業績予想の修正とは、企業がいったん公表した業績の見通しを見直し、あらためて開示することです。上に見直せば上方修正、下に見直せば下方修正といいます。

そして重要なのは、修正の開示にはルールがあり、企業の気分で出したり出さなかったりできるものではないという点です。

基準は「売上高10%・各段階利益30%」。この記事では、この数字の中身と、修正が出るタイミングを扱います。

この記事でわかること

・上方修正と下方修正の定義
・開示が義務になる「10%・30%ルール」の中身
・基準未満でも開示されることがある理由
・修正が出やすい4つのタイミング
・上方修正なのに株価が下がる3つのパターン
・どこで最速で知ることができるか
・2024年の制度変更で何が変わったか
・修正の「理由」を必ず読むべき理由

📌 この記事は開示のルールと実務を扱います。修正が出たあと株価がどう動くかについては 業績予想上方修正・下方修正が与える影響 で詳しく解説しています。

業績予想の修正とは

業績予想の修正(読み方:ぎょうせきよそうのしゅうせい)は、会社自身が出した見通しを、会社自身が訂正する行為です。

種類 内容 一般的な受け止め
上方修正 予想を上に見直す 好材料
下方修正 予想を下に見直す 悪材料

前提として知っておくべきなのは、業績予想そのものが「会社の自己申告」だという点です。監査を受けた確定値ではなく、経営陣の見通しです。

だからこそ、途中で実態とズレたときには速やかに訂正する義務が課されています。これが修正開示の制度です。

そもそも業績予想はどこに載っているのか

書類 業績予想の記載
決算短信 載っている。サマリー1ページ目。ここが唯一の情報源
有価証券報告書 載っていない(確定した実績を報告する書類のため)
修正の開示資料 「業績予想の修正に関するお知らせ」として単独で開示される

業績予想が載っているのは決算短信だけです。これが、決算短信が株価を最も動かす書類である理由でもあります。

開示が義務になる「10%・30%ルール」

この記事の核心です。

東証の適時開示ルール(有価証券上場規程施行規則)では、直近に公表した予想値と新たな見込みとのあいだに次の差が生じる見込みになった時点で、速やかに開示することが求められます。

項目 開示が必要になる差
売上高 10%以上の増減
営業利益 30%以上の増減
経常利益 30%以上の増減
当期純利益 30%以上の増減
配当予想 変更する場合は金額の大小にかかわらず開示

覚え方と、見落としやすい点

・通称「10・30ルール」。売上は10%、利益は30%
上方でも下方でも同じ基準。良いニュースだから出さなくてよい、ということはない
・比べる相手は「前年」ではなく「直近に公表した自社の予想」
利益のほうが基準が緩いのは、利益は振れやすいから
 (売上が5%動くと利益は30%動くことがある)

3行目は間違えやすいポイントです。「前年比30%増だから上方修正が出る」のではありません。自分が出した予想からのズレで判断します。

基準に達しなくても開示されることがある

10%・30%はあくまで「これを超えたら必ず出しなさい」という下限です。

状況 開示されるか
基準を超えた 義務。速やかに開示
基準未満だが、投資判断に重要と会社が判断 任意で開示されることがある
基準を超えたが、決算発表がすぐ先にある 決算発表とあわせて開示されることがある
赤字転落・黒字転換など符号が変わる 率にかかわらず開示されるのが通例

4行目は率で判断できない典型例です。予想が1億円の黒字から1億円の赤字に変わる場合、変動率という考え方自体が成立しません。金額が小さくても、符号が変わることの意味は大きいためです。

修正が出やすい4つのタイミング

タイミング 背景
① 四半期決算の発表と同時 最も多い。進捗率を見て通期予想を見直す
② 第2四半期(中間期)の前後 半分が終わり、通期の着地が見えてくる時期
③ 期末の直前 3月決算なら2〜3月。着地がほぼ確定するため修正が集中する
④ 突発的な出来事の直後 大口受注、災害、為替の急変、訴訟、リコールなど

