を出していました。
続ければうまくなるのではないですか?
その関係はデータで確認されませんでした。ブラジルの研究では、取引日数を重ねるほど成績が良くなるという傾向は見られず、むしろ日数の係数はマイナスで統計的に有意でした。300日続けて上達しないのであれば、それ以上続ければ勝てるようになるという根拠もありません。
手数料が0円ならコストはかからないのでは?
かかります。買うときは売り注文の値段、売るときは買い注文の値段で約定するため、その差が実質的なコストになります。仮に1往復0.1%とすると、1日5往復で年間1,250回、資金の125%にあたるコストです。手数料が無料でもこの部分は消えません。
日本の市場でも同じことが起きますか?
日本で同規模の研究は公表されていませんが、負ける理由となる構造は共通です。1日では企業価値がほとんど変わらないためマイナスサムであること、コストが取引回数に比例すること、税金が毎年確定することは、市場が変わっても同じです。
日本では9割が負けると聞きました。
広く使われている言い方ですが、出典をたどれる日本の大規模調査は見当たりません。この記事で9割という数字を使っていないのはそのためです。根拠として示せるのは、ブラジルの97%と台湾の1%未満という研究結果です。
では絶対に勝てないということですか?
そうは言えません。台湾の研究は1%未満が継続的かつ安定的に利益を上げていると結論づけており、技能の差は実在します。問題は、その1%未満に入れる前提で始めることが合理的かどうかという点です。しかも300日続けても上達が確認されなかったため、やってみて判断するという方法も機能しにくくなります。
SNSでは勝っている人をよく見かけます。
生存バイアスです。デイトレーダーの8割は2年以内にやめており、やめた人は発信しません。ブラジルの研究で最低賃金を超えたのは1,551人中17人でしたが、その17人だけが発信していれば、外からは勝てるように見えます。見える範囲が最初から偏っています。
回数を減らせば勝てますか?
コストは確実に減ります。コストは取引回数にほぼ比例するため、回数を減らすことは自分で制御できる数少ない改善策です。ただし回数を減らすほど1日で完結させる意味も薄れるため、実質的にはスイングトレードや長期保有に近づいていくことになります。

まとめ

2つの研究が示したのは「97%が負ける」と「続けても上達しない」という2つの事実です。精神論ではなく、コストと構造の問題です。

この記事のまとめ

・300日以上続けた1,551人の97%が損失(ブラジル)
・最低賃金を超えたのは17人、0.5%は8人だけ
・取引日数を重ねても上達は確認されなかった
・約45万人のうち継続的に勝てるのは1%未満(台湾)
・8割が2年以内に撤退している
・デイトレはマイナスサム。長期投資はプラスサム
・コストは取引回数に比例する。手数料0円でも消えない
・「絶対に勝てない」ではなく「97%が負ける」で判断する

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