債券とは、お金を借りたことを証明する証書です。国や企業が資金を集めるために発行し、買った人は利息を受け取って満期に額面を受け取ります。
債券を理解する鍵はひとつです。金利が上がると、すでに発行されている債券の価格は下がります。この逆相関を押さえていないと、「安全なはずの債券で損をした」という事態になります。
日銀の政策金利は2026年6月に1.0%程度へ引き上げられました。金利が動く局面に入った今、この仕組みを知っておく実務的な価値は高くなっています。
この記事でわかること
・金利と債券価格が逆に動く仕組み
・表面利率と最終利回りの違い
・価格変動・信用・為替の3つのリスク
・債券と株式の4つの違い
・金利上昇局面での債券の見方
目次
債券とは?まず結論から
債券(読み方:さいけん)
国や企業がお金を借りるとき、借用証書のようなものを発行します。それが債券です。買う側から見れば、貸したお金に利息が付いて返ってくる商品ということになります。
① 発行時に額面金額を払い込む
② 保有中は決まった利率の利息を受け取る(年1〜2回)
③ 満期(償還日)に額面金額が戻ってくる
※ 発行体が破綻すれば戻らないことがあります
覚えておきたい用語は4つです。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 額面 | 満期に戻ってくる金額。100円単位で表される |
| 表面利率(クーポン) | 額面に対して年何%の利息が付くか |
| 償還日 | 額面が返ってくる満期日 |
| 単価 | 市場で売買されるときの価格。額面100円に対していくらか |
4行目が重要です。債券は額面100円に対して「98円」「102円」といった価格で売買されます。この単価が金利によって動きます。
債券の種類
誰が発行するかで大きく分かれます。信用力の差が利率の差になります。
| 発行体 | 名称 | 信用リスク | 利率 |
|---|---|---|---|
| 国 | 国債 | 最も低い | 低い |
| 地方自治体 | 地方債 | 低い | やや低い |
| 企業 | 社債 | 発行体次第 | 高め |
| 外国の政府・企業 | 外国債券(外債) | 為替リスクも乗る | 高いことが多い |
利払いの方法でも分かれます。
| 区分 | 仕組み |
|---|---|
| 利付債 | 定期的に利息を受け取り、満期に額面が戻る(最も一般的) |
| 割引債(ゼロクーポン債) | 利息はなく、額面より安く買って満期に額面で戻る |
| 変動利付債 | 市場金利に応じて利率が変わる |
3行目は金利上昇局面で意味を持ちます。変動利付債は市場金利に連動するため、金利が上がっても価格が下がりにくい性質があります。個人向け国債の変動金利型がこのタイプです。
金利が上がると債券価格が下がる仕組み
債券でいちばん重要な性質です。数字で確認します。
額面100円・表面利率1%の債券を持っているとします。ここで市場金利が2%に上がり、新しく発行される債券は表面利率2%になったとします。
同じ100円なら利息の多い新発債を買う。だから古い債券は値下げしないと売れない
古い債券を売りたければ、価格を下げるしかありません。これが「金利上昇=債券価格の下落」の中身です。難しい理屈ではなく、単純な比較の結果です。
| 市場金利 | 既発債の価格 | 新発債の利率 |
|---|---|---|
| 上がる | 下がる | 上がる |
| 下がる | 上がる | 下がる |
この影響は残存期間が長いほど大きくなります。満期まで20年ある債券は、1年で満期を迎える債券よりも金利変動で価格が大きく動きます。長期債のほうが値動きが荒いということです。
債券の税金と損益通算
債券は税制上、特定公社債とそれ以外に分かれます。個人が通常買えるものは特定公社債に該当します。
| 収益の種類 | 課税 |
|---|---|
| 利息(利子) | 申告分離課税 20.315%(源泉徴収される) |
| 売却益・償還差益 | 申告分離課税 20.315% |
| 上場株式等との損益通算 | できる |
| NISAの対象 | 対象外 |
※ 上場されている国債・地方債・社債などの特定公社債についての一般的な取扱いです。税務の詳細は個別事情によって異なるため、税務署または税理士にご確認ください。
3行目が実務上の利点です。株式で損失が出た年に債券の利息や償還差益があれば、通算して税負担を抑えられる場合があります。特定口座で管理していれば証券会社が計算してくれます。
逆に4行目は制約です。NISA口座では債券を買えません。非課税で運用したい場合は、対象となる商品を確認する必要があります。
個人が債券を買う方法
| 買い方 | 特徴 |
|---|---|
| 新発債を募集で買う | 額面で買える。募集期間内に申し込む。人気銘柄は早期に完売 |
| 既発債を店頭で買う | 証券会社が保有する債券を売ってもらう。価格は市場の金利を反映 |
| 個人向け国債 | 毎月発行。1万円から購入でき、変動金利型と固定金利型がある |
| 債券に投資する投資信託・ETF | 少額から分散できる。ただし満期という概念がない |
