JPモルガンの空売り銘柄|アドバンテストを1169億円もショートする圧倒的割合

空売り(ショート)残高の一覧を、2通りの順番で並べてみます。残高割合の大きい順と、売り建ての金額が大きい順です。

2026年8月26日から2026年9月2日の報告で、JPM Securities Japan Co Ltd. の名前が出ていた130銘柄でこれをやると、2つの上位10銘柄に、同じ銘柄が1つも入りませんでした。

残高割合の上位に並ぶのはグロースやスタンダードの小型株。金額の上位に並ぶのはプライムの大型株です。同じ130銘柄のなかに、性質の違う2つの群れが同居しています。

さらに金額の66.6%が、上位10銘柄に集まっていました。130銘柄に名前があっても、規模で見れば実質10銘柄ということになります。

この記事でわかること

残高上位10銘柄と金額上位10銘柄に、共通する銘柄が0件という結果
・金額の66.6%が上位10銘柄に集中。5機関のなかで最も偏っている
アドバンテスト1銘柄で35.1%(残高割合は0.48%)
・金額上位の平均残高は0.80%、残高上位の平均金額は約6.8億円
・東京の法人130銘柄とロンドンの法人16銘柄で重複0銘柄
・130銘柄の年初来は上がった83/下がった47(中央値+8.2%)
・他の機関が名前を出していない26銘柄
・上位5機関の集中度を並べた比較

※ この記事は制度と公表データの解説であり、特定の銘柄や売買、特定の事業者の評価を目的とするものではありません。集計は2026年8月26日から2026年9月2日に公表された空売り残高の報告にもとづきます。株価はYahoo Financeの日足終値です。

JPモルガン証券とはどんな会社か

空売り残高を報告しているのは、東京・丸の内に登記された「JPモルガン証券株式会社」です。報告書には英語表記の「JPM Securities Japan Co Ltd.」で載っています。

個人向けの店舗や口座を持つ会社ではなく、機関投資家や事業会社を相手にするホールセール専業の法人です。

項目 内容
報告書に載っている名前 JPM Securities Japan Co Ltd.
日本での社名 JPモルガン証券株式会社
報告書に載っている住所 TOKYO BUILDING, 7-3, MARUNOUCHI 2-CHOME, CHIYODA-KU, TOKYO
日本語での所在地 東京都千代田区丸の内2-7-3 東京ビルディング
郵便番号 〒100-6432。報告書の住所欄の末尾にある「1006432」と一致する
位置づけ 7機関のうち、日本に登記された法人が報告しているのは3件だけ(ほかはモルガン・スタンレーMUFG証券と野村證券)

※ この表の内容は、JPXの空売り残高報告(報告者名と住所)と、JPモルガン証券株式会社の公表情報(所在地・業務内容)で確認しました。

報告者が日本の法人か海外の法人かは、報告書の住所欄で見分けられます。この機関は東京の住所で報告しています。以下では、その130銘柄を2つの並べ方で見ていきます。

1つめの並べ方|残高割合の順

まず、公表されている一覧をそのまま並べます。

銘柄(コード) 市場 残高割合 金額
① スリー・ディー・マトリック(7777) グロース 5.30% 24.5億円
② レナサイエンス(4889) グロース 4.39% 7.2億円
③ ラクオリア創薬(4579) グロース 3.61% 5.2億円
④ FIG(4392) プライム 2.85% 10.4億円
⑤ グローバルウェイ(3936) グロース 2.48% 1.3億円
⑥ 地盤ネットホールディングス(6072) スタンダード 2.48% 5.9億円
⑦ リベルタ(4935) スタンダード 2.19% 1.5億円
⑧ 太洋物産(9941) スタンダード 2.07% 0.6億円
⑨ 旭ダイヤモンド工業(6140) プライム 1.99% 11.2億円
⑩ トラース・オン・プロダクト(6696) グロース 1.98% 0.3億円

10銘柄のうち8銘柄がスタンダードかグロースです。残高割合の平均は2.93%で、金額に直すと平均約6.8億円になります。

割合は大きいのに、金額としては小さい。発行済株式数が少ない銘柄では、こうなります。

2つめの並べ方|金額の順

次に、残高数量に株価をかけて並べ替えます。報告書に金額の記載はないので、こちらで計算したものです。

銘柄(コード) 市場 残高割合 金額
① アドバンテスト(6857) プライム 0.48% 1169.2億円
② 花王(4452) プライム 0.56% 180.3億円
③ 川崎汽船(9107) プライム 0.62% 132.9億円
④ 日産自動車(7201) プライム 1.07% 125.6億円
⑤ 富士電機(6504) プライム 0.62% 122.0億円
⑥ 太陽誘電(6976) プライム 0.88% 114.8億円
⑦ ローツェ(6323) プライム 1.58% 105.0億円
⑧ サンリオ(8136) プライム 0.62% 100.7億円
⑨ 東京電力ホールディングス(9501) プライム 1.02% 91.7億円
⑩ 資生堂(4911) プライム 0.57% 78.6億円

