PER(株価収益率)とは、株価が1株あたり純利益(EPS)の何倍まで買われているかを示す指標です。数値が低いほど利益に対して株価が割安、高いほど割高と判断されます。
ただし、「PERが低い=買い」と考えると高確率で失敗します。低PERには「本当に割安」「成長が期待されていない」「一時的な利益で見かけ上低い」という3つのまったく違う理由があり、そのうち買っていいのは1つだけだからです。
この記事では、PERの計算方法から業種による目安の違い、そして低PER株に潜む落とし穴まで、個人投資家が実際に判断に使えるレベルで解説します。
この記事でわかること
・PERの目安は何倍か(市場全体・業種別)
・低PER株が「万年割安」で終わる3つの理由
・実績PERと予想PERの違いと使い分け
・PERがマイナス・表示されないケース
・PERと一緒に見るべき指標(PBR・ROE・EPS)
目次
PERとは?まず結論から
PER(読み方:ピーイーアール/株価収益率)
PERは Price Earnings Ratio の略で、日本語では株価収益率といいます。企業が稼ぐ利益に対して、株価が何倍まで買われているかを表します。
計算方法は2通りありますが、どちらで計算しても同じ数値になります。
| 計算式 | 使う場面 |
|---|---|
| PER = 株価 ÷ EPS (1株あたり純利益) |
個別銘柄を見るとき。証券会社の画面はこの形 |
| PER = 時価総額 ÷ 当期純利益 | 会社全体の規模感で捉えるとき |
実際に計算してみる
株価2,000円、EPS(1株あたり純利益)が100円の企業を例にします。
EPS 100円
EPS 200円
株価が同じでも、稼ぐ力が2倍ならPERは半分になる
B社は同じ株価でA社の2倍の利益を出しているので、利益に対しては割安ということになります。
PERは「投資回収に何年かかるか」とも読める
PER20倍は、今の利益水準が続くとして、株価を回収するのに20年かかるという意味でもあります。この読み方をすると、数値の重さが直感的にわかります。
PERを構成するEPSについてはEPSとはで詳しく解説しています。EPSが動けばPERも動くため、セットで理解しておくと役に立ちます。
PERメモ
・株価 ÷ EPS で計算する
・低いほど割安、高いほど割高と判断される
・「株価の回収に何年かかるか」とも読める
PERの目安は何倍?
よく「PER15倍が目安」と言われますが、この数字を全銘柄に当てはめるのは危険です。PERの水準は市場全体の状況と業種によって大きく変わります。
市場全体の水準を基準にする
日経平均株価のPERは、加重平均ベースで17倍前後で推移しています(2026年8月時点)。まずはこの水準を「真ん中」として、個別銘柄が上か下かを見るのが実務的です。
※ 市場全体のPERは日々変動します。最新値は日本取引所グループや日経平均プロフィルで確認してください。
業種によって「普通のPER」はまったく違う
成長期待が高い業種はPERが高く、成熟した業種や景気変動の大きい業種はPERが低くなる傾向があります。
| タイプ | 業種の例 | PERの傾向 |
|---|---|---|
| 高くなりやすい | 情報・通信、サービス、医薬品 | 将来の利益成長が織り込まれる |
| 低くなりやすい | 銀行、鉄鋼、海運、建設 | 成長期待が低い/景気に左右される |
銀行のB社 → PER 9倍
→ 「B社のほうが割安だから買い」
これは比較になっていません。PERは同じ業種の中で比べてこそ意味を持つ指標です。業種をまたいで数字だけを並べても、業種の性質の違いを見ているだけになります。
比較するときは、①同業他社のPER、②その銘柄自身の過去のPERレンジ、③業種平均——の3つと照らし合わせてください。
PERが低い株は本当に「お得」なのか
ここがPERを使ううえで最も重要な論点です。低PER銘柄を買ったのに何年も株価が動かない状態をバリュートラップ(万年割安株)と呼びます。
PERが低い理由は、大きく3つに分かれます。