③は覚えておく価値があります。3月決算企業なら、2月から3月にかけて修正開示が増えます。期末が近いほど数字の精度が上がり、「もう動かない」と判断できるからです。

為替が業績に効く仕組みは円安とはで扱っています。

2024年の制度変更で変わったこと

修正開示そのもののルールは変わっていませんが、周辺の書類が変わりました。

四半期 改正前 改正後
第1・第3四半期 四半期報告書+四半期決算短信 四半期決算短信に一本化
第2四半期 四半期報告書 半期報告書に変更

適用は2024年4月1日以後に開始する四半期からです。

投資家にとっての意味は、第1・第3四半期について監査法人のレビューを受けた書類がなくなったことです。修正開示の判断材料となる四半期の数字は、いま監査を受けていない決算短信の情報だけになっています。

上方修正なのに株価が下がる3つのパターン

「上方修正=買い」とは限りません。典型的なパターンが3つあります。

① 織り込み済み
市場が事前にもっと大きな上方修正を期待していた。期待に届かず売られる
② 中身が一時的
資産売却益などの特別利益による上振れ。本業は改善していない
③ 材料出尽くし
上方修正を狙って買われていた資金が、発表と同時に利益確定する

②は決算短信の中身を見れば判別できます。営業利益は据え置きなのに当期純利益だけが大きく上振れている場合、本業ではなく特別利益が理由です。5つの利益の違いは損益計算書とはで解説しています。

株価の反応の詳しい読み方は業績予想上方修正・下方修正が与える影響をご覧ください。

修正の「理由」を必ず読む

開示資料には、必ず修正の理由が書かれています。数字より、こちらのほうが情報量が多いことがあります。

上方修正の理由 評価
主力製品の販売が計画を上回った 良い。本業の改善で、次期も続く可能性がある
為替が想定より円安に振れた 中立。戻れば消える
経費の削減が進んだ 中立。削減余地には限りがある
固定資産の売却益を計上 一時的。来期には残らない

下方修正で注意すべき表現

「一過性の要因により」… 本当に一過性かを次の四半期で確認する
「構造的な需要の減退」… 回復に時間がかかる。最も重い表現
「特別損失を計上」… 減損の場合、その事業を諦めた合図のことがある
「業績予想を未定とする」見通しが立たないという意思表示。警戒度が高い

最後の「未定」は特に重要です。会社自身が数字を出せない状態を意味します。あわせて重要事象の記載がないかも確認してください。

どこで最速で知るか

場所 速さ 特徴
TDnet(東証の適時開示情報閲覧サービス) 最速 公表と同時に掲載される。一次情報
証券会社のアプリ・通知機能 速い 保有銘柄の開示を通知してくれるものがある
企業のIRページ やや遅い 過去分がまとまっている
ニュースサイト・SNS 遅い 解釈が混ざる。一次情報で確認すること

開示は取引時間中にも出ます。15時以降に出ることが多いものの、場中に出れば株価はその場で動きます。SNSで話題になってから動くと、すでに価格に反映されたあとです。

SNS情報との付き合い方は株のX(旧Twitter)活用術と株クラ危険アカウントの見分け方で扱っています。

進捗率で修正を先読みする

修正が出る前に気づく方法もあります。四半期ごとの進捗率を見ることです。

進捗率の目安

進捗率 = 四半期までの実績 ÷ 通期予想 × 100

・第1四半期終了時 … 単純計算で 25%
・第2四半期終了時 … 単純計算で 50%
・第3四半期終了時 … 単純計算で 75%

大きく上回っていれば上方修正、下回っていれば下方修正の可能性
・⚠️ ただし季節性のある業種では単純比較できない
 (年末に売上が集中する小売、期末に検収が集中する受注産業など)

