ロックアップとは、上場後の一定期間、大株主が株式を売却できないようにする取り決めです。上場直後の急落を防ぐために設けられます。

IPO投資で必ず確認すべきなのは解除条件です。期間だけでなく「株価が公開価格の1.5倍になったら解除」という条件が付いていることが多く、この場合は株価が上がった瞬間に売り物が出ます。

つまりロックアップは、下値を守る仕組みでありながら上値を押さえる要因にもなります。この記事では、解除条件の読み方を具体的に解説します。

この記事でわかること

・ロックアップの2種類の解除条件(期間と株価)
・公開価格の1.5倍条件が上値を押さえる仕組み
・目論見書のどこで確認するか
・ロックアップの対象外になっている株主の見つけ方
・解除日の前後で株価がどう動きやすいか
・第三者割当増資でのロックアップとの違い

ロックアップとは?まず結論から

ロックアップ(読み方:ろっくあっぷ)

新規上場(IPO)の際、上場前から株式を持っている創業者・役員・ベンチャーキャピタルなどが、上場後の一定期間は株式を売却しないと約束する取り決めです。

重要な点があります。ロックアップは法律による規制ではなく、契約です。大株主と主幹事証券会社の間で結ばれます。したがって内容は案件ごとに異なり、すべての株主が対象になるわけでもありません。

なぜ必要なのか

上場前の株主は、公開価格よりはるかに安い価格で株式を取得していることがあります。上場した瞬間に一斉に売られれば、株価は暴落します。これを防ぎ、市場の安定を保つための仕組みです。

制限の対象は株式の売却だけではありません。案件によっては、新株の発行や自己株式の処分も一定期間制限されることがあります。

解除条件は2種類ある

ここがロックアップの本質です。解除条件は大きく2つに分かれます。

期間による解除
90日/180日
上場日から数えた日数
解除日が事前に分かる
株価による解除
公開価格の1.5倍
この水準に達したら解除
上がった瞬間に売られる

「90日間または公開価格の1.5倍以上」という組み合わせが多い

組み合わせの場合、どちらか一方を満たせば解除されます。90日待たなくても、株価が1.5倍に達した時点で売却できるようになります。

条件の書き方 意味 上値の重さ
180日間(株価条件なし) 半年間は売れない 軽い
90日間(株価条件なし) 3か月間は売れない やや軽い
90日間または公開価格の1.5倍以上 1.5倍に達したら即解除 重い
ロックアップなし 上場初日から売却できる 最も重い

株価条件がない180日のロックアップが、投資家にとって最も安心できる形です。逆に1.5倍条件が付いていると、上昇の途中で必ず売り物が出てきます。

1.5倍条件が上値を押さえる仕組み

具体的な数字で見てみます。公開価格2,000円のIPOで、初値が2,600円(公募比1.3倍)をつけたケースです。

株価 公開価格に対する倍率 ロックアップの状態
2,600円(初値) 1.3倍 まだ解除されない
2,900円 1.45倍 解除が近いと意識される
3,000円 1.5倍 解除。売却可能になる

3,000円という水準が、市場参加者の共通認識として意識されます。そこに近づくと、解除後の売りを見越した売却が先回りして出ることがあります。結果として3,000円が上値の壁として機能します。

これは投資家にとって重要な情報です。公開価格の1.5倍という水準は、単なる目安ではなく、実際に売り物が出てくる価格だということです。

計算しておくべき数字

公開価格 × 1.5(およびその他の条件倍率)
IPO銘柄を売買するなら、この水準を先に計算しておくと値動きの理由が読めます。

ロックアップが初値を押し上げる仕組み

ロックアップは上値を押さえる要因である一方、上場直後の初値を高くする要因でもあります。矛盾しているようですが、時間軸が違うだけです。

上場直後の需給 状態
売れる株 公募・売出しで配分された分のみ(ロックアップで大半が凍結)
買いたい人 抽選に外れた投資家が市場で買おうとする
結果 売り手が少なく買い手が多い状態になり、初値が高くつく

これがIPOの初値が公募価格を上回りやすい理由の一つです。ロックアップは、上場直後の需給を人為的に引き締める装置として働きます。

したがってロックアップの効果は次のように整理できます。

上場直後(プラス)

