ROEとは、株主が出したお金でどれだけ効率よく利益を稼いだかを示す指標です。自己資本利益率ともいい、高いほど評価されます。

目安を先に言います。日本の上場企業の平均は9.36%(2025年3月期・全産業)、最低ラインは8%です。この2つの数字を覚えておけば、個別銘柄のROEが高いのか低いのかは即座に判断できます。

ただしROEには落とし穴があります。借金を増やしても、自社株買いをしても、ROEは上がります。数字が高いだけで買うと踏みます。この記事では、中身を見分ける方法まで解説します。

この記事でわかること

・ROEの計算式と、決算書のどこを見るか
・業種別の目安と、日本企業の平均9.36%との比べ方
・ROEを3つに分解して中身を確かめる方法
・借金や自社株買いで作られた高ROEの見分け方
・ROEとROAをセットで見る理由
・東証のPBR改善要請でROEが注目されている背景

ROEとは?まず結論から

ROE(読み方:あーるおーいー)

ROEは Return On Equity の略で、日本語では自己資本利益率といいます。株主が出したお金(自己資本)に対して、どれだけ利益を上げたかを表します。

ROEの計算式

ROE(%)= 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100
例:当期純利益10億円 ÷ 自己資本100億円 × 100 = ROE 10%

意味するところは「株主のお金を年利何%で運用しているか」です。ROE10%なら、株主が預けた100円を使って年10円稼いでいることになります。銀行預金の利率と同じ発想で読めます。

数字は決算短信や有価証券報告書で確認できます。自分で計算する必要はほとんどなく、証券会社の銘柄情報画面にも表示されています。

用語 中身 決算書のどこ
当期純利益 税金を引いた後、最終的に残った利益 損益計算書の最下段
自己資本 返済しなくてよいお金(資本金+剰余金など) 貸借対照表の純資産の部
総資産 自己資本+借入金などの負債 貸借対照表の合計

※ 借入金は自己資本に含まれません。ここが後述の落とし穴につながります。

ROEの目安は何%か

目安には2つの基準があります。

最低ライン
ROE 8%
これを下回ると資本コストに届かない
2014年の伊藤レポート
実際の平均
ROE 9.36%
全産業(2025年3月期)
ここが比較の基準

8%が合格ラインで、9%台が平均。10%を超えれば上位

区分 平均ROE
全産業 9.36%
製造業 8.46%
非製造業 10.63%

※ 出典:日本取引所グループ 決算短信集計結果(2025年3月期)。2026年8月時点で参照できる直近の通期集計です。

古い解説に注意
「日本企業の平均ROEは5%前後だから、5〜10%でも悪くない」
→ 平均はすでに9%台です

平均が9%台に上がっているため、ROE5%台は明確に下位です。数年前の解説記事には平均5%前後と書かれたものが残っています。目安を語る記事は、参照している年度を確認してください。

なぜ平均が上がったのか。理由は自社株買いの急増と、東証によるPBR1倍割れ企業への改善要請(2023年3月)です。企業がROEを意識して経営するようになった結果、平均そのものが押し上げられました。

ROEは3つに分解できる

ROEの数字だけを見ても、なぜ高いのかは分かりません。次のように分解すると中身が見えます。デュポン分解と呼ばれる方法です。

ROEの3分解

ROE = 売上高純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ
(稼ぐ力)×(資産を回す力)×(借金の使い方)

要素 計算 高いとどういう会社か
売上高純利益率 当期純利益÷売上高 利益率が高い。価格決定力がある
総資産回転率 売上高÷総資産 資産を無駄なく使っている
財務レバレッジ 総資産÷自己資本 借金が多い。リスクも高い

ここが判断の分かれ目です。同じROE15%でも、利益率で稼いでいる会社と、借金で膨らませた会社はまったく違います。

項目 A社 B社
売上高純利益率 10% 3%
総資産回転率 1.0回 1.0回
財務レバレッジ 1.5倍 5.0倍
ROE 15% 15%

B社のROEは借金で作られています。景気が悪化して利益が減れば、B社は一気に赤字とROEの急落に見舞われます。金利が上がる局面では、利払い負担も重くなります。

財務レバレッジは総資産÷自己資本なので、自己資本比率の逆数に近い数字です。自己資本比率が低い会社ほどレバレッジが高くなります。ROEを見たら、必ず自己資本比率も確認してください。

