クロス取引とは?優待タダ取りの実際のコストと損出し

本記事はアフィリエイト広告(PR)を含みます。各社のサービス内容は公表されている内容をもとに書いており、広告契約の有無で評価を変えていません。

クロス取引とは、同じ銘柄に同じ数量の買い注文と売り注文を同時に出す取引です。株価が動いても損益がほぼ発生しません。

使われる目的は3つあります。株主優待の取得(優待クロス)、含み損の実現(損出し)、信用建玉の期日乗り換えです。

ただし「タダ取り」という呼び方は正確ではありません。貸株料や配当調整金、制度信用なら逆日歩といったコストがかかります。とくに逆日歩は事前に金額が分からず、優待の価値を超えることさえあります。

この記事でわかること

・クロス取引で損益が出ない仕組み
・優待クロスの手順と、実際にかかるコストの内訳
・優待475銘柄で集計:貸株料だけで赤字になる優待はどれくらいか
・貸株料と配当の税金分を出す計算機
・一般信用と制度信用の決定的な違い(逆日歩の有無)
・権利付最終売買日に逆日歩が跳ね上がる理由
・損出しクロスで同じ日に買い戻すと効果が消える仕組み
・相場操縦とみなされないための注意点

クロス取引とは?まず結論から

クロス取引(読み方:くろすとりひき)

クロス取引とは、同一銘柄について同じ数量の買い注文と売り注文を同時に出し、同じ価格で約定させる取引です。

買いと売りを同時に持つため、その後に株価が上がっても下がっても、両方の損益が打ち消し合います。

現物買い
株価が下がると損
株主の権利を得る
優待・配当の対象になる
信用売り(空売り)
株価が下がると得
下落リスクを打ち消す
コストが発生する

両方を同時に持てば、株価がどう動いても損益は相殺される

買い方と売り方それぞれの負担については買い方・売り方で整理しています。

クロス取引の3つの目的

目的 何をしたいのか 実行する時期
優待クロス 値下がりリスクなしで株主優待を取る 権利付最終売買日まで
損出し 含み損を確定して利益と相殺する 年末まで(受渡日基準)
期日乗り換え 制度信用の6か月の期限を延ばす 返済期限が近づいたとき

もっとも利用されているのは優待クロスです。以下ではこれを中心に説明します。

優待クロスの手順

株主優待は権利確定日に株主名簿へ載っていれば受け取れます。そのために必要なのが権利付最終売買日(権利確定日の2営業日前)までに買っておくことです。

ところが人気の優待銘柄は、その翌日(権利落ち日)に株価が下がりやすくなります。優待と配当の権利がなくなるためです。この下落を打ち消すのが優待クロスです。

① 一般信用の売り在庫を確認する
証券会社の画面で、対象銘柄の在庫があるかを見る。人気銘柄は早い時期に無くなる。
② 権利付最終売買日までに同時発注する
現物買いと信用売りを同数量・同時に発注する。寄付前の成行注文で同じ価格に揃えるのが基本。
③ 権利落ち日以降に現渡しで決済する
保有している現物を、信用売りの返済に充てる(現渡し)。売買の手数料がかからず、株価の影響も受けない。
④ 優待の権利だけが残る
株価変動による損益はゼロ。ただしコストは残る。

③の現渡しを忘れると、金利や貸株料が発生し続けます。権利落ち日には必ず決済してください。

実際にかかるコストの内訳

「タダ取り」と呼ばれますが、実際には次のコストがかかります。

コスト 発生する取引 事前に分かるか
売買手数料 現物買い・信用売り 分かる
貸株料 信用売り(日数分) 分かる
逆日歩(品貸料) 制度信用の売りのみ 分からない
配当落調整金 信用売り(配当がある場合) おおむね分かる

配当落調整金は少し複雑です。現物では配当を受け取れますが、信用売りをしていると配当相当額を支払うことになります。受取配当は税引後、支払う調整金は配当の全額に相当するため、その差額が実質的な負担として残ります。

優待の価値がこれらの合計を上回るかどうかが、クロス取引を行うかの判断基準になります。優待利回りだけで判断すると、コストを見落とします。

貸株料だけで赤字になる優待は少ない

コストの中で日数に比例して増えるのは貸株料です。では実際の優待銘柄に当てはめると、貸株料が優待の額を上回ることはどのくらいあるのでしょうか。額面を確認できた優待475銘柄で計算しました。

