一般口座とは、1年間の売買損益を自分で計算し、確定申告する必要がある証券口座のことです。

証券会社の口座開設画面で「特定口座(源泉徴収あり)」「特定口座(源泉徴収なし)」「一般口座」の3択を前にして、手が止まった人は多いと思います。

結論から言うと、上場株式をふつうに売買するだけなら、一般口座を選ぶ理由はほとんどありません。ただし、一般口座でなければ扱えないものが確かに存在します。この記事では、その線引きと、実際に一般口座を使うことになった場合の手続きを解説します。

この記事でわかること

・一般口座と特定口座の決定的な違い
・一般口座でなければ扱えない4つのケース
・自分で損益を計算するときの計算式
・確定申告の手順と必要な書類
・令和5年分から変わった住民税の扱い

一般口座とは

一般口座とは、証券会社が損益計算をしてくれない口座です。

株式の売却益には税金がかかりますが、その税額を計算するには「いくらで買って、いくらで売ったか」を1件ずつ集計する必要があります。この集計作業を投資家自身が行うのが一般口座、証券会社が代行してくれるのが特定口座です。

一般口座
自分で計算
取得価額・売却価額・手数料を
すべて自分で集計する
確定申告が必要
特定口座
証券会社が計算
年間取引報告書が
自動で作成される
源泉徴収ありなら申告不要

違いは「誰が損益を計算するか」だけ。税率も税金の中身も同じ

税率はどちらも同じで、20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)です。復興特別所得税は2037年分まで課されます。一般口座を選んだからといって税金が高くなることも安くなることもありません。

一般口座と特定口座の違い

項目 一般口座 特定口座
(源泉徴収なし)
特定口座
(源泉徴収あり)
損益計算 自分 証券会社 証券会社
年間取引報告書 作成されない 作成される 作成される
確定申告 原則必要 原則必要 不要にできる
税率 20.315% 20.315% 20.315%
扶養・社会保険料への影響 申告すれば出る 申告すれば出る 申告しなければ出ない

4区分の全体像は証券口座の種類、特定口座そのものの詳細は特定口座とはで解説しています。

それでも一般口座が必要になる4つの場面

「特定口座のほうが便利なら、なぜ一般口座があるのか」——理由は、特定口座に入れられない資産が実際に存在するからです。

① 未公開株・非上場株式

上場していない会社の株式は特定口座では扱えません。一般口座で管理し、売却したときは自分で申告します。

② ストックオプション・株式報酬で受け取った株

勤務先から権利行使や譲渡制限付株式で取得した株は、受け取り方によって一般口座で管理されることがあります。取得時に給与所得として課税されるケースもあり、扱いが複雑です。

③ 相続・贈与で受け取った株

亡くなった家族の口座から移管した株などが該当します。受け入れ方によっては一般口座に入ることがあります。取得価額は原則として被相続人が買ったときの価額を引き継ぎます。

④ 昔から自宅で保管していた株券(タンス株)

株券は2009年に電子化されており、現在は証券保管振替機構の「特別口座」等で管理されています。これを証券会社へ移す場合、一般口座での受け入れになるのが通常です。

逆に言えば、ネット証券で上場株式を普通に買うだけなら、一般口座を選ぶ場面はまずありません。

一般口座の損益はこう計算する

計算式そのものはシンプルです。

譲渡所得の計算式
売却価額 -(取得価額 + 取得時の手数料 + 売却時の手数料)
= 譲渡所得(この20.315%が税金)

難しいのは式ではなく、取得価額を正しく出すことです。同じ銘柄を何度も買い増している場合は、総平均法に準ずる方法で1株あたりの平均取得単価を計算し直す必要があります。

取引 株数 単価 取得価額
1回目の買い 100株 1,000円 100,000円
2回目の買い 100株 1,400円 140,000円
平均取得単価 200株 1,200円 240,000円

この状態で100株を1,500円で売れば、譲渡所得は(1,500-1,200)×100株=30,000円(手数料考慮前)となります。「最初に買った100株を売った」という自己申告は認められません。