自社株買いでROEは上がる(利益が増えなくても)

もう1つの落とし穴です。自社株買いをすると、支払った現金の分だけ自己資本が減ります。分母が小さくなるので、利益が1円も増えなくてもROEは上がります。

項目 自社株買い前 20億円の自社株買い後
当期純利益 10億円 10億円(変わらず)
自己資本 200億円 180億円
ROE 5.0% 約5.6%

これ自体は悪いことではありません。使い道のない現金を株主に返すのは合理的な判断です。ただし「ROEが改善した」という発表を、稼ぐ力が上がったと読むのは誤りです。

見分け方は簡単です。当期純利益そのものが増えているかを確認するだけです。利益が横ばいでROEだけ上がっていれば、分母を減らしたということです。

ROEとPBRの組み合わせで銘柄を4分類する

ROE単独では投資判断になりません。PBRと組み合わせると、その銘柄が市場からどう見られているかが分かります。

組み合わせ 市場の見方 投資家としての着眼点
ROE高・PBR高 評価されている優良企業 すでに織り込み済み。成長の継続性を見る
ROE高・PBR低 稼げているのに評価されていない 最も注目される組み合わせ。理由を探す
ROE低・PBR低 資本効率が悪いと見られている 東証の改善要請の対象。資本政策の発表待ち
ROE低・PBR高 将来の成長に期待が乗っている 期待が外れたときの下落幅が大きい

2行目のROE高・PBR低は、割安な優良株の候補です。ただし評価されていないのには理由があることが多いので、そこを調べるのが本題になります。よくある理由は次のとおりです。

高ROEなのに評価されない理由

・ROEが借金(財務レバレッジ)で作られている
・一時的な特別利益で当期純利益が膨らんでいる
・業績のピークが過ぎていると見られている
・株式の流動性が低く、機関投資家が買えない

3行目のROE低・PBR低は、東証の改善要請を受けている典型です。自社株買いや増配の発表で株価が動きやすいのはこのゾーンです。

ROEとROAをセットで見る

借金による水増しを見抜く最も手軽な方法が、ROA(総資産利益率)と並べて見ることです。

指標 分母 何が分かるか
ROE 自己資本 株主のお金の運用効率
ROA 総資産(借金も含む) 事業そのものの稼ぐ力

ROAは借入金も分母に入るため、借金で膨らませても数字が上がりません。したがって次のように読めます。

ROEもROAも高い

本物です。借金に頼らず事業で稼げています。ここが理想形です。

ROEは高いがROAは低い

借金で膨らませたROEです。財務レバレッジが効いている状態で、景気後退や金利上昇に弱くなります。

ROEは低いがROAは高い

稼げているのに自己資本が厚すぎる状態です。現金を貯め込んでいる可能性があり、自社株買いや増配の余地があります。

3つ目のパターンは、アクティビストが株主提案を出しやすい典型的な状態です。資本効率の改善余地があるためです。アクティビストの動きは5%ルールの大量保有報告書で追えます。

ROEが下がったときに何が起きているか

ROEの低下は悪い知らせとは限りません。分子と分母のどちらが動いたかで意味が変わります。

動いた場所 起きていること 評価
当期純利益が減った 本業の悪化、特別損失の計上 悪い
自己資本が増えた(利益の蓄積) 稼いだ利益を使い切れていない 中立〜改善余地あり
自己資本が増えた(増資 調達した資金がまだ利益を生んでいない 使途次第
借入金を返済した 財務レバレッジが下がった 財務は健全化

2行目が実は重要です。利益は伸びているのにROEが下がっている企業は、現金や資産が積み上がっているサインです。この状態が続くと、株主から資本効率の改善を求められます。

4行目のように、借入金の返済でROEが下がることもあります。金利が上がる局面では借金を減らすのが合理的な判断なので、ROEの低下だけを見て評価を下げるのは早計です。貸借対照表の変化とあわせて読んでください。

ROEの注意点とデメリット

① 単年度の数字はあてにならない

資産売却などの一時的な利益で当期純利益が跳ねると、その年だけROEが高く出ます。3〜5年の推移で見てください。1年だけ突出している年は理由を確認する価値があります。