売れる株が絞られるため、需給が締まって初値が高くなりやすい。

解除時(マイナス)

凍結されていた株が一斉に売れるようになる。締めた反動が来る局面です。

つまりロックアップは需給を先送りしているだけで、消しているわけではありません。上場直後の高い初値と、解除時の売り圧力は同じ仕組みの表と裏です。

ロックアップ期間中でも株が増えるケース

ロックアップがかかっていても、市場に出回る株が増えることがあります。

要因 内容
オーバーアロットメント 需要が多い場合、主幹事が追加で売り出す
ストックオプションの行使 行使期間に入っていれば新株が発行される
ロックアップ対象外の株主の売却 契約に含まれていない株主は初日から売れる
主幹事証券の同意による解除 期間内でも例外的に売却が認められる場合がある

とくに2行目は上場後1〜2年の成長企業で影響が出ます。ロックアップとは無関係に株数が増えるため、目論見書の新株予約権の記載も合わせて確認する価値があります。

行使価額と現在の株価を比べると、行使される可能性が読めます。株価が行使価額を大きく上回っていれば、行使が進みやすい状態です。希薄化の記事で計算方法を解説しています。

目論見書での確認手順

ロックアップの内容は目論見書に記載されています。目論見書とは、投資判断のために交付される書類で、企業情報や募集・売出しの条件が書かれたものです。

1

「株式の売出し」の項目を探す
目論見書の前半

募集・売出しの条件が書かれた部分に、ロックアップに関する記載があります。

2

対象となる株主の名前を確認する
誰が縛られているか

創業者、役員、ベンチャーキャピタルなどが列挙されます。ここに名前がない大株主は、初日から売れます。

3

期間と株価条件を読む
ここが最重要

「90日間」「180日間」といった期間と、「公開価格の○倍」という株価条件の有無を確認します。

4

大株主の保有比率と突き合わせる
売り圧力の総量を測る

「大株主の状況」の欄で、対象株主が何%持っているかを確認します。比率が高ければ、解除時の売り圧力も大きくなります。

目論見書は各証券会社のIPO案件ページからダウンロードできます。ページ数は多いですが、見るべき箇所は決まっているので慣れれば数分で確認できます。

ロックアップ対象外の株主に注意する

ロックアップは契約なので、全株主が対象になるわけではありません。ここが見落とされやすい点です。

株主の区分 ロックアップ 確認方法
創業者・役員 対象が多い 目論見書に名前が記載される
主要なベンチャーキャピタル 対象が多い 同上
小口の既存株主 対象外のことがある 大株主一覧と対象者リストの差分
上場時に売出しに応じた株主 すでに売却済み 売出人の欄

確認方法はシンプルです。「大株主の状況」に載っている株主のうち、ロックアップ対象者として名前が挙がっていない株主を探すだけです。その株主の保有比率が、初日から売られる可能性のある量になります。

また、ロックアップには主幹事証券の同意があれば解除できるという条項が付くのが一般的です。期間内でも例外的に売却されることはありえます。絶対の保証ではないと理解しておいてください。

解除日の前後で株価はどう動くか

期間条件による解除は日付が事前に分かるため、値動きにも傾向があります。

局面 起きやすいこと
解除日の数週間前 先回りした売りで上値が重くなる
解除日の直前 警戒感から下げやすい
解除日 実際の売却が出るか、出ずに反発するかに分かれる
解除後しばらく 売りが出尽くせば需給が改善する

注目すべきは最後の行です。解除は悪材料ですが、通過してしまえば不確実性が消えます。実際には売却されないケースもあり、その場合は「売りが出なかった」ことが安心材料になります。

