キャピタルゲインは「売って得た利益」、インカムゲインは「持っている間に受け取る収入」です。株でいえば、値上がり益がキャピタルゲイン、配当金がインカムゲインにあたります。

投資家として重要なのは、この2つが税金の扱いも、リスクの性質も違うという点です。同じ「利益」でも、確定申告での扱いが分かれます。

この記事では、それぞれの計算方法と、取得費がわからない株を売るときの落とし穴まで扱います。

この記事でわかること

・キャピタルゲインとインカムゲインの違い
・譲渡益の正しい計算式(手数料は引ける)
・取得費がわからないときの5%ルール
・インカムゲインの種類(配当・分配金・貸株金利)
・貸株金利が配当ではない理由
・税金の扱いの違い(配当控除・損益通算)
・どちらを狙うべきかの判断軸
・NISAでの扱い

※ 本記事は2026年8月時点の制度内容にもとづきます。税務の取扱いは個別事情により異なるため、実際の判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。

結論:2つの利益の違い

キャピタルゲイン(capital gain)/ インカムゲイン(income gain)

キャピタルゲイン
売って得る利益
1,000円で買って1,300円で売る
300円の利益

売らなければ確定しない
下がれば損失になる

インカムゲイン
持っている間に受け取る収入
1,000円の株を持ち続ける
→ 年30円の配当

売らなくても入る
マイナスにはならない

決定的な違い

・キャピタルゲインは「損失」にもなりうる(キャピタルロス)
・インカムゲインは受け取った時点でマイナスにはならない(ただし0になることはある)

損失側があるかどうかが、この2つの本質的な差です。

不動産で言えば、売却益がキャピタルゲイン、家賃収入がインカムゲインです。株式でもREITでも債券でも、この2つに分けて考えられます。

キャピタルゲインの計算

単純に「売値 − 買値」ではありません。手数料を引くことができます。

譲渡所得の計算式
譲渡所得 = 譲渡価額 −(取得費 + 譲渡費用)

譲渡価額:売ったときの金額
取得費:買ったときの金額+買付時の手数料
譲渡費用:売却時の手数料

項目 金額
売却金額(1,300円 × 100株) 130,000円
取得費(1,000円 × 100株 + 手数料) −100,000円
譲渡費用(売却手数料) −0円
譲渡所得 30,000円
税金(20.315%) −6,094円
手取り 23,906円

※ 主要ネット証券では国内株の売買手数料が0円になっているため、この例では手数料を0円としています。

同じ銘柄を複数回買った場合

取得費は「総平均法に準ずる方法」で計算します。買うたびに平均取得単価が計算し直される方式です。

1,000円で100株、1,400円で100株買った場合
→ 平均取得単価は1,200円(200株)
「安く買ったほうから売る」といった選択はできません。

取得費がわからないときの5%ルール

親から相続した株、電子化前から持っていた株など、いくらで買ったか分からないケースがあります。

🔴 概算取得費(売却価額の5%)

取得費が不明な場合、売却価額の5%を取得費とみなして計算することが認められています。

100万円で売却 → 取得費は5万円とみなされる
→ 譲渡所得は95万円(実際にはもっと高く買っていたとしても)
→ 税額は約19万3千円

実際の取得費が50万円だったなら、本来の税額は約10万円です。取得費が分からないだけで、税負担が約9万円増えることになります。

取得費を調べる方法 確認できるもの
証券会社の取引報告書・取引残高報告書 約定日と単価。過去分の再発行に応じる会社もある
被相続人の資料(相続の場合) 相続では被相続人の取得費を引き継ぎます
株式異動証明書 信託銀行(株主名簿管理人)が発行。取得時期がわかる
過去の株価データ 取得時期がわかれば、当時の終値から合理的に算定できる場合がある

古い株を売る前に、取得費を調べる価値は十分にあります。とくに株式分割株式併合を経ている銘柄は、当時の単価をそのまま使えないため確認が必要です。

※ 概算取得費の適用可否や算定方法は個別の事情によります。判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。