② 自己資本が薄い会社は数字が跳ねる

分母が小さいほどROEは大きく出ます。自己資本比率が10%台の会社のROE20%と、50%台の会社のROE20%は意味が違います。

③ 赤字だと計算できない

当期純利益がマイナスならROEもマイナスになり、比較の意味がなくなります。また自己資本がマイナス(債務超過)の場合は、数字そのものが解釈不能になります。

④ 業種をまたいだ比較には向かない

装置産業は資産が重くROEが出にくく、人材や情報を扱う業種は資産が軽く高く出ます。同業他社と比べるのが原則です。

⑤ ROEが高いだけでは株価が安いとは言えない

ROEは収益性の指標で、割安・割高は測れません。PERPBRと組み合わせて初めて投資判断になります。

PBRとの関係(東証の要請でROEが注目された理由)

ROEとPBRは、次の式でつながっています。

PBRの分解

PBR = PER × ROE
つまりROEが上がれば、PERが変わらなくてもPBRは上がります。

2023年3月、東証はPBRが1倍を割れている上場企業に改善を要請しました。PBRを上げる手段としてROEの改善が選ばれ、その具体策として自社株買いと増配が急増したという流れです。

結果として2025年度の自社株買いの設定額は約22兆3,250億円と過去最大になりました。ROEという指標が、実際に日本企業の行動を変えたということです。

個人投資家として利用するなら、ROEが低く、自己資本が厚く、現金を貯め込んでいる企業が改善の候補になります。そういう企業が資本政策を発表すると、株価が大きく動くことがあります。

ROEに関するよくある質問

ROEは何%以上あればいいのですか?
最低ラインは8%とされています(2014年の伊藤レポート)。日本の上場企業の平均は9.36%(2025年3月期・全産業)なので、10%を超えていれば上位です。ただし業種によって水準が違うため、同業他社との比較が前提になります。
日本企業の平均ROEは5%くらいと聞きましたが?
数年前の水準です。日本取引所グループの決算短信集計では、2025年3月期の全産業平均が9.36%(製造業8.46%、非製造業10.63%)となっています。平均が上がっているため、ROE5%台は現在では明確に低い水準です。
ROEが高いのに株価が上がらないのはなぜですか?
ROEの中身が借金によるものだと評価されにくいためです。ROAが低いままROEだけ高い場合、財務レバレッジで膨らませていると判断されます。また、すでに株価に織り込まれている場合や、成長期待が乏しい場合も上がりにくくなります。
ROEとROAはどう違うのですか?
分母が違います。ROEは自己資本、ROAは総資産(借入金を含む)です。ROAは借金で膨らませても上がらないため、事業そのものの稼ぐ力が見えます。両方が高い企業が理想形です。
自社株買いでROEが上がるのはなぜですか?
買付代金の分だけ自己資本が減り、計算式の分母が小さくなるためです。利益が増えていなくてもROEは上がります。稼ぐ力が上がったわけではないので、当期純利益そのものの増減を確認してください。
ROEはどこで確認できますか?
決算短信や有価証券報告書に記載されています。証券会社の銘柄情報画面や株式情報サイトでも表示されており、過去数年分の推移が見られるものもあります。単年ではなく推移で見ることをおすすめします。
ROEを3つに分解する意味は何ですか?
同じROEでも中身が違うことを確かめるためです。売上高純利益率・総資産回転率・財務レバレッジの3つに分けると、利益率で稼いでいるのか、資産を効率よく回しているのか、借金で膨らませているのかが分かります。
ROEだけで銘柄を選んでもいいですか?
避けたほうがよいです。ROEは収益性の指標で、株価が安いか高いかは分かりません。PERやPBRと組み合わせ、さらに自己資本比率とROAで財務の健全性を確認してから判断してください。

まとめ

ROEは、株主のお金でどれだけ効率よく稼いだかを示す指標です。8%が合格ライン、9%台が平均。そして必ずROAと自己資本比率をセットで見てください。

この記事のまとめ

・ROE=当期純利益÷自己資本×100
・最低ラインは8%、日本企業の平均は9.36%(2025年3月期)
・売上高純利益率×総資産回転率×財務レバレッジに分解できる
・借金を増やしても自社株買いをしてもROEは上がる
・ROAと並べれば借金による水増しを見抜ける
・PBR=PER×ROE。東証の要請でROEが注目されている

あわせて読みたい:ROAとはEPSとはPERとはPBRとはBPSとは自社株買いとは希薄化とは

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