大量保有報告書で確認する方法もあります。5%以上を保有する株主が売却すれば5%ルールに基づく変更報告書が提出されるため、実際に売ったかどうかが分かります。

ロックアップを踏まえた売買の考え方

ロックアップの情報を実際の売買にどう使うかを整理します。

1

解除価格を先に計算しておく
公開価格 × 条件倍率

公開価格の1.5倍などの水準を計算し、チャートに引いておきます。その水準に近づいたときの値動きの鈍りに、理由が付きます。

2

期間解除の日付をカレンダーに入れる
上場日から90日/180日

日付が事前に分かるため、先回りした売りが出る時期も予測できます。保有を続けるなら、解除日をまたぐかどうかを意識的に決めてください。

3

対象外株主の保有比率を上限リスクとして見る
初日から売れる株の量

ロックアップ対象外の株主が数%持っていれば、その分は初日から売られる可能性があります。出来高と比べて何日ぶんかを計算しておくと、リスクの大きさが数字で見えます。

ロックアップは数字で確認できる数少ない需給情報です。業績や成長性の予想は難しくても、いつ誰が売れるようになるかは目論見書に書いてあります。IPO銘柄を扱うなら、確認する価値が高い情報です。

なお、解除後に株価が下がった場面を損切りの基準にするか、拾う機会と見るかは方針次第です。重要なのは、解除日を知らないまま値動きの理由が分からない状態を避けることです。

第三者割当増資でのロックアップとの違い

ロックアップという言葉は、IPO以外の場面でも使われます。

場面 対象 確認する場所
IPO 上場前からの既存株主 目論見書
第三者割当増資 新たに株式を引き受けた割当先 適時開示(継続保有の確約)

第三者割当増資では「割当予定先が○年間の継続保有を確約した」という形で記載されます。確約があれば、その期間は売り物が出ません。逆に記載がなければ、いつでも売却できる状態です。

どちらの場面でも、見るべきポイントは同じです。誰が、どれだけ、いつまで売れないのかという3点です。

ロックアップに関するよくある質問

ロックアップの期間はどれくらいですか?
90日間または180日間が一般的です。ただし案件や株主によって異なり、株価条件と組み合わされることも多くあります。正確な内容は目論見書で確認してください。
公開価格の1.5倍で解除される条件とは何ですか?
株価が公開価格の1.5倍以上に達した時点で、期間が経過していなくてもロックアップが解除される条件です。上昇の途中で売り物が出るため、その水準が上値の壁として意識されます。倍率は案件によって異なります。
ロックアップは法律で決まっているのですか?
法律による規制ではなく、大株主と主幹事証券会社の間の契約です。そのため内容は案件ごとに異なり、すべての株主が対象になるわけではありません。主幹事証券の同意があれば期間内でも解除できる条項が付くのが一般的です。
ロックアップ解除で必ず株価は下がりますか?
下がりやすい局面ですが、必ずではありません。実際に売却されなければ、不確実性が消えて需給が改善することもあります。解除日を通過した後の値動きは、実際の売却が出たかどうかで分かれます。
ロックアップの内容はどこで確認できますか?
目論見書に記載されています。募集・売出しの条件が書かれた部分に、対象となる株主の名前、期間、株価条件が記載されています。証券会社のIPO案件ページからダウンロードできます。
ロックアップ対象外の株主がいるとどうなりますか?
その株主は上場初日から売却できます。目論見書の「大株主の状況」に載っているのにロックアップ対象者として名前がない株主を探すと、初日から売られる可能性のある株数が分かります。
実際に売却されたかどうかは分かりますか?
5%以上を保有する株主であれば、売却によって保有割合が1%以上減った場合に変更報告書が提出されるため、EDINETで確認できます。5%未満の株主については個別の確認は困難です。
ロックアップがない銘柄は避けるべきですか?
上場初日から大株主が売却できる状態なので、需給面のリスクは高くなります。ただしロックアップの有無だけで判断するのではなく、大株主の保有比率や吸収金額とあわせて総合的に見てください。

まとめ

ロックアップは、上場後の一定期間、大株主の売却を制限する契約です。確認すべきは「誰が、どれだけ、いつまで売れないのか」の3点です。

この記事のまとめ

・法律ではなく、大株主と主幹事証券の契約
・解除条件は期間(90日/180日)と株価(公開価格の○倍)
・1.5倍条件があると、その水準が上値の壁になる
・対象外の株主は上場初日から売却できる
・目論見書の「大株主の状況」と突き合わせて売り圧力を測る
・解除を通過して売りが出なければ、需給は改善する

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