
夏枯れ相場とは、夏場に市場参加者が減って売買が細り、値動きが乏しくなる状態のことです。お盆前後の7月下旬から8月にかけて使われます。
ただし「夏枯れだから下がる」と言われがちなこの言葉には、データで確かめると事実と違う部分があります。
日経平均の41年分(1985年〜2026年)を月別に集計したところ、次の結果になりました。
| 月 | 平均騰落率 | 上がった割合 | 12か月中の順位 |
|---|---|---|---|
| 7月 | −0.16% | 47.6% | 下から3番目 |
| 8月 | −0.54% | 47.6% | 下から2番目 |
| 9月 | −0.81% | 41.5% | 最下位 |
1番成績が悪いのは8月ではなく、9月でした。
さらに、夏枯れの代名詞であるお盆の週(8月11日〜20日)だけを取り出すと、42年平均で+0.34%・勝率52.4%とプラスです。この記事では、こうした実測をひとつずつ確認していきます。
この記事でわかること
・日経平均の月別成績(1985年〜2026年・独自集計)
・8月より9月のほうが悪いという実測結果
・お盆の週はむしろプラスだった
・出来高は本当に「枯れる」のか(月別の実測)
・8月が上がった年の9月に起きること
・直近7年の8月がどうだったか
・夏枯れ相場での現実的な立ち回り
※ この記事は相場の季節性に関するデータ解説であり、特定の売買を推奨するものではありません。
夏枯れ相場とは
まず言葉の意味を整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 読み方 | なつがれそうば |
| 意味 | 夏場に市場参加者が減り、売買が細って値動きが乏しくなる状態 |
| 時期 | 明確な定義はないが、7月下旬〜8月末を指すことが多い |
| 語源 | 夏に商売が振るわなくなる「夏枯れ」から。相場に限った言葉ではない |
| 本来の意味 | 「下がる」ではなく「動かない・薄い」が本来の語感 |
ここが最初のポイントです。夏枯れは本来「出来高が減る」ことを指す言葉で、「株価が下がる」という意味ではありません。
ところが使われるうちに、下落とセットで語られるようになりました。実際のところどうなのかを、次から数字で確認していきます。
【独自集計】月別で見ると8月はどのくらい弱いのか
日経平均の月末終値を使い、1985年2月から2026年8月までの月間騰落率をすべて集計しました。
| 月 | 回数 | 平均騰落率 | 勝率 | 最大 | 最小 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1月 | 41 | +0.53% | 56.1% | +16.1% | −11.2% |
| 2月 | 42 | +0.70% | 59.5% | +13.4% | −8.9% |
| 3月 | 42 | +0.64% | 54.8% | +16.3% | −13.3% |
| 4月 | 42 | +1.80% | 59.5% | +16.1% | −11.6% |
| 5月 | 42 | +1.06% | 61.9% | +12.0% | −11.7% |
| 6月 | 42 | +0.25% | 59.5% | +8.8% | −13.1% |
| 7月 | 42 | −0.16% | 47.6% | +14.9% | −9.7% |
| 8月 | −0.54% | 47.6% | +13.5% | −16.3% | |
| 9月 | 41 | −0.81% | 41.5% | +9.4% | −19.2% |
| 10月 | 41 | +0.19% | 51.2% | +20.1% | −23.8% |
| 11月 | 41 | +1.41% | 63.4% | +15.0% | −16.7% |
| 12月 | 41 | +1.11% | 65.9% | +12.8% | −10.5% |
出典:日経平均株価の月末終値(Yahoo!ファイナンス)をもとに独自集計。1985年2月〜2026年8月。
この表から読み取れること
・その中でも最も悪いのは9月(−0.81%・勝率41.5%)
・8月は勝率47.6%で、7月と並んで下から2番目
・最も良いのは4月(+1.80%)、次いで11月(+1.41%)
・勝率が最も高いのは12月(65.9%)
🔵 夏枯れの季節が弱いのは事実。ただし本当の底は9月にある。
【独自集計】8月の全42回。20勝22敗
平均値だけでは実感が湧きにくいので、8月の全42回を並べます。
| 年 | 8月の騰落率 | 年 | 8月の騰落率 | 年 | 8月の騰落率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1985 | +3.93% | 1999 | −2.38% | 2013 | −2.04% |
| 1986 | +5.85% | 2000 | +7.21% | 2014 | −1.26% |
| 1987 | +6.29% | 2001 | −9.67% | 2015 | −8.23% |
