新NISAのデメリット|損益通算できないという最大の不利

新NISAに「デメリットしかない」ということはありません。ただし、確実に不利になる場面は存在します。そこを知らずに始めると、後から取り返しがつかなくなります。

最も大きいのは損益通算ができないという点です。

通常の課税口座なら、A株で30万円損してB株で30万円儲けた場合、差し引きゼロとして扱われ税金はかかりません。ところがNISA口座の損失は、税務上「なかったこと」にされます。

利益が非課税になる制度の裏返しとして、損失も存在しないものとして扱われる。これが「怪しい」「デメリットしかない」と言われる理由の核心にあります。

この記事では、実際に不利になる場面を具体的に整理します。

この記事でわかること

損益通算ができないという最大のデメリット
・繰越控除も使えないという二重の不利
・元本保証がないという当たり前だが重要な点
枠が復活するのは翌年、しかも簿価分だけ
・成長投資枠で買えない商品がある
・「怪しい」と言われる理由の検証
・それでも使ったほうがよい人、慎重になるべき人
・よくある質問

制度そのものの解説はNISAとは?新NISAの枠と使い方、実際の使い方は新NISAの使い方にまとめています。

デメリット① 損益通算ができない

最も重要なので最初に扱います。

損益通算とは、同じ年の利益と損失を相殺して、税金の計算対象を減らす仕組みのことです。

状況 課税口座(特定口座など) NISA口座
A株で30万円の利益 約6万円の税金 非課税(0円)
B株で30万円の損失 損失として認められる なかったことにされる
両方を持っていた場合 相殺できて税金は0円 相殺できない

ここで問題になるのが「NISA口座と課税口座をまたいだ相殺もできない」という点です。

実際に損をする例

NISA口座で50万円の損失を出した
特定口座で50万円の利益が出た
 ↓
本来なら相殺してゼロのはずが……
 ↓
特定口座の50万円にはそのまま課税される(約10万円)

→ 全体では損益ゼロなのに、税金だけ払うことになる

これが新NISAで最も大きな不利です。課税口座と併用している人ほど、この影響を受けやすくなります。

デメリット② 繰越控除も使えない

損益通算と対になる仕組みが繰越控除です。こちらも使えません。

課税口座では、その年に相殺しきれなかった損失を、翌年から3年間持ち越して利益と相殺できます。確定申告が必要ですが、大きな損失を出した年には有効な制度です。

制度 課税口座 NISA口座
損益通算 できる できない
繰越控除(3年間) できる できない
利益への課税 約20% 0%

つまりNISAは「勝ったときの得は大きいが、負けたときの救済がゼロ」という制度です。

この非対称性から、NISAには「勝つ確率が高いもの」を入れるほうが合理的だという考え方が導かれます。短期で当たり外れの大きい銘柄より、長期で右肩上がりが期待できるものを置くほうが制度と相性が良いことになります。

デメリット③ 元本保証はない

当たり前のようですが、誤解している人が実際にいます。

NISAは「税金がかからない箱」であって、値上がりを約束する制度ではありません。箱の中身が値下がりすれば、資産は減ります。

NISAが保証すること
利益が出たときに税金がかからない

それだけです

NISAが保証しないこと
・元本
・利益が出ること
いつでも同じ価格で売れること

非課税という言葉が「有利な制度」という印象を与えるため、リスクの部分が薄まって伝わりやすいという構造があります。得をするのは利益が出た場合だけであり、損をした場合はむしろ課税口座より不利です。

デメリット④ 枠の復活は翌年、しかも簿価分だけ

新NISAの目玉として「売却すれば枠が復活する」という点が挙げられます。ただし条件があります。

よくある誤解 実際
売ったらすぐ買い直せる 復活は翌年。その年は買えない
売却額の分だけ枠が戻る 戻るのは買ったときの金額(簿価)分だけ
枠が戻れば何度でも使える 年間360万円の上限は別に効いている

