メリルリンチの空売り銘柄|任天堂を含め1銘柄あたりのショート金額が1番多い機関

空売り(ショート)残高を残高割合の高い順に並べたとき、上位に必ず出てくる機関と、ほとんど出てこない機関があります。

2026年8月26日から2026年9月2日の報告1,937件を割合の高い順に並べると、上位100件のなかに MERRILL LYNCH INTERNATIONAL の名前は1件しかありませんでした。

理由は単純で、この機関が持っている残高は87銘柄すべてが2.81%以下だからです。他の機関には5%、6%という銘柄がありますが、ここには3%を超える銘柄が0件もありません。

それでいて、1銘柄あたりの売り建ては約30.6億円。今回比べた6機関のなかで最も大きい数字です。割合のランキングには出てこないのに、規模としては大きい。この記事では、その形を数字で確かめます。

この記事でわかること

87銘柄すべてが2.81%以下。3%を超える銘柄が0件
・2%以上も4銘柄だけ(バークレイズは60銘柄、モルガン・スタンレーMUFGは54銘柄)
・それでも1銘柄あたり約30.6億円で6機関のなかで最大
・プライムが75.6%で最も高い
・割合の高い順に並べた上位100件に1件しか入らない
・87銘柄の年初来は上がった50/下がった37(中央値+9.0%)
・この機関しか名前を出していない26銘柄
・6機関の「上限の高さ」を並べた比較

※ この記事は制度と公表データの解説であり、特定の銘柄や売買、特定の事業者の評価を目的とするものではありません。集計は2026年8月26日から2026年9月2日に公表された空売り残高の報告にもとづきます。株価はYahoo Financeの日足終値です。

メリルリンチ・インターナショナルとはどんな会社か

空売り残高を報告しているのは、ロンドンに登記された「MERRILL LYNCH INTERNATIONAL」です。日本にある BofA証券株式会社 とは別の法人です。

バンク・オブ・アメリカのグループに属し、大口の売買を仲介する、法人向け専業の法人です。

項目 内容
報告書に載っている名前 MERRILL LYNCH INTERNATIONAL
報告書に載っている住所 2 KING EDWARD STREET, LONDON, EC1A 1HQ
登記 英国の無限責任会社(Private unlimited company)として登記。会社番号 02312079
設立 1988年11月2日
規制 英国健全性規制機構(PRA)の認可、金融行為規制機構(FCA)の規制。FCA登録番号 147150
日本にある同名グループ会社 BofA証券株式会社(東京)。別の法人

※ この表の内容は、JPXの空売り残高報告(報告者名と住所)と、英国 Companies House の登記(会社番号・種類・設立日)で確認しました。

「メリルリンチ」という名前は日本でも知られていますが、報告しているのはロンドンの法人です。以下では、その報告書に何が書かれているかを見ます。

報告書に載っている住所と名前

報告者の欄には、次のように記載されています。

項目 内容
報告者の名前 MERRILL LYNCH INTERNATIONAL
報告書の住所 2 KING EDWARD STREET, LONDON, EC1A 1HQ
今回の銘柄数 87銘柄
計算年月日 2026年8月28日/2026年8月31日/2026年9月1日

日本にはBofA証券株式会社がありますが、この集計期間の報告には名前が出ていませんでした。同じグループでも、報告義務を負う法人は別です。

※ 名前が出ていないことを確認できるのは、この集計期間に限られます。別の時期には報告があるかもしれませんし、0.5%に届かない売り建ては報告されません。

87銘柄すべてが2.81%以下

まず残高割合の分布です。

残高割合 銘柄数 構成比
0.5〜1%未満 56銘柄 64.4%
1〜2%未満 19銘柄 21.8%
2〜3%未満 4銘柄 4.6%
3%以上 0銘柄 0.0%

0.5〜1%未満が56銘柄で、全体の64.4%を占めます。2%以上は4銘柄、3%以上は0銘柄です。

最も大きいのはレナサイエンス(4889)の2.81%。これがこの機関の上限でした。

他の機関と並べると、この低さがはっきりします。

報告者 銘柄数 最も大きい残高 2%以上の銘柄
モルガン・スタンレーMUFG 377 6.79% 54銘柄
バークレイズ 428 6.04% 60銘柄
野村インターナショナル 204 5.70% 9銘柄
JPM Securities Japan 130 5.30% 8銘柄
ゴールドマン・サックス 319 4.65% 33銘柄
メリルリンチ 87 2.81% 4銘柄