| 1988 | −1.96% | 2002 | −2.62% | 2016 | +1.92% |
| 1989 | −1.50% | 2003 | +8.16% | 2017 | −1.40% |
| 1990 | −16.30% | 2004 | −2.15% | 2018 | +1.38% |
| 1991 | −7.40% | 2005 | +4.32% | 2019 | −3.80% |
| 1992 | +13.52% | 2006 | +4.42% | 2020 | +6.59% |
| 1993 | +3.17% | 2007 | −3.94% | 2021 | +2.95% |
| 1994 | +0.88% | 2008 | −2.27% | 2022 | +1.04% |
| 1995 | +8.63% | 2009 | +1.31% | 2023 | −1.67% |
| 1996 | −2.54% | 2010 | −7.48% | 2024 | −1.16% |
| 1997 | −10.34% | 2011 | −8.93% | 2025 | +4.01% |
| 1998 | −13.87% | 2012 | +1.67% | 2026 | +2.75% |
上昇20回、下落22回。ほぼ半々です。「8月は必ず下がる」という話ではありません。
ただし下げるときの下げ幅が大きいという特徴はあります。1990年は−16.30%、1998年は−13.87%、1997年は−10.34%です。平均がマイナスになっているのは、この大きな下げが効いているためです。
【独自集計】直近7年の8月は5勝2敗
古いデータだけで判断すると実態を見誤るので、直近も切り出します。
| 年 | 8月の騰落率 | 主な出来事 |
|---|---|---|
| 2020年 | +6.59% | コロナ後の金融緩和 |
| 2021年 | +2.95% | — |
| 2022年 | +1.04% | — |
| 2023年 | −1.67% | — |
| 2024年 | −1.16% | 8月5日に−12.40%の暴落があった月 |
| 2025年 | +4.01% | — |
| 2026年 | +2.75% | — |
直近7年は5勝2敗です。負けた2年も−1.67%と−1.16%で小幅にとどまっています。
特に注目したいのが2024年です。この月は8月5日に日経平均が−12.40%という歴史的な暴落を記録しましたが、月間で見ると−1.16%にすぎません。翌日以降に急回復したためです。
暴落の記憶は強く残りますが、月単位の成績とは別物だという例になっています。この暴落についてはメルトダウン・メルトアップの記事で詳しく扱っています。
【独自集計】お盆の週はむしろプラスだった
夏枯れといえばお盆です。市場参加者が1番減る時期を切り出して調べました。
| 項目 | 8月11日〜20日の成績 |
|---|---|
| 対象 | 42年分(1985〜2026年) |
| 平均騰落率 | +0.34% |
| 上がった割合 | 52.4% |
| 最大 | +8.5% |
| 最小 | −6.2% |
お盆の週は、42年平均でプラスでした。勝率も52.4%で、月別の8月全体(47.6%)より高くなっています。
つまり8月がマイナスになるのは、お盆の期間ではなく月の前半か後半だということです。「お盆は避けたほうがいい」という通説は、少なくとも日経平均の実測では支持されません。
【独自集計】出来高は本当に「枯れる」のか
夏枯れの本来の意味である「売買が細る」について確認します。
| 月 | 1日平均の出来高 | 全月平均との差 |
|---|---|---|
| 2月 | 1.30億株 | +12.0% |
| 3月 | 1.28億株 | +10.2% |
| 5月 | 1.27億株 | +9.1% |
| 1月 | 1.21億株 | +3.9% |
| 4月 | 1.20億株 | +3.0% |
| 11月 | 1.17億株 | +0.1% |
| 6月 | 1.12億株 | −3.8% |
| 10月 | 1.12億株 | −3.9% |
| 9月 | 1.11億株 | −5.0% |
| 12月 | 1.07億株 | −8.3% |
| 8月 | 1.06億株 | −8.6% |
| 7月 | 1.06億株 | −8.8% |
出典:日経平均の出来高(2000年以降)をもとに独自集計。
7月と8月の出来高は、全月平均より約9%少ないという結果でした。この点では「夏枯れ」は事実です。
ただし12月も−8.3%でほぼ同じ水準です。年末年始も市場参加者が減るためで、8月だけが特別に薄いわけではありません。
出来高が減るとどうなるかというと、少ない注文で値が動きやすくなります。薄商いのなかで大きな売り注文が出ると、普段より下げ幅が大きくなる。8月の下げ幅が大きくなりがちな理由はここにあります。出来高の読み方は出来高の記事で解説しています。
本当に警戒すべきは9月
ここまでの集計で最も重要なのが、この事実です。
勝率 47.6%
12か月中 下から2番目
下げるときは大きいが
