SOR注文とは、東証やPTSなど複数の市場の気配を監視し、最も有利に約定できると判断した市場へ自動的に注文を回す仕組みです。Smart Order Routing の略です。
証券会社が親切で用意しているサービス、と説明されることがありますが、正確ではありません。SORは最良執行義務という法令上の義務を果たすための仕組みであり、2023年1月からはそのルール自体が見直されています。
そして実務上もうひとつ知っておくべきことがあります。証券会社によっては、手数料を無料にする条件としてSORへの同意が組み込まれています。
この記事でわかること
・2023年1月に変わった最良執行のルール
・SBI証券が監視している5つの市場
・楽天証券のゼロコースとSORの関係
・マネックス証券が接続を減らした経緯
・SORで使えなくなる注文の種類
SOR注文とは
SOR(読み方:えすおーあーる)は「Smart Order Routing」の略で、日本語では最良執行注文などと呼ばれます。
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② 証券会社のシステムが複数市場の気配を比較
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③ 最も有利と判断した市場へ自動的に回送
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④ そこで約定する
投資家は市場を選びません。どこで約定するかは証券会社のシステムが決めます。これがSORの本質です。
なぜSORが必要になったのか
理由は単純で、日本株を売買できる場所が複数あるからです。
同じ銘柄が、同じ瞬間に違う値段で売買されているという状態が生まれます。
PTSでは取引所より細かい価格の刻み(呼値)が使える場合があり、1円未満の差が生じます。この差を拾うのがSORの役割です。
2023年1月、最良執行のルールが変わった
ここがこの記事で最も重要な部分です。SORは自主的なサービスではなく、法令の枠組みの中にあります。
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2022年5月 … 金商法施行令・内閣府令・監督指針を改正
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2023年1月1日 … 施行
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2023年3月18日まで … 証券会社が最良執行方針を改定(1年の経過措置)
改正の中身で個人投資家に直接関係するのは、次の点です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 個人顧客の扱い | 原則として「価格優先」で執行方針を定める |
| 価格以外を考慮する場合 | その理由を説明することが求められる |
| SORの位置づけ | 最良執行方針の中に明示的に規律された |
出典:金融庁の公表資料および各証券会社の最良執行方針
「個人には価格優先が原則」と明記されたことが最大の変更です。
各証券会社は最良執行方針を公表する義務があります。自分が使っている証券会社がどの市場を、どういう優先順位で見ているかは、その方針書で確認できます。
SBI証券のSOR注文
接続先が最も多い構成です。
SBI証券のSORが監視する5市場
② ジャパンネクストPTS(J-Market)
③ ジャパンネクストPTS(X-Market)
④ 大阪デジタルエクスチェンジPTS(ODX)
⑤ SBIクロス(ダークプール)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象時間 | 8時58分〜11時29分59秒/12時28分〜15時24分59秒 (前場・後場の寄付値段決定時を除く) |
| PTS発注時の扱い | 成行注文は指値に変換される |
| 期間指定 | 最長15営業日(PTSで一部約定すると当日限りに変更) |
| 手数料 | ゼロ革命の対象であれば、いずれの市場でも無料 |
2行目は見落とされがちです。成行で出したつもりの注文が、PTSでは指値に変換されます。約定を最優先したい場面では、想定と違う挙動になることがあります。
楽天証券のSOR注文
楽天証券のSORにはRクロスという自社のダークプールが含まれます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| Rクロスの仕組み | 顧客どうしの注文をマッチングし、ToSTNeTで約定させる |
| 利用の条件 | 手数料コースを「ゼロコース」に設定していること |
| 対象 | 現物取引 |
ここが実務上の重要ポイントです。楽天証券で国内株の手数料を0円にする「ゼロコース」を選ぶと、SOR(Rクロスを含む)の利用に同意したことになります。
つまり「手数料無料」と「注文の執行先を証券会社に委ねること」がセットになっているということです。
マネックス証券のSOR注文
他の2社とは事情が違います。
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2021年8月20日 … ダークプールへの接続を終了
