
エスポア(3260)の株式は、名古屋証券取引所の決定により2026年10月17日に上場廃止となります。10月16日までは「整理銘柄」として売買できますが、その後は市場で売れなくなります。
大株主が整理銘柄の期間中に市場で売らなかったとしても、株式そのものは無くならず、大株主も個人株主も株主のまま残ります。そのうえで個人株主は、「10月16日までに市場で売る」か「上場廃止後も持ち続ける」かを選ぶことになります。
この記事では、上場廃止が決まった理由と経緯、大株主の顔ぶれ、そして大株主が売らなかった場合に何が起きるのかを整理します。持ち続ける場合に必要な手続きや税金の扱いまで解説します。
この記事でわかること
・第三者委員会の調査で明らかになったこと
・整理銘柄になってからの株価の動き
・大株主は誰かと、上位3株主の持ち株の割合
・大株主が市場で売らなかったらどうなるのか
・個人株主の2つの選択肢と、持ち続ける場合の特定管理口座と税金
※ この記事はニュースと制度の解説であり、特定の売買を推奨するものではありません。株価は株探の値で、9月18日の値は取引時間中のものです。税金の扱いは個別の事情で変わるため、最終的な判断は証券会社や税務署、税理士に確認してください。
何が起きたのか|エスポアの上場廃止が決定
名古屋証券取引所は2026年9月16日、ネクスト市場に上場するエスポアの株式を整理銘柄に指定し、10月17日に上場廃止とすることを決めました。決算の信頼性が長く確認できない状態が続いたことが理由です。まずは経緯を時系列で並べます。
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 2025年2月期 | 債務超過。2026年2月期も債務超過になると、上場廃止基準(2期連続の債務超過)に触れる状況になった |
| 2026年2月(期末月) | 不動産コンサルティングなどの売上として取引3件を計上 |
| 2026年5月28日 | 監査法人が「意見を表明しない」とした監査報告書をつけて、2026年2月期の有価証券報告書を提出。名証が監理銘柄(確認中)に指定 |
| 2026年6月11日 | 会社が第三者調査委員会を設置。その後、調査を一時中断 |
| 2026年7月10日 | 委員を入れ替えて調査を再開。名証が監理銘柄(審査中)に指定 |
| 2026年9月16日 | 第三者委員会の調査報告書を開示。名証が整理銘柄に指定し、上場廃止を決定 |
| 2026年10月16日(金) | 最終売買日(整理銘柄の期間の最終日) |
| 2026年10月17日(土) | 上場廃止 |
※ 名古屋証券取引所「監理銘柄(審査中)の指定」(2026年7月10日)、エスポア「当社株式の上場廃止の決定及び整理銘柄指定に関するお知らせ」(2026年9月16日)より。
エスポアとはどんな会社か
エスポアは、東京都渋谷区に本社を置く不動産会社です。不動産の企画開発・販売や、不動産のコーディネートとマネジメントを手がけてきました。名古屋証券取引所に上場しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社エスポア(証券コード:3260) |
| 本社 | 東京都渋谷区 |
| 設立 | 1972年 |
| 上場市場 | 名古屋証券取引所 ネクスト市場(2008年にセントレックスへ上場。2022年の市場区分の見直しでネクスト市場へ) |
| 事業 | 不動産の企画開発・販売、不動産のコーディネート・マネジメントなど |
| 代表者 | 代表取締役社長 鈴木魁太氏 |
| 発行済株式数 | 約574万株(2026年2月末の大株主の状況から計算) |
上場廃止の理由|監査法人が「意見を表明しない」とした
上場廃止の直接の理由は、監査法人が2026年2月期の決算について「意見を表明しない」としたことです。
監査法人は通常、決算が正しく作られているかについて「適正」などの意見を出します。「意見を表明しない(意見不表明)」は、判断の材料となる証拠が得られず、正しいかどうかを判断できなかったことを意味します。
エスポアの場合、問題になったのは2026年2月期の期末月に計上した取引3件でした。名証によると、監査法人はその取引が実際に行われたことを確かめるための証拠を求めましたが、提示されませんでした。この決算で債務超過かどうかが決まり、2期連続の債務超過なら上場廃止基準に触れるという大事な場面だったため、名証は監理銘柄に指定して確認を続けていました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 該当した規定 | 名古屋証券取引所 有価証券上場規程 第601条第8号 |
| 内容 | 監査報告書で「意見の表明をしない」などとされ、直ちに上場を廃止しなければ市場の秩序を維持することが困難であることが明らかだと取引所が認める場合 |