取得価額がわからないときの扱い

相続した株やタンス株では、いくらで買ったのかが分からないことがあります。この場合は、売却価額の5%を取得費とみなす方法が認められています(いわゆる5%ルール)。

5%ルールは不利になることが多い

100万円で売った場合、取得費は5万円とみなされ、95万円が課税対象になります。実際の取得価額の証拠(取引報告書、通帳の記録、被相続人の資料など)が見つかれば、そちらを使ったほうが税額は下がります。まず探してください。

取得費の考え方はキャピタルゲインとインカムゲインの違いで詳しく解説しています。

一般口座のデメリット

正直に言えば、一般口座には投資家にとっての積極的なメリットがありません。デメリットのほうを正確に把握しておきましょう。

デメリット 具体的に何が起きるか
手間が大きい 取引ごとに取得価額と手数料を記録し、年間で集計する必要がある。取引回数が多いほど負担が増える
計算ミスのリスク 申告漏れや計算誤りがあれば、加算税・延滞税の対象になる
扶養から外れる可能性 申告した利益は合計所得金額に含まれる。扶養の判定や配偶者控除、国民健康保険料に影響することがある
証明書類を長期保存する必要 10年、20年後に売却する可能性があるため、購入時の記録を失うと5%ルールで不利になる
「一般口座なら申告しなくてもバレない」は誤り

証券会社は、一般口座での売却についても税務署へ「支払調書」を提出しています。取引内容は把握されていると考えてください。無申告加算税や延滞税は本税より重くなることがあります。

一般口座の確定申告の手順

1

取引記録を集める
年末〜1月

証券会社の取引報告書、取引残高報告書をダウンロードします。多くのネット証券では過去分もサイト内で取得できます。

2

株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書を作る
1月〜2月

銘柄ごとに、売却価額・取得価額・手数料を記入します。国税庁の確定申告書等作成コーナーで入力すれば自動計算されます。

3

他の口座の損益とあわせる
同時期

特定口座の年間取引報告書がある場合は、一般口座の損益と通算できます。片方が損失、片方が利益なら、申告することで税金が戻る可能性があります。

4

申告・納付
原則2月16日〜3月15日

e-Taxまたは書面で提出します。納付期限も同じ日です。

※ 申告期間は年により変動します。具体的な税務処理は税理士または所轄の税務署にご確認ください。

損失が出た年こそ申告する

利益が出ていない年は「申告しなくていい」と考えがちですが、逆です。

損益通算

同じ年の他の上場株式等の利益や、申告分離課税を選んだ配当と相殺できます。一般口座の損失と特定口座の利益も通算可能です。

繰越控除(最大3年)

その年に相殺しきれなかった損失は、翌年以降3年間にわたって繰り越せます。ただし損失が出た年に申告し、その後も毎年欠かさず申告し続けることが条件です。1年でも申告を飛ばすと権利が切れます。

繰越控除の効き方を数字で見ると、こうなります。

その年の損益 繰越されている損失 課税される額
1年目 -100万円 0円
2年目 +40万円 100万円 0円
3年目 +30万円 60万円 0円
4年目 +50万円 30万円 20万円

※ 手数料等を考慮しない簡易な例です。1年目から毎年申告し続けていることが前提になります。

令和5年分から住民税の扱いが変わった

ここは古い情報が残っているサイトが多い部分です。

かつては、所得税では申告分離課税、住民税では申告不要というように、所得税と住民税で異なる課税方式を選ぶことが認められていました。これを使うと、国民健康保険料への影響を抑えつつ配当控除を受ける、といった調整ができました。

