ST倍率とは、S&P500をTOPIXで割った数値です。米国株と日本株のどちらが強いかを、ひとつの数字で表します。
2026年8月21日時点のST倍率は1.89倍。長期平均から標準偏差+1σ以上の、米国株が優位な水準にあります。
日本株の中の偏りを見るのがNT倍率なら、日米のどちらに資金が向かっているかを見るのがST倍率です。資産をどちらにどれだけ置くかを考えるときの材料になります。
この記事でわかること
・上昇・低下がそれぞれ何を意味するか
・標準偏差で「偏りの大きさ」を測る方法
・ST倍率に為替が入っていないという重要な性質
・時差という、この指標だけが抱える弱点
・資産配分を考えるときの実際の使い方
目次
ST倍率とは
ST倍率(読み方:えすてぃーばいりつ)の「S」はS&P500、「T」はTOPIXを指します。
7,674.37 ÷ 4,067.29 = 1.89倍
NT倍率が日経平均をTOPIXで割るのに対し、ST倍率は米国の代表的な指数を日本の代表的な指数で割ります。「日米相対株価」と呼ばれることもあります。
なぜ日経平均ではなくTOPIXを使うのか。S&P500もTOPIXも時価総額加重型で、市場全体を広くカバーする指数だからです。性質の近いものどうしを比べるほうが、比較として素直になります。
ST倍率の計算に使う2つの指数
| 項目 | S&P500 | TOPIX |
|---|---|---|
| 国 | 米国 | 日本 |
| 銘柄数 | 500 | 約1,700 |
| 加重方式 | 時価総額加重型 | 浮動株時価総額加重型 |
| 通貨 | 米ドル建て | 円建て |
| 2026年8月21日 | 7,674.37 | 4,067.29 |
4行目に注目してください。通貨が違うものを割っています。この点があとで重要になります。
ST倍率の見方
読み方は単純です。
| ST倍率 | 意味 | 言い換えると |
|---|---|---|
| 上昇 | S&P500がTOPIXより強い | 日本株が出遅れている |
| 低下 | TOPIXがS&P500より強い | 日本株が見直されている |
ここで大事なのは、ST倍率が上がっても、日本株が下がっているとは限らないという点です。日本株も上がっているが、米国株のほうがもっと上がっている——という状況でもST倍率は上昇します。
あくまで「どちらがより強いか」だけを示す相対指標です。
直近のST倍率の推移
2026年8月の動きを見てみます。
| 日付 | ST倍率 | 前日比 |
|---|---|---|
| 2026年8月14日 | 1.85 | −0.02 |
| 2026年8月18日 | 1.86 | +0.01 |
| 2026年8月19日 | 1.92 | +0.06 |
| 2026年8月20日 | 1.88 | −0.04 |
| 2026年8月21日 | 1.89 | +0.01 |
※ 各日の終値をもとに算出。市況により変動します。
1.85〜1.92のあいだで動いています。NT倍率が16倍台で0.1刻みの動きなのに対し、ST倍率は1点台で0.01刻み。桁が違うので、慣れるまでは変化率で見るとわかりやすくなります。
標準偏差で「偏りの大きさ」を測る
ST倍率もNT倍率も、絶対値そのものに意味はありません。過去の分布の中でどこにいるかを見ます。
そこで使うのが標準偏差(σ)です。
+1σ〜+2σ … 米国株優位(2026年8月21日はここ)
−1σ〜+1σ … 標準的な範囲
−1σ〜−2σ … 日本株優位
−2σ以下 … 極めて日本株優位
2026年8月時点のST倍率は+1σ以上+2σ未満にあります。米国株が日本株より強い状態が、統計的に見ても明確に続いているということです。
ちなみに同時点のNT倍率は+2σ以上でした。「米国株が日本株より強く、日本株の中では日経平均がTOPIXより強い」——2つの指標を並べると、資金の流れがこう読めます。
ST倍率には為替が入っていない
ここが最も誤解されやすい点です。
S&P500はドル建て、TOPIXは円建ての指数です。これを単純に割っているため、ST倍率には為替レートがまったく反映されていません。