| 名証が問題視した点 | 上場を続けるかどうかを判断するための決算の信頼性が、長期間確保されない状態が続いたこと |
決算書が正しいかどうか分からない状態は、投資家が株の価値を判断する前提そのものが崩れていることを意味します。上場廃止の基準について詳しくは上場廃止とは?の記事で解説しています。
第三者委員会の調査で明らかになったこと
9月16日に開示された第三者委員会の調査結果について、報道によると次のような点が指摘されています。
| 指摘の内容 | 中身 |
|---|---|
| 実態のない売上の計上 | 不動産コンサルティングの売上1億1,000万円(税抜)について、取引の実在性が認められなかった |
| 利益の前倒し | 蓄電池に関連する取引で、2,000万円を前の年度から当期に前倒しして計上していた |
| 中心となった人物 | 「事業本部長」を名乗っていた人物は役員でなく雇用契約もなかった。偽名を使っており、会社は本人確認をしていなかった |
| 監査・調査への対応 | 監査法人による証拠の入手の妨害、第三者委員会への虚偽の説明や証拠の隠蔽があった |
| 決算への影響 | 修正後の2026年2月期は約1億868万円の債務超過 |
※ coki(公器)、不景気.com、中日BIZナビなどの報道より。
名証は発表で、重要な財務情報が長期間、不確かな状態に置かれたことを問題視しました。決算そのものの信頼性が損なわれたことが、上場廃止に直結したということです。
整理銘柄になってからの株価の動き
整理銘柄に指定された9月16日から、株価は大きく下がりました。整理銘柄の期間中も通常の株と同じように売買はできますが、上場廃止が決まっているため買う人が限られます。
| 日付 | 終値 | 前日比 | 出来高 |
|---|---|---|---|
| 9月8日 | 447円 | +0.00% | 9,300株 |
| 9月9日 | 446円 | −0.22% | 6,500株 |
| 9月10日 | 480円 | +7.62% | 3,300株 |
| 9月11日 | 470円 | −2.08% | 2,300株 |
| 9月14日 | 465円 | −1.06% | 7,100株 |
| 9月15日 | 471円 | +1.29% | 8,500株 |
| 9月16日 整理銘柄に指定 |
391円 | −16.99% | 400株 |
| 9月17日 | 311円 | −20.46% | 900株 |
| 9月18日 | 105円 (取引時間中) |
−66.24% | 1,671,600株 |
※ 株探の時系列データより。
9月16日と17日は、ともに前日から80円安いストップ安で、取引が成立したのはそれぞれ400株、900株だけでした。売りたい人に対して、買う人がほとんどいなかったことになります。
9月18日は取引時間中に105円(前日比−66.2%)まで下がり、出来高は1,671,600株に膨らみました。整理銘柄に指定される前の9月15日の471円から−77.7%、監理銘柄に指定される前日(5月27日)の759円からは−86.2%です。
なお、出来高が増えても、それが大株主の売りかどうかは株価の情報だけでは分かりません。同じ株が1日のうちに何度も売買されることもあるためです。
エスポアの大株主は誰か
2026年2月末時点の大株主は次のとおりです。上位3株主だけで発行済株式の約54.3%を持っています。
| 株主 | 持ち株数 | 割合 |
|---|---|---|
| ① ストーク株式会社 | 1,470,000株 | 25.60% |
| ② アークホールディングス株式会社 | 900,000株 | 15.67% |
| ③ 矢作和幸氏(元代表取締役社長) | 750,000株 | 13.06% |
| ④ 松井証券 | 272,900株 | 4.75% |
| ⑤ サムライカーボンズ株式会社 | 230,700株 | 4.02% |
| ⑥ JPIW合同会社 | 212,500株 | 3.70% |
| ⑦ 楠木哲也氏 | 205,500株 | 3.58% |
| ⑧ 自己株式 | 108,200株 | 1.88% |
| ⑨ 星山崇行氏 | 105,000株 | 1.83% |
| ⑩ 水嶋亨氏 | 31,200株 | 0.54% |
※ 株探(有価証券報告書にもとづく2026年2月末時点の大株主の状況)より。その後の売買は反映していません。
3位の矢作和幸氏は、以前の代表取締役社長で、2025年4月17日に取締役を辞任しています。1位のストーク株式会社と2位のアークホールディングスと会社の関係は、公表資料では確認できませんでした。
大株主の持ち株が多いということは、市場で自由に売買されている株が少ないということでもあります。これが、整理銘柄の期間中の値動きを荒くする一因になっています。大株主について詳しくは大株主とは?の記事で解説しています。
大株主が市場で売却しなかったらどうなる?