10銘柄のうち10銘柄がプライムです。残高割合の平均は0.80%。さきほどの表(平均2.93%)の3.7分の1です。

2つの表に、同じ銘柄が0件

ここがこの機関の特徴です。2つの上位10銘柄を見比べてください。共通する銘柄は0件でした。

同じ130銘柄を並べ替えただけなのに、入れ替わりではなく、完全に別の顔ぶれになります。整理すると次のようになります。

割合で並べる 金額で並べる
並べ方 残高割合の大きい順 金額の大きい順
上位10の平均残高 2.93% 0.80%
上位10の平均金額 約6.8億円 約222.1億円
市場区分 スタンダード・グロース中心 プライム中心
共通する銘柄 0件 0件

1つの機関の報告のなかに、性質の違う2つの群れが入っています。

片方は発行済株式数の少ない銘柄に対する、割合としては重い売り建て。もう片方は大型株に対する、金額としては大きいが割合としては軽い売り建てです。

この2つを1つの一覧で見ていると、どちらの話をしているのか分からなくなります。「この機関に大量に空売りされている」と言うときは、割合の話なのか金額の話なのかを分けてください。

アドバンテスト1銘柄で金額の35.1%

金額の表の1番目は、2番目と桁が違います。

銘柄 残高割合 売り建ての時価
アドバンテスト(6857) 0.48% 約1169.2億円
花王(4452) 0.56% 約180.3億円
川崎汽船(9107) 0.62% 約132.9億円
130銘柄の合計 約3,333億円

アドバンテストは2番目の6.5倍で、130銘柄の合計の35.1%を占めます。

それでいて残高割合は0.48%です。報告が始まる基準の0.5%を下回っています。割合で並べた一覧では、上位はおろか中位にも出てきません。

0.5%を下回っているのに載っているのは、1度報告を始めると基準を割ったことを届け出るまで一覧に残るためです。今回の130銘柄でも29銘柄が0.5%未満でした。

なぜこの銘柄にこれだけの売り建てがあるのかは、報告書からは分かりません。理由を書く欄がないためです。数字の大きさに理由を後づけしないことが、このデータを扱うときの作法になります。

5機関のなかで最も偏っている

金額が上位10銘柄にどれだけ集まっているかを、報告銘柄数の多い5機関で比べます。

報告者 銘柄数 売り建ての合計 上位10銘柄の割合
野村インターナショナル 204 約3,174億円 69.3%
JPM Securities Japan 130 約3,333億円 66.6%
ゴールドマン・サックス 319 約9,138億円 44.8%
モルガン・スタンレーMUFG 377 約7,926億円 43.3%
バークレイズ 428 約8,715億円 28.5%

66.6%は、この5機関のなかで最も高い数字です。銘柄数が130と少ないぶん、上位への偏りが大きくなります。

名前が出ている銘柄の数と、その機関の規模は比例しません。130銘柄で約3,333億円という金額は、204銘柄の野村インターナショナル(約3,174億円)を上回っています。

他の機関の内訳は、ゴールドマン・サックスの空売り319銘柄野村の空売りで扱っています。

東京の法人とロンドンの法人

JPモルガンの名前は、今回の報告に2つ出ていました。

報告者 住所 銘柄数 1銘柄あたり
JPM Securities Japan Co Ltd. 東京・丸の内 130銘柄 約25.6億円
J.P. MORGAN SECURITIES PLC ロンドン 16銘柄 約107.5億円

両方に名前が出ている銘柄は0銘柄でした。扱っている銘柄が1つも重なっていません。

ロンドンの16銘柄は、16銘柄がプライムです。1銘柄あたり約107.5億円と、東京の法人(約25.6億円)より大きくなっています。

一覧で名前を見るときは、Japan なのか PLC なのかまで読んでください。住所欄を見れば、東京か英国かも分かります。

130銘柄の市場区分と業種

市場区分 銘柄数 平均残高 年初来の中央値
プライム 69銘柄 0.78% +13.1%
スタンダード 34銘柄 0.89% −7.4%
グロース 25銘柄 1.47% +4.8%

プライムが69銘柄で53.9%を占めます。業種では情報・通信業が21銘柄、サービス業が17銘柄、電気機器が16銘柄という並びです。

市場区分ごとに平均残高を見ると、プライムのほうが小さくなっています。これも「大型株は割合が小さく出る」という関係の表れです。

年初来の株価を全数で数える

銘柄数 構成比
年初来がプラス 83銘柄 63.8%
年初来がマイナス 47銘柄 36.2%
年初来の中央値 +8.2%
報告が出ている全銘柄の中央値 +5.9% (1,043銘柄)

