投資信託とは、多数の投資家から集めた資金をひとつにまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資する商品のことです。

数百円から始められ、1本買うだけで何十・何百という銘柄に分散できます。2026年6月末時点で、日本の公募投資信託の純資産総額は359兆9,199億円と過去最高を更新しました。

この記事では、仕組みとコスト、そして最も誤解が多い「分配金の正体」までを解説します。

この記事でわかること

・投資信託にかかる3つのコスト
・分配金が「元本の払い戻し」になる仕組み
・インデックスとアクティブの違い
・運用会社が破綻しても資産が守られる理由
・NISAでの扱いと2026年度の税制改正

投資信託とは

投資信託は、ひとことで言えば「みんなのお金をまとめて、プロが運用する箱」です。

個別株を買う
1社に投資
数万円〜数十万円
その会社の業績次第
分散するには資金が要る
投資信託を買う
数百社に投資
100円から
1本で分散が完成する
少額でも分散できる

最大の価値は「少ない資金で分散できる」こと

個別株なら1社が倒産すればその投資は失われますが、投資信託なら1社の影響は全体のごく一部にとどまります。株式だけでなく債券REITを組み入れる商品もあります。

3者が関わる仕組み

投資信託には3つの会社が関わっています。この構造が、投資家の資産を守る仕組みそのものです。

役割 誰が 何をするか
販売会社 証券会社・銀行 投資家の窓口。購入・解約の受付
運用会社 投信委託会社 どの銘柄をどれだけ買うかを決め、指図を出す
受託会社 信託銀行 資産を預かって保管・管理する
3社のどれが破綻しても資産は守られる

投資信託の資産は、信託銀行が自社の財産とは分けて管理(分別管理)しています。販売会社や運用会社が破綻しても、投資信託の資産が返済に充てられることはありません。信託銀行が破綻した場合も分別管理されているため保全されます。これは投資信託の大きな安心材料です。

ただしこれは「損しない」という意味ではありません。運用の結果として基準価額が下がるリスクは、投資家が負います。

2026年の市場規模

区分 純資産総額 本数
公募投信の合計 359兆9,199億円 5,836本
株式投信 343兆1,210億円 5,749本
公社債投信 16兆7,989億円 87本

※ 2026年6月末時点。出典:一般社団法人 資産運用業協会「数字で見る投資信託」(2026年7月13日公表)

団体名が変わっています

統計を公表している団体は、長く「投資信託協会」という名称でした。2026年4月1日に日本投資顧問業協会と合併し、「一般社団法人 資産運用業協会」となっています。古い資料と名前が違っても、同じ統計の続きです。

注目すべきは本数が5,836本もあるという点です。これだけあると選ぶこと自体が難しくなります。後述する「選び方」で絞り込みの順序を示します。

投資信託の種類

分類の軸 種類
投資対象 国内株式/外国株式/国内債券/外国債券/REIT/バランス型
運用方針 インデックス型/アクティブ型
購入できる期間 追加型(いつでも買える)/単位型(募集期間のみ)
分配の頻度 年1回/年2回/毎月分配型/分配を出さない方針のもの
上場の有無 非上場(通常の投信)/上場(ETF

インデックスとアクティブ

最初に決めるべきはこの選択です。

項目 インデックス型 アクティブ型
目指すもの 日経平均TOPIXなどの指数に連動 指数を上回る成績
信託報酬 低い 高い
中身のわかりやすさ わかりやすい 運用方針次第
成績のばらつき 指数とほぼ同じ 大きい(上にも下にも)