では、上位の大株主が整理銘柄の期間中に市場で売らなかった場合、何が起きるのでしょうか。ポイントは4つあります。
| 起きること | 中身 |
|---|---|
| ①株式は無くならない | 上場廃止は「取引所で売買できなくなる」ことで、大株主も個人株主も、上場廃止後も株主のまま |
| ②会社の支配関係はそのまま | 上位3株主の議決権の割合は約55.4%(自己株式を除いて計算)。株主総会の普通決議に必要な過半数を超える |
| ③整理銘柄期間の売りは個人中心になる | 市場に出てくる売りは主に個人株主などから。買い手も少ないため、少ない売買でも株価が大きく動きやすい |
| ④上場廃止後は売りにくくなる | 市場で売れなくなり、買い手を自分で探すしかなくなる。大株主も個人株主も同じ条件になる |
②について補足すると、上位3株主の議決権は約55.4%で、定款の変更や株式併合などに必要な「特別決議」の3分の2(約66.7%)には届いていません。大株主が売らずに持ち続けても、それだけで少数株主を締め出せる割合ではない、ということです。少数株主が株式併合で締め出される仕組みは株式併合とは?の記事で解説しています。
一方で③と④は、個人株主にとって厳しい現実です。大株主が売らない場合、市場の売り圧力は小さくなるように見えますが、買う人がいなければ株価は下がり、上場廃止後はさらに売る場所がなくなります。「大株主が売らないから大丈夫」とは言えません。
なお、大株主が実際に売ったかどうかは、5%を超える株を持つ株主が出す「変更報告書」で確認できます。持ち株の割合が1%以上変わると提出が必要で、金融庁のEDINETで誰でも見られます(変更報告書の記事)。
個人株主の選択肢は2つ
エスポアの株を持っている個人株主が取れる選択肢は、大きく分けて2つです。
| 選択肢 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| ①10月16日までに市場で売る | 売れれば現金化でき、損失もその時点で確定する。売却損はその年の他の上場株式の利益と相殺できる | 株価はすでに大きく下がっている。買い手が少なく、希望の値段で売れないことがある |
| ②上場廃止後も持ち続ける | 株主としての権利は残る。将来、会社の状況が変われば価値が見直される可能性もゼロではない | 市場で売れなくなる。修正後の決算は債務超過(約1億868万円)で、配当や清算時の分配は期待しにくい |
どちらを選ぶかは、それぞれの状況で変わります。ただ、上場廃止後に株を売るには、買ってくれる相手を自分で探して直接取引するしかありません。持ち続けることを選ぶ場合も、「後で売れる」とは考えないほうが現実的です。
上場廃止後も持ち続ける場合の注意点
上場廃止後の株は、証券保管振替機構(ほふり)での取り扱いが続くかどうかで、管理のされ方が変わります。
| ケース | 株の管理のされ方 |
|---|---|
| ほふりでの取り扱いが続く場合 | 証券会社の口座で管理が続く。特定口座の株は「特定管理口座」へ移り、一般口座の株はそのまま一般口座で管理される |
| ほふりでの取り扱いが終わる場合 | 株は証券会社の口座から払い出され、発行会社の株主名簿で管理されるようになる |
※ 大和証券・三菱UFJ eスマート証券の上場廃止銘柄の説明より。どちらになるかは会社の対応によります。
特定口座で持ち続ける場合に1番大事なのが「特定管理口座」です。上場廃止になった株を特定管理口座で管理していると、将来その株の価値がなくなったときに、取得価額を上場株式の譲渡損失とみなせる特例が使えます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 特例の名前 | 特定管理株式等が価値を失った場合の特例(租税特別措置法第37条の11の2) |
| 対象 | 特定口座から特定管理口座に移された、上場廃止になった株式 |
| 価値を失ったとみなされる事実 | 清算結了、破産手続開始の決定、更生計画・再生計画による全株式の無償消滅、特別危機管理開始の決定 |
| 効果 | 取得価額を上場株式等の譲渡損失とみなし、その年の他の上場株式等の利益から差し引ける。差し引ききれない分は繰り越せる |
| 手続き | 確定申告が必要 |
