寄り付きとは、取引時間が始まって最初に売買が成立することをいいます。そのとき成立した株価が「始値(はじめね)」です。

寄り付きの価格は、順番に約定していくのではなく「板寄せ方式」という特別なルールで、たった1つの価格にまとめて決められます。

この記事では、その決まり方から、寄り付きで注文を出すときの注意点までを解説します。

この記事でわかること

・始値が1つの価格に決まる仕組み(板寄せ方式)
・注文を何時から出せるのか
・寄り付かない(特別気配)ときに何が起きているか
・寄成注文がなぜ危険になりうるか
・寄り付き直後の30分が荒れる理由

寄り付きとは

寄り付き(読み方:よりつき)とは、取引開始後に最初の売買が成立すること、またはその時間帯を指す言葉です。「寄る」「寄り」とも言います。

寄り付きに関する言葉
寄り付き 最初の売買が成立すること
始値 寄り付きで成立した価格
寄り天(よりてん) 始値がその日の高値になってしまうこと
寄らない 注文が偏りすぎて始値が決まらない状態
対義語は「引け」=取引終了時の最後の売買

日足チャートのローソク足の「始値」は、この寄り付きの価格です。前日の終値と離れた位置で寄れば、チャート上に窓が空きます。

寄り付きの時間

東京証券取引所の取引時間は、2024年11月5日から後場の終了が30分延長されました。

区分 時間 備考
注文受付の開始 8:00頃〜 板に注文が並び始める。約定はしない
前場の寄り付き 9:00 板寄せで始値が決まる
前場の引け 11:30 昼休みに入る
後場の寄り付き 12:30 ここでも板寄せが行われる
クロージング・オークション 15:25〜15:30 2024年11月5日から導入。この間は約定しない
大引け 15:30 終値が決まる

※ 東京証券取引所の取引時間です。注文受付の開始時刻は証券会社によって異なります。

注意したいのは、寄り付きは1日に2回あるという点です。前場だけでなく、後場が始まる12時30分も寄り付きです。

始値が決まる仕組み(板寄せ方式)

ここが寄り付きの核心です。9時になった瞬間、それまでに溜まった注文が一度にまとめて処理され、たった1つの価格が決まります。

この方式を板寄せ方式といい、次の3つの条件をすべて満たす価格が始値になります。

条件① 成行注文がすべて約定する
価格を指定していない注文は、売りも買いも全部成立する価格でなければならない
条件② 始値より高い買い指値・安い売り指値がすべて約定する
「その値段より有利な条件を出している注文」は残ってはいけない
条件③ 始値と同じ指値の、売りか買いのどちらか一方が全部約定する
同値では片側だけが完全に約定し、もう片方に残りが出る

簡単にいうと、「売りと買いがいちばん多く成立する価格」が自動的に選ばれるということです。

そのため、9時00分00秒に発注しても、8時05分に発注しても、寄り付きの価格は同じになります。板寄せに時間の優先順位はありません(同じ価格の中で数量を配分するときには時間の優先が働きます)。

ここが誤解されやすい点
ザラ場(9時以降の通常取引)は価格優先・時間優先で1件ずつ約定していきます。
一方、寄り付きの板寄せは全部まとめて1つの価格まったく別のルールです。

寄り付き前の板の見方

8時から9時までの板には、注文だけが積み上がっていきます。この間に表示されるのが気配値です。

表示 意味
予想される始値 現時点の注文状況で板寄せしたら、いくらで寄るか
寄成(よりなり)の残数 成行注文がどちらにどれだけ偏っているか
特別気配 注文が偏りすぎていて、そのままでは寄らない状態

気配値は刻々と変わります。8時30分に「予想始値1,050円」と出ていても、8時55分に大口の売りが入れば一瞬で1,000円になります。寄る直前まで注文は動き続けます。