アクティブ型は「プロが選ぶのだから有利」と思われがちですが、高い信託報酬を毎年払い続けたうえで指数を上回る必要があります。ハードルは見た目より高くなります。

3つのコスト

投資信託で最も重要な論点がこれです。コストは成績と違って、確実に発生します。

コスト いつ払うか 確認する場所
購入時手数料 買うとき(1回だけ) 販売会社ごとに異なる。無料のものを「ノーロード」と呼ぶ
信託報酬
(運用管理費用)
保有している間ずっと 目論見書。年率で表示され、日々差し引かれる
信託財産留保額 解約するとき 目論見書。かからない商品も多い
効いてくるのは信託報酬
年率の差が1%あると…
10年で約10%、20年で約20%——単純計算でもこれだけの差
→ しかも複利で効くため、実際の差はさらに大きくなる

購入時手数料が0円でも、信託報酬が高ければ長期では不利になります。

信託報酬は基準価額から日々差し引かれているため、投資家が別途支払う場面がありません。だからこそ意識されにくく、確認する習慣が重要になります。

基準価額の見方

投資信託の値段は基準価額と呼ばれ、通常は1万口あたりの金額で表示されます。

株価との決定的な違い

株価はリアルタイムで動きますが、基準価額は1日1回だけ算出されます。しかも注文時点では価格がわかりません(ブラインド方式)。「いくらで買えるか」を確認してから買うことはできない仕組みです。

基準価額が安いから割安、高いから割高ということもありません。基準価額の絶対値には意味がなく、見るべきは「自分が買ったときからどれだけ増減したか」だけです。

分配金の正体

ここが投資信託で最も誤解の多い部分です。

種類 中身 課税
普通分配金 運用で得た利益からの分配。本当の意味での儲け 課税される
元本払戻金
(特別分配金)
自分が出したお金が戻ってきているだけ 非課税
「非課税だからお得」ではない
元本払戻金が非課税なのは、利益ではないからです
受け取った分だけ個別元本(自分の取得価額)が下がります
→ 財布から出したお金が財布に戻っているだけ

毎月分配金が出ていても、資産が増えているとは限りません。

特に毎月分配型の商品では、運用が振るわない期間に元本を取り崩して分配を続けることがあります。分配金の額ではなく、基準価額と分配金を合わせた「トータルリターン」で判断してください。詳しい仕組みは分配金とはで解説しています。

投資信託のメリット

① 少額から分散できる

100円から購入できる商品もあります。1本で数百社に分散されるため、個別株では不可能な分散が最初から実現します。

② 自分で銘柄を選ばなくていい

運用会社が組み入れを決めます。個別企業の決算を追う時間がない人でも、市場全体の成長に参加できます。

③ 積み立てを自動化できる

毎月一定額を自動で買い付ける設定ができます。相場を見て迷う時間がなくなり、買付単価も平準化されます。

④ 個人では買いにくい資産にも投資できる

新興国の株式、外国債券、不動産など、個人が直接買うのが難しい資産にも少額で投資できます。

投資信託のデメリット

① 元本保証がない

預金とは違い、運用の結果によっては投資した金額を下回ります。分散されていても、市場全体が下がれば基準価額も下がります。

② 保有しているだけでコストがかかる

信託報酬は成績に関係なく毎日差し引かれます。運用がマイナスの年でも支払いは発生します。

③ 買う価格を指定できない

株式のように指値ができません。注文した時点では約定価格がわからず、当日または翌営業日の基準価額で約定します。

④ 現金化までに数日かかる

解約してから受け取れるまで、通常は数営業日かかります。海外の資産に投資する商品ほど時間がかかる傾向があります。

NISAでの扱いと2026年度の税制改正

投資信託はNISAの中心的な商品です。つみたて投資枠では、金融庁が定める基準を満たした商品だけが対象になります。

2026年度に向けては、令和8年度税制改正大綱(2025年12月26日 閣議決定)で次の方向性が示されました。

項目 内容 扱い
未成年向けの枠 18歳未満を対象とするつみたて投資枠を創設(年60万円・総額600万円) 盛り込まれた
債券型の投信 債券の比率が50%を超える投資信託も対象に加える方向 盛り込まれた
プラチナNISA 高齢者向けの別枠の非課税制度 見送り
毎月分配型 毎月分配型投信のNISA対象化 見送り

