
特定口座とは、証券会社が 1 年間の売買損益を計算し、年間取引報告書を作ってくれる口座区分で、「源泉徴収あり」を選べば納税まで代行されます。米国株は買値と売値を円に換算して損益を出す必要があり、自分で計算する一般口座では手間が非常に大きいため、米国株を買う人のほぼ全員が特定口座(源泉徴収あり)を選ぶのが実態です。この記事では、3 つの口座区分の違い、為替を含めた損益の計算方法、配当の扱い、年間取引報告書の見方、日本株との損益通算、区分の変更方法をまとめます。
- 源泉徴収あり=損益計算も納税も証券会社が代行、確定申告は原則不要。源泉徴収なし=計算だけ代行、申告は自分で。一般口座=すべて自分で
- 米国株の損益は約定日の為替レートで円換算して計算する。ドル建てで損でも円安なら課税されることがある
- 同じ証券会社の特定口座なら日本株と米国株の損益は自動で通算される。別の会社や翌年への繰越は確定申告で
3 つの口座区分の違い
| 特定口座(源泉徴収あり) | 特定口座(源泉徴収なし) | 一般口座 | |
|---|---|---|---|
| 損益の計算 | 証券会社 | 証券会社 | 自分 |
| 納税 | 証券会社が天引き | 自分で確定申告 | 自分で確定申告 |
| 年間取引報告書 | あり | あり | なし |
| 確定申告 | 原則不要 | 利益 20 万円超で必要(給与所得者) | 同左 |
| 配当の扱い | 口座内で受け取り、売却損と自動通算 | 申告で通算 | 申告で通算 |
| 向いている人 | ほぼ全員 | 利益が少額で申告不要の範囲に収めたい人 | おすすめしない |
源泉徴収ありを選ぶ最大の利点は、米国株の面倒な円換算を証券会社が全部やってくれることです。源泉徴収なしは、年間の利益が 20 万円以下なら申告不要(給与所得者の場合。住民税の申告は別途必要)という利点がありますが、利益が出たら結局申告するので、迷ったら源泉徴収ありで問題ありません。
口座区分は証券会社の口座設定で選び、その年の最初の取引の前なら変更できます。一度でも売買や配当の受け取りがあると、その年は変更できません。
米国株の損益計算:為替をどう換算するか
米国株の譲渡損益は、円で計算します。
| 項目 | 計算 |
|---|---|
| 取得価額(円) | 買付時のドル価格 × 買付時の為替レート + 手数料 |
| 売却価額(円) | 売却時のドル価格 × 売却時の為替レート − 手数料 |
| 譲渡損益 | 売却価額 − 取得価額 |
換算に使う為替レートは、円貨決済なら実際に適用された為替レート、外貨決済なら証券会社が定める約定日のレート(TTM など)です。ドル建てで 5% 下がっていても、その間に円が 10% 安くなっていれば、円ベースでは約 5% の利益として課税されます。逆にドル建てで利益が出ていても円高で損失になることもあります。
例:1 株 100 ドルを 1 ドル 140 円で 10 株買い(取得 14 万円)、1 株 95 ドルを 1 ドル 155 円で売却(売却 14 万 7,250 円)→ ドル建てでは 50 ドルの損ですが、円ベースでは 7,250 円の利益で、20.315% の税金がかかります。特定口座ならこの計算は自動で、取引ごとに円換算の損益が画面に表示されます。
同じ銘柄を何回かに分けて買った場合は、総平均法に準ずる方法で取得単価を計算します(証券会社が自動で行います)。
配当の扱いと、年間取引報告書の見方
特定口座(源泉徴収あり)で「配当等の受け入れ」を選択していると、米国株の配当は口座内で受け取り、その年の売却損と自動で相殺されます。売却損が出ている年は、配当にかかった日本の税金(20.315%)が年末に還付されます。米国の 10% は相殺の対象外で、取り戻すには外国税額控除の確定申告が必要です。