他の5機関はいずれも4%台から6%台の銘柄を持っています。2%以上の銘柄も、バークレイズが60、モルガン・スタンレーMUFG証券が54あります。

メリルリンチだけが、上限2.81%のところで頭打ちになっています。

これが意図によるものかどうかは、報告書からは分かりません。理由を書く欄がないためです。確認できるのは、結果としてそうなっているという事実だけです。

だから割合のランキングには出てこない

この性質は、個人投資家が目にする画面にそのまま出ます。空売り残高の一覧やランキングは、残高割合の高い順に並ぶためです。

並べ方 この機関の件数 備考
割合の高い順・上位50件 0件 1,937件のなかから
割合の高い順・上位100件 1件 同上
金額の大きい順・上位50件 4件 残高数量×株価で並べ替えた場合

割合で並べると上位100件に1件。金額で並べ替えると上位50件に4件です。

同じ報告なのに、並べ方を変えるだけで見え方がここまで変わります。「最近この機関の名前を見ない」と感じるとしたら、それは残高が小さいからではなく、見ている一覧が割合の順に並んでいるからかもしれません。

1銘柄あたりは6機関のなかで最も大きい

金額に直して比べます。残高数量に株価をかけたもので、報告書に金額の記載はありません。

報告者 銘柄数 売り建ての合計 1銘柄あたり
メリルリンチ 87 約2,658億円 約30.6億円
ゴールドマン・サックス 319 約9,138億円 約28.6億円
JPM Securities Japan 130 約3,333億円 約25.6億円
モルガン・スタンレーMUFG 377 約7,926億円 約21.0億円
バークレイズ 428 約8,715億円 約20.4億円
野村インターナショナル 204 約3,174億円 約15.6億円

1銘柄あたり約30.6億円は、この6機関のなかで最も大きい数字です。銘柄数が87と少ないため、合計では約2,658億円にとどまります。

※ 比べているのは、報告銘柄数の多い6機関です。東京の野村證券(21銘柄)のように、銘柄数が少なく1銘柄あたりが大きくなる報告者は含めていません。

「割合は低い、金額は大きい」という組み合わせが起きる理由は、扱っている銘柄にあります。

プライムが75.6%を占める

市場区分 銘柄数 構成比 平均残高
プライム 62銘柄 75.6% 0.78%
スタンダード 9銘柄 11.0% 0.99%
グロース 11銘柄 13.4% 1.15%

プライムが62銘柄で75.6%。今回比べた6機関のなかで最も高い比率です(2番目はゴールドマン・サックスの68.1%)。

大型株は発行済株式数が多いため、同じ金額を売り建てても残高割合は小さく出ます。上限が2.81%にとどまるのは、扱っている銘柄の性質と結びついています。

金額の上位10銘柄

売り建ての時価が大きい順です。

銘柄(コード) 市場 残高割合 金額
① 任天堂(7974) プライム 0.53% 605.0億円
② イオン(8267) プライム 0.86% 337.7億円
③ サンリオ(8136) プライム 1.30% 211.1億円
④ 花王(4452) プライム 0.52% 167.7億円
⑤ エムスリー(2413) プライム 0.76% 92.4億円
⑥ マネーフォワード(3994) プライム 2.20% 82.3億円
⑦ マツダ(7261) プライム 1.08% 80.8億円
⑧ 日本ビルファンド投資法人(8951) REIT等 0.66% 73.0億円
⑨ 日産自動車(7201) プライム 0.52% 61.0億円
⑩ 三井E&S(7003) プライム 1.19% 52.7億円

1番目の任天堂(7974)が約605.0億円。残高割合は0.53%です。上位10銘柄で合計の66.4%を占めます。

10銘柄のうち、残高割合が2%を超えているのは1銘柄だけです。金額の大きさと割合の高さが、ここでも別々に動いています。

残高割合の上位10銘柄

今度は割合の順です。1番目でも2.81%にとどまります。

銘柄(コード) 市場 残高割合 年初来
① レナサイエンス(4889) グロース 2.81% −16.5%
② スリー・ディー・マトリック(7777) グロース 2.26% −0.6%
③ マネーフォワード(3994) プライム 2.20% +43.6%
④ GAtechnologie(3491) グロース 2.10% −6.2%
⑤ TOWA(6315) プライム 1.91% −3.2%
⑥ エン(4849) プライム 1.68% +7.3%
⑦ ラサ商事(3023) スタンダード 1.51% +11.3%
⑧ 三社電機製作所(6882) スタンダード 1.44% +19.8%
⑨ インターアクション(7725) プライム 1.43% +21.3%
⑩ ジーエヌアイグループ(2160) グロース 1.41% +25.4%