※ 国税庁 タックスアンサー No.1475(令和8年4月1日現在の法令による)。
注意したいのは、上場廃止になっただけでは「価値を失った」とはみなされないことです。会社が事業を続けている限り、この特例は使えません。
また、特定管理口座は事前に開設しておく必要があり、締め切りは証券会社ごとに決まっています。三菱UFJ eスマート証券は「最終売買日の前営業日までに開設が完了していないと適用を受けられない」と説明しています。エスポアの最終売買日は10月16日(金)なので、取引している証券会社の締め切りを早めに確認してください。一般口座で持っている株には、この特例は使えません。口座の違いは特定口座の記事と一般口座の記事で解説しています。
整理銘柄の期間中に売る場合
整理銘柄の期間中は、通常の株と同じように証券会社から売り注文を出せます。特定口座で売れば、売却損は同じ年の他の上場株式の利益と自動で相殺されます。
| 確認すること | 中身 |
|---|---|
| 最終売買日 | 10月16日(金)。この日を過ぎると市場では売れない |
| 注文の出し方 | 買い手が少ないため、指値だと約定しないことがある。成行注文は想定より安く約定することもある |
| 値幅制限 | 1日に動ける値幅には制限があり、ストップ安の日は売りが約定しないことがある |
| 税金 | 売却損は、その年の他の上場株式等の利益と相殺できる。確定申告すれば3年間の繰り越しも可能 |
虚偽の決算で損をした場合は
第三者委員会の調査で、実態のない売上の計上が指摘されています。一般論として、有価証券報告書などに重要な虚偽の記載があった場合、その株を買って損をした投資家は、金融商品取引法にもとづいて発行会社などに損害賠償を求められる制度があります。
ただし、実際に請求できるかどうかは、いつ株を買ったか、どの書類のどの記載が問題になるかなどによって変わります。また、会社は債務超過の状態にあり、請求が認められても回収できるかは別の問題です。検討する場合は弁護士に相談してください。
これから注目すること
| 時期 | 何があるか | 確認すること |
|---|---|---|
| 随時 | 大株主の変更報告書 | ストーク・アークホールディングスなど5%超の株主が売ったかどうか(EDINET) |
| 10月中旬まで | 証券会社の特定管理口座の締め切り | 持ち続けるなら、開設が間に合うか |
| 10月16日(金) | 最終売買日 | 市場で売れる最後の日 |
| 10月17日(土) | 上場廃止 | ほふりでの取り扱いが続くかどうか(証券会社からの案内) |
| 上場廃止後 | 会社からの開示・株主への通知 | 事業を続けるのか、株主総会の開催、債務超過の解消策など |
エスポアの上場廃止に関するよくある質問
まとめ
この記事のポイント
・理由は、監査法人が2026年2月期の決算について「意見を表明しない」とし、決算の信頼性が長く確認できなかったこと
・第三者委員会の調査では、実態のない売上1億1,000万円(税抜)などが指摘された
・株価は9月18日に105円。9月15日から−77.7%
・上位3株主の持ち株は約54.3%。大株主が売らなくても株は無くならず、会社の支配関係もそのまま
・ただし上場廃止後は市場で売れなくなる。個人株主は「10月16日までに売る」か「持ち続ける」かを選ぶ
・持ち続けるなら特定管理口座を早めに開設。上場廃止だけでは損失として扱えない
大株主が売るかどうかより、自分が「上場廃止後に売れない株を持ち続けてよいか」を考えることが大切です。最終売買日までの残りの日数は多くありません。取引している証券会社の案内も必ず確認してください。
あわせて読みたい
・上場廃止とは?2025年に経過措置が終わった新基準と株の行方
・エーバランス株価100倍から上場廃止までの全貌
・疑義注記とは?上場廃止になるのかと重要事象との違い
・大株主とは?信託口の正体と2026年の制度改正
・変更報告書とは?大株主の動きと2026年5月の制度改正
・株式併合とは?株価への影響と少数株主が消える仕組み
・特定口座とは?源泉徴収ありなしの選び方と報告書の見方
・一般口座とは?特定口座との違いと確定申告のやり方
・ストップ安とは?サーキットブレーカーとの違いと追証