業績も財務も悪くないのに、一時的な悪材料や地味さから注目されていない状態。市場が気づけば見直される可能性があります。狙うべきはここだけです。
市場が縮小している、競争力を失っている、といった理由で将来の利益が減ると見られている状態。PERが低いのは「安い」のではなく「安くて当然」と評価されているだけです。低PERのまま何年も放置されます。
土地や株式の売却益など、その期限りの利益でEPSが跳ね上がると、PERは一時的に極端に低くなります。翌期にはその利益が消えるためPERは元に戻ります。
③は特に注意が必要です。特別利益による一時的な押し上げかどうかは、決算短信で営業利益と当期純利益の推移を並べれば判別できます。営業利益が横ばいなのに純利益だけが急増していたら、まずこれを疑ってください。
・営業利益は伸びているか(本業で稼げているか)
・過去数年、同じくらい低いPERが続いていないか
・同業他社と比べて明確に低いのか、業種全体が低いだけなのか
PERが高い株は買ってはいけないのか
そうとは限りません。PERが高いのは、市場が「これから利益が大きく伸びる」と期待している証拠でもあります。
たとえば現在のEPSが50円でPER60倍(株価3,000円)の企業も、3年後にEPSが200円まで伸びれば、株価が変わらなくてもPERは15倍になります。グロース投資はこの期待に賭ける手法です。
| 低PER株 | 高PER株 | |
|---|---|---|
| 市場の見方 | 利益は増えない | 利益が大きく伸びる |
| 上昇の条件 | 見直し買いが入ること | 期待どおり成長すること |
| 最大のリスク | 万年割安のまま動かない | 期待外れで急落する |
| 相性の良い手法 | バリュー投資 | グロース投資 |
高PER株の下落は速いという点は覚えておいてください。期待で買われている分、成長が鈍化したと判断された瞬間に前提が崩れます。PER60倍が20倍まで見直されれば、利益が変わらなくても株価は3分の1です。
実績PERと予想PERの違い
証券会社の画面に出ているPERは、多くの場合予想PERです。どちらを見ているかで意味が変わります。
| 種類 | 使うEPS | 特徴 |
|---|---|---|
| 実績PER | 前期の確定した純利益 | 確実だが過去の数字 |
| 予想PER | 今期の予想純利益 | 実態に近いが予想は外れる |
予想PERの弱点は、前提となる予想が変わると数値が一気に動くことです。業績予想の上方修正・下方修正が出ると、株価が動かなくてもPERだけが大きく変わります。
株価2,000円・予想EPS200円 → 予想PER 10倍(割安に見える)
下方修正で予想EPSが100円へ → 予想PER 20倍(割安ではなくなる)
株価は1円も動いていないのに、投資判断の前提だけが崩れます。
PERの逆数「株式益回り」で金利と比べる
PERは倍率なので、他の投資対象と直接比べにくいという弱点があります。そこで使われるのが株式益回りです。
これは「投資額に対して、企業が年間どれだけの利益を生んでいるか」を利回りの形で表したものです。債券の利回りと同じ土俵で比較できるのが利点です。
| PER | 株式益回り | 見え方 |
|---|---|---|
| 10倍 | 10.0% | 債券と比べて明確に高い |
| 17倍 | 5.9% | 市場平均の水準 |
| 40倍 | 2.5% | 成長がなければ割に合わない |
株式益回りから長期金利を引いたものはイールドスプレッドと呼ばれ、株式と債券のどちらが相対的に有利かを見る目安として使われます。金利が上がると、同じPERでも株式の魅力は相対的に下がります。「金利上昇局面で高PER株が売られやすい」と言われるのは、この関係が背景にあります。
PEGレシオ:成長率を加味してPERを補正する
PERの最大の弱点は、成長率を織り込めないことです。同じPER30倍でも、利益が年5%しか伸びない企業と年40%伸びる企業では意味がまったく違います。
この差を補正する指標がPEGレシオです。
利益成長率 5%
利益成長率 40%
同じPER30倍でも、成長率で評価は正反対になる