インカムゲインの種類

株式投資で受け取れるインカムゲインは、配当金だけではありません。

種類 内容 税務上の区分
配当金 株式会社が利益から分配するお金 配当所得
投資信託の分配金 運用益から支払われる(元本の払戻し部分を含むことがある) 配当所得
REITの分配金 賃料収入などから分配 配当所得(配当控除は使えない
債券の利子 額面に対して決まった率で支払われる 利子所得
貸株金利 保有株を証券会社に貸して受け取る 雑所得
株主優待 自社製品・金券など 原則として雑所得

右端の列に注目してください。同じ「持っているだけで入る収入」でも、税務上の扱いが3種類に分かれます。これが確定申告での差になります。

貸株金利は配当ではない

ここは見落とされやすく、かつ実害が出る論点です。

🔴 貸株サービスの3つの注意点

貸株は、保有している株を証券会社に貸して金利を受け取るサービスです。

貸株金利は雑所得です。株式の譲渡損と損益通算できません
② 貸している間、株主名簿上の株主は証券会社になります
③ そのため権利確定日をまたぐと、配当ではなく「配当金相当額」を受け取ることになります

項目 通常の配当金 配当金相当額(貸株中)
所得区分 配当所得 雑所得
配当控除 使える 使えない
譲渡損との通算 できる できない
NISAでの非課税 非課税 NISA口座は貸株の対象外
株主優待 受け取れる 受け取れないことがある

貸株金利は年0.1%程度でも、配当利回りが3%の銘柄なら配当のほうが桁違いに大きくなります。金利のために配当所得としての有利さを失うのは合理的ではありません。

対策

多くの証券会社が「株主優待・配当金自動取得(優先)」の設定を用意しています。
これをオンにすると、権利確定日の前に自動的に貸株が返却され、通常の配当・優待を受け取れます。
貸株を使うなら、この設定を必ず確認してください。

税金の扱いの違い

項目 キャピタルゲイン
(譲渡所得)
インカムゲイン
(上場株式の配当)
税率 20.315% 20.315%(同じ)
課税のタイミング 売却したとき(含み益には課税されない) 受け取るたび
課税方式 申告分離課税 申告不要/申告分離/総合課税から選べる
配当控除 総合課税を選べば使える
損失の扱い 損益通算・3年間の繰越控除ができる 損失は発生しない
コントロール 売る時期を自分で選べる 会社が決める時期に自動的に発生する
キャピタルゲインだけが持つ利点

課税を先送りできるということです。
含み益がいくらあっても、売らなければ課税されません。
その間、税金を払わずに資産を運用し続けられます。

一方、配当は受け取るたびに課税されるため、再投資しても税引後の金額からのスタートになります。
長期の複利という観点では、この差は無視できません。

詳しい課税方式の選び方は証券口座の種類で解説しています。

※ 有利不利は個別の所得状況によって変わります。判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。

どちらを狙うべきか

比較項目 キャピタルゲイン重視 インカムゲイン重視
選ぶ銘柄 成長株。利益を再投資して事業を拡大する会社 高配当株ディフェンシブ銘柄
リターンの上限 なし(数倍になることもある) 配当利回りの範囲に収まりやすい
下振れ 大きい(半値になることもある) 株価は下がりうるが、配当は入り続ける
必要な判断 売る判断(利確・損切り 減配しないかの確認
手間 値動きを見る必要がある 少ない
税の先送り できる できない(受取のたびに課税)

どちらか一方を選ぶ必要はありません。実際には、成長株でキャピタルゲインを狙いつつ、高配当株でインカムを積み上げるという組み合わせが現実的です。

インカムゲインの落とし穴

「配当が入るから株価が下がっても平気」という考え方は危険です。
配当利回り3%の銘柄が30%下落すれば、10年分の配当が消えます。

また業績が悪化すれば減配・無配になります。配当は約束されたものではありません。

※ 本記事は制度と指標の説明であり、特定の銘柄や投資手法を勧めるものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