板の読み方そのものは板とはで詳しく解説しています。

寄らないとき(特別気配)に起きていること

買い注文が売り注文を大幅に上回っている場合、いきなり大きく飛んだ価格で約定させると混乱するため、取引所が特別気配を表示して時間を稼ぎます。

特別気配のしくみ

値幅を段階的に切り上げ(または切り下げ)ながら、反対の注文が集まるのを待ちます。
更新の間隔はおおむね3分ごと
好材料が出た銘柄が「9時30分になっても寄らない」のはこのためです。

似た仕組みに連続約定気配があります。こちらはザラ場中に一定以上の値幅を一気に動こうとしたときに、約1分間だけ表示して注文を呼び込むものです。

詳しくは気配とはで解説しています。

寄り付き注文(寄成・寄指)の使い方

「寄り付きだけで売買したい」ときに使うのが執行条件つきの注文です。

注文の種類 内容 寄らなかったら
寄成(寄付成行) 寄り付きの価格で必ず売買する 失効する
寄指(寄付指値) 指定した価格以内なら寄り付きで売買する 失効する
通常の成行 寄り付きで約定し、残ればザラ場でも約定を続ける その後も有効
通常の指値 条件が合えば寄り付きでも約定する その後も有効

「寄付」がつく注文の最大の特徴は寄り付きで約定しなければ自動的に取り消されることです。1日中ずっと板に残り続けて、想定外のタイミングで約定する事故を防げます。

寄成注文が危険になるケース

寄成注文は便利ですが、価格を一切指定しないため、想定と違う価格で約定することがあります。

① 決算やニュースで大きく飛んだとき

前日終値1,000円の銘柄が、好決算で1,300円に寄ることがあります。買いの寄成を入れていれば、その1,300円で約定します。

② ストップ高・ストップ安で寄ったとき

値幅の上限まで飛んだ価格で約定します。売りたい側からすると、最悪の価格で約定することになります。

③ 出来高が少ない銘柄

板が薄いと、わずかな注文で価格が大きく動きます。想定より数%離れた価格で成立することも珍しくありません。

回避したいなら寄指注文を使ってください。「1,050円以下でなら買う」と上限を切っておけば、飛んだときには約定せず失効します。

成行注文そのものの性質は成行注文とはで解説しています。

寄り付きで売買するメリット

メリット 中身
板に張り付かなくていい 前日の夜に注文を出しておける。日中に相場を見られない人に向く
約定しやすい 1日でもっとも注文が集中する時間帯なので、まとまった株数でも成立しやすい
前日の情報を織り込める 米国市場の結果や夜間のニュースを見てから判断できる
売買のルールを固定できる 「翌日の寄りで手仕舞う」と決めておけば、日中の値動きに惑わされない

4つ目は軽視されがちですが実用的です。日中の値動きを見ていると、決めていた損切りができなくなるというのは多くの人が経験することです。

寄り付きで売買するデメリット

デメリット 中身
価格が読めない 寄成なら価格の上限がない。予想始値はあくまで途中経過
もっとも高い(安い)値をつかみやすい 「寄り天」になると、その日いちばん高いところで買ったことになる
直後に反転しやすい 寄り付きに集中した注文が消化されると、逆方向に動きやすい
寄らないと何もできない 特別気配のまま終日寄らなければ、注文は失効する

寄り付き直後の30分が荒れる理由

寄り付いた直後は、1日のなかでもっとも値動きが激しくなります。理由は3つあります。

① 情報が一気に反映される

夜間の米国市場、為替、決算発表、開示情報のすべてが9時にまとめて価格へ織り込まれます。

② 溜まった注文が消化される

前夜からの注文が一度に処理されるため、需給の偏りが極端になります。

③ 短期の資金が入れ替わる

デイトレードの参加者がこの時間帯に集中し、売買がぶつかり合います。

だからこそ初心者は寄り付き直後の売買を避けたほうがいいと言われます。値動きが大きいということは、判断を誤ったときの損失も大きいということです。

この時間帯の戦い方はデイトレードとはでも触れています。

前日終値と離れて寄ったとき(窓)

