板とは?見方と成行注文でいくら損するかを図解

板とは、いま市場に出ている売り注文と買い注文を、価格ごとに数量を並べて表示したものです。板情報や気配値ともいいます。

チャートが「すでに成立した取引の記録」であるのに対し、板は「これから成立するかもしれない注文の一覧」です。過去ではなく現在を見るための情報になります。

板を読めるようになると、いくらで注文すればすぐ約定するのか、成行注文を出したときどこまで価格が動くのかを、注文を出す前に見積もれるようになります。

この記事でわかること

・板に並ぶ3つの数字が、それぞれ何を意味しているか
成行注文がいくらで約定するかを板から計算する方法
・OVERとUNDERを見落とすと需給を読み違える理由
板が薄い銘柄で成行注文を出したときの損失額(試算)
・寄付前の板が場中と違う見方になる理由
・板では絶対に分からないこと

板とは

項目 内容
読み方 いた
別の呼び方 板情報、気配値、気配情報、板気配
表示される内容 価格ごとの売り注文数量と買い注文数量
表示されるもの 原則として指値注文のみ(寄付前は成行注文も表示)
語源 かつて取引所で注文を書き出していた板(ボード)に由来する
見られる場所 証券会社の取引ツール・アプリ(口座があれば無料)

ここで押さえておきたいのが、板に並んでいるのは「まだ成立していない注文」だという点です。表示されている注文は、出した人がいつでも取り消せます。板は確定した事実ではなく、その瞬間の意思表示の集まりになります。

実際に約定した取引を時系列で並べたものは歩み値と呼ばれ、板とは別の情報になります。板は予定、歩み値は実績と整理すると分かりやすくなります。

板に並ぶ3つの数字

板は3つの列でできています。楽天証券のアプリ「iSPEED」の画面で、それぞれの位置を確認します。

売り注文の数量(左側)

板の左側に並ぶ売り注文の数量を示した図

板の左側に並んでいるのが売り注文の数量です。取引ツールによって「売数量」「売気配株数」などと表示されます。その価格で売りたい人が出している株数の合計を表しています。

買い注文の数量(右側)

板の右側に並ぶ買い注文の数量を示した図

板の右側に並んでいるのが買い注文の数量です。「買数量」「買気配株数」などと表示されます。その価格で買いたい人が出している株数の合計になります。

注文価格(中央)

板の中央に並ぶ注文価格を示した図

中央に並んでいるのが価格です。上にいくほど高く、下にいくほど安くなります。価格の刻み幅は呼値の単位と呼ばれ、株価の水準によって変わります。

株価 呼値の単位(通常銘柄)
3,000円以下 1円
3,000円超〜5,000円以下 5円
5,000円超〜30,000円以下 10円
30,000円超〜50,000円以下 50円
50,000円超〜300,000円以下 100円

※ TOPIX100構成銘柄には、より細かい呼値の単位が適用されます

板の中央には、売り注文と買い注文が接する境目があります。売り注文の中で1番安い価格を最良売気配、買い注文の中で1番高い価格を最良買気配といい、この2つの差をスプレッドと呼びます。

板を見ればいくらで約定するかがわかる

2,077円に500株の売り注文が並んでいる板の例

板が読めると、注文を出す前に約定価格を見積もれます。上の板では2,077円に500株の売り注文が入っているため、2,077円で500株以内の指値買い注文、または500株以内の成行買い注文なら、その場で成立します。

ここで重要になるのが、その価格の注文数量を超えて買おうとすると、次に安い売り注文を食べにいくという点です。次の例で確認します。

売数量 価格 買数量
1,200 2,080
800 2,079
300 2,078
500 2,077
2,076 400
2,075 900

この板で2,000株の成行買い注文を出すと、次のように約定していきます。

約定の順番
2,077円 × 500株 = 1,038,500円
2,078円 × 300株 = 623,400円
2,079円 × 800株 = 1,663,200円
2,080円 × 400株 = 832,000円
合計 2,000株 = 4,157,100円(平均 2,078.55円)

1番安い2,077円で買えるのは最初の500株だけで、残りは順に高い価格で約定します。結果として平均取得単価は2,078.55円となり、最良気配より1.55円高くなりました。この差がスリッページと呼ばれるコストです。

