社債とは、企業が資金を借りるために発行する債券です。買った投資家は企業にお金を貸すことになり、利息を受け取って満期に額面が戻ります。
株式との決定的な違いは返済義務があることです。企業が倒産しなければ、株価がどうなっても額面は返ってきます。その代わり、企業が成長しても受け取る利息は増えません。
ただし満期前に売れば元本割れすることがあります。金利が上昇している局面では特に注意が必要です。日銀の政策金利は2026年6月に1.0%程度へ引き上げられており、社債の見え方は数年前とは違います。
この記事でわかること
・普通社債・CB・劣後債などの種類と特徴
・金利が上がると既発の社債価格が下がる仕組み
・格付けと利率の関係
・社債の税金と、株式との損益通算
・株主目線で社債発行の開示をどう読むか
目次
社債とは?まず結論から
社債(読み方:しゃさい)
企業が資金を調達する方法は大きく3つあります。銀行から借りる、株式を発行する、そして社債を発行して投資家から直接借りるです。
社債は債券の一種です。債券とは、簡単に言えば「お金を借りたことを証明する証書」です。国が発行すれば国債、企業が発行すれば社債になります。
① 発行時に額面金額を払い込む
② 保有している間、決まった利率の利息を受け取る(年1〜2回)
③ 満期(償還日)に額面金額が戻ってくる
※ 発行した企業が倒産すれば、返ってこないことがあります
日本企業の社債発行は近年拡大しています。2025年度の国内普通社債の発行額は15兆8,632億円と、統計開始以来の最高水準になりました。金利がさらに上がる前に資金を確保しようとする動きが背景にあります。
※ 出典:日本経済新聞(2026年報道)。前年度比4.5%増で、1990年の統計開始以来で最高。
社債と株式の4つの違い
| 比較項目 | 社債 | 株式 |
|---|---|---|
| 返済義務 | ある(満期に額面が戻る) | ない |
| 収益 | 利息(あらかじめ決まっている) | 配当と値上がり益(変動する) |
| 権利 | 議決権なし・株主優待なし | 議決権あり・優待あり |
| 倒産時の弁済順位 | 株式より先 | 最後(残余財産のみ) |
4行目が本質的な違いです。会社が倒産したとき、まず借入金や社債などの債務が返済され、残った財産があれば株主に分配されます。順番が後ろなので、株主は何も受け取れないことがほとんどです。
この順位の差が、期待できるリターンの差になっています。社債は安全性が高い分、企業が大きく成長しても利息は増えません。株式は逆で、リスクを負う代わりに上限のない利益を狙えます。
同じ会社に投資しても、社債と株式ではリスクとリターンの形が違う
社債の種類
| 種類 | 特徴 | 利率 |
|---|---|---|
| 普通社債(SB) | 最も基本的な社債。利息を受け取り満期に償還される | 標準 |
| 転換社債型新株予約権付社債(CB) | 一定の条件で株式に転換できる。株価上昇の恩恵を受けられる | 低め |
| 新株予約権付社債 | 社債と新株予約権がセット。行使しても社債は残る | 低め |
| 劣後債 | 倒産時の弁済順位が普通社債より低い | 高め |
| 個人向け社債 | 個人が買いやすい単位で募集される社債 | 発行体次第 |
利率が高い社債には必ず理由があります。劣後債の利率が高いのは、倒産したときに返ってこない可能性が普通社債より高いからです。利率だけで選ぶと、負っているリスクを見落とします。
CBは社債と株式の中間的な性格を持ちます。株価が転換価額を上回れば株式に転換して値上がり益を得られ、上がらなければ社債として満期まで保有できます。その分、利率は低く設定されます。
なお株式投資家の立場から見ると、CBは将来の希薄化要因です。転換されれば新株が発行され、EPSが薄まります。
利率はどう決まるのか(格付けとの関係)
社債の利率は、次の2つの足し算で決まります。
社債の利率 = 同じ期間の国債の利回り + 信用リスクに応じた上乗せ
上乗せ部分をスプレッドといいます。
信用リスクの目安として使われるのが格付けです。格付会社が発行体の返済能力を評価し、記号で表します。
| 格付けの水準 | 意味 | 利率 |
|---|---|---|
| 高い(AAA〜A格など) | 返済能力が高い | 低い |
| 中程度(BBB格など) | 投資適格の下限付近 | やや高い |
| 低い(投資適格未満) | 返済能力に懸念がある | 高い |
※ 格付けの記号は格付会社によって異なります。個別の社債の格付けは、募集の資料や発行体の開示で確認してください。
ここが重要な考え方です。利率が高い社債は、市場がその企業のリスクを高く見積もっているということです。高利率は魅力ではなく、リスクの値札だと理解してください。
金利が上がると社債の価格は下がる
満期まで持てば額面が戻りますが、途中で売る場合は市場価格になります。この価格が金利によって動きます。