示さないもの … 日本の投資家が米国株を買ったときの、円換算のリターン
これは弱点ではなく、目的が違うということです。
企業の実力や資金の流れを比べたいなら、為替が入っていないほうがきれいに見えます。一方で自分の資産が実際にいくら増えたかを知りたいなら、為替を別に考える必要があります。
| 状況 | ST倍率 | 日本人が米国株を持っていた場合 |
|---|---|---|
| 米国株が上昇+円安 | 上昇 | 株高と為替差益の二重取り |
| 米国株が上昇+円高 | 上昇 | 円換算では利益が削られる |
| 米国株が下落+円安 | 低下 | 為替が損失を埋めることがある |
2行目が要注意です。ST倍率は上がっているのに、円換算の資産は増えていない——という状況が実際に起こります。ST倍率を資産配分の判断に使うときは、必ずドル円もあわせて見てください。
ST倍率だけが抱える弱点:時差
NT倍率は日本の2つの指数を比べるため、同じ時間の終値を使えます。しかしST倍率にはこの前提がありません。
↓ 約7時間半後
日本時間 翌朝 5時ごろ 米国市場が引ける(S&P500確定)
つまり同じ日付のST倍率でも、S&P500のほうが半日ぶん新しい情報を織り込んでいます。
米国で大きな材料が出た日は、TOPIXがまだ反応していないためST倍率が極端に動きます。これは日米の実力差が変わったのではなく、単に反映のタイミングがずれているだけです。
1日単位の細かい変化に意味を求めず、数週間から数か月のトレンドで見るほうが素直なのはこのためです。
ST倍率の実際の使い方
個人投資家がST倍率を使う場面は、大きく3つあります。
| 使う場面 | 具体的な使い方 |
|---|---|
| ① 資産配分の点検 | ST倍率が高水準のとき、ポートフォリオが米国株に偏りすぎていないか確認する |
| ② 積立先の見直し | 日米の比率を機械的に決めているなら、リバランスのきっかけにする |
| ③ 相場解説の検証 | 「日本株は出遅れている」という言説が、数字で裏づけられるかを確かめる |
③は地味ですが実用的です。相場の解説には印象論が混じります。ST倍率を見れば、「出遅れ」が本当に統計的な偏りなのか、それとも言葉のあやなのかを自分で判断できます。
ただし偏りが大きいことと、それが解消されることは別問題です。+1σを超えた状態が何年も続くことは珍しくありません。
NT倍率・ND倍率との違い
似た発想の指標がいくつかあります。整理しておきます。
| 指標 | 計算式 | 比べているもの |
|---|---|---|
| ST倍率 | S&P500 ÷ TOPIX | 米国株 と 日本株(市場全体どうし) |
| NT倍率 | 日経平均 ÷ TOPIX | 日本株の中の、値がさ株 と 市場全体 |
| ND倍率 | 日経平均 ÷ NYダウ | 日米の代表的な指数どうし |
ND倍率は日経平均とNYダウというどちらも株価加重型の指数を比べます。報道でよく使われる2つを並べる分わかりやすい反面、市場全体の実態からは離れます。
市場全体どうしを比べたいならST倍率、報道の見出しどうしを比べたいならND倍率と考えると使い分けやすくなります。
ST倍率に関するよくある質問
まとめ
ST倍率は「日米どちらの市場に資金が向かっているか」を1つの数字で見る指標です。方向ではなく、偏りを測るために使います。
この記事のまとめ
・2026年8月21日時点は1.89倍(7,674.37 ÷ 4,067.29)
・長期平均から+1σ以上+2σ未満の、米国株が優位な水準
・上昇は米国株優位、低下は日本株優位を示す
・日本株が下がっているとは限らない(あくまで相対指標)
・為替は反映されていない。円換算リターンは別に確認する
・時差があるためS&P500のほうが半日ぶん新しい情報を持つ
・1日単位ではなく、数週間〜数か月のトレンドで見る
・NT倍率と並べると、資金の流れが二段階で読める
※ 本記事は2026年8月時点の情報にもとづく解説であり、特定の商品や投資判断を推奨するものではありません。指数の水準は市況により変動します。
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