進捗率は決算短信のサマリーから自分で計算できます。会社が修正を出す前に、数字は先に語っています。

業績予想の修正に関するよくある質問

業績予想の修正はどんなときに開示されますか?
東証の適時開示ルールでは、直近に公表した予想と新たな見込みとのあいだに、売上高で10%以上、営業利益・経常利益・当期純利益で30%以上の差が生じる見込みになった時点で、速やかに開示することが求められます。通称「10%・30%ルール」と呼ばれます。配当予想の変更は、金額の大小にかかわらず開示の対象です。
比べる相手は前年の実績ですか?
違います。比較の対象は「直近に公表した自社の業績予想」です。前年比で30%増えていても、自社が出した予想どおりであれば修正開示は不要です。逆に前年より減益であっても、自社の予想から30%以上ズレるなら開示が必要になります。よく間違えられるポイントです。
なぜ売上は10%で利益は30%なのですか?
利益のほうが振れやすいためです。売上が5%動いただけでも、固定費の存在によって利益は30%動くことがあります。売上と同じ10%を基準にすると、修正開示が頻発して情報としての価値が下がってしまいます。振れ幅の違いを踏まえて、基準に差が設けられています。
基準に達していなくても修正が出ることはありますか?
あります。10%・30%はあくまで「これを超えたら必ず出す」という下限であり、基準未満でも投資判断に重要と会社が判断すれば任意で開示されます。また黒字から赤字への転落など符号が変わる場合は、金額が小さくても開示されるのが通例です。変動率という考え方自体が成立しないためです。
修正が出やすい時期はありますか?
四半期決算の発表と同時が最も多く、次いで第2四半期の前後、そして期末の直前です。3月決算企業であれば2月から3月にかけて修正開示が増えます。期末が近いほど着地の精度が上がり、数字が固まるためです。このほか大口受注や災害、為替の急変などを受けて突発的に出ることもあります。
上方修正が出たのに株価が下がるのはなぜですか?
3つのパターンがあります。市場が事前にもっと大きな上方修正を期待していた場合(織り込み済み)、上振れの中身が資産売却益など一時的な要因だった場合、そして上方修正を狙って買われていた資金が発表と同時に利益確定した場合(材料出尽くし)です。2番目は、営業利益が据え置きなのに当期純利益だけ大きく上振れているかどうかで判別できます。
「業績予想を未定とする」とはどういう意味ですか?
会社自身が合理的な見通しを立てられない状態にあるという意思表示です。数字を下げる下方修正よりも、見通しそのものを出せないという点で警戒度が高い開示といえます。この場合は継続企業の前提に関する注記や重要事象の記載がないかも、あわせて確認してください。
修正が出る前に気づく方法はありますか?
四半期ごとの進捗率を見る方法があります。四半期までの実績を通期予想で割った値で、第1四半期なら25%、第2四半期なら50%、第3四半期なら75%が単純計算の目安です。大きく上回っていれば上方修正、下回っていれば下方修正の可能性が高まります。ただし年末に売上が集中する小売など、季節性のある業種では単純比較できない点に注意してください。

まとめ

業績予想の修正は「会社が自分の見通しの誤りを認める開示」です。だからこそ、ルールで出すタイミングが縛られています。

この記事のまとめ

・業績予想は決算短信にだけ載っている。会社の自己申告で監査は受けていない
・🔴 開示義務の基準は売上高10%・営業/経常/当期純利益30%
・配当予想の変更は金額にかかわらず開示
・比べる相手は前年ではなく直近に公表した自社の予想
・基準未満でも任意開示されることがある。赤字転落は率に関係なく開示
・修正が集中するのは四半期決算時と期末の直前
・2024年4月から第1・第3四半期の四半期報告書は廃止
・🔵 上方修正でも下がる3パターン(織り込み済み/一時的/材料出尽くし)
・数字より「修正の理由」のほうが情報量が多い
・進捗率(25/50/75%)で修正を先読みできる

※ 本記事は2026年8月時点の情報にもとづく解説であり、特定の銘柄や投資判断を推奨するものではありません。開示ルールの詳細は日本取引所グループの規則をご確認ください。

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