割合の上位に来ると、プライム以外の銘柄が6件混ざります。全体ではプライムが75.6%なので、割合が高くなるのは中小型株のほうだという関係がここにも出ています。

87銘柄の年初来

銘柄数 構成比
年初来がプラス 50銘柄 57.5%
年初来がマイナス 37銘柄 42.5%
年初来の中央値 +9.0%
空売り報告が出ている全銘柄 +5.9% (1,043銘柄の中央値)

中央値+9.0%は、今回比べた6機関のなかで最も高い水準です。プラスが50銘柄で57.5%でした。

ただし、これを「この機関に売られると上がる」と読むことはできません。プライムの比率が高く、値動きの穏やかな銘柄が多いという構成の違いが効いています。機関ごとの中央値の差は、扱っている銘柄の違いを見ているにすぎません。

報告者 プライム比率 年初来の中央値
メリルリンチ 75.6% +9.0%
ゴールドマン・サックス 68.1% +8.2%
JPM Securities Japan 53.9% +8.2%
バークレイズ 56.0% +7.4%
モルガン・スタンレーMUFG 53.1% +6.5%
野村インターナショナル 50.5% +2.0%

この機関しか名前を出していない26銘柄

報告者がこの機関だけという銘柄が26あります。87銘柄の29.9%にあたります。

銘柄(コード) 市場 残高割合 年初来
① GAtechnologie(3491) グロース 2.10% −6.2%
② 三社電機製作所(6882) スタンダード 1.44% +19.8%
③ エディオン(2730) プライム 1.33% +18.3%
④ 日本電子(6951) プライム 1.25% +36.4%
⑤ テラプローブ(6627) スタンダード 1.11% +73.0%
⑥ 古野電気(6814) プライム 1.07% −5.7%
⑦ ラウンドワン(4680) プライム 1.04% +14.8%
⑧ ラックランド(9612) プライム 1.01% −36.6%

残りの61銘柄では、他の機関の名前も並んでいます。大型株が中心なので、複数の証券会社が同時に扱っている銘柄が多くなります。

1週間のあいだの増減

前回報告との比較 銘柄数 構成比
増えた 46銘柄 52.9%
減った 41銘柄 47.1%
0.5%を下回っている 8銘柄 9.2%
残高0%の届け出 2銘柄 2.3%
銘柄(コード) 前回 今回 増減
トリケミカル研究所(4369) 0.38% 0.71% +0.33
東海道リート投資法人(2989) 0.59% 0.87% +0.28
ラサ工業(4022) 0.81% 0.92% +0.11
北海道電力(9509) 1.29% 1.38% +0.09
野村マイクロ・サイエンス(6254) 0.70% 0.77% +0.07
JFEホールディングス(5411) 2.53% 0.00% −2.53
OneETFトピックス(1473) 2.35% 0.00% −2.35
太陽誘電(6976) 0.50% 0.22% −0.28
三井E&S(7003) 1.36% 1.19% −0.17
TOWA(6315) 2.06% 1.91% −0.15

0.5%未満が8銘柄と少ないのも、この機関の特徴です。0.5%は報告が始まる基準で、1度報告すると基準を割ったことを届け出るまで一覧に残ります。その状態の銘柄が少ないということになります。

目立たない機関をどう扱うか

この機関のように割合のランキングに出てこないタイプは、見落とされやすくなります。3つの手順で拾えます。

① 自分の銘柄に出ている名前を全部書き出す

ランキングを上から見るのではなく、保有している銘柄で検索して、そこに出ている報告者を全部並べてください。割合の低い機関は、ランキング側からは絶対に見つかりません。

② その銘柄に出ている残高を合計する

1機関あたり1%未満でも、3社4社と並べば合計では数%になります。買い戻しの規模を考えるときは、機関ごとの数字ではなく合計で見てください。

③ 金額に直す

残高数量に株価をかければ金額が出ます。割合が低くても、金額では数百億円ということがあります。その銘柄の1日の売買代金と比べると、買い戻しにどれくらいかかるかの見当がつきます。売買代金は売買代金とは?で解説しています。

この記事で確かめられなかったこと

確かめられないこと 理由
上限が2.81%にとどまる理由 報告書に理由の欄がない。方針なのか結果なのかは区別できない
買い持ちの側 5%を超えるまで公表されない。売りの側だけが見えている
0.5%に届かない売り建て 報告義務がないため一覧に出てこない
建値と売った時期 公表項目に含まれていない