プラスが83銘柄で63.8%です。中央値は+8.2%。ものさしにした全1,043銘柄が+5.9%なので、それをやや上回る位置にあります。

名前が出ていることと、その後の株価の方向に、はっきりした関係は見えません。これは前に見た5機関でも同じでした。空売り残高は、それだけで売買の判断材料になる数字ではありません。

他の機関が名前を出していない26銘柄

この機関の名前しか載っていない銘柄が26銘柄あります。130銘柄の20.0%です。

銘柄(コード) 市場 残高割合 年初来
① Institutionfo(4265) グロース 1.46% −7.8%
② 東洋紡(3101) プライム 1.02% +29.7%
③ 北浜キャピタルパートナーズ(2134) スタンダード 0.99% −35.5%
④ エフオン(9514) スタンダード 0.97% −4.8%
⑤ 正栄食品工業(8079) プライム 0.77% +10.7%
⑥ コスモス薬品(3349) プライム 0.65% −11.7%
⑦ 富士電機(6504) プライム 0.62% +8.4%
⑧ フェローテック(6890) スタンダード 0.62% +73.7%

この26銘柄を合わせても金額は約1,489億円で、130銘柄の合計の44.7%にとどまります。金額の大半は、他の機関も名前を出している大型株のほうにあります。

なぜ性質の違う2つが同じ一覧に載るのか

証券会社の売り建ては、いくつもの業務から生まれます。そのそれぞれが、違う大きさで一覧に現れます。

業務 対象になりやすい銘柄 一覧での見え方
大口の注文を受ける 大型株が中心 金額は大きく、割合は小さい
デリバティブの提供 大型株が中心 金額は大きく、割合は小さい
転換社債との組み合わせ 中小型株にも及ぶ 割合が大きくなりやすい
貸株の在庫調整 銘柄を選ばない 規模はさまざま

大型株を相手にする業務は金額が大きく、中小型株を相手にする業務は割合が大きく出ます。1つの機関がどちらもやっていれば、一覧には両方が並びます。

ただしどの銘柄がどの業務によるものかは、報告書からは分かりません。ここで挙げたのは一般的な説明で、個別の裏づけがあるわけではありません。買い持ちの側も公表されないため、大株主とは?で扱っている5%の基準に達するまでは見えないままです。

前回の報告からの動き

前回報告との比較 銘柄数 構成比
増えた 56銘柄 43.1%
減った 74銘柄 56.9%
0.5%を下回っている 29銘柄 22.3%
残高0%の届け出 3銘柄 2.3%
銘柄(コード) 前回 今回 増減
ACSL(6232) 0.95% 1.94% +0.99
太陽誘電(6976) 0.00% 0.88% +0.88
ReYuuJapan(9425) 1.32% 1.76% +0.44
アイサンテクノロジー(4667) 0.71% 1.00% +0.29
日東紡績(3110) 0.64% 0.91% +0.27
Abalance(3856) 0.83% 0.00% −0.83
DMG森精機(6141) 0.54% 0.00% −0.54
住友大阪セメント(5232) 0.50% 0.00% −0.50
芝浦メカトロニクス(6590) 0.71% 0.41% −0.30
フェローテック(6890) 0.91% 0.62% −0.29

減った銘柄のほうが多くなっています(増56/減74)。3日ぶんの報告でも、これだけ動きます。

一覧を2回並べ替えて見る

この記事でやったことは単純です。同じデータを2通りに並べただけです。手順にすると3つになります。

① 残高割合で並べる(そのまま)

公表されている一覧の順です。ここに出てくるのは、発行済株式数に対して重い売り建てを受けている銘柄です。買い戻しが起きたときに株価が動きやすいのはこちらになります。

② 残高数量に株価をかけて並べ替える

金額で並べると、まったく別の銘柄が上に来ます。その機関がどこに規模を置いているかが分かります。今回は上位10銘柄で66.6%でした。

③ 2つの表を見比べる

共通している銘柄があれば、割合でも金額でも大きいということです。今回は0件でした。共通する銘柄がないなら、その機関は性質の違う売り建てを両方持っていると読めます。

この並べ替えで分かること・分からないこと

内容 理由
分かる その機関が規模をどこに置いているか 金額で並べ替えれば見える
分かる 割合と金額のどちらで大きいのか 2つの表を見比べる
分からない 売り建てた理由 報告書に欄がない
分からない いくらで売ったか、いつ売ったか 建値も日付も公表されない
分からない 同じ機関が持っている買い 5%を超えるまで公表されない

