株式併合とは、複数の株式を1株にまとめて、発行済株式数を減らすことです。10株を1株にすれば、株数は10分の1になります。

株数が減った分だけ株価は理論上10倍になるため、保有資産の額は変わりません。株式分割のちょうど逆の手続きです。

ただし注意すべき使われ方があります。極端な比率の株式併合は、少数株主を強制的に締め出すための手段として使われます。「1万株を1株に」といった開示が出たら、その会社は上場廃止に向かっている可能性があります。

この記事でわかること

・株式併合で株数と株価がどう変わるか(計算で確認)
・株式分割との違い
・資産は変わらないのに株価が下がりやすい理由
・株式併合が行われる3つの目的
・少数株主の締め出し(スクイーズアウト)に使われる仕組み
・単元未満株が生じたときの3つの対処法

株式併合とは?まず結論から

株式併合(読み方:かぶしきへいごう)

株式併合とは、複数の株式を統合して、より少ない株数にする手続きです。「10株を1株に併合する」といった形で公表されます。

数字で確認します。

項目 併合前 併合後(10株→1株)
保有株数 1,000株 100株
株価 200円 2,000円
資産の合計 200,000円 200,000円(変わらない)
持株比率 1.0% 1.0%(変わらない)

全株主が同じ比率で減るため、持株比率も資産額も理論上は変わりません。ケーキの切り分け方を変えただけで、ケーキ自体の大きさは同じです。

資本金も変わりません。資本金を減らすのは減資という別の手続きです。

株式分割との違い

株式併合と株式分割は、方向が逆なだけで構造は同じです。

株式分割
株数が増える
株価は下がる
買いやすくする
株式併合
株数が減る
株価は上がる
株数を整理する

どちらも1株あたりの価値が変わるだけで、資産の総額は同じ

項目 株式分割 株式併合
決議 取締役会 株主総会の特別決議
市場の受け止め 好感されやすい 警戒されやすい
単元未満株 発生することがある 発生しやすい
投資家の裾野 広がる 狭まる

決議の要件が違うのは、株式併合が株主の権利を失わせる可能性を持つためです。端数が生じた株主は、意思に関係なく株式を現金に換えられます。だから株主総会の承認が必要とされています。

資産は変わらないのに株価が下がりやすい理由

理論上は中立でも、株式併合の発表後に株価が下がることは珍しくありません。理由は3つあります。

① 買える投資家が減る
株価200円なら100株で2万円だが、併合後は2,000円で100株=20万円になる。最低投資金額が上がり、買い手の裾野が狭まる。
② 流動性が落ちる
株数が減ると出来高も細り、売買が成立しにくくなる。値動きが荒くなりやすい。
③ 実施の背景が警戒される
株価が長期に低迷して株数が膨らんだ結果、あるいは上場廃止の準備として行われることがある。「なぜ今やるのか」が問われる。

とくに③が重要です。株式併合は理由がないと行われません。開示に書かれた目的を必ず確認してください。

株式併合が行われる3つの目的

目的 典型的な併合比率 株主への影響
投資単位の調整 2株→1株、5株→1株 軽微(端数に注意)
組織再編にあわせた調整 10株→1株など 比率にあわせて株数が変わる
少数株主の締め出し 数万株→1株 強制的に現金化される

東京証券取引所は、投資単位を5万円以上50万円未満の水準に維持するよう上場会社に要請しています。株価が下がりすぎて投資単位が低くなった場合、その調整として併合が行われることがあります。

ただし併合比率が極端に大きい場合は、目的がまったく違います。次で説明します。

少数株主の締め出しに使われる仕組み

「1万株を1株に併合する」という開示が出たら、それは投資単位の調整ではありません。少数株主を会社から退出させるための手続き(スクイーズアウト)です。

仕組みはこうです。

① TOBで大株主が3分の2以上を取得する
株主総会の特別決議を単独で可決できる状態になる。
② 極端な比率の株式併合を決議する
たとえば10万株を1株に。大株主以外は誰も1株に届かなくなる。
③ 少数株主の持分はすべて端数になる
1株に満たない端数は会社がまとめて売却し、代金が株主に分配される。
④ 株主は大株主1社だけになり、上場廃止
受け取るのは現金のみ。株主としての立場は失われる。

同じ目的では、持株比率90%以上の株主が使える特別支配株主の株式等売渡請求という制度もあります。90%に届かない場合に、株式併合が使われます。関係は持株比率で整理しています。

この手続きに納得できない株主には、反対株主の株式買取請求権と、価格に不服がある場合の裁判所への価格決定申立てという手段が用意されています。ただし手続きと期限の要件があり、実務上のハードルは高めです。

締め出しの前段階として行われるTOBの段階で、応募するかどうかを判断するのが現実的です。

単元未満株が発生したときの対処

通常の株式併合でも、比率によっては100株未満の端数が生じます。

5株→1株の併合で250株を持っていた場合

250株 ÷ 5 = 50株

1単元は100株なので、50株は単元未満株になる
→ 通常の売買ができない状態になる

対処法 内容 注意点
買取請求 発行会社に買い取ってもらう 価格は請求到達日の終値。指値はできない
買増制度 不足分を買い足して単元株にする 会社が制度を採用している場合のみ
そのまま保有 配当は受け取れる 議決権はない。優待の対象外が多い