回数はほぼ半々
勝率 41.5%
12か月中 最下位
41回のうち24回が下落
最悪の年は−19.2%
9月が弱い理由としては、次のようなものが挙げられます。
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 中間期末 | 9月末は多くの企業の中間決算期末。持ち高調整の売りが出やすい |
| 配当権利落ち | 中間配当の権利落ちで指数が理論的に下がる |
| 海外勢の期末 | 9月を決算期とする海外ファンドの利益確定が重なりやすい |
| 夏休み明けの再点検 | 夏の間に放置していた持ち高を、市場参加者が戻ってから整理する |
権利落ちの仕組みは権利確定日の記事で解説しています。
【独自集計】8月が上がった年の9月は要注意
もうひとつ、はっきりした傾向が出ました。8月の結果によって、9月の成績が変わります。
| 8月の結果 | 回数 | 翌9月が上昇した割合 |
|---|---|---|
| 8月が下落した年 | 22回 | 50.0% |
| 8月が上昇した年 | 19回 | 31.6% |
8月が上がった年ほど、9月は下がりやすいという結果です。19回のうち13回が下落しています。
逆に8月が下がった年は、9月は五分五分に戻ります。夏の間に売られていれば9月の売り圧力は小さく、夏に買われていれば9月に調整が入りやすいという素直な関係と読めます。
2026年の8月は+2.75%の上昇でした。この集計に当てはめると、9月は警戒しておくべき側の年になります。
夏枯れ相場での現実的な立ち回り
ここまでの実測をふまえて、何をするかを整理します。
| やること | 理由 |
|---|---|
| ① 建玉を軽くしておく | 出来高が約9%減るため、同じ売り注文でも値が動きやすい。とくに信用取引は余力を残す |
| ② 8月ではなく9月を警戒する | 勝率41.5%で12か月中最下位。とくに8月が上げた年は31.6%まで下がる |
| ③ 逆指値を置いておく | 薄商いでは下げが加速しやすい。市場を見ていない時間帯の保険になる |
| ④ 短期売買の回数を減らす | 値動きが乏しい日は取れる値幅も小さく、手数料負けしやすい |
| ⑤ 積立は止めない | 季節性を理由に積立を止めると、時間分散という前提が崩れる |
やらないほうがよいこと
勝率47.6%=ほぼ半々。方向を当てる根拠としては弱すぎます
🔴 「夏枯れだから安く買える」と決め打ちする
上昇20回・下落22回。安くなる保証はありません
🔴 お盆だけを避ける
お盆の週(8/11〜20)は42年平均で+0.34%。避ける根拠がありません
他の季節性との関係
夏枯れ相場は、季節性に関する言い伝えのひとつです。関連する言葉を整理しておきます。
| 言い伝え | 内容 | この記事の集計との関係 |
|---|---|---|
| セル・イン・メイ | 5月に売って9月に戻れ | 🔴 5月は平均+1.06%・勝率61.9%で12か月中3位。売る根拠は乏しい |
| 夏枯れ相場 | 夏は売買が細る | ✅ 出来高は約9%減で事実。ただし株価の下落は限定的 |
| 彼岸底 | 秋の彼岸に底を打つ | 🔵 9月が最も弱いという集計とは方向が一致する |
| 掉尾の一振 | 年末は上がる | ✅ 12月は勝率65.9%で12か月中1位 |
「セル・イン・メイ」は5月の実測とかみ合いません。一方で「掉尾の一振」は12月の勝率65.9%と整合します。言い伝えは、当たるものと当たらないものが混ざっています。詳しくはアノマリーの記事で扱っています。
よくある質問
まとめ|夏枯れは「薄い」であって「下がる」ではない
| この記事の要点 |
|---|
| 夏枯れ相場は売買が細ることを指す言葉。本来は下落を意味しない |
| 出来高は7月−8.8%・8月−8.6%で「枯れる」は事実。ただし12月も−8.3% |
| 8月の株価は上昇20回・下落22回でほぼ半々。平均−0.54% |
| 最も弱い月は9月(平均−0.81%・勝率41.5%で12か月中最下位) |
| お盆の週(8/11〜20)は42年平均で+0.34%・勝率52.4%とプラス |
| 8月が上げた年の翌9月が上がった割合は31.6%。8月が下げた年は50.0% |
| 直近7年の8月は5勝2敗。季節性は年によって崩れる |
夏枯れ相場という言葉から受ける印象と、実際の数字にはずれがあります。薄商いで値が振れやすいのは事実ですが、下がると決まっているわけではありません。
そして、この言葉のせいで見落とされやすいのが9月です。持ち高を軽くしておくなら8月ではなく、8月が上げた年の9月に向けてというのが、41年分のデータから読み取れる形になります。
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※ 本記事の集計は日経平均株価の日足・月末終値(1985年1月2日〜2026年8月27日)に基づく独自集計です。出来高の集計は2000年以降を対象としています。過去の傾向であり、将来の値動きを保証するものではありません。投資の判断はご自身の責任でお願いします。

