バフェット指数とは、その国の株式時価総額を名目GDPで割った数値で、株式市場全体が割高か割安かを判断する目安です。

ウォーレン・バフェット氏が2001年のフォーチュン誌の記事で、市場全体の割高・割安を測る最も優れた尺度のひとつとして紹介したことから、この名で呼ばれるようになりました。

ただしこの指標の「100%が目安」という説明は、いまではそのまま使えなくなっています。その理由まで解説します。

この記事でわかること

・バフェット指数の計算方法
・分子と分母をどこで手に入れるか
・100%が目安とされてきた理由
・その目安が当てにならなくなった構造的な理由
・タイミング指標として使えない理由

バフェット指数とは

バフェット指数(読み方:ばふぇっとしすう)は、Buffett Indicatorとも呼ばれる、市場全体の割高・割安を見るための指標です。

考え方
株価は最終的に企業が生み出す価値に見合った水準に落ち着くはず。
国全体で見れば、その価値の総量はGDPにあたる。
だから時価総額とGDPは、長期的には近い水準で動くはず

この前提に立つと、時価総額がGDPを大きく上回っているときは「経済の実力以上に株が買われている」と判断できます。

PERPBRが個別企業や指数のバリュエーションを見るのに対し、バフェット指数は国の経済規模と株式市場を直接比べます。

計算式

バフェット指数(%)= 株式時価総額 ÷ 名目GDP × 100

非常に単純な式ですが、分子と分母に何を入れるかで数値が変わります。ここが最初の落とし穴です。

項目 日本で一般的に使うもの
分子 東証上場企業の時価総額の合計(プライム・スタンダード・グロースの3市場)
分母 名目GDP(実質GDPではない)

古い解説では「東証一部・東証二部・マザーズ・JASDAQ」と書かれていることがありますが、これらの市場区分は2022年4月4日に廃止されています。

現在の東京証券取引所はプライム市場・スタンダード市場・グロース市場の3区分です(このほかTOKYO PRO Marketがあります)。古い解説を読むときは、この点に注意してください。

分子と分母をどこで手に入れるか

自分で計算したい場合、必要な数字は次の場所で公表されています。

必要な数字 公表元 更新の頻度
株式時価総額 日本取引所グループ「市場別時価総額」 毎月
名目GDP 内閣府「国民経済計算(GDP統計)」 四半期ごと
米国の時価総額 FRB「資金循環統計」など 四半期ごと

ここで重要なのが更新のズレです。時価総額は毎日変わるのに、GDPは3か月に1度しか出ません。

つまりバフェット指数は、分母が古いまま分子だけが動いている数値です。細かい上下に意味を求めても仕方がありません。

実際に計算してみる

数字を入れると理解しやすくなります。ここでは計算の手順を示すための例として、切りのよい数字を使います。

項目 金額(例)
株式時価総額 1,000兆円
名目GDP 625兆円
バフェット指数 160%
1,000兆円 ÷ 625兆円 × 100 = 160%
経済規模の1.6倍まで株式市場が評価されている、という意味

※ これは計算方法を示すための例です。実際の数値は上の公表元でご確認ください。

100%が目安とされてきた理由

従来、次のような目安が使われてきました。

水準 従来の解釈
70%を下回る かなり割安
70〜100% おおむね妥当
100%を超える 割高の警戒圏
140%を大きく超える 過熱

100%が節目とされるのは、「株式市場の規模=経済規模」が長期的な均衡点だと考えるからです。理屈としてはわかりやすい水準です。

過去に高水準となった局面

実際に指数が大きく振れた代表的な局面を押さえておくと、水準の感覚がつかめます。

局面 起きたこと
1989年 日本のバブル期 指数が大きく上振れした直後に長期の下落へ
2000年 米国のITバブル 当時の過去最高水準をつけたのち急落
2008年 リーマンショック 株価急落で指数も大きく低下
2020年 コロナショック 急落後、金融緩和で短期間に急回復

「高水準のあとに下落が来た」という事実はありますが、高水準になってから実際に下落するまでに、数か月から数年かかっています。

これがバフェット指数の最大の弱点です。方向は示しても、時期は示しません。

100%という目安が当てにならなくなった理由

ここがこの記事で最も伝えたい部分です。近年、日米ともにバフェット指数の平常時の水準そのものが切り上がっています。指数が高いこと自体が異常とは言えなくなりました。

水準が切り上がった4つの理由
① 海外で稼ぐ企業が増えた
上場企業の利益の多くが海外の子会社から生まれる。その稼ぎは日本のGDPには計上されない。分子だけが増えて分母が増えない
② 上場企業が増えた
新規上場が続けば、経済規模が変わらなくても時価総額は積み上がる
③ 金利が長く低かった
金利が低いほど株式の評価は高くなる。分母のGDPは金利の影響を受けない
④ GDPに映らない産業が伸びた
ソフトウェアや知的財産のように、付加価値が企業価値に反映されやすい産業の比重が高まった