それぞれの詳しい手順は単元未満株でまとめています。1株にも満たない端数については、会社が一括して売却し、代金が株主に分配されます。この分配金は譲渡所得として課税対象になります。

上場維持基準に触れることがある

株式併合には、会社側にとってのリスクもあります。株数を減らしすぎると、上場を維持する基準に届かなくなる可能性があるためです。

市場区分 株主数 流通株式数 流通株式時価総額
プライム 800人以上 20,000単位以上 100億円以上
スタンダード 400人以上 2,000単位以上 10億円以上
グロース 150人以上 1,000単位以上 5億円以上

流通株式数は単位(単元)で数えます。10株を1株に併合すれば単位数も10分の1になるため、もともと余裕のない会社では基準を割り込むおそれがあります。

さらに、端数しか残らなかった株主は株主でなくなるため、株主数の要件にも影響します。会社が併合比率を慎重に設計するのはこのためです。

※ 上場維持基準の経過措置は2025年3月末で終了しています。市場区分の考え方は指定替えで解説しています。

手続きと日程

段階 内容 株主がすること
① 開示 併合比率と効力発生日を公表 比率と目的を確認する
② 株主総会 特別決議(3分の2以上)で承認 議決権を行使できる
③ 通知 効力発生日の20日前までに株主へ通知 買取請求の検討期間
④ 効力発生 株数が自動的に変わる 手続きは不要
⑤ 端数処理 端数分をまとめて売却し分配 現金が入金される

株主側の手続きは原則として不要です。証券口座の株数が自動的に変わります。ただし反対株主の買取請求を行う場合は、株主総会の前に反対の意思を通知する必要があります。

※ 本記事は制度と開示の読み方を解説したもので、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。手続きや日程は案件ごとに異なり、税務上の取扱いも状況により変わります。実際の判断にあたっては各社の開示資料をご確認のうえ、税務については専門家にご相談ください。

株式併合に関してよくある質問

株式併合で損をすることはありますか?
理論上は株数が減った分だけ株価が上がるため、資産額は変わりません。ただし1株に満たない端数は現金で精算されるため、その部分は保有を続けられなくなります。また流動性の低下や最低投資金額の上昇によって、発表後に株価が下がることはあります。
株式併合の当日に株価が10倍になるのはなぜですか?
10株を1株にまとめた分、1株あたりの価値が10倍になるためです。会社の価値は変わっていないので、株数で割った1株あたりの金額だけが変わります。取引所は効力発生日に合わせて基準となる株価を調整するため、値上がりしたわけではありません。
「1万株を1株に」という併合を見ました。何が起きますか?
少数株主の締め出し(スクイーズアウト)である可能性が高いです。大株主以外は1株に届かず、保有分がすべて端数として現金化されます。通常はTOBの後に行われるため、TOBの段階で応募するかどうかを判断するのが現実的です。価格に不服がある場合は裁判所への申立てという手段もありますが、手続きの負担は大きくなります。
株式併合と株式分割はどちらが好材料ですか?
一般には株式分割のほうが好感されます。投資単位が下がって買いやすくなり、投資家の裾野が広がるためです。株式併合は逆に最低投資金額が上がり、流動性も落ちるため警戒されやすくなります。ただしどちらも企業価値そのものを変える手続きではありません。
株式併合で株主優待や配当はどうなりますか?
併合によって保有株数が減るため、優待の基準株数を下回ると対象外になることがあります。100株が20株になれば、100株以上が条件の優待は受け取れません。配当は1株あたりの金額が調整されるのが一般的で、受取総額は原則として変わりませんが、会社の方針によるため開示を確認してください。
単元未満株になってしまったら配当はもらえますか?
もらえます。単元未満株でも株主であることに変わりはないため、保有株数に応じた配当を受け取れます。ただし議決権はなく、株主優待も対象外とされることが多くなります。売却したい場合は発行会社への買取請求か、証券会社の単元未満株サービスを使います。
株式併合に反対したい場合はどうすればいいですか?
株主総会の前に会社へ反対の意思を通知し、総会で反対の議決権を行使したうえで、反対株主の株式買取請求権を行使します。期限が定められているため、通知が届いたら日程をすぐ確認してください。手続きが煩雑なため、実務上は市場で売却する選択を取る株主が多くなっています。
株式併合をすると資本金も減りますか?
減りません。株式併合で変わるのは発行済株式数だけで、資本金の額はそのままです。資本金を減らすのは減資という別の手続きで、株主総会の決議と債権者保護手続きが必要になります。両者は同時に行われることもありますが、法的にはまったく別の手続きです。

まとめ

この記事のまとめ

・株式併合は複数の株を1株にまとめ、発行済株式数を減らす手続き
株数が減った分だけ株価は上がるため、資産額と持株比率は変わらない
・株主総会の特別決議が必要(株式分割は取締役会でよい)
・最低投資金額の上昇と流動性の低下で、株価は下がりやすい
極端な比率の併合は少数株主の締め出しに使われる
・端数は現金で精算され、譲渡所得として課税される

開示を見たら、まず併合比率を確認してください。2株→1株のような小さい比率なら投資単位の調整、数万株→1株なら上場廃止に向けた手続きです。比率の大きさが、そのまま会社の意図を表しています。

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