借り方と日数 貸株料の中央値 優待の額のほうが大きい銘柄
一般信用(短期)年3.9%
2日
32円 474/475銘柄
(99.8%)
一般信用(短期)年3.9%
15日
236円 459/475銘柄
(96.6%)
一般信用(短期)年3.9%
30日
473円 414/475銘柄
(87.2%)
一般信用(無期限)年1.1%
15日
67円 473/475銘柄
(99.6%)

※ 100株で計算。株価は2026年9月2日の終値、貸株料の料率は2026年9月時点のSBI証券の一般信用の値。売買手数料が0円の証券会社を前提にし、配当落調整金は含めていません。

優待の額の中央値は2,000円、100株の金額の中央値は147,500円でした。短期の年3.9%で15日借りても、貸株料の中央値は236円にとどまります。貸株料が優待の額に追いつくまでの日数は、中央値で111日でした。

つまり一般信用で組むかぎり、貸株料だけで赤字になる優待は少数です。クロス取引で損をするのは、多くの場合、次のどれかです。

損をする原因 避け方
制度信用で組んで逆日歩が付く 一般信用の在庫があるときだけ組む
継続保有が条件の優待だった 権利日だけ持っても受け取れない。優待の条件を先に読む
100株の金額が大きく、優待が小さい 早く建てるほど不利。下の計算機で日数を決める
配当が大きい 受け取る配当は税引後、支払う調整金は全額。その差(約2割)が負担になる

自分の組みたい銘柄で確かめるときは、次の計算機に数字を入れてください。

クロス取引のコスト計算機

100株の金額(円)優待の額(円)借りる日数(日)貸株料の年率(%)その権利日の1株配当(円・無ければ空欄)

一般信用と制度信用の決定的な違い

優待クロスで最も重要な選択がこれです。

項目 一般信用 制度信用
逆日歩 発生しない 発生する(金額は事前に不明)
貸株料 高め 低め
返済期限 証券会社が設定(無期限も) 6か月
在庫 証券会社ごとに限りがある 貸借銘柄なら基本的に可能

結論はシンプルです。優待クロスは一般信用で行うのが原則です。貸株料は高くなりますが、金額が事前に確定するためです。

制度信用は貸株料が安い代わりに、逆日歩という上限の読めないコストを背負うことになります。

逆日歩で損をする仕組み

逆日歩は、市場全体で株が不足したときに、空売りしている側が買い方に支払うコストです。

問題は上限です。日本証券金融の規定では最高料率が定められていますが、状況に応じてその倍率が引き上げられます。

状況 最高料率の倍率
権利落日の6〜2営業日前 2倍
権利付最終売買日 4倍
注意喚起と重複する場合 8倍
極めて異常な貸株超過 10倍

優待クロスを行うのはまさに権利付最終売買日です。その日は最高料率が4倍になります。優待目当ての売りが集中して株不足になりやすく、そこに4倍の上限が重なるため、想定外の金額になります。

「優待は3,000円相当なのに逆日歩が1万円だった」という事態は、この構造から生じます。制度信用でのクロスは、優待の価値を失うリスクがあると理解してください。

損出しクロスのやり方

損出しとは、含み損を抱えた株をいったん売却して損失を確定させ、その年の利益と相殺して税負担を減らす方法です。

売却しても同じ銘柄を持ち続けたい場合に、クロス取引が使われます。

損出しの基本形

100万円で買った株が60万円に値下がりしている
→ 売却して40万円の損失を確定
→ 同じ年に確定した利益40万円と相殺
→ 利益にかかる税金(20.315%)の負担が軽くなる

期限にも注意が必要です。損益が計上されるのは約定日ではなく受渡日(約定の2営業日後)を基準に判定されます。年内に間に合わせるには、12月最終営業日の2営業日前までに約定させる必要があります。