| 市場金利の動き | 既発の社債の価格 | 理由 |
|---|---|---|
| 金利が上がる | 下がる | 新しく出る社債のほうが利率が高く、古い社債の魅力が落ちる |
| 金利が下がる | 上がる | 古い社債の利率が相対的に有利になる |
具体的に考えます。利率0.5%の社債を持っているときに、同じ発行体が利率1.5%の新しい社債を出したとします。誰も0.5%の社債を額面で買ってくれません。売るには価格を下げるしかありません。
満期前に売却 → 市場価格。元本割れすることがある
社債は預金ではありません。途中で現金化する可能性がある資金で買うのは、この点で相性が悪くなります。
2026年の環境はこの点で重要です。日銀は2026年6月の金融政策決定会合で政策金利を0.75%程度から1.0%程度へ引き上げました。金利が上昇している局面では、既に発行された社債の価格は下がる方向に働きます。
※ 出典:日本銀行の金融政策決定会合の決定内容。2026年8月時点の政策金利は1.0%程度です。
逆に、これから発行される社債の利率は高くなります。今から買う人には有利で、すでに持っている人には不利という構造です。
個人が社債を買うときの流れ
社債は株式と買い方が違います。取引所でいつでも注文できるわけではありません。
社債は引受証券会社を通じて募集されます。扱っていない証券会社では買えません。
利率、償還日、格付け、購入単位、期限前償還条項の有無を確認します。購入単位は発行体によって異なり、100万円単位のものもあります。
発行日以降、年1〜2回の利払日に利息が入ります。満期には額面が償還されます。
すでに発行された社債(既発債)を証券会社が店頭で売っていることもあります。この場合の価格は市場の金利水準を反映しているため、額面より高いことも安いこともあります。利率だけでなく、購入価格から計算される最終的な利回りを確認してください。
社債の税金と株式との損益通算
| 収益の種類 | 課税 |
|---|---|
| 利息(利子) | 申告分離課税 20.315%(源泉徴収される) |
| 売却益・償還差益 | 申告分離課税 20.315% |
| 上場株式等との損益通算 | できる |
※ 上場されている社債などの特定公社債についての一般的な取扱いです。税務の詳細は個別事情によって異なるため、税務署または税理士にご確認ください。
3行目が実務上のメリットです。株式で損失が出た年に社債の利息や償還差益があれば、通算して税負担を抑えられる場合があります。特定口座で管理していれば、証券会社が計算してくれます。
なおNISAの対象には社債は含まれません。非課税で運用したい場合は、対象商品を確認してください。
社債のリスクと注意点
発行体が経営破綻すれば、利息も元本も戻らないことがあります。高利率の社債は、このリスクが高いという値札です。疑義注記が付いている企業の社債は特に注意が必要です。
金利が上がると既発の社債価格は下がります。満期まで保有すれば影響しませんが、途中売却では損失になります。
株式のように取引所でいつでも売買できるとは限りません。買い手が見つからず、希望の価格で売れないことがあります。
発行体が満期前に償還できる条件が付いている社債があります。金利が下がった局面で償還されると、想定より短い期間で運用が終わります。
利率が高く見えても、円高になれば円換算の元本が減ります。利率だけを比べるのは危険です。
購入を検討する場合は、必ず発行体の格付け、償還日、利率、期限前償還条項の有無を確認してください。募集の資料に記載されています。
株主目線で「社債発行」の開示をどう読むか
株式投資をしている人にとって、社債は買う対象というより保有銘柄の資金調達手段として現れます。この読み方を押さえておくと役に立ちます。
ここが要点です。普通社債による調達は、株主にとって希薄化がないという意味で歓迎できる調達手段です。返済義務と利払いは増えますが、1株あたりの価値は薄まりません。
むしろ注目すべきは、その企業が社債を発行できるかどうかです。社債を発行するには一定の信用力が必要です。社債で調達できる企業と、MSワラントに頼る企業では、市場からの信用がまったく違います。
金利が上がる局面では利払い負担が重くなるため、有利子負債の水準も確認しておく価値があります。ROEが財務レバレッジによって作られている企業は、この局面で弱さが出ます。
社債に関するよくある質問
まとめ
社債は、企業にお金を貸して利息を受け取る商品です。株式より安全ですが元本保証ではなく、金利上昇局面では途中売却で元本割れします。
この記事のまとめ
・倒産時の弁済順位は株式より先だが、元本保証ではない
・利率が高い社債はリスクが高いという値札
・金利が上がると既発の社債価格は下がる
・政策金利は2026年6月に1.0%程度へ引き上げられた
・株主目線では、普通社債は希薄化しない調達手段
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