具体例で確認します。100万円で買った投資信託が150万円になって売却した場合——

復活する金額

売却額 150万円 → 復活するのは100万円分(買値)
時期 → 翌年

→ 値上がりした50万円分の枠は戻ってこない
→ その年のうちに買い直すこともできない

この仕組みから、新NISAは売買を繰り返す使い方に向いていないことがわかります。頻繁に乗り換えると、枠が翌年まで戻らないため機会を失い続けることになります。

デメリット⑤ 買えない商品がある

2つの枠には、それぞれ買える商品の制限があります。

買えないもの
つみたて投資枠 個別株はすべて不可。金融庁の基準を満たす投資信託・ETFのみ
成長投資枠 整理・監理銘柄/信託期間20年未満の投信/高レバレッジ型/毎月分配型
どちらでも不可 信用取引・FX・先物・オプション・債券(一部)

信用取引ができない点は、株式投資をしている人には制約になります。NISA口座で保有している株を担保にすることもできません。

またNISA口座で保有する株式は、貸株サービスにも出せません。貸株金利を得たい場合は課税口座で保有する必要があります(→ 貸株とは)。

デメリット⑥ 株主優待は非課税の対象外

意外に知られていない点です。

NISAで非課税になるのは「売却益」と「配当金・分配金」だけです。株主優待は対象外になります。

受け取るもの NISAでの扱い
売却益 非課税
配当金・分配金 非課税(ただし受取方法の設定が必要)
株主優待 非課税の対象外。原則として雑所得

そして配当金にも落とし穴があります。

配当を非課税にするための設定

配当金の受取方法を「株式数比例配分方式」にしていないと、
NISA口座で買った株でも配当に約20%課税されます。

→ 証券会社の設定画面で確認できる
設定を忘れていると、非課税の恩恵を受けられない

これは設定ひとつで結果が変わる、見落としやすい落とし穴です。個別株や高配当ETFをNISAで持つなら、必ず確認しておきたい項目になります。

「怪しい」と言われる理由の検証

「新NISAは怪しい」という言われ方について、実際の根拠を整理します。

言われていること 検証
国が推しているのが怪しい 制度としては本当に非課税。ただし利益が出た場合に限る
将来課税されるのでは 制度変更の可能性は否定できないが、現時点でそうした決定はない
損しても救済がない 事実。損益通算も繰越控除もできない
元本保証だと思っていた 誤解。値下がりすれば資産は減る
手数料で損をする 商品次第。信託報酬の水準は必ず確認する

「怪しい」と言われる部分の多くは、制度の非対称性から来ています。利益には手厚く、損失には冷たい。この構造を理解していれば、怪しいのではなく「向き不向きがある制度」だと整理できます。

それでも使ったほうがよい人、慎重になるべき人

使ったほうがよい人 慎重になるべき人
10年以上使う予定のない資金がある 生活防衛資金がまだない
インデックス投信を長期で積み立てたい 5年以内に使う予定の資金しかない
課税口座での取引がほとんどない 課税口座で頻繁に売買している(損益通算ができない影響が大きい)
値動きを見ずに続けられる 短期の売買で利益を狙いたい
信用取引を使わない 信用取引や貸株を活用している

3行目が実務的に重要です。課税口座で年間を通じて売買している人は、NISAで損失を出すと相殺の機会を失います。この場合、NISAには値動きの荒い銘柄を入れないほうが理にかなっています。

