リスクオンとは、投資家が積極的にリスクを取りにいく相場のことです。リスクオフはその逆で、損失を避けるために安全な資産へ資金を移す相場を指します。

この2つは相場の「気分」を表す言葉ではなく、資金が実際にどこへ動いているかを表す言葉です。だから、どの資産が買われているかを見れば判定できます。

そして日本の投資家にとって最も重要なのが、リスクオフになると円が買われるという点です。この記事では、その理由まで踏み込んで整理します。

この記事でわかること

・リスクオンとリスクオフで資金が向かう先の一覧
・なぜリスクオフで円が買われるのか(円キャリー取引の巻き戻し)
・判定に使える4つの指標
・日本株のどの業種が動くか
・「安全資産」でも下がることがある理由
・個人投資家が実際にやるべきこと

リスクオンとは

リスクオン(読み方:りすくおん)は、投資家が値動きの大きい資産を買いにいく状態です。多少の危険を承知でリターンを狙う局面を指します。

リスクオンが起きやすい場面
・景気が良い、あるいは回復に向かっているとき
・中央銀行が金融緩和に動いているとき
・企業業績の見通しが上向いたとき
・地政学リスクが後退したとき
経済指標が市場予想を上回ったとき

共通しているのは「不確実性が減った」と市場が感じていることです。先が読めるようになると、投資家はリスクを取れるようになります。

リスクオフとは

リスクオフ(読み方:りすくおふ)は逆に、値動きの大きい資産を売って、安全とされる資産へ資金を移す状態です。「リスク回避」とも呼ばれます。

重要なのは、リスクオフは「儲けを狙う」局面ではなく「減らさないようにする」局面だという点です。この違いが、値動きの性質を決めます。

リスクオフが起きやすい場面
・戦争や紛争などの地政学リスクが高まったとき
・金融機関の破綻や信用不安が出たとき
・景気後退の兆しが見えたとき
・中央銀行が急な利上げに動いたとき
・想定外の政治イベントが起きたとき

リスクオフの値動きはリスクオンより速いという特徴があります。買うのには理由が要りますが、売るのに理由は要らないからです。

資金が向かう先の一覧

どちらの局面かは、次の資産の動きを見れば判定できます。

資産 リスクオン リスクオフ
株式 買われる 売られる
新興国の資産 買われる 真っ先に売られる
高金利通貨 買われる 売られる
日本円 売られる(円安 買われる(円高
スイスフラン 売られる 買われる
米国債などの先進国国債 売られる(金利上昇) 買われる(金利低下)
金(ゴールド) 軟調になりやすい 買われる

この表で覚えるべきは「日本円」の行だけです。ほかは直感どおりですが、円だけは理由を知らないと納得できません。

なぜリスクオフで円が買われるのか

日本の景気が良いから円が買われる、わけではありません。理由は円キャリー取引の巻き戻しにあります。

円キャリー取引と、その巻き戻し
【リスクオンのとき】
金利の低い円を借りる → 売って外貨に換える → 高金利の資産で運用
 … 円が売られる = 円安

【リスクオフになると】
運用していた資産を売る → 外貨を円に戻す → 借りた円を返す
 … 円が買われる = 円高

つまりリスクオフの円高は「円が好かれた」結果ではなく、「借りた円を返している」結果です。

ここから重要な帰結が出てきます。円売りポジションが大きく積み上がっているほど、巻き戻しの規模も大きくなります。2025年から2026年にかけては投機筋の円売りが膨らんだ局面が続いており、リスクオフが起きたときの円高の振れ幅が大きくなりやすい状態にあると指摘されています。

日本株にとってこれは二重の逆風です。株が売られるだけでなく、円高で輸出企業の採算も悪化するからです。

リスクオン・リスクオフを判定する4つの指標

ニュースの言葉ではなく、数字で確認する方法です。

指標 リスクオフのサイン
VIX(恐怖指数) 20を超えると警戒、30超で明確なリスクオフ
ドル円 急激な円高。とくに日本の取引時間外に動く
米国の長期金利 株安と同時に低下(国債が買われている)
金価格 株安と同時に上昇

最も実用的なのは3行目です。「株安と長期金利の低下がセットで起きているか」を見てください。株も債券も同時に売られている場合は、リスクオフではなく別の何か(インフレ懸念や金融引き締め)が起きています。

リスクオフでも安全資産が下がることがある

ここは押さえておくべき例外です。「安全資産」は絶対的な避難先ではありません。

状況 何が起きるか
インフレ+利上げ局面 株式も債券も同時に下落する
急落で追証が発生 現金を作るため、金など含み益のある資産まで売られる
米国自体が震源地 米国債とドルが同時に売られることがある

2行目は暴落の初日によく起きます。「安全資産が下がっている=リスクオフではない」と判断すると間違えます。むしろ換金売りが出るほど深刻だ、というサインです。

日本株のどこが動くのか

リスクオンとリスクオフでは、買われる業種が入れ替わります。

局面 強くなりやすい 弱くなりやすい
リスクオン 半導体、機械、商社、海運などのシクリカル銘柄。小型株 電力、ガス、食品などの内需
リスクオフ 医薬品、食品、電力・ガス、通信などのディフェンシブ銘柄 輸出関連、半導体、小型株

