恐怖指数とは、これから相場がどれくらい大きく動きそうかを数値化した指標のことです。正式にはVIX指数(Cboe Volatility Index)といいます。

投資家の不安が高まると跳ね上がるため「恐怖指数」と呼ばれます。2024年8月5日には一時65を超え、経済危機レベルとされる50を大きく上回りました。

この記事では、数値の読み方から、その数字をそのまま信じてはいけない理由までを解説します。

この記事でわかること

・20・30・40という水準がそれぞれ意味すること
・株価と逆に動く理由
・2024年8月5日に何が起きたか
・VIXが必ず元の水準に戻る性質
・VIX関連の商品を長く持ってはいけない理由

恐怖指数(VIX)とは

VIXは、米国のCboe(シカゴ・オプション取引所)が算出・公表している指数です。

VIXが示すもの
S&P500のオプション価格から逆算した
「今後30日間に、市場がどれくらい動くと予想されているか」
→ 年率換算のパーセントで表示される

たとえばVIXが20なら、「今後30日間の値動きが年率20%程度と見込まれている」という意味になります。上がる方向か下がる方向かは示しません。あくまで「揺れの大きさ」の予想です。

ただし実際には、株価が急落するときにこそオプションの需要が高まるため、VIXの上昇はほぼ下落局面と重なります。そのため「恐怖指数」という通称が定着しました。

なぜオプションの価格から計算できるのかというと、オプションは「保険」に近い商品だからです。将来が荒れそうだと考える人が増えれば、保険料にあたるオプションの価格が上がります。VIXは、その保険料の高さを指数に直したものだと考えるとイメージしやすくなります。

火災保険の保険料が上がっている地域は、火事のリスクが高いと見られているということです。同じように、VIXが高い局面は「市場参加者がこれから荒れると考えて、高い保険料を払ってでも備えている」状態を示しています。

水準の読み方

絶対的な基準はありませんが、市場では次のように受け止められています。

VIXの水準 市場の状態 起きていること
10台 楽観 相場が落ち着いている。警戒感が薄い
20前後 標準 平常時の目安とされる節目
30超 警戒 不安が高まっている。値動きが荒くなる
40超 パニック 投げ売りが出ている状態
50超 経済危機レベル 数年に一度あるかどうかの水準

※ 目安であり、この水準で売買を推奨するものではありません。

まず「20」を頭に入れてください。そこから離れているほど、市場が普段とは違う状態にあると判断できます。

2024年8月5日に何が起きたか

VIXの性質を理解するのに、これ以上ない事例です。

1

日本時間20時ごろ
VIX 27前後

すでに警戒水準ではあるものの、まだ「危機」というほどではありませんでした。

2

約10分後
50を突破

わずか10分ほどで27から50超へ。その後60も超え、一時65.73を記録しました。

3

同日の終値
38.57

高値からは大きく戻して引けました。その後も数日で急速に低下しています。

※ 出典:日本経済新聞ほか報道。同日は日経平均が前週末比4,451円安と、ブラックマンデーを超える下落幅を記録しました。

この日の教訓
高値65.73 → 終値38.57
→ 同じ日の中で27ポイント以上の差

VIXの瞬間的な高値は、市場の実態より大きく振れることがあります。報道された「一時◯◯まで急騰」という数字だけで判断しないでください。

VIXが急騰した過去の局面

50を超えるような水準がどれくらい珍しいのかは、過去と並べると実感できます。

時期 出来事 VIXの水準
2008年 世界金融危機(リーマン・ショック) 80超
2020年3月 新型コロナウイルスによる急落 80超
2024年8月5日 日経平均が過去最大の下落幅 一時65.73
平常時 特段の材料がない期間 10〜20台

※ 各種市場データ・報道に基づく概数です。日中の高値と終値では水準が異なります。

80超という水準は、十数年に一度あるかどうかです。逆に言えば、日々のニュースで「VIXが上昇」と報じられる場面の大半は、20台から30台への動きにすぎません。数字の大小を、過去のスケール感と照らして受け止めてください。

VIXと株価は逆に動く

株価が急落
VIXは急騰
下落に備えるオプションの
需要が一気に高まるため
株価が上昇・安定
VIXは低下
備える必要が薄れ、
オプション価格が下がる

上がるときはゆっくり、下がるときは一気に——VIXはその逆

株価は上昇に時間をかけ、下落は短時間で起こります。VIXはその鏡像なので、急騰は鋭く、低下はだらだらと進みます。

VIXは必ず元の水準に戻る

VIXの最も重要な性質がこれです。

平均回帰する

株価と違い、VIXは無限に上がり続けることも、ゼロになることもありません。恐怖はいつか収まり、平穏もいつか破られるためです。歴史的に見て、極端な高水準は長続きしていません。

この性質から、VIXは次のように使われます。

VIXの状態 市場の解釈 注意点
極端に高い(40超) 悲観が出尽くしつつある可能性 そこからさらに上がることもある
極端に低い(10台) 警戒感が薄れすぎている可能性 低い状態が何か月も続くこともある

「VIXが40を超えたから買い」という単純なルールは危険です。2024年8月5日のように、40を超えてからさらに65まで走ることがあります。タイミングを当てる道具ではなく、状態を把握する道具として使ってください。

日経平均VI(日本版の恐怖指数)