とくに1つめは、この記事の中心にある数字そのものについての限界です。「3%を超える銘柄がない」のは事実ですが、なぜそうなのかは書かれていません。

元のデータは日本取引所グループの「空売り残高に関する情報」で公開されています。報告者ごとに並べ替えれば、同じ確認ができます。

メリルリンチの空売りに関するよくある質問

メリルリンチの名前を空売り残高のランキングで見かけないのはなぜですか。
残高割合が高い銘柄を持っていないためです。87銘柄すべてが2.81%以下で、3%を超えるものは0件でした。割合の高い順に並べたランキングでは、上位100位までに1件しか入りません。
規模が小さいということですか。
逆です。1銘柄あたりの売り建ては約30.6億円で、今回比べた6機関のなかで最も大きくなっています。合計は約2,658億円です。銘柄数が87と少ないため、総額では上位機関に届きません。
なぜ残高割合が低く出るのですか。
発行済株式数の多い大型株が中心だからです。プライムが75.6%を占めます。分母が大きい銘柄では、同じ金額を売り建てても割合は小さく出ます。
報告しているのはどこの法人ですか。
住所がロンドンの法人です。報告書の住所欄は「2 KING EDWARD STREET, LONDON, EC1A 1HQ」になっています。日本にはBofA証券株式会社がありますが、この集計期間の報告には名前が出ていませんでした。
年初来の中央値が6機関で最も高いのはなぜですか。
扱っている銘柄の構成が違うためです。87銘柄の年初来は上がったのが50銘柄・下がったのが37銘柄で、中央値は+9.0%でした。プライムの比率が高く、値動きの穏やかな銘柄が多いことが効いています。この機関に売られると上がる、という意味ではありません。
3%を超える残高がないのは、方針によるものですか。
報告書からは分かりません。結果としてそうなっているという事実だけが確認できます。売り建ての理由を書く欄がないため、意図によるものか、扱う銘柄の性質によるものかは区別できません。
この機関の残高が増えたら注意すべきですか。
1つの数字で判断できるものではありません。今回の集計でも、増えた銘柄が46・減った銘柄が41とほぼ半々でした。前回からの増減と、その銘柄に出ている他の機関の名前を合わせて見てください。
他の機関と同じ銘柄に名前が出ていますか。
61銘柄で他の機関と重なっています。この機関だけが名前を出しているのは26銘柄でした。大型株が中心なので、複数の証券会社が同時に扱っている銘柄が多くなります。

まとめ

MERRILL LYNCH INTERNATIONAL の空売り残高87銘柄を数えました。

この記事のポイント

87銘柄すべてが2.81%以下。3%を超える銘柄が0件
・2%以上は4銘柄だけ(バークレイズ60/モルガン・スタンレーMUFG54)
・割合の高い順に並べた上位100件に1件しか入らない
・それでも1銘柄あたり約30.6億円で6機関のなかで最大(合計 約2,658億円)
・プライムが75.6%で最も高い。大型株は割合が小さく出る
・年初来の中央値+9.0%も6機関で最高。ただし銘柄構成の違いによる
・0.5%未満は8銘柄と少ない
上限が低い理由は報告書に書かれていない

ランキングの上位に出てこない機関が、規模として小さいとは限りません。87銘柄で約2,658億円、1銘柄あたりでは6機関のなかで最大でした。

見ている一覧がどの順に並んでいるかで、目に入る名前は変わります。保有している銘柄の側から報告者を全部拾う。それが、目立たない機関を見落とさない方法になります。

他の機関の空売り残高を見る

同じ報告データを、機関ごとに全数で数えたページを用意しています。同じ日のデータでも、機関によって形がまったく違います。

機関 銘柄数 その機関の特徴
モルガン・スタンレーMUFG証券 377銘柄 報告銘柄数が最多。名前がよく似た3つのモルガン
バークレイズ 428銘柄 報告が出ている銘柄の41.0%に名前がある
ゴールドマン・サックス 319銘柄 銘柄数は3番目だが、売り建ての金額は最大
野村 225銘柄 東京とロンドンで1銘柄あたり5.6倍違う
JPモルガン証券 130銘柄 割合の上位10と金額の上位10に共通が0件
UBS 70銘柄 3分の2が報告ラインのすぐ上に集まっている

7機関の全体像と、空売り機関がどう見られているかは 空売り機関の手口|「悪の機関」と呼ばれる理由 にまとめています。

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