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以降は2市場のみへの接続で運用
「マネックス証券のダークプール」を紹介している解説記事をいまも見かけますが、5年前に終了しています。
接続先が少ないことは、必ずしも不利を意味しません。比較する市場が減るぶん、執行の過程が単純で分かりやすいという見方もできます。
SOR注文とPTSの違い
混同されやすいので整理します。この2つは並列の関係ではありません。
| 項目 | SOR注文 | PTS |
|---|---|---|
| 正体 | 注文の回送方法(仕組み) | 取引の場所(市場) |
| 市場を選ぶのは | 証券会社のシステム | 投資家自身 |
| 夜間取引 | 対象外(日中の立会時間内) | できる |
| 関係 | SORの回送先のひとつがPTS。対立する概念ではない | |
SORは「どうやって注文を届けるか」、PTSは「どこで売買するか」の話です。
PTSで夜間に取引したい場合は、SORではなくPTSを直接指定して発注します。SORは日中の立会時間内でしか働きません。
SOR注文のメリット
| メリット | 内容 |
|---|---|
| ① 価格改善の可能性 | PTSの細かい呼値やダークプールで、東証より有利に約定することがある |
| ② 自分で比較しなくていい | 複数市場の板を見比べる手間が消える |
| ③ 約定機会が増える | 東証に売り物がなくても、他市場で約定することがある |
①の実際の効果は、1株あたり数銭から数円という規模です。
1回の取引では小さくても、デイトレードのように回数を重ねる場合は無視できない差になります。逆に年に数回しか売買しない人にとっては、ほとんど体感できません。
SOR注文のデメリット
| デメリット | 内容 |
|---|---|
| ① 使えない注文がある | 逆指値注文や執行条件付きの注文は対象外になることが多い |
| ② 板と約定価格がずれる | 東証の板を見ていても、そこで約定するとは限らない |
| ③ 必ず有利になるわけではない | 判定時点と発注時点の時間差で、不利な約定になることもある |
| ④ PTSは流動性が薄い | 一部しか約定せず、注文が分割されることがある |
| ⑤ 時間帯の制約 | 寄付や大引けの値段決定時はSORの対象外 |
①が最も実害の大きい制約です。損切りのために逆指値を使う人にとって、SORが使えないことは前提として知っておく必要があります。
③も重要です。SORが「有利」と判定した瞬間と、実際に注文が届く瞬間には時間差があります。相場が速く動く場面では、判定が外れることがあります。
手数料無料の条件になっているという実態
あまり語られませんが、投資家として理解しておくべき構図です。
↓
取引所に支払う手数料を減らせる
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その分、投資家の売買手数料を0円にできる
手数料が無料になるのは、証券会社が慈善事業をしているからではありません。執行の場所を自社に寄せることでコストを下げているという側面があります。
これ自体は不当なことではありません。投資家は手数料0円という利益を受け取っており、価格改善という恩恵もあります。
ただし「無料の代わりに、注文の執行先を委ねている」という構造は認識しておく価値があります。だからこそ、2023年から個人顧客には価格優先が原則と定められたわけです。
SORを使わないほうがいい場面
| 場面 | 理由 |
|---|---|
| 逆指値で損切りを置きたい | そもそもSORの対象外 |
| 寄付や大引けで約定させたい | 値段決定時はSORが働かない |
| 出来高の少ない銘柄 | PTSの板がさらに薄く、分割約定になりやすい |
| 同じ銘柄を1日に何度も売買する | 市場が違っても差金決済の判定対象になる |
4行目は見落とされやすい重要な注意です。差金決済の判定は銘柄・受渡日・資金で行われ、約定した市場は関係ありません。
「東証で買って売ったから、PTSならもう一度買える」という理解は誤りです。SORを使っていると、どの市場で約定したかを意識しないまま制限に触れることがあります。
SOR注文に関するよくある質問
まとめ
SOR注文は「市場が複数あるという現実に対応するための、法令に裏づけられた仕組み」です。便利さと引き換えに、執行先を委ねているという構造も理解しておいてください。
この記事のまとめ
・市場を選ぶのは投資家ではなく証券会社のシステム
・2022年5月の改正で2023年1月1日から新ルールが施行された
・個人顧客については原則「価格優先」で執行方針を定める
・SBI証券は東証・ジャパンネクスト2市場・ODX・SBIクロスの5市場に接続
・楽天証券のRクロスはゼロコースの設定が必須
・マネックス証券は2021年8月20日にダークプール接続を終了
・逆指値注文や執行条件付き注文はSORの対象外になることが多い
・SOR経由でも差金決済のルールは回避できない
※ 本記事は2026年8月時点の情報にもとづく解説であり、特定のサービスや投資判断を推奨するものではありません。各社の接続先や条件は変更されるため、利用前に必ず最良執行方針と公式情報をご確認ください。
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