始値が前日の終値から大きく離れると、チャート上に空白ができます。これがです。

状態 背景 気をつけること
ギャップアップ 好決算・上方修正・米国株高など 寄り天になりやすい
ギャップダウン 悪材料・下方修正・急な円高など 狼狽売りが出やすい

窓の性質については窓(窓開け・窓埋め)とはで解説しています。

寄り付きにまつわる相場格言

よく引用される言い回し

「寄り付き高は寄り天」…… 大きく高く寄った日は、そこが高値になりやすい
「始値と終値を見れば地合いがわかる」…… 始値より終値が高い日が続けば買いが強い
「朝の全力は禁物」…… 寄り付き直後は情報が錯綜しており、判断材料が足りない

ただし、格言は統計的な検証を経たルールではありません。「そういう傾向が語られている」という程度に受け止めてください。

※ 本記事は取引制度の解説であり、特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

寄り付きに関するよくある質問

寄り付きは何時ですか?
前場は9時、後場は12時30分です。寄り付きは1日に2回あります。なお2024年11月5日から東証の取引終了時刻が15時30分に延長され、15時25分からはクロージング・オークションの時間帯になっています。
8時に注文したほうが有利に約定しますか?
寄り付きの価格そのものは変わりません。板寄せはすべての注文を同時に処理して1つの価格を決めるため、発注が早いほど有利な価格になるということはありません。ただし同じ価格の注文が多くて全部は約定しない場合、時間の早い注文から優先して配分されます。
予想始値と実際の始値が違ったのはなぜですか?
予想始値は「その時点の注文状況で計算した仮の値」だからです。寄る直前まで注文の追加や取り消しが可能なため、9時直前の数十秒で大きく変わることがあります。とくに大口の注文が入ると一気に動きます。
寄成注文と通常の成行注文はどう違いますか?
寄成は寄り付きで約定しなければ失効します。通常の成行は寄り付きで約定しなかった分がザラ場でも生き続け、その後の値動きの中で約定します。「寄りで決着をつけたい」なら寄成、「とにかく今日中に約定させたい」なら通常の成行です。
9時を過ぎても寄らないのはなぜですか?
買いか売りの一方に注文が偏りすぎていて、板寄せの条件を満たす価格が存在しないためです。取引所は特別気配を表示し、おおむね3分ごとに気配値を切り上げ(切り下げ)ながら反対注文を待ちます。好材料が出た銘柄では昼過ぎまで寄らないこともあります。
寄り付きの株価はその日の高値・安値になりやすいですか?
大きく窓を開けて寄った日は、始値が高値または安値になりやすい傾向があるとされます(寄り天・寄り底)。ただし例外も多く、寄り付きの水準を上回って伸び続ける日も普通にあります。ルールとしては使えません。
寄り付き前に約定することはありますか?
東証の取引時間内ではありません。ただしPTS(私設取引システム)を使えば、証券取引所の取引時間外でも売買できます。夜間取引で付いた価格が、翌朝の寄り付きの参考にされることもあります。
後場の寄り付きは前場と同じルールですか?
同じ板寄せ方式です。昼休みのあいだに出た決算発表やニュースが12時30分にまとめて反映されるため、後場の寄り付きが大きく動くこともあります。企業の開示が昼休みに集中する日はとくに注意してください。

まとめ

寄り付きは「前夜からの情報と注文が、1つの価格に押し込まれる瞬間」です。だからこそ約定しやすく、同時に危険でもあります。

この記事のまとめ

・寄り付き=取引開始後に最初の売買が成立すること。価格が始値
・前場9時、後場12時30分の1日2回ある
・始値は板寄せ方式で決まる。発注時刻の早さは価格に影響しない
・注文が偏ると特別気配になり、約3分ごとに気配を動かして待つ
・寄成は価格の上限がないため、飛んだ日は想定外の値で約定する
・上限を切りたいなら寄指を使う
・寄り付き直後の30分は1日でもっとも荒れる

あわせて読みたい:気配とは板とは成行注文とはギャップアップとはデイトレードとは

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