※ 税制改正大綱の段階の内容であり、実際の施行内容・時期は今後の法令で確定します。最新は金融庁・国税庁の公表資料をご確認ください。

現行のつみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円・生涯1,800万円という枠組み自体は変わりません。既存の枠が縮小される話ではない点は押さえておいてください。

投資信託の選び方

5,836本から選ぶには、順番に絞り込むのが現実的です。

1

投資対象を決める
まずここ

全世界株式か、先進国株式か、日本株か、バランス型か。ここで大半が絞れます。

2

インデックスかアクティブか決める
コストに直結する

判断がつかないなら、まずインデックス型から検討するのが一般的な入口です。

3

信託報酬を比べる
同じ指数なら中身はほぼ同じ

同じ指数に連動する商品どうしなら、信託報酬が低いほうが有利です。

4

純資産総額と運用期間を確認する
継続性の目安

規模が小さすぎる商品は繰上償還(途中で運用が終了すること)のリスクがあります。

※ 本記事は制度と仕組みの解説であり、特定の商品や売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

投資信託に関するよくある質問

投資信託は元本保証がありますか?
ありません。運用の結果によっては投資した金額を下回ります。ただし販売会社・運用会社・信託銀行のいずれが破綻しても、資産は分別管理されているため保全されます。「破綻リスク」と「値下がりリスク」は別のものです。
分配金が多い商品のほうが得ですか?
得とは限りません。分配金には運用益からの「普通分配金」と、自分の元本が戻ってくるだけの「元本払戻金」があります。後者は非課税ですが利益ではなく、受け取った分だけ個別元本が下がります。基準価額と分配金を合わせたトータルリターンで判断してください。
信託報酬はいつ払うのですか?
別途支払う場面はありません。基準価額から日々差し引かれています。そのため意識されにくいのですが、保有している限り毎日発生します。年率の差が小さく見えても、長期では大きな差になります。
基準価額が低い商品は割安ですか?
違います。基準価額の絶対値には意味がありません。設定からの経過や分配の履歴によって水準が変わるだけで、割安・割高を示すものではありません。見るべきは自分が買ったときからの増減です。
ETFと投資信託はどう違いますか?
ETFは証券取引所に上場しているため、株式と同じようにリアルタイムで売買でき、指値も使えます。通常の投資信託は1日1回の基準価額で約定します。詳しくはETFとはをご覧ください。
2026年度の改正でNISAの枠は減りますか?
減りません。つみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円・生涯1,800万円という現行の枠組みは維持されます。令和8年度税制改正大綱では、18歳未満向けの枠の創設や債券型投信の対象追加といった拡充の方向が示されています。
プラチナNISAは導入されるのですか?
2025年12月26日に閣議決定された令和8年度税制改正大綱には盛り込まれず、見送りとなりました。毎月分配型投資信託のNISA対象化も同様です。今後の議論は金融庁の公表資料で確認してください。
解約したお金はいつ受け取れますか?
通常は解約の申込みから数営業日後です。商品によって異なり、海外の資産に投資するものほど時間がかかる傾向があります。すぐに使う予定の資金は投資信託に入れないほうが無難です。

まとめ

投資信託は、少額で分散を実現できる優れた仕組みです。ただし成績は選べませんが、コストは選べます。ここが最初に取り組むべき論点です。

この記事のまとめ

・投資信託=資金をまとめて専門家が運用する商品
・2026年6月末の公募投信は359兆9,199億円・5,836本
・3社のどれが破綻しても資産は分別管理で守られる
・信託報酬は保有中ずっとかかり、長期で差が開く
・分配金の一部は「元本の払い戻し」で利益ではない
・基準価額の絶対値に割安・割高の意味はない
・2026年度改正でNISAは拡充の方向。既存の枠は縮小されない

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