2行目を選ぶときは必ず最終利回りを確認してください。既発債は市場価格で売られるため、額面より高いことも安いこともあります。表面利率だけでは実際のリターンが分かりません。
4行目には注意点があります。債券そのものと違い、投資信託やETFには満期がありません。「満期まで持てば額面が戻る」という債券の安心材料が働かないため、金利上昇局面では基準価額の下落がそのまま損失になりえます。
同じ「債券に投資する」でも、個別債券と債券ファンドはリスクの形が違うという点を押さえておいてください。
表面利率と最終利回りは違う
債券の「利率」には2種類あります。ここを混同すると判断を誤ります。
| 名称 | 意味 | 基準 |
|---|---|---|
| 表面利率 | 額面に対して受け取る利息の率 | 額面(発行時に固定) |
| 最終利回り | 購入価格をもとに、満期までの総リターンを年率換算 | 実際の購入価格 |
すでに発行された債券を市場で買う場合は、表面利率ではなく最終利回りを見ます。額面100円の債券を98円で買えれば、利息のほかに満期時の2円の差益も得られるからです。
額面100円を98円で買う → 利息+2円の償還差益 → 最終利回りは表面利率より高い
額面100円を102円で買う → 利息−2円の償還差損 → 最終利回りは表面利率より低い
証券会社の店頭で既発債を買うときは、必ず最終利回りが表示されています。表面利率が高くても購入価格が高ければ、最終利回りは低くなります。「表面利率3%」という表示だけで判断しないでください。
債券の3つのリスク
金利が上がると価格が下がります。満期まで持てば額面が戻るので影響しませんが、途中売却では損失になります。残存期間が長いほど影響は大きくなります。
発行体が破綻すれば、利息も元本も戻らないことがあります。利率が高い債券はこのリスクが高いという値札です。格付けが判断材料になります。
外貨建て債券では、円高になれば円換算の元本が減ります。利率が高く見えても、為替で相殺される、あるいは損失になることがあります。
もう2つ、実務で効くリスクがあります。
流動性リスク:株式のように常に売買が成立するとは限りません。希望の価格で売れないことがあります。
期限前償還:発行体が満期前に償還できる条件が付いている債券があります。金利が下がった局面で償還されると、想定より短い期間で運用が終わります。
これらを合わせると、債券は「満期まで持ち切れる資金で買う商品」だと整理できます。途中で現金化する可能性がある資金とは相性が悪くなります。
債券と株式の4つの違い
| 比較項目 | 債券 | 株式 |
|---|---|---|
| 返済義務 | ある(満期に額面) | ない |
| 収益 | 利息(あらかじめ決まっている) | 配当と値上がり益(変動) |
| 権利 | 議決権なし・株主優待なし | 議決権あり・優待あり |
| 破綻時の順位 | 株式より先に弁済される | 最後(残余財産のみ) |
4行目が本質です。会社が倒産したとき、まず債券などの債務が返済され、残った財産があれば株主に分配されます。この順位の差が、期待できるリターンの差になっています。
債券は上限のあるリターン、株式は上限のないリターンと下限のないリスクという組み合わせです。同じ会社に投資しても、性格がまったく違うという点を押さえてください。
金利上昇局面での債券の見方
日銀は2026年6月の金融政策決定会合で、政策金利を0.75%程度から1.0%程度へ引き上げました。
※ 出典:日本銀行の金融政策決定会合の決定内容。2026年8月時点の政策金利は1.0%程度です。
| 立場 | 金利上昇の影響 |
|---|---|
| すでに債券を持っている人 | 既発債の価格が下がる(途中売却で不利) |
| これから買う人 | 新発債の利率が高くなる(有利) |
| 株式を持っている人 | 借入の多い企業は利払い負担が増える |
同じ金利上昇が、持っている人には不利で、これから買う人には有利に働きます。この非対称を理解しておくと、報道の見方が変わります。
実際に個人向け国債の発行は、金利上昇を背景に増えています。変動金利型なら金利上昇に連動して受取利息が増える設計のため、この局面で選ばれやすくなっています。
株式投資家にとっても無関係ではありません。金利が上がると企業の利払い負担が増え、ROEを財務レバレッジで作っている企業は弱さが出ます。自己資本比率と有利子負債の水準を確認する価値が上がる局面です。
債券に関するよくある質問
まとめ
債券は、お金を貸して利息を受け取る商品です。最も重要なのは、金利が上がると既発債の価格が下がるという逆相関です。
この記事のまとめ
・金利が上がると既発債の価格は下がる(残存期間が長いほど大きい)
・既発債を買うときは表面利率でなく最終利回りを見る
・価格変動・信用・為替の3つのリスクがある
・破綻時の弁済順位は株式より先
・政策金利は2026年6月に1.0%程度へ引き上げられた
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