OVERとUNDERを見落とすと需給を読み違える

板の上部のOVERと下部のUNDERの表示位置を示した図

板の最上部にあるOVERは表示範囲より上の価格に出ている売り注文の合計、最下部のUNDERは表示範囲より下の価格に出ている買い注文の合計です。

画面に見えている数量だけを比べて「買い注文のほうが多いから上がりそうだ」と判断すると、読み違えることがあります。OVERが極端に大きい場合、上値には見えていない売り注文が積み上がっていることになります。

OVER が大きい
上値に売り注文が控えている。上昇するには、その厚みを買いで消化する必要がある。
UNDER が大きい
下値に買い注文が控えている。下げても拾われやすい状態を示す。

ただしOVERとUNDERにはどの価格帯にどれだけ出ているかの内訳が表示されません。2,100円に集中しているのか、3,000円まで薄く広がっているのかは区別できない点に注意が必要です。

寄付前の板は場中と見方が違う

寄付前の板の上部に成行注文の数量が表示されている図

取引時間中の板には指値注文しか表示されませんが、寄付前だけは成行注文の数量も板の上部に表示されます。成行注文は価格を指定しない注文のため、価格の列に並べられないためです。

朝の板を見るときは、この成行注文の数量が需給を大きく左右します。売り成行と買い成行の差が大きいほど、始値は前日終値から離れやすくなります。

時間帯 板に表示されるもの 約定の仕組み
8:00〜9:00(寄付前) 指値+成行の合計数量 板寄せ方式で始値を1本決める
9:00〜11:30/12:30〜15:30 指値のみ ザラバ方式で価格が合うたびに約定
引け前 指値+成行の合計数量 板寄せ方式で終値を1本決める

※ 東証の取引時間は2024年11月5日から15時30分まで延長されています

板寄せは、売りと買いの数量が最も多く成立する1つの価格を選ぶ方式です。寄り付きと大引けはこの方式で価格が決まるため、直前まで板の形が大きく変わることがあります。

板が厚い・薄いをどう判断するか

板の状態を表す言葉に「厚い」「薄い」があります。判断の基準は注文数量です。

板が薄い状態

各価格に100株や200株しか並んでいない板が薄い状態の図

各価格の注文が100株や200株しかなく、価格の列に空欄も見られます。少ない注文で株価が大きく動く状態です。

板が厚い状態

各価格に数千株の注文が並んでいる板が厚い状態の図

各価格に多くの注文が並んでいます。大きな注文を出しても価格が動きにくく、想定した価格で売買しやすくなります。

板が薄い銘柄で成行注文を出すとどうなるか

板の厚さがコストに直結することを、同じ1,000株の買い注文で比べます。

条件 厚い板 薄い板
最良売気配 2,000円 2,000円
各価格の売数量 5,000株ずつ 100株ずつ
1,000株の平均約定単価 2,000円 2,004.5円
最良気配との差 0円 4.5円(0.225%)
1,000株での金額差 4,500円の割高

※ 呼値1円・各価格に均等に注文が並んでいると仮定した試算

薄い板で1,000株を成行で買うと、この例では4,500円ぶん高く買うことになります。国内株の売買手数料が0円の証券会社が増えた現在、こうしたスリッページのほうが実質的なコストとして大きくなる場面があります。

さらに売るときも同じことが起こります。薄い板の銘柄は、買うときと売るときの両方でコストを払うと考えておく必要があります。

板が薄い銘柄で気をつけること

・成行注文を避け、指値注文を基本にする
・一度に全数量を出さず、分けて出す
売りたいときに買い手がいない可能性を前提に株数を決める
出来高が細い銘柄は、板も薄いことが多い

特別気配・連続約定気配が出たときの板

注文が一方向に偏ると、取引所は価格が飛ぶのを防ぐために気配を表示して約定を待たせます。板の表示が通常と変わるため、仕組みを知らないと戸惑います。

種類 出る場面 更新の間隔
特別気配 値幅を超えて約定しそうなとき おおむね3分ごとに更新
連続約定気配 短時間に同方向の約定が続くとき およそ1分

どちらも「注文が一方に偏りすぎている」ことを板が知らせている状態です。この間は約定が止まるため、板の数量だけが増減していきます。

板だけでは分からないこと

板は現在の注文状況を映しますが、映さないものもあります。ここを理解しておかないと、板を過大評価することになります。

分からないこと 理由
誰が出した注文か 板は数量の合計だけを表示する。1人か100人かも分からない
その注文が本気かどうか 指値注文はいつでも取り消せる
これから出てくる注文 成行注文は場中の板に表示されない
取引所の外の注文 PTSやダークプールの注文は板に出ない