とくに①は日本で顕著です。製造業の海外生産比率は長期的に上昇してきました。海外の工場で稼いだ利益は株価に反映されますが、日本のGDPには入りません。

したがって、「100%を超えたから割高」という単純な読み方は、いまでは適切ではありません。

過去の自分と比べる、という使い方

では、どう使えばよいのでしょうか。答えは「絶対水準ではなく、その国の過去のレンジと比べる」です。

悪い使い方 「100%を超えたから売る」
現実的な使い方 「過去10年の平均と比べていま上のほうか、下のほうか」

米国と日本を同じ物差しで比べるのも適切ではありません。両国は産業構造も上場企業の海外売上比率も違うため、平常時の水準そのものが異なります。

比較の仕方 妥当か 理由
日本の今と日本の過去 妥当 同じ物差しで測っている
日本の今と米国の今 不適切 産業構造と海外売上比率が違う
今の100%と30年前の100% 不適切 経済の構造が変わっている

PER・PBRとの違い

指標 何と比べているか 対象
バフェット指数 国の経済規模(GDP) 市場全体
PER 企業の利益 個別企業・指数
PBR 企業の純資産 個別企業・指数
VIX(恐怖指数) 今後の値動きの予想 市場全体

バフェット指数は「株を買うかどうか」ではなく、「株式にどれだけ資金を置くか」を考えるための指標です。個別銘柄の選定には使えません。

使うときの手順

① 同じ国の過去10年と比べる 絶対水準では判断しない
② 四半期に1度だけ見る GDPが四半期更新なので、それ以上見ても意味がない
③ タイミングには使わない 高水準でも数年続くことがある
④ 資産配分の材料にする 積立の金額や現金比率を考える材料
⑤ 他の指標と併用する 経済指標や金利と合わせて見る

注意点と限界

限界 内容
タイミングがわからない 高水準になってから下落まで数年かかることがある
分母の更新が遅い GDPは四半期ごと。日々の変動は分子だけの動き
金利を考慮していない 金利水準が変われば適正なバリュエーションも変わる
計算方法が統一されていない どの市場を分子に含めるかで数値が変わる
個別株には使えない 市場全体の指標であり、銘柄選定の材料にならない

「バフェット指数が高いから全部売る」という判断は、多くの場合うまくいきません。実際、高水準のまま株価が上がり続けた期間は何度もありました。

※ 本記事は指標の解説であり、特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

バフェット指数に関するよくある質問

バフェット指数はどこで見られますか?
自分で計算する場合は、日本取引所グループが公表する市場別の時価総額と、内閣府の国民経済計算による名目GDPを使います。時価総額は毎月、GDPは四半期ごとに更新されます。金融情報サイトでも掲載されていますが、どの市場を分子に含めているかは提供元によって異なります。
100%を超えたら売るべきですか?
その判断は現在では適切ではありません。上場企業の海外売上比率の上昇や上場企業数の増加により、平常時の水準そのものが以前より高くなっています。絶対水準ではなく、同じ国の過去10年程度のレンジと比べてください。
実質GDPではなく名目GDPを使うのはなぜですか?
分子の時価総額が名目の金額だからです。実質GDPは物価変動を除いた数値なので、名目の時価総額と割り算すると単位がそろいません。物価が上がる局面では、名目と実質の差が大きくなるため、混同すると数値が大きくずれます。
日本と米国の数値を比べてもいいですか?
おすすめしません。両国は産業構造も上場企業の海外売上比率も異なるため、平常時の水準そのものが違います。同じ100%でも意味が同じにはなりません。比べるなら、それぞれの国の過去との比較にしてください。
分子に含める市場はどれですか?
現在の東京証券取引所はプライム市場・スタンダード市場・グロース市場の3区分です。2022年4月4日の市場再編で、東証一部・二部・マザーズ・JASDAQという区分は廃止されました。古い解説で旧区分が使われている場合は、内容全体が更新されていない可能性があります。
どのくらいの頻度で確認すればいいですか?
四半期に1度で十分です。分母のGDPが四半期ごとにしか更新されないため、それより短い間隔で見ても、時価総額の変動を見ているのと変わりません。日々の変化を追う性質の指標ではありません。
バフェット氏はいまもこの指標を使っていますか?
この指標に言及したのは2001年のフォーチュン誌の記事で、その後この考え方に対する評価は変化したとも報じられています。指標の名前として定着していますが、本人が現在も同じ重みで使っているかどうかは公表されていません。名前に引きずられず、指標そのものの性質で判断してください。
個別株の売買に使えますか?
使えません。市場全体の水準を示す指標なので、どの銘柄を買うかという判断には結びつきません。個別株の割高・割安を見るならPERやPBR、企業の成長率と合わせた指標を使ってください。

まとめ

バフェット指数は「経済規模に対して株式市場が大きくなりすぎていないか」を測る、長期の物差しです。売買のタイミングを教える指標ではありません。

この記事のまとめ

・株式時価総額 ÷ 名目GDP × 100 で計算する
・分子は東証3市場(プライム・スタンダード・グロース)
・旧市場区分は2022年4月に廃止されている
・従来は100%が割高の目安とされてきた
・海外売上の増加などで平常時の水準が切り上がっている
・絶対水準ではなく過去のレンジと比べる
・高水準でも下落まで数年かかることがある
・個別株の判断には使えない

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佐々木優也(筆名)のイラスト

この記事を書いた人
Pacific Stock 編集長・専業投資家歴20年
専業投資家歴20年。Pacific Stockのすべての記事とツールを執筆・監修。株式用語の解説、株主優待・高配当ランキング、相場格言の実測検証、米国株の決算カレンダーなど、数字で確かめられる形で書くことを方針にしています(筆名・イラスト)。 プロフィールと編集ポリシー →
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