※ PEGレシオは将来の成長率という不確実な数字を使うため、目安として扱ってください。成長率の前提が崩れると数値の意味も崩れます。
PERが使えない・表示されないケース
PERは万能ではありません。次の場合は判断材料になりません。
純利益がマイナスだとPERは計算上マイナスになりますが、意味を持ちません。多くのサイトでは「—」や空欄で表示されます。赤字企業の割安さはPERでは測れません。
EPSが極端に小さいと、PERは数百倍・数千倍という異常値になります。この場合も比較には使えません。
海運や資源など市況の影響が大きい業種は、好況時にPERが極端に低くなります。好況のピークで低PERになるのは、割安ではなく循環の頂点である可能性があります。
こうしたケースでは、資産面から評価するPBRや、売上・営業利益の推移を見るほうが適切です。
PERと一緒に見るべき指標
PER単独では判断できません。役割の違う指標を組み合わせます。
| 指標 | 何を見る指標か | PERと組み合わせると |
|---|---|---|
| PBR | 資産に対する株価 | 利益と資産の両面から割安さを確認できる |
| ROE | 自己資本をどれだけ稼ぎに変えたか | 低PERの理由が「稼げていない」からかを判別できる |
| EPS | 1株あたりの利益 | PERの分母。推移を見れば成長性がわかる |
| 配当性向 | 利益のうち配当に回す割合 | 低PER・高配当が持続可能かを確認できる |
実務的には、「PERが低い」ではなく「PERが低いのに営業利益が伸びていてROEも悪くない」という条件で探すと、バリュートラップを大きく減らせます。具体的な条件は後述します。
決算発表でPERはどう動く?
PERが最も大きく動くのは決算発表のタイミングです。株価が動かなくても、PERだけが一晩で別物になることがあります。
| 決算の内容 | EPS | PER(株価が同じ場合) |
|---|---|---|
| 上方修正・増益 | 増える | 下がる(割安化) |
| 下方修正・減益 | 減る | 上がる(割高化) |
| 特別利益で一時的に増益 | 一時的に急増 | 一時的に急低下。翌期に戻る |
実務上いちばん危ないのは3行目です。決算直後に「急にPERが5倍になった」という銘柄を見つけたら、まず特別利益を疑ってください。本業の利益(営業利益)が伸びていないのに純利益だけ跳ねているなら、その低PERは1年で消えます。
PERを使った実践的な銘柄の探し方
PER単独で絞ると、②や③の理由で低い銘柄ばかりが並びます。次の条件を重ねると精度が上がります。
| 条件 | 狙い |
|---|---|
| 予想PERが業種平均より低い | 業種の性質ではなく、その銘柄固有の割安さを見る |
| 営業利益が3期連続で増加 | 一時的な利益ではなく本業が伸びている |
| ROE 8%以上 | 「稼げないから低PER」の銘柄を除外する |
| PBR も低い | 利益と資産の両面から割安さを確認する |
絞り込みの手順はスクリーニングで解説しています。売上高営業利益率を併用すると、収益性の質まで確認できます。
PERに関するよくある質問
まとめ
PERは、株価が利益の何倍かを示すシンプルな指標です。しかし「低いから買い」という使い方をした瞬間に、最も損をしやすい指標に変わります。
低PERを見つけたら、その理由が「本当に割安」なのか「期待されていない」のか「一時的な利益のせい」なのかを切り分けてください。この一手間が、万年割安株をつかむかどうかを分けます。
この記事のまとめ
・市場全体は17倍前後(2026年8月時点)だが業種差が大きい
・比較は必ず同業他社・過去レンジ・業種平均と行う
・低PERには「割安」「期待されていない」「一時的な利益」の3通りがある
・高PERは成長期待。崩れたときの下落は速い
・赤字企業や市況変動の大きい業種ではPERは機能しない
・PBR・ROE・EPSと組み合わせて判断する
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