日本にも同じ考え方の指数があります。

項目 VIX指数 日経平均VI
対象 S&P500 日経平均株価
算出元 Cboe(米国) 日本経済新聞社
計算の考え方 オプション価格から予想変動率を逆算 同じ(日経225オプションを使用)
見るタイミング 米国市場の警戒度 日本市場の警戒度

日本株を売買するなら日経平均VIを、米国株なら VIX を——というより、両方を並べて見るのが実務的です。日本市場は米国市場の影響を強く受けるため、VIXの急騰は翌朝の日本株に波及します。

VIXの数値を鵜呑みにしてはいけない

あまり語られませんが、重要な注意点です。

オプション市場が薄いと数値が飛ぶ

VIXはオプション価格から計算されます。取引が薄い時間帯に注文が偏ると、実態以上に数値が跳ねることがあります。2024年8月5日の急騰についても、オプション売買の薄さが一因と指摘されました。

「予想」であって「事実」ではない

VIXが示すのは市場参加者の予想です。実際にその通り動く保証はありません。予想が外れれば、VIXは何事もなかったように低下します。

方向は分からない

VIXは「揺れの大きさ」の指標であって、上がるか下がるかは示しません。VIXが低い状態から急騰するのはたいてい下落局面ですが、指数そのものに方向の情報はありません。

VIX関連の商品を長く持ってはいけない理由

VIXに連動するETFやETNが存在しますが、これらには構造上の弱点があります。

VIX指数そのものは買えない
VIXは計算値であって、現物が存在しない
→ 関連商品はVIX先物を使って運用する
→ 期近から期先へ乗り換えるたびにコストが発生する

結果として、VIXが横ばいでも関連商品の価格は下がっていきます。これを減価といいます。

そのため、VIX関連商品は短期の保険としてなら意味がありますが、長期保有には向きません。数年単位で持ち続けると、VIXが同じ水準に戻っても価格は大きく目減りしています。

投資対象として検討する場合は、ETFの一般的な仕組みだけでなく、この減価の性質を必ず理解してから判断してください。

VIXが高いときの向き合い方

① 建玉を小さくする

値動きが荒くなるということは、同じ株数でも損益の振れ幅が大きくなるということです。ポジションを普段より小さくするのが基本です。

② 信用取引の維持率を確認する

急落局面では追証が発生しやすくなります。VIXが跳ねた日は、まず自分の維持率を見てください。

③ 積み立ては止めない

高VIX局面は株価が下がっている局面でもあります。長期の積み立てをしているなら、こういうときこそ安く買えていると考えられます。

VIXの調べ方

見る場所 わかること 費用
経済ニュースサイト VIX・日経平均VIの現在値とチャート 無料
証券会社の取引ツール 指数として表示。チャートに重ねられるものもある 無料
チャート分析ツール 長期の推移。過去の危機時の水準と比較できる 無料〜有料

※ 本記事は指標の解説であり、特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

恐怖指数に関するよくある質問

VIXが何を超えたら危険ですか?
一般に20が平常時の目安、30超で警戒、40超でパニック、50超で経済危機レベルとされます。ただし絶対的な基準ではなく、その時々の相場環境によって受け止められ方は変わります。
VIXが上がると株価は必ず下がりますか?
強い逆相関がありますが、必ずではありません。VIXは「値動きの大きさ」の予想であり、方向を示すものではないためです。実務上は急落局面で急騰することがほとんどです。
2024年8月5日のVIXはどこまで上がりましたか?
一時65.73まで急騰し、終値は38.57でした。日本時間20時ごろに27前後だったものが約10分で50を突破しています。同じ日の中でこれだけ振れることがある、という点が重要です。
VIXが高いときは買い時ですか?
結果的にそうなることはありますが、ルールにはできません。40を超えてからさらに65まで上昇した例があるように、「高いから底」という判断は危険です。相場の状態を知る材料として使ってください。
日本にもVIXはありますか?
日経平均VIがあります。日経225オプションの価格から算出され、日本経済新聞社が公表しています。考え方はVIXと同じで、日本市場の警戒度を示します。
VIX指数そのものを買えますか?
買えません。VIXは計算上の数値で現物が存在しないためです。VIX先物やそれに連動するETF・ETNを通じて間接的に投資することになりますが、乗り換えコストによる減価があるため長期保有には向きません。
VIXとボラティリティは同じものですか?
VIXはボラティリティを指数化したものの1つです。ボラティリティという概念には過去の実績から計算するものと将来を予想するものがあり、VIXは後者にあたります。詳しくはボラティリティとはをご覧ください。
VIXが低いときは安心ですか?
油断はできません。VIXが低いのは「市場が油断している」状態でもあり、そこから急騰することがあります。実際、2024年8月5日の急騰も直前まで比較的落ち着いた水準からの動きでした。

まとめ

VIXは市場の体温計です。数値そのものを売買のシグナルにするのではなく、いま自分がどんな環境にいるのかを知るために使ってください。

この記事のまとめ

・VIX=S&P500オプションから逆算した今後30日の予想変動率
・20が平常時の節目。30超で警戒、40超でパニック、50超で危機
・2024年8月5日は一時65.73、終値38.57
・株価と強い逆相関。急騰は鋭く、低下は緩やか
・必ず元の水準に戻る(平均回帰)が、タイミングは読めない
・オプション市場が薄いと数値が実態以上に飛ぶことがある
・VIX関連商品は減価するため長期保有に向かない

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