同じ日に買い戻すと効果が消える

ここが損出しで最も間違えやすい部分です。

「売った直後に同じ株を買い戻せばいい」と考えがちですが、同一日に現物を売って現物を買い戻すと、損失額が想定より小さくなります。

株式の取得価額は、同一銘柄について平均して計算されます。同じ日に買い付けがあると、その買付価格を含めて平均取得単価が計算し直されるため、確定できる損失が圧縮されてしまうのです。

やり方 結果
同じ日に現物を売って現物を買い戻す 平均取得単価が下がり、損失が小さくなる
現物を売り、同日に信用買いを入れて翌営業日以降に現引きする 損失を全額確定でき、保有も継続できる
現物を売り、翌営業日に買い戻す 損失は確定するが、1日分の株価変動リスクを負う

保有を続けたいなら2番目の方法になります。現物売りと信用買いを同じ日に行い、現引き(品受け)は翌営業日以降に回すのが基本形です。

※ 税務上の取扱いは口座区分や取引状況によって異なります。実行前に証券会社の説明を確認し、判断に迷う場合は税理士にご相談ください。

相場操縦とみなされないための注意

クロス取引そのものは違法ではありません。ただしやり方によっては仮装売買・馴合売買として規制の対象になり得ます。

避けるべき行為

・取引が活発であるかのように見せる目的で売買を繰り返す
・株価を意図的に動かす目的で不自然な価格に注文を出す
・出来高の少ない銘柄で、大量のクロス注文を繰り返す
・他人と通謀して同一価格・同一数量の売買を行う

優待取得や損出しといった正当な目的で、通常の価格帯で行う個人のクロス取引は問題になりません。気になる場合は、寄付の成行注文で市場価格に従って約定させるのが最も無難です。

クロス取引に向いている証券会社

優待クロスを行うなら、証券会社選びで結果が変わります。判断の基準は3つです。

選ぶときの3条件

・一般信用の「売り」ができること(逆日歩を避けるための必須条件)
・手数料が安いこと(クロスでは往復の手数料が直接コストになる)
・在庫が多いこと(一般信用の売り建てできる株数は証券会社ごとに限りがある)
証券会社 特徴
SBI証券 取扱銘柄数と在庫数が多い
松井証券 短期の一般信用売りに対応している
楽天証券 コスト面で選びやすい

在庫は人気銘柄ほど早く無くなります。権利付最終売買日の当日では間に合わないことが多いため、複数の証券会社に口座を持ち、在庫が出るタイミングを分散して押さえるのが現実的です。

※ 手数料体系や一般信用の取扱条件は変更されることがあります。最新の条件は各社の公式サイトでご確認ください。

※ 本記事は手法の解説であり、特定の銘柄や取引を推奨するものではありません。信用取引には元本を超える損失が生じるおそれがあります。税務上の取扱いは個別の事情により異なるため、判断に迷う場合は税理士等の専門家にご相談ください。

クロス取引に関してよくある質問

NISA口座でクロス取引はできますか?
できません。NISA口座では信用取引が利用できないためです。またNISA口座では損益通算ができないため、損出しの効果もありません。クロス取引は課税口座(特定口座・一般口座)で行うことになります。

まとめ

この記事のまとめ

・クロス取引は同数量の買いと売りを同時に持ち、値動きの損益を相殺する手法
・目的は優待取得・損出し・期日乗り換えの3つ
・「タダ取り」ではなく、手数料・貸株料・配当落調整金・逆日歩がかかる
・優待クロスは一般信用が原則。制度信用は権利付最終売買日に逆日歩が4倍になる
・決済は現渡しが基本。忘れるとコストが増え続ける
・損出しで同じ日に買い戻すと、平均取得単価が下がり損失が圧縮される

クロス取引は「リスクを消す」手法であって「儲かる」手法ではありません。かかるコストを先に計算し、優待や節税の効果がそれを上回るときだけ実行してください。

あわせて読みたい

記事 どんなときに読むか
逆日歩とは 4倍・10倍になる条件を詳しく知りたいとき
権利確定日とは いつまでに買えばよいか確認したいとき
現渡しとは 決済方法を確認したいとき
買い方・売り方とは 信用取引のコストを整理したいとき
株主優待の選び方 クロスする銘柄を探したいとき
貸借銘柄とは 制度信用で売れる銘柄か確認したいとき
スポンサーリンク
おすすめの記事