損失が出たときの扱い

キャピタルゲインにはマイナス側(キャピタルロス)があります。ここに税務上の救済策があります。

1

損益通算
同じ年の利益と相殺する

A株で50万円の利益、B株で30万円の損失なら、課税されるのは差額の20万円です。配当所得とも通算できます(申告分離課税を選んだ場合)。

2

繰越控除
3年間持ち越せる

その年に相殺しきれなかった損失は、翌年以降3年間の利益と相殺できます。損失が出た年に確定申告をしていないと使えません。

3

複数社の通算には申告が必要

A証券の利益とB証券の損失は自動では相殺されません。確定申告をすれば、払いすぎた税金が還付されます。

🔴 NISAの損失は救済されない

NISA口座で出た損失は、税務上「なかったもの」として扱われます。
損益通算も繰越控除もできません。

逆にキャピタルゲインもインカムゲインも非課税になるため、値上がりする見込みが高いものほどNISAに向くという整理になります。

キャピタルゲイン・インカムゲインに関するよくある質問

含み益にも税金がかかりますか?
かかりません。キャピタルゲインは売却して初めて確定します。売らずに持ち続けている間は課税されないため、その分の資金を運用し続けられます。
取得費がわからない株はどうすればいいですか?
売却価額の5%を取得費とみなす方法(概算取得費)が認められていますが、実際の取得費より不利になることが多くなります。証券会社の過去の取引報告書、株式異動証明書、相続なら被相続人の資料などから調べる価値があります。
同じ銘柄を何度も買った場合、どの取得価額が使われますか?
総平均法に準ずる方法で計算した平均取得単価が使われます。買うたびに平均が計算し直されるため、「安く買った分から売る」といった選択はできません。
貸株金利は配当と同じ扱いですか?
違います。貸株金利は雑所得で、株式の譲渡損と損益通算できず配当控除も使えません。また貸株中に権利確定日をまたぐと、配当ではなく「配当金相当額」となり同じく雑所得になります。証券会社の自動返却設定を確認してください。
株主優待はインカムゲインですか?
保有しているだけで受け取れるという意味ではインカムゲインにあたります。ただし税務上は配当所得ではなく、原則として雑所得として扱われます。非課税ではない点に注意してください。
配当と値上がり益はどちらが有利ですか?
税率はどちらも20.315%で同じですが、キャピタルゲインは売るまで課税されないという利点があります。一方、配当は受け取るたびに課税されるため、再投資しても税引後からのスタートになります。長期の複利ではこの差が効いてきます。
損失が出た年も確定申告したほうがいいですか?
繰越控除を使いたい場合は必要です。申告しておけば翌年以降3年間の利益と相殺できます。損失が出た年に申告していないとこの権利は使えません。
REITの分配金はインカムゲインですか?
インカムゲインにあたり、税務上は配当所得です。ただしJ-REITの分配金には配当控除が使えません。投資法人の段階で法人税がほぼかかっておらず、二重課税が生じていないためです。

まとめ

キャピタルゲインは売って得る利益、インカムゲインは持っている間に受け取る収入です。税率は同じでも、課税のタイミングと損失の扱いが違います。

この記事のまとめ

・キャピタルゲインは損失にもなる。インカムゲインは受け取った時点でマイナスにならない
・譲渡所得=譲渡価額−(取得費+譲渡費用)。手数料は引ける
・取得費が不明だと売却価額の5%とみなされ、税負担が大きく増える
・同一銘柄は総平均法に準ずる方法で平均単価を計算する
・貸株金利と配当金相当額は雑所得。損益通算も配当控除も使えない
・キャピタルゲインは売るまで課税されない(税の先送りができる)
・損失は損益通算と3年間の繰越控除で救済されるが、申告が必要
・NISAの損失は損益通算も繰越控除もできない

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