並べ替えでできるのは、公表されている数字の見せ方を変えることだけです。それでも、一覧の順番だけを見ているときには気づけないことが出てきます。

元のデータは日本取引所グループの「空売り残高に関する情報」にあります。残高数量の欄があるので、同じ並べ替えを自分でも試せます。

JPモルガンの空売りに関するよくある質問

130銘柄に名前があるのに、金額が10銘柄に偏っているのはなぜですか。
1銘柄あたりの規模がまったく違うためです。金額の上位10銘柄は平均0.80%の残高で1銘柄あたり約222.1億円、いっぽう残高割合の上位10銘柄は平均2.93%で約6.8億円です。割合が大きい銘柄ほど金額は小さい、という逆の関係になっています。
報告しているのは日本の法人ですか。
今回130銘柄に名前が出ていたのは、住所が東京の法人です。報告書の住所欄は東京・丸の内になっています。これとは別に、ロンドンの法人(J.P. MORGAN SECURITIES PLC)も16銘柄で報告していました。
2つの法人は同じ銘柄を扱っていますか。
今回の集計では、重なっている銘柄は0銘柄でした。1つも重なっていません。ロンドンの16銘柄は16銘柄がプライムで、1銘柄あたり約107.5億円と規模が大きいのが特徴です。
残高割合が0.5%未満なのに金額が1番大きい銘柄があるのはなぜですか。
報告される割合は、金額ではなく発行済株式数に対する比率だからです。アドバンテスト(6857)は0.48%ですが、株価と株数が大きいため金額では約1169.2億円になります。130銘柄の合計の35.1%がこの1銘柄です。
残高割合が高い銘柄は危ないということですか。
そう判断できる結果は出ていません。残高割合の上位10銘柄の年初来を見ると、大きく上げた銘柄と下げた銘柄が混ざっています。割合が高くなりやすいのは発行済株式数が少ない銘柄で、もともと値動きが大きいという事情もあります。
名前が出ている銘柄全体では、株価はどうなりましたか。
130銘柄の年初来は、上がったのが83銘柄・下がったのが47銘柄でした。中央値は+8.2%です。空売り報告が出ている銘柄をすべて数えると+5.9%なので、それをやや上回っています。
どうすれば金額を自分で計算できますか。
報告書の残高数量に株価をかけるだけです。JPXのページで公開されているExcelに残高数量の欄があります。金額の記載はないので、この一手間で見え方が変わります。
売り建ての理由は分かりますか。
報告書に理由を書く欄はありません。顧客の注文、引受け、デリバティブの提供など証券会社の業務から生まれる売り建てが多いと考えられますが、個別の銘柄がどれに当たるのかを外から確かめる方法はありません。

まとめ

JPM Securities Japan Co Ltd. の空売り残高130銘柄を、2通りの並べ方で見ました。

この記事のポイント

残高上位10銘柄と金額上位10銘柄に、共通する銘柄が0件
・割合の上位はスタンダード・グロース中心、金額の上位はプライム中心
・金額の66.6%が上位10銘柄。5機関のなかで最も偏っている
アドバンテスト1銘柄で35.1%(残高割合は0.48%)
・130銘柄で約3,333億円。銘柄数の多い野村インターナショナルの約3,174億円を上回る
・東京の法人とロンドンの法人で重複0銘柄。ロンドン分は16銘柄がプライム
・年初来は上がった83/下がった47(中央値+8.2%)
並べ替えは残高数量×株価でできる

同じ130銘柄を2通りに並べただけで、上位10銘柄が総入れ替えになりました。片方は割合の重い中小型株、もう片方は金額の大きい大型株です。

一覧の順番は、そのデータの一面でしかありません。もう1つの軸で並べ直すと、同じ数字から別のことが読めます。

他の機関の空売り残高を見る

同じ報告データを、機関ごとに全数で数えたページを用意しています。同じ日のデータでも、機関によって形がまったく違います。

機関 銘柄数 その機関の特徴
モルガン・スタンレーMUFG証券 377銘柄 報告銘柄数が最多。名前がよく似た3つのモルガン
バークレイズ 428銘柄 報告が出ている銘柄の41.0%に名前がある
ゴールドマン・サックス 319銘柄 銘柄数は3番目だが、売り建ての金額は最大
野村 225銘柄 東京とロンドンで1銘柄あたり5.6倍違う
メリルリンチ 87銘柄 3%超えが1つもない
UBS 70銘柄 3分の2が報告ラインのすぐ上に集まっている

7機関の全体像と、空売り機関がどう見られているかは 空売り機関の手口|「悪の機関」と呼ばれる理由 にまとめています。

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