
米国株の売却損は、同じ「上場株式等」のグループに入る日本株・ETF・投資信託の売却益や、申告分離課税の配当と損益通算できます。相殺しても残った損失は、確定申告をすれば翌年以降 3 年間、利益と相殺できます(繰越控除)。ただし自動で通算されるのは同じ証券会社の特定口座の中だけで、別の証券会社との通算や損失の繰越には毎年の確定申告が必要です。この記事では通算できる組み合わせとできない組み合わせ、繰越控除の条件、年末の「損出し」で失敗しやすい点を整理します。
- 通算できる:米国株の売却損 × 日本株・米国株・ETF・投資信託の売却益、申告分離課税を選んだ配当・分配金。できない:為替差益(雑所得)、FX・CFD・先物、NISA 口座の損益、給与所得
- 特定口座(源泉徴収あり)の中では自動。売却損が出ると、その年に天引きされた配当の税金が年末に還付される。別の証券会社・一般口座との通算と、損失の繰越は確定申告
- 繰越は 3 年間、毎年申告が条件。取引が無い年も申告しないと繰越が切れる。損出しで同じ銘柄を買い戻すなら翌営業日以降(同じ日に買い戻すと取得単価が平均され、損失が小さくなる)
通算できる組み合わせ、できない組み合わせ
| 相手 | 通算 | 備考 |
|---|---|---|
| 日本株の売却益 | できる | 同じ「上場株式等」のグループ |
| 米国 ETF・東証上場 ETF・投資信託の売却益 | できる | 公募の投資信託も同じグループ |
| 米国株・日本株の配当、ETF の分配金 | できる | 申告分離課税を選んだ場合のみ。総合課税では不可 |
| 為替差益(ドルを円に戻した差益) | できない | 雑所得。株の損とは別枠 |
| FX・CFD・先物・オプション | できない | 先物取引に係る雑所得等。別グループで通算 |
| NISA 口座の損益 | できない | NISA の損失は税制上「無かったこと」になる |
| 給与・事業・不動産所得 | できない | 株の損失は他の所得から引けない |
日本の税制では、上場株式・ETF・公募投資信託の売却損益と配当・分配金が「上場株式等」という 1 つのグループにまとめられていて、米国株か日本株かは区別されません。米国株で 30 万円の損、日本株で 50 万円の利益なら、課税されるのは差し引き 20 万円です。米国 ETF(VOO や VYM など)も東証上場の ETF も同じ扱いです。
間違えやすいのが配当との通算です。配当を申告分離課税で申告した場合だけ売却損と相殺できます。総合課税を選ぶと配当は別の計算になり、売却損と相殺できません。特定口座(源泉徴収あり)で配当を受け取っている人は自動的に申告分離課税の扱いなので、口座内では相殺が自動で行われます。
もう 1 つの落とし穴は為替差益です。ドルを円に戻したときの為替差益は雑所得で、株の損失とは通算できません。株では損をしたのにドルが値上がりしていた年は、株の損が残ったまま為替差益にだけ課税されることがあります。
特定口座なら自動、別の証券会社と通算するなら確定申告
特定口座(源泉徴収あり)では、証券会社が口座内の売却損益と配当を年間で通算し、税金を計算し直します。年の途中で配当から天引きされた税金は、年末時点で売却損が残っていれば翌年 1 月初めに口座へ還付されます。米国株の配当については日本の税金(20.315%)だけが還付の対象で、米国で引かれた 10% は損益通算では戻りません。
自動で通算されるのは 1 つの証券会社の 1 つの特定口座の中だけです。SBI 証券で損、楽天証券で利益という年は、確定申告で 2 社の特定口座年間取引報告書を合算して初めて通算されます。一般口座の損益も同じで、申告しなければ通算されません。
| 状況 | 申告 | 得られるもの |
|---|---|---|
| 1 社の特定口座内で損と益 | 不要 | 自動通算、配当の税金は翌年 1 月に還付 |
| A 社で損、B 社で益 | 必要 | B 社で払った税金の一部が還付される |
| 年間で損失が残った | 必要(毎年) | 翌年以降 3 年間の利益と相殺 |
| 前年から繰り越した損失がある | 必要 | 今年の利益・配当の税金が減る |