デメリットを踏まえた使い方

不利を小さくする4つの原則

① 損しにくいものを入れる
 損失の救済がない以上、値動きの荒いものは課税口座向き

② 短期売買をしない
 枠の復活は翌年。回転させるほど機会を失う

③ 配当の受取方法を確認する
 株式数比例配分方式でないと配当に課税される

④ 生活防衛資金を先に確保する
 急な出費で売却すると、相場に関係なく損が確定する

①について補足します。NISAは「勝ったときの得が大きい制度」なので、勝つ確率が高いものを置くほうが合理的です。

逆に言えば、当たり外れの大きい個別株や、短期で結果が出る取引は課税口座のほうが向いています。損したときに損益通算で取り返せる余地が残るためです。

新NISAのデメリットに関するよくある質問

新NISAは本当にデメリットしかないのですか?
そんなことはありません。利益が出れば約20%の税金がかからないという明確な利点があります。ただし損失を出した場合は、課税口座なら使える損益通算も繰越控除も使えないため、むしろ不利になります。利益には手厚く損失には冷たいという非対称な制度であり、向き不向きがあると理解するのが正確です。
損益通算ができないとどうなりますか?
NISA口座で50万円の損失を出し、特定口座で50万円の利益が出た場合、本来なら相殺されて税金はゼロになるはずですが、NISAの損失は税務上ないものとして扱われるため、特定口座の50万円にそのまま約10万円の税金がかかります。全体では損益ゼロなのに税金だけ払うことになるため、課税口座と併用している人ほど影響を受けます。
繰越控除も使えないのですか?
使えません。課税口座では、その年に相殺しきれなかった損失を翌年から3年間持ち越して利益と相殺できますが、NISA口座の損失にこの制度は適用されません。損益通算と繰越控除の両方が使えないため、負けたときの救済手段が一切ないことになります。
元本は保証されますか?
保証されません。NISAは税金がかからない箱であって、値上がりを約束する制度ではないためです。箱の中身が値下がりすれば資産は減ります。非課税という言葉が有利な制度という印象を与えるため、リスクの部分が薄まって伝わりやすい構造がありますが、得をするのは利益が出た場合だけです。
売却したら枠はすぐ戻りますか?
戻りません。復活は翌年で、しかも復活する金額は買ったときの簿価分だけです。100万円で買ったものが150万円になって売却しても、戻るのは100万円分にとどまります。さらに年間360万円という上限は別に効いているため、生涯枠が復活していてもその年に360万円を超えて買うことはできません。
株主優待も非課税になりますか?
なりません。NISAで非課税になるのは売却益と配当金・分配金だけで、株主優待は対象外となり原則として雑所得の扱いになります。また配当金についても注意が必要で、受取方法を株式数比例配分方式に設定していないと、NISA口座で買った株でも配当に約20%課税されます。証券会社の設定画面で必ず確認してください。
信用取引はできますか?
できません。NISA口座では信用取引、FX、先物、オプションといった取引が対象外です。またNISA口座で保有している株式を担保にすることもできず、貸株サービスに出すこともできません。貸株金利を得たい場合は課税口座で保有する必要があります。株式投資を積極的に行っている人にとっては制約になります。
どんな商品をNISAに入れるべきですか?
損失の救済がない制度なので、勝つ確率が高いと考えられるものを置くほうが合理的です。長期で右肩上がりが期待できるインデックス型の投資信託などが制度と相性の良い選択になります。逆に当たり外れの大きい個別株や短期で結果が出る取引は、損したときに損益通算で取り返せる余地が残る課税口座のほうが向いています。

まとめ

新NISAは「勝ったときの得が大きく、負けたときの救済がない制度」です。

デメリットしかないわけではありませんが、損益通算も繰越控除も使えないという非対称性は確実に存在します。この構造を知ったうえで、何を入れるかを決めることが、制度と付き合ううえで最も重要になります。

この記事のまとめ

最大のデメリットは損益通算ができないこと
・課税口座の利益とも相殺できない。損益ゼロでも税金だけ払うことがある
繰越控除(3年間)も使えない。負けたときの救済が一切ない
・元本保証はない。NISAは税金がかからない箱にすぎない
枠の復活は翌年、しかも簿価分だけ。短期売買に向かない
・年間360万円の上限は復活とは別に効いている
・つみたて投資枠では個別株が買えない
・成長投資枠でも高レバレッジ型・毎月分配型などは対象外
・信用取引・FX・先物は不可。貸株にも出せない
株主優待は非課税の対象外(原則として雑所得)
・配当は株式数比例配分方式にしないと課税される
・損の救済がない以上、損しにくいものを入れるのが合理的

※ 本記事は2026年8月時点の公表情報にもとづく解説であり、特定の銘柄や投資判断を推奨するものではありません。税制および制度の詳細は変更される可能性があります。具体的な税務の取扱いについては、金融機関または税務の専門家にご確認ください。

NISA で米国株を買うなら

NISA の成長投資枠では米国株・米国 ETF も買えます。ただし米国側の源泉徴収 10% は NISA でも残るので、口座の種類と税金の仕組みを先に確認してください。

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