年間取引報告書は、翌年 1 月に証券会社から交付(電子交付が主流)され、次の項目が載っています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 譲渡の対価の額 | 1 年間の売却代金の合計(円) |
| 取得費及び譲渡に要した費用 | 取得価額と手数料の合計(円) |
| 差引金額(譲渡所得等) | 1 年間の譲渡損益 |
| 配当等の額 | 受け取った配当の合計(円換算) |
| 外国所得税の額 | 米国で源泉徴収された 10% の合計。外国税額控除の申告に使う |
| 源泉徴収税額(所得税・住民税) | 日本で天引きされた税額 |
外国税額控除を申告するときは、この報告書の「外国所得税の額」をそのまま使えます。銘柄ごとの明細を集計する必要はありません。手続きの詳細は 外国税額控除の解説 をご覧ください。
日本株との損益通算・繰越控除と、NISA との使い分け
特定口座では、同じ証券会社の中で日本株・米国株・投資信託・ETF の売却損益と配当が自動で通算されます。米国株で損をした年に日本株で利益が出ていれば、その分の税金は減ります。
| やりたいこと | 手続き |
|---|---|
| 同じ証券会社の日本株と米国株の通算 | 不要(自動) |
| 別の証券会社の口座との通算 | 確定申告(両社の年間取引報告書を使う) |
| 損失を翌年以降に繰り越す(3 年間) | 確定申告。損失の年から毎年申告を続ける |
| NISA 口座の損失を通算する | できない(NISA の損失は税務上なかったことになる) |
NISA では利益が非課税になる代わりに、損失も通算・繰越できません。値動きの大きい個別株を NISA で持って損失が出ると、その損失は他の利益と相殺できないので、NISA は長期で持つ指数連動の ETF や投資信託、配当目的の大型株に向いています。値動きの大きい株を短期で売買するなら特定口座のほうが税務上は柔軟です。
口座の全体像は 外国株式取引口座の解説、税率と申告の要否は 米国株の税金の全体像 にまとめています。
特定口座と米国株に関するよくある質問
特定口座(源泉徴収あり)なら本当に確定申告しなくていいですか?
一般口座で買ってしまった米国株を特定口座に移せますか?
源泉徴収ありで税金を引かれすぎることはありますか?
米国株の年間取引報告書は英語ですか?
関連する用語
- 特定口座
特定口座とは、証券会社が1年間の売買損益を計算し、年間取引報告書を作成してくれる口座のことです。 - 一般口座
一般口座とは、1年間の売買損益を自分で計算し、確定申告する必要がある証券口座のことです。 - NISA
NISAとは、投資で得た利益に税金がかからなくなる制度です。 - 外国税額控除
外国税額控除とは、米国株の配当に米国で課された 10% の税金を、日本の所得税・住民税から差し引 - 円貨決済と外貨決済
円貨決済とは、米国株を円のまま注文し、証券会社が約定時に自動で両替する決済方法です。外貨決済は先 - キャピタルゲイン
キャピタルゲインとは、簡単にいうと『売買差益』のことです。 - 米国株の税金(全体像)
- 外国株式取引口座(米国株を買うための口座)
あわせて使うツール・記事
執筆:佐々木優也(Pacific Stock 編集長・専業投資家歴20年)
口座区分の制度は租税特別措置法第 37 条の 11 の 3 ほか、円換算の方法は所得税基本通達および国税庁の案内、年間取引報告書の様式は国税庁の定める様式、証券会社の運用は SBI 証券・楽天証券・マネックス証券の公式案内(2026 年 9 月時点)にもとづきます。計算例は説明用です。 本記事は情報提供を目的とし、特定の銘柄・証券会社の売買や口座開設を推奨するものではありません。当サイトは証券会社の口座開設等によりアフィリエイト報酬を得る場合がありますが、比較の順位や数値には影響しません。最終更新 2026-09-18。