令和5年分(令和6年度課税)から廃止
改正前:所得税と住民税で別々の課税方式を選べた
→ 改正後:所得税で選んだ方式が住民税にもそのまま適用される

確定申告をすれば、住民税でも同じ扱いになります。その結果、国民健康保険料や後期高齢者医療保険料の算定に影響が出る場合があります。

※ 出典:地方税法の改正(令和4年度税制改正)により、令和5年分の所得税確定申告(令和6年度分の個人住民税)から適用

一般口座から特定口座へ移せるか

結論として、同じ証券会社の中で一般口座の残高を特定口座へ振り替えることは、原則としてできません。

特定口座は「その口座内で取得した株式等」を管理する仕組みだからです。ただし、相続や贈与によって取得した上場株式等など、一定の要件を満たす場合には特定口座への受け入れが認められることがあります。

実務上の対応

一般口座に残っている株をどうしても整理したい場合は、いったん売却して特定口座で買い直す方法があります。ただし売却時点で課税されるため、税額と手間を比較して判断してください。他社への株式の移管でも、一般口座の株は移管先でも一般口座扱いになるのが通常です。

NISA口座との関係

NISA口座は、一般口座・特定口座とはまったく別枠の非課税口座です。

口座 税金 損益通算
NISA口座 非課税 できない
特定口座 20.315% できる
一般口座 20.315% できる

NISA口座で出た損失は、他の口座の利益と通算できません。これはNISAの数少ないデメリットです。非課税枠を使いきったあとの受け皿としては、一般口座ではなく特定口座(源泉徴収あり)を用意しておくのが標準的な形です。

一般口座に関するよくある質問

一般口座と特定口座は両方持てますか?
持てます。同じ証券会社の中で、一般口座と特定口座を併用できます。実際、未公開株や相続した株は一般口座、通常の売買は特定口座、という使い分けになるのが一般的です。
一般口座で利益が20万円以下なら申告不要ですか?
給与を1か所から受けていて年末調整が済んでおり、給与以外の所得の合計が20万円以下であれば、所得税の確定申告は不要とされています。ただし住民税の申告は別途必要です。また医療費控除などで確定申告をする場合は、20万円以下でも合わせて申告することになります。
開設後に一般口座から特定口座へ切り替えられますか?
特定口座を新たに開設すること自体はいつでもできます。ただし、すでに一般口座で保有している株式を特定口座へ移すことは原則できません。今後の買付分から特定口座を使う、という形になります。
一般口座のほうが税金が安いということはありますか?
ありません。税率は一般口座も特定口座も20.315%で同じです。違いは損益計算を誰が行うかだけで、税負担そのものに差は生じません。
相続した株の取得価額はどうやって調べますか?
原則として被相続人が取得したときの価額を引き継ぎます。故人の取引報告書や証券会社の残高証明、預金通帳の記録などを探してください。どうしても不明な場合は売却価額の5%を取得費とみなす方法がありますが、税額は大きくなります。
一般口座で損失が出た場合、申告しなくてもいいですか?
申告義務はありませんが、申告することを強くおすすめします。他の口座の利益と損益通算でき、相殺しきれない分は3年間繰り越せるためです。損失が出た年に申告しないと、この繰越控除の権利自体が使えなくなります。
タンス株はどうやって売ればいいですか?
株券は2009年に電子化されているため、まず名義書換代理人(信託銀行など)に開設されている特別口座を確認し、そこから証券会社の口座へ振替の手続きをします。受け入れ先は一般口座になるのが通常です。手続きには戸籍謄本等が必要になる場合があります。
これから口座を作るなら何を選べばいいですか?
特別な事情がなければ「特定口座(源泉徴収あり)」が最も手間が少ない選択です。確定申告が原則不要になり、扶養の判定にも影響しません。詳しくは証券口座の種類をご覧ください。

まとめ

一般口座は、能動的に選ぶ口座ではなく、特定口座では扱えない資産の受け皿として存在している口座です。

この記事のまとめ

・一般口座=自分で損益を計算して確定申告する口座
・税率は特定口座と同じ20.315%。有利にも不利にもならない
・未公開株・株式報酬・相続株・タンス株は一般口座になる
・取得価額が不明なら売却価額の5%。かなり不利なので記録を探す
・損失が出た年こそ申告する(3年繰越の条件)
・令和5年分から所得税と住民税で違う方式は選べない
・一般口座から特定口座への振替は原則できない

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