特に注意したいのが2つ目です。約定させる意思がないのに大量の注文を出し、板を厚く見せて他の投資家の判断を誘導する行為は見せ玉と呼ばれ、金融商品取引法が禁じる相場操縦にあたります。

大きな注文が突然現れて、株価が近づくと消えるという動きが見られる場合、その注文を前提に判断するのは危険です。板の厚みは、あくまで取り消される可能性がある情報として扱う必要があります。

板を使った注文の出し方

板から読み取れる情報を、実際の注文に落とし込む方法を整理します。

① すぐに約定させたいとき
最良売気配(買いの場合)の数量を確認し、その数量以内で指値注文を出します。成行注文と同じ速さで約定しながら、想定外の価格で約定するリスクを避けられます。
② 有利な価格で待ちたいとき
最良買気配より下に指値を置きます。約定しない可能性を受け入れる代わりに、スプレッドぶん有利な価格を狙えます。
③ 大きな数量を売買したいとき
一度に出さず分割します。板の数量を超える注文は、必ず不利な価格まで食い込みます。

板に関するよくある質問

板はどこで見られますか
証券会社の取引ツールやスマートフォンアプリで見られます。口座を持っていれば無料で利用でき、多くの証券会社がリアルタイム表示に対応しています。証券会社によって表示できる価格の段数(5段・10段・全気配など)が異なります。
板に表示されていない注文はありますか
あります。場中の成行注文は板に表示されません。またPTS(私設取引システム)に出ている注文や、機関投資家が使うダークプールの注文も取引所の板には現れません。板は取引所に出ている指値注文の一覧であって、市場全体のすべての注文ではありません。
買い注文が多ければ株価は上がりますか
必ずしもそうではありません。板に並ぶ指値注文はいつでも取り消せますし、OVERやUNDERに見えていない注文が控えている場合もあります。また株価を動かすのは板に並んだ指値注文ではなく、それを消していく成行注文のほうです。板の厚みは「動きにくさ」を示すもので、方向を示すものではありません。
板の色は何を意味していますか
証券会社ごとに割り当てが異なります。一般的には売り注文を青系、買い注文を赤系で表示することが多いものの、逆の配色を採用しているツールもあります。使っているツールの凡例を最初に確認しておくことが必要です。
板が空欄になっている価格があるのはなぜですか
その価格に指値注文が1件も出ていないためです。板が薄い銘柄でよく見られます。空欄をまたいで成行注文を出すと、価格が大きく飛んで約定することになります。
板読みだけで売買できますか
板の情報は数秒単位で変化するため、板だけを根拠にした売買は非常に短い時間軸の取引になります。近年はアルゴリズム取引が板の大部分を占めており、人間が目で追う速度では対応が難しい場面が増えています。歩み値出来高と組み合わせて判断材料のひとつとして使うほうが現実的です。
大きな注文が急に消えるのはなぜですか
注文が取り消されたか、約定したかのどちらかです。株価が近づくたびに消えて、離れると再び現れる動きが繰り返される場合、約定させる意思のない見せ玉の可能性があります。見せ玉は金融商品取引法が禁じる相場操縦にあたる行為です。
寄付前の板から始値を予想できますか
ある程度は見積もれます。寄付前は成行注文の数量が表示されるため、売り買いどちらに偏っているかが分かります。ただし寄り付き直前まで注文の出し入れが続くため、8時台の板と9時直前の板では形が変わることが珍しくありません。予想の材料であって確定情報ではない点に注意が必要です。

まとめ

この記事のポイント

・板は価格ごとの売り注文と買い注文の数量を並べたもの
・並んでいるのはまだ成立していない指値注文で、いつでも取り消せる
注文数量を超えて成行で買うと、順に高い価格まで食い込む
・薄い板では1,000株の成行注文で数千円のコストが生じることがある
・OVERとUNDERを見ないと需給を読み違える
・寄付前だけは成行注文の数量も表示される
・板は「動きにくさ」を示すもので、方向を保証するものではない

板は初心者には数字の羅列に見えますが、読めるようになると「いくらで、どれだけ売買できるか」が注文を出す前に分かるようになります。手数料が0円でもスリッページというコストは残るため、板を確認する習慣は実際の損益に効いてきます。

まずは自分が売買している銘柄の板を、寄付前と場中で見比べるところから始めると、数字の意味が実感として掴めるはずです。

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