申告するときは、確定申告書等作成コーナーで各社の年間取引報告書を入力するだけです。手順は米国株の確定申告のやり方にまとめています。
繰越控除:3 年間、毎年の申告が条件
その年に相殺しきれなかった損失は、確定申告をすることで翌年から 3 年間、上場株式等の売却益と申告分離課税の配当から差し引けます。2026 年に 100 万円の損失が残ったなら、2027〜2029 年の利益と相殺できます。
条件は 2 つです。1 つ目は損失が出た年に確定申告をすること。特定口座(源泉徴収あり)で申告不要のまま年を越すと、その損失は繰り越せません。2 つ目は繰り越している間、取引が無い年も毎年申告を続けること。1 年でも申告を飛ばすと、それ以降の繰越は認められません。
繰越控除を使う年は、前年の申告書に書いた「翌年以後に繰り越される損失の金額」を作成コーナーに入力します。特定口座(源泉徴収あり)で天引きされた税金は、申告によって還付されます。損失が大きい年ほど、翌年以降に取り戻せる税金も大きいので、損失が出た年こそ申告しておく価値があります。
年末の「損出し」:同じ日に買い戻さない
含み損の銘柄を年内にいったん売って損失を確定し、利益と相殺して税金を減らすことを「損出し」と呼びます。米国株でもできますが、注意点が 2 つあります。
1 つ目は同じ日に同じ銘柄を買い戻さないこと。特定口座の取得単価は「総平均法に準ずる方法」で計算され、同じ日に売りと買いがあると先に買いが計算に入り、取得単価が平均されて確定できる損失が小さくなります。買い戻すなら翌営業日以降にします。米国のウォッシュセールルール(30 日以内の買い戻しで損失を否認)は日本の居住者の日本の税金には適用されませんが、同日買い戻しの単価平均は日本の特定口座のルールとして働きます。
2 つ目は受渡日で年を判定すること。米国株の受渡は T+1 なので、現地 12 月 30 日の約定分までがその年の損益になります(受渡が翌年になる約定は翌年扱い)。日本の証券会社の年末の締め日は各社の案内で確認してください。損出しの翌日に買い戻すと、その 1 日の値動きを取り損ねるリスクがあります。値動きの大きい銘柄では、税金の節約より値動きの損失が大きくなることもあるので、金額を比べてから実行します。
米国株の損益通算と繰越控除に関するよくある質問
米国株の損失を日本株の利益と相殺できますか?
損失を繰り越すには何が必要ですか?
為替差益と株の損失は相殺できますか?
NISA で出た損失は通算できますか?
関連する用語
- 特定口座
特定口座とは、証券会社が1年間の売買損益を計算し、年間取引報告書を作成してくれる口座のことです。 - 一般口座
一般口座とは、1年間の売買損益を自分で計算し、確定申告する必要がある証券口座のことです。 - NISA
NISAとは、投資で得た利益に税金がかからなくなる制度です。 - 配当金
配当金とは、企業が稼いだ利益の一部を株主に分配するお金です。 - キャピタルゲイン
キャピタルゲインとは、簡単にいうと『売買差益』のことです。 - 米国株の確定申告のやり方(e-Tax の入力手順)
- 米国株の税金の全体像(売却益・配当・為替差益)
- 特定口座と米国株(源泉徴収あり・なしの違い)
- T+1 決済(受渡日が翌営業日になる仕組み)
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執筆:佐々木優也(Pacific Stock 編集長・専業投資家歴20年)
損益通算と繰越控除の範囲は租税特別措置法(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除、上場株式等に係る配当所得等の課税の特例)、特定口座の取得単価の計算は所得税法施行令、国税庁「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」の案内(2026 年 9 月時点)にもとづきます。個別の税務判断は税務署または税理士に確認してください。 本記事は情報提供を目的とし、特定の銘柄・証券会社の売買や口座開設を推奨するものではありません。当サイトは証券会社の口座開設等によりアフィリエイト報酬を得る場合がありますが、比較の順位や数値には影響しません。最終更新 2026-09-25。