ただしディフェンシブ銘柄も「下がりにくい」だけで、上がるとは限りません。相場全体が下げる局面では、下落幅が小さいという意味にすぎない点に注意してください。

また指数の動きにも差が出ます。リスクオフでは値がさのハイテク株が売られるため、日経平均のほうがTOPIXより下げやすくなり、NT倍率は低下する傾向があります。

リスクオフのときに株価が「窓」を開ける理由

個人投資家にとって最も実害があるのがこれです。

リスクオフが日本時間の夜に起きたら
日本時間 15時30分 東京市場が引ける
 ↓
日本時間 22時30分〜 欧米市場でリスクオフが発生
 ↓
翌朝 9時 東京市場はいきなり大幅安で始まる
 … その間、日本の投資家は何もできない

損切り注文を入れていても、想定した価格では約定しません。始値がすでに下回っていれば、そこから売られるためです。

だから対策は「注文」ではなく「株数」で行います。翌朝に窓を開けて始まる前提で、最初から持つ量を調整しておくということです。

個人投資家が実際にやるべきこと

やること 理由
① 業種の偏りを点検する 輸出・半導体に集中していると、リスクオフで一斉に下がる
② 株数を先に決める 窓を開けて始まると損切り注文は機能しない
③ 信用取引の建玉を減らす 追証は株価が戻っても消えない
④ 積立は止めない 時間分散の効果はこういう局面でこそ出る
⑤ 現金比率を意識する 買い向かえるかどうかは、事前の現金で決まる

③は特に重要です。信用取引の追証は、一度発生すると株価が元に戻っても消えません。リスクオフは短期で終わることもありますが、その短期のあいだに強制決済されれば取り返せなくなります。

リスクオン・リスクオフのよくある誤解

よくある誤解 実際は
リスクオフ=暴落 程度はさまざま。数日で戻ることも多い
円高になるのは日本が強いから 円キャリー取引の巻き戻し。日本の実力とは無関係
安全資産なら絶対に下がらない 換金売りで金や国債まで売られることがある
リスクオフを事前に予測できる きっかけは想定外の出来事。予測ではなく備えの問題
ディフェンシブ銘柄なら儲かる 下がりにくいだけ。リスクオンでは出遅れる

最後の行は覚えておく価値があります。リスクオフに強い構成は、そのままリスクオンに弱い構成です。両立はしません。だからこそ、事前に自分の許容度を決めておく必要があります。

リスクオン・リスクオフに関するよくある質問

リスクオンとリスクオフの違いを一言で言うと何ですか?
資金が「増やしにいく」か「減らさないようにする」かの違いです。リスクオンでは株式や新興国資産、高金利通貨が買われ、リスクオフでは円やスイスフラン、先進国の国債、金が買われます。相場の気分ではなく、資金の実際の流れを表す言葉です。
なぜリスクオフで円が買われるのですか?
円キャリー取引の巻き戻しが起きるためです。リスクオンの局面では金利の低い円を借りて外貨に換え、高金利の資産で運用する動きが積み上がります。リスクオフになるとその資産を売って外貨を円に戻し、借りた円を返すため、円買いが発生します。日本の景気が良いから買われるわけではありません。
リスクオフはどうやって見分けますか?
4つの指標を見ます。VIXが20を超えて警戒、30を超えれば明確なリスクオフです。あわせて急激な円高、米国の長期金利の低下、金価格の上昇を確認します。とくに「株安と長期金利の低下がセットで起きているか」が実用的な判定基準になります。
リスクオフのときに金や国債が下がることはありますか?
あります。急落で追証が発生すると、投資家は現金を作るために含み益のある資産まで売却します。このため暴落の初日には金や国債まで下がることがあります。安全資産が下がっているからリスクオフではない、と判断すると間違えます。むしろ換金売りが出るほど深刻だというサインです。
リスクオフのときはどの日本株が下がりますか?
輸出関連、半導体、小型株が下がりやすくなります。株安と円高が同時に進むため、輸出企業は二重の逆風を受けます。一方、医薬品・食品・電力・ガス・通信などのディフェンシブ銘柄は下落幅が小さくなる傾向がありますが、上がるわけではありません。
損切り注文を入れておけば安心ですか?
安心とは言えません。リスクオフは日本の取引時間外に起きることが多く、翌朝は窓を開けて始まります。始値がすでに損切り価格を下回っていれば、そこから売られるため想定した価格では約定しません。対策は注文ではなく、最初から持つ株数を調整することです。
リスクオフのときは積立を止めるべきですか?
一般的には止めないほうが合理的です。積立の効果は価格が下がった局面で多くの口数を買えることにあり、それを止めると時間分散の意味が薄れます。ただし生活資金に不安がある場合は、金額を減らすなどの調整を検討してください。
リスクオフは予測できますか?
できません。きっかけになるのは戦争や金融機関の破綻など、市場が想定していなかった出来事です。予測しようとするより、業種の偏りを点検し、株数を先に決め、信用取引の建玉を絞っておくという「備え」に労力を使うほうが現実的です。

まとめ

リスクオンとリスクオフは「資金が向かう方向」の話です。ここを押さえると、株・為替・金利がなぜ同時に動くのかが見えてきます。

この記事のまとめ

・リスクオンは値動きの大きい資産へ、リスクオフは安全資産へ資金が動く
・リスクオフの値動きはリスクオンより速い
・リスクオフで円が買われるのは円キャリー取引の巻き戻しが理由
・円売りが積み上がっているほど、巻き戻しの円高は大きくなる
・判定にはVIX・ドル円・米長期金利・金価格の4つを使う
・株安と長期金利の低下がセットかどうかが実用的な基準
・追証の換金売りで金や国債まで下がることがある
・リスクオフは取引時間外に起きるため、損切り注文は機能しないことがある
・対策は予測ではなく、業種の偏り・株数・信用建玉の3点の調整

※ 本記事は2026年8月時